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物価並びに賃金に関する質問主意書
参議院 第3回 第26号
質問本文
終戦後に於ける累次の政府は祖国の再建「インフレーシヨン」の克服に関し、其政策宜しきを得ず、却て「インフレーシヨン」の克服に逆行するの手段を採り、益々「インフレーシヨン」を激成し、終に今日の惨憺たる情勢に陥つたのである、即ち国費は益々膨脹し、通貨は増発に増発を加え、物価は暴騰に暴騰を重ね、国民は食生活さえも安定を得るに至らず、給料賃金の値上げ運動は底止する所を知らず、物資の増産は幾多の障礙に悩まされ、財政は破綻に瀕し、政府は歳入の財源を得るに暗中模索の努力を余儀なくせらるる等の情勢が是れである。
此頽勢を挽回して、「インフレーシヨン」の克服、祖国再建の方向に進むの道は、先ず以て徹底的に行政整理を断行して、国費を緊縮すると共に、金融に関する諸般の施策と相侯つて、通貨を収縮すること、是れがその基礎方策である。この基礎方策の実行に依て、高物価を低物価に転換せしむることが出来るのであつて、始めて「インフレーシヨン」の克服、祖国再建の順当なる道程に、辿り入ることが出来るのである。この整理緊縮は固より困難なる事業であるが、然しながら之を突破しなければ財政も経済も生活も、終に最後の破局に陥いるのであることを、真剣に悟らねばならないのである。
就ては、
第一、
(1) 政府は物価を引下げることには、同意されないのでありますか。
若し然りとせば、その理由を承りたいのであります。
(2) 政府は物価を引下げることに同意であつても、引下げられないのでありますか。
若し然りとせば、その理由を承りたいのであります。
(3) 政府は物価引下げの手段方法に付て、腹案があるならば、それを承りたいのであります。
第二、
(1) 伝うる所に依れば、政府は行政整理を実行する旨を、発表されたと云うのであるが、整理を実行されることは、事実でありますか。
(2) その整理は、大体に於て現在人員に超過する予算人員だけを、削減すると云うのであるが、事実でありますか。
(3) 現在人員に超過する予算人員を減少するだけで、真個の財政建直しの結果が得られると、考えられるのでありますか。
(4) 右様の整理に依る人件費の削減の外には、如何なる費途に削減を加えられるのでありますか。
(5) 右様の整理に依て人件費の削減額、並びに其他の費途の削減額は、大体何程を目途とされるのでありますか。
(6) 伝うる所に依れば、前政府の実行したる行政整理は、極めて小規模であつて、而も之に依て生じたる剰余を、直に他の経費の財源に充当したので、国費の真個の緊縮ともならず、財政の建直しともならなかつたと云うのであるが。
今回政府の企図せらるる行政整理は、之に依て生ずる剰余を他の経費の財源に充当することなく、絶対に国費を緊縮するものとするのでありますか。
(7) 現業に対しては、整理を行わないと云うのであるが、事実でありますか。
若し然りとせば、その理由を承りたいのであります。
第三、
(1) 伝うる所に依れば追加予算の財源として政府筋の一部には、更に鉄道運賃通信料金等の値上げ計画があるとのことであるが、事実でありますか。
(2) この計画を実行することは、現在に於ける国民生活の脅威に、更に一層苛烈なる脅威を加うるものとは、認められないのでありますか。
(3) 前政府の実施したる、鉄道運賃、通信料金、酒、煙草の値上げに対する国民の意向を、政府は如何様に観察されて居るのでありますか。
(4) 此等の値上げに依る今日までの収入実績を以て、将来を推測せば、予期の収入を得べき見込みが、立つのでありますか。
若し予定収入と推測収入とが相違するとせば、その比較計算と共に、政府の所見を承わりたいのであります。
第四、
(1) 政府は物価と賃金との悪循環を断絶することに、苦心せらるると承わるのである、果して然らば、それが成功すべきかは、全く疑問である、元来賃金は、働く者がその生活費を支弁する為のものであることは申すまでもないのである、即ち生活費の内容たる物価が源泉であつて、賃金はその下流である、源泉を清めずして、その下流を清めることは不可能である、物価と賃金とは、決してその関係を断絶し得ないものであることは経済上の通理である。賃金の上昇を防ぎ之を安定せしめんとせば、先ず以て物価の高騰を抑制し、之れを低下せしめ安定せしむることが絶対に必要である、之れが為めには、今日の場合に於ては高物価を低物価に転換せしむることが唯一の方策であることは、申す迄もなく極めて明瞭である。
賃金の上昇を制限するとしても、政府の力を以て物価の高騰を抑制することが不可能である今日の場合、殊に政府が進んで物価の高騰を策する様な場合に於ては、賃金の制限も亦不可能である。更に実質賃金の実行と雖も、之れに必要なる各種の特配物資の不足の為め、その成功を見ざることは、既に経験を得たのである、又諸般物資の増産に依て、賃金並びに物価の低下安定を見るを得べきことは、前途なお遼遠である。
之れを要するに、前に縷述せる諸種の方策を真剣に実行して、高物価を低物価に転換するに非ざれば、賃金の制限、低下、安定は断じて得られないと信ずるのである。
右の鄙見に対する政府の所見を承わりたいのであります。
(2) 企業に於ける賃金は、企業の支払可能の範囲に止むべきものであるとの説がある、元来企業に於ける賃金は、従業者が之れを以てその生計を支え得べき程度でなければならぬことは当然である、随てこの説は生活費が正常の程度である場合、即ち生活費の内容たる物価が、正常の程度である場合にこそ、適応するのである、然るに今日の如く、「インフレーシヨン」が昂進し、物価随て生活費の瀕騰する場合に於て、若し之れを強て励行せば、従業者の離職、罷業、怠業等の瀕出すべきは当然の事であつて、甚だしく生産を阻害し、企業の混乱を来たすべきは明瞭である、それは政府が自ら顧みて自己の官業に付て諦観しても、その揆を一にすることを悟らねばならぬのである、此等の見地よりしても、政府は速がに高物価を低物価に転換し、以て物価賃金の安定を策すべきである。
右の鄙見に対する政府の所見を承わりたいのであります。
以上各項の質問に対し、政府に率直に答弁されんことを希望するのであります。
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話:03-3581-3111(大代表)
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政府答弁書
第一
(1) 政府は、闇価格を引下げ、更にこれを絶滅し、公定価格と闇価格とを綜合した所謂実効物価を引下げることについては、固より全然同感でありまして、鋭意その実現方に努力いたしておる次第であります。
(2) 政府は実効物価の引下げについては、極力努力しているのでありますが、総需要が総供給に超過している日本経済の現状としてはどうしてもヤミ価格の存在を免れないのであります。即ち購買力の偏在化している所得者が先ず限界購買力としてより高い価格を以て物資を買取りますので賃金生活者はこれに追随して賃上げを要求ししかして企業はこれを支払うためには生産がさして上らない限り、製品の闇価格を引上げる外はありません。しかして終に公定価格の引上げを余儀なくされているのであります。このように、物価、賃金の循環的上昇が日本経済の現状において免れない結果でありますので、物価引下げは現状としては極めて困難でありますが昨年の下半期以降闇価格の上昇は鈍り、特に本年六月の価格改訂以後は著しい安定傾向を示し遂に本年九月及び十月においては総理庁統計局調にかかる消費者物価指数(実効物価指数)は若干の低落を示すに至つたのであります。政府は今後この傾向を一層推進し物価の安定を図りたいと考えています。
(3) 終戦後三回に亘り物価賃金の均衡を推進する為めに公定価格の引上げによる改訂が行われましたが物価引下げの根本策としては生産を戦前に近いところまで回復させ物資の生産に見合はない偏在購買力を除去しインフレーシヨンの根源を断ち切るの他はないのでありますから、生産の増加に全力を傾注すると共に財政の収支均衡と金融の適正化に努力しているのであります。
しかして今や徐々にその効果が現われておりますので、政府は、この好機を捉え、物価安定推進運動を展開し消費者を哲蒙しその地位を強めることによつて物価の安定乃至はその引下げの効果をもねらつているのでありますが、他方、有効需要が引締められると共に生産がかなり伸びている現状に鑑み、今後生産並びに国民生活に緊要なる物資の価格を除き、できる丈大巾に価格統制を撤廃し、需給の自然の法則によつて価格を引き下げ得る余地を拡げ度いと考えるのであります。
第二
(1) 行政整理については、政府はその必要を認め、その方法、時期等について、目下慎重に研究中であります。
(2)(3) 人員削減の数については、目下検討中でありますが、必しも現在人員に超過する予算人員に拘泥することなく諸般の状況を考慮して、決定したいと考えております。
(4)(5)(6) 現在の財政経済において、行政機構の簡素合理化又は行政整理が必要であることは御指摘の通りであります。然しながら、それを如何にして実行するかについては、失業対策経済統制の現状ともにらみ合せて、慎重な考慮をめぐらす必要があり、俄かにこれを決しえないのであります。政府は現在のところ、徒らに波瀾を巻き起すような行政整理を直ちに実行することは目下の処考えておりません。むしろ政府職員の増加を可及的に抑制し国費使用の徹底的合理化によつて経費の節約を図ることが必要であると考え、今回の追加予算編成に際しても約七十七億円の人件費の節約を図つた次第であります。
(7) 行政整理につきましては、一般行政と現業の事情の相違に応じてその対策も自ら異つて来ると考えられますが、現在必ずしも現業を整理から除外するという方針に決定しているわけではありません。
第三
追加予算の財源として、鉄道運賃、通信料金の値上を行うことは、国民生活に重大な影響を与えることになるから、政府においては、今回はこの方法を採用しなかつた次第であります。又本年度予算の基礎となつている鉄道運賃、通信料金、酒、煙草の価格は相当高いのでありますが、これが国民生活を不当に圧迫するとは考えておりません。政府はこれらによる国庫の収入が予定通り確保されるよう大いに努力を重ねており、又そのことを確信している次第であります。
第四
(1) インフレーシヨン下において物価と賃金のいづれが先に上昇するかは、所謂鶏と卵の論議であつて総需要が総生産を超過し、生産に見合わない偏在購買力が存在する限り、その循環的上昇は止み難いのであります。
従つてインフレーシヨンの根本的原因を除去しない限り物価面のみで一般的に高物価を低物価に転換せしむることは不可能であると考えます。
ところで物価賃金の現状を見ますると物価は今年に入つて著しく騰勢を弱め特に価格補正以降その傾向が顕著となつておりまするのに、賃金のみは対前月比一割を超える上昇を示しております。従つて賃金上昇の勢がこの儘続いた場合には企業の生産力的基礎を超えて支払給源を赤字融資、補給金乃至公価改訂に求めしめることとなる惧があります。
ここに物価賃金の現段階において賃金の安定が必要とされる理由があるのであります。生産の向上に伴わない賃金の高騰が結局物価の高騰を齎すものであることを勤労者がよく認識せられ、自制せられることが切に要望せられる次第であります。
(2) 正常の経済の下においては企業は製品の販売収入によつて充分に賃金の支払が可能であり、同時に賃金生活者はその賃金によつてその生活資料を確保することができたのであります。インフレーシヨン下においては右の事情は共に達成し難いのであります。さればと云つて、賃金の支払を企業の支払の可能の範囲を超えて許すものとすれば、所謂赤字融資又は補給金によることとなり、インフレーシヨンを更に昂進させる要因を造るものであります。勿論貴説の通り高物価を低物価に転換させる事は同時に前述の物価賃金の安定状態を可能とするのでありましようが、そのような低物価転換が可能となることは既にインフレーシヨンを解決したことを意味するものに他ならないのであります。故に、現段階の対策としては前述のようにインフレーシヨンの根本的要因の除去に努力することが必要でありますが、一方インフレーシヨンの悪化を阻止する為の努力として企業の生産増加、経営合理化及び、労働生産性の向上によつて賃金支払給源を企業の自力によつて生み出すよう、労資双方の努力が要請されると共に政府として賃金の実質的安定の為めに諸般の綜合施策を強力に推進する他はないのであります。
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