ことばで探す › 参議院 第213回
我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する質問主意書
参議院 第213回 第117号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×1
質問本文
これまで、累次の「公的機関の職員の国籍に関する質問主意書」を提出し、答弁書の送付を受けた。この過程で、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立研究開発法人理化学研究所の四法人(以下「本件四法人」という。)における外国籍職員のうち、特に中国籍の職員が全体の約三割から半数を占め、他の国籍の職員に比べて顕著に多いことが判明した。他国籍の職員との比較で均衡が取れていない状況である。
しかし、答弁によると、「本件四法人」では、外国籍職員の採用に関する組織全体を横断する指針が存在せず、特に中国籍職員が多い現状であっても、そのような指針を策定する予定がないという。政府の危機意識や問題意識の欠如が見受けられる。中国籍職員が中国の国家情報法や国防動員法に基づき、中国政府の命令に従う義務が生じる可能性については、これらの法律が「他国の法律」であるため、質問の意図が不明瞭であるとして、具体的な答弁はされなかったが、これは本質的な懸念と課題から目を逸らしていると言わざるを得ない。このように、中国籍職員の採用が突出している現状に鑑み、我が国の科学技術関連予算により実施される事業や、本件四法人を含む科学技術関連組織の運営においても、職員採用に限らず国際的な視野に立った検証が必要であると考える。
一方、日本学術振興会(以下「JSPS」という。)は、文部科学省の下で設立された独立行政法人であり、学術研究の助成、研究者の育成、学術交流の促進などを通じて日本の学術振興の核となっている。また、科学技術振興機構(以下「JST」という。)は、二〇〇六年に「中国総合研究センター」を設置し、特定の国や地域を対象にした唯一の組織として長期にわたり活動してきた。二〇二一年には、「アジア・太平洋総合研究センター」として対象範囲を広げた。日本学術会議が我が国の防衛技術の開発研究への参加や協力を国内研究者に忌避するよう促す一方で、中国の軍事技術開発に関与するとされる「国防七校」と我が国の大学機関との共同研究等の提携を不問にしている矛盾について、質問主意書(第二百十一回国会質問第八一号)にて指摘した。中国政府は、民間の最先端技術を軍事力強化につなげる「軍民融合」を進めており、国防七校はその中核とされる。我が国の安全保障及び科学技術の保護の観点から、軍事転用が可能な機微技術の海外流出を防ぐためにも、国防七校との関わりには慎重な対応が必要であるにも関わらず、国費で運営されている日本学術会議はそうした対応と真逆の姿勢をとっている。さらに、中国が推進する海外人材の招致計画、いわゆる「千人計画」についても、技術流出等の懸念から問題視されており、同様に慎重な対応が求められる。
なお、既に質問主意書(第二百十二回国会質問第三一号)にて指摘したように、令和五年六月に、国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究データを中国企業に漏らしたとして、国防七校の教授を兼務していた中国籍研究員が逮捕されたという不祥事が発生している。
以上を踏まえ、以下質問する。
一 国立研究開発法人における外国籍職員の採用に関して、特に中国籍の職員の高い採用傾向を政府はどのように評価しているか。また、外国籍職員の採用に関して組織横断的な指針を設ける予定はあるか。
二 本件四法人及びJSPSそれぞれの事業費全体に占める国際事業(実施及び助成を含む)の割合、及び相手国別の事業内容と予算額、国際事業全体に占める割合について詳細を示されたい。また、在籍する中国籍職員が中国を対象とする事業の実施に際して果たす役割を明らかにされたい。
三 前記国際事業の中で、中国の「国防七校」と関わる事業の内容、予算額について具体的に示されたい。これらの事業が我が国の安全保障に与える影響についての評価があれば、その内容も併せて示されたい。
四 本件四法人及びJSPSにおいて、中国の「千人計画」に関連する事業、及び千人計画参加者が関わる事業の内容と予算額を示されたい。また、これらの事業が技術流出等のリスクをどのように管理しているかについて、説明されたい。
五 JSTに設立された「アジア・太平洋総合研究センター(旧称:中国総合研究センター)」は、特定の国や地域を対象として唯一設立され、長期にわたり活動してきた。このセンターの設立背景及び活動の理由について説明されたい。
また、同センターは、「中国文献データベース」、「サイエンスポータル・チャイナ」、「日本の中国関連団体情報」、「中国・アジア研究論文データベース」、「中国政府による日本の若手科学技術関係者の招へいプログラム」といった、中国を中心とする多数の事業を実施している。これらの事業について、特に「国防七校」、「千人計画」との人的構成や研究内容について、関係性があるのではないか。同センターにおける中国籍職員の在籍状況と活動状況と併せて、具体的に明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
国立研究開発法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第三項に規定する国立研究開発法人をいう。以下同じ。)における職員の採用に関しては、各国立研究開発法人において、その業務の遂行に必要な人材を適切に確保していると承知しており、この結果としての外国籍職員の国籍別人数が不適切であるとは考えていない。
また、国立研究開発法人における御指摘の「外国籍職員の採用」に関して、政府としては、「国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について」(令和六年三月二十九日関係府省申合せ)において、関係府省から各国立研究開発法人に対し、「職員の採用・受入時に申告された兼業や研究費受入等の外部機関との連携関係の情報について、別途入手可能な情報と比較するなど定期的なフォローアップを行う」等の取組を促すこととしたところである。
二から四までについて
御指摘の「本件四法人」及び独立行政法人日本学術振興会を含め、研究開発法人(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成二十年法律第六十三号)第二条第九項に規定する研究開発法人をいう。以下同じ。)が行う業務には、外国の研究者や研究機関との間での共同研究の実施や科学技術に関する情報の交換など様々な活動が含まれるところ、お尋ねの「国際事業(実施及び助成を含む)」及び「中国を対象とする事業」をこうした研究開発法人の業務の中から明確に区分することが困難であるため、これらの事業に係るお尋ねについてお答えすることは困難である。
また、御指摘の「中国の「千人計画」に関連する事業、及び千人計画参加者が関わる事業」に係るお尋ねについてお答えすることは、衆議院議員大西健介君提出中国の「千人計画」に関する質問に対する答弁書(令和三年二月十二日内閣衆質二○四第二八号)二についてでお答えしたとおり、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、差し控えたい。
いずれにせよ、お尋ねの「技術流出」の「リスクをどのように管理しているか」については、同法第四十一条第二項において、研究開発法人は、その研究開発の成果について、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすこととなる国外流出の防止に努めるものとされており、各研究開発法人において、それぞれ適切な措置が採られているものと承知している。
なお、政府としても、先の答弁書(令和五年十二月五日内閣参質二一二第六七号)四及び五についてで述べた取組を進めてきているほか、一についてで述べた「国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について」において、関係府省から各国立研究開発法人に対し、各国立研究開発法人の研究開発の成果について、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすこととなる国外流出の防止に向けた取組を促すこととしたところである。
五について
国立研究開発法人科学技術振興機構アジア・太平洋総合研究センターについては、発展が著しいアジア太平洋地域と我が国との間での科学技術分野における協力を支える基盤を構築することを目的に、同地域を対象に調査研究、情報の発信及び交流の推進を実施する組織として同機構に設置されたものであると承知している。
また、御指摘の「関係性」の具体的に指し示す範囲が明らかではないため、「関係性があるのではないか」とのお尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、少なくとも、これまで同センターにおいては、御指摘の「国防七校」との間で人材交流や研究協力等を実施したことはないと承知している。また、御指摘の「千人計画」に係るお尋ねについてお答えすることは、二から四までについてでお答えしたとおり、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、差し控えたい。
また、お尋ねの「在籍状況と活動状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和六年四月一日時点で同機構に在籍する常勤職員であって、採用時に日本国籍を有していなかった者のうち中国国籍のものは、九名であるが、これ以上の詳細については、先の答弁書(令和五年五月三十日内閣参質二一一第七八号)二についてでお答えしたとおり、外国籍職員の国籍及び国籍別の人数並びに所属及び役職といった詳細を明らかにすることにより、個人が特定されるおそれがあるため、プライバシー保護の観点から、お答えすることは差し控えたい。
なお、御指摘の「日本の中国関連団体情報」については、令和四年二月末に同センターのウェブサイトへの掲載を終了しており、また、御指摘の「中国政府による日本の若手科学技術関係者の招へいプログラム」については、同センターが実施しているものではないと承知している。