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精神障害者の非自発的入院と障害者権利条約の趣旨に関する質問主意書
参議院 第196回 第63号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
一 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)に規定された措置入院制度は、障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)の趣旨に違反するのか、又はしないのか、その理由も含めて政府の見解を示されたい。
二 精神保健福祉法に規定された医療保護入院制度は、障害者権利条約の趣旨に違反するのか、又はしないのか、その理由も含めて政府の見解を示されたい。
三 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定された入院処遇及び通院処遇は、障害者権利条約の趣旨に違反するのか、又はしないのか、その理由も含めて政府の見解を示されたい。
四 これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第一回医療保護入院等のあり方分科会(二〇一六年三月十一日)では、障害者権利条約を批准したときに整理した、精神保健福祉法に定める非自発的入院(措置入院制度及び医療保護入院制度)は障害者権利条約に違反しない旨の政府解釈を改めて確認している。他方で、障害者権利条約に基づき国連に設置された、障害者の権利に関する委員会(以下「障害者権利委員会」という。)が出した「一般的意見第一号」には、障害者権利条約第十四条を侵害する慣行として、精神障害を理由とした法的能力の制限と精神障害を理由とした非自発的入院が明示されており、また同委員会が出した「十四条ガイドライン」には、精神障害に加えて他の理由も要件とするものも含め、非自発的入院を許す法条項は障害者権利条約の趣旨に違反することが明示されている。こうした「一般的意見第一号」や「十四条ガイドライン」をうけて、障害者権利条約を批准したときの前記政府解釈を変更する予定はあるのか、政府の見解を示されたい。
五 障害者権利委員会が行う締約国政府からの報告の審査では、ほとんどの締約国が、精神障害に加えて他の理由も要件とする非自発的入院制度について障害者権利条約違反である旨の重大な懸念及び勧告を出されている。日本政府も間違いなく同様の指摘をうけることになると考えられるが、仮に諸締約国と同様の指摘をうけたとしても、なお日本政府は、障害者権利条約を批准したときの前記政府解釈を変更しないのか、政府の見解を示されたい。
六 日本政府は、精神保健福祉法に定める非自発的入院が障害者権利条約の趣旨に違反するかどうかについて「障害者権利条約第十四条は自由の剥奪が障害の存在のみにより正当化されないことを確保した規定である」旨の解釈を示しているが、一方、第百九十三回国会の参議院厚生労働委員会における参考人質疑(平成二十九年四月十三日)で、池原毅和参考人は障害者権利条約第十四条について、「権利条約の策定の過程で日本政府が精神障害のみを理由とした強制入院は許されないという規定にできないだろうかという提案をしたが、それが否定された結果、現在の規定になった」旨の発言をしている。池原参考人の発言を踏まえると、前記の障害者権利条約第十四条についての政府解釈は妥当ではないと思われるが、これについて政府の見解を示されたい。
七 日本政府は、精神保健福祉法に定める非自発的入院が障害者権利条約の趣旨に違反するかどうかについて「強制入院の禁止についても検討されたが、各国の反対により強制入院の一律の禁止については規定しないこととされた」と説明しているが、これは強制的な医療侵襲を否定した、拷問等の禁止(障害者権利条約第十五条)や不可侵性の保護(同第十七条)に結実した議論の途中で確認されたことであり、身体の自由と安全を規定した障害者権利条約第十四条の議論の中で確認されたことではないものと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一から三までについて
御指摘の「障害者の権利に関する条約・・・の趣旨」及び「障害者権利条約の趣旨」の意味するところが必ずしも明らかではないが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)では、同法第二十九条第一項の規定に基づく都道府県知事等による入院措置(以下「措置入院」という。)について、同法第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者(同法第五条に規定する精神障害者をいう。以下同じ。)であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると都道府県知事等が認めた場合に行うことができるとされているほか、同法第三十三条第一項又は第三項の規定に基づく精神科病院(同法第十九条の五に規定する精神科病院をいう。)の管理者による入院措置(以下「医療保護入院」という。)について、精神保健指定医(同法第十八条第一項に規定する精神保健指定医をいう。)による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために同法第二十条の規定による本人の同意に基づいた入院が行われる状態にないと判定されたものであること等の要件を満たした場合に行うことができるとされている。また、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)第四十二条第一項第一号に定める決定による入院(以下「入院処遇」という。)は、対象行為(同法第二条第一項各号に掲げるいずれかの行為をいう。以下同じ。)を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせて同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に、同法第四十二条第一項第二号に定める決定による通院(以下「通院処遇」という。)は、同項第一号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に、いずれも裁判所の決定に基づき行われるものである。このように、措置入院及び医療保護入院並びに入院処遇及び通院処遇は、法律に規定された要件を満たした場合に、法律に規定された手続に従って行われるものであり、また、精神障害の存在のみを理由として行われるものではないことから、いずれも、不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在によって正当化されないこと等を規定する障害者の権利に関する条約(平成二十六年条約第一号。以下「障害者権利条約」という。)第十四条の規定に違反しないと考えている。
四について
一から三までについてで述べたとおり、政府としては、措置入院及び医療保護入院並びに入院処遇及び通院処遇は、障害者権利条約第十四条の規定に違反しないと考えており、御指摘の「一般的意見第一号」又は「十四条ガイドライン」を受けてこの考え方を変更する予定はない。
五について
御指摘のような仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。
六及び七について
御指摘の参考人の御指摘の発言にあるような日本政府の提案は、障害者権利条約の交渉の過程において障害者権利条約第十四条に関連して行ったものであるが、当該交渉過程においては、御指摘の「拷問等の禁止(障害者権利条約第十五条)や不可侵性の保護(同第十七条)に結実した議論」に限らず、同意に基づかない強制治療及び強制入院が、ごく例外的な場合であって、また、障害の存在そのものを理由とするのではなく、自傷他害のおそれがある場合等には、適法に行われ得ることについて、おおむね意見が収れんしたものと認識している。このため、「障害者権利条約第十四条についての政府解釈は妥当ではない」との御指摘は当たらない。
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