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身体障害者の雇用確保に関する質問
参議院 第76回 第2号お答えすることは困難 ×1検討してまいりたい ×2
質問本文
身体障害者の雇用確保に関する質問主意書
昭和三十五年に身体障害者雇用促進法が制定され十五年を経過している。その間に政府は、同法によつて、身体障害者雇用率の設定とそれに基づく身体障害者雇用の勧奨、公共職業訓練、職場適応訓練の実施、身体障害者雇用奨励金の支給、身体障害者を多数雇用する事業所に対する特別融資など雇用の促進措置を行つてきた。
しかし、身体障害者雇用促進制度は、制度上の欠陥、予算措置の不充分に加えて、大企業をはじめとする企業側の無理解によつて、労働を希望しながら就職できない身体障害者が多数存在する実情にある。
さらに減速経済下にあるわが国の雇用情勢は、相当に厳しく、ここ当分続くものと予測されこのままではますます身体障害者の雇用の確保が一層困難になることは明らかであり身体障害者の労働権のみならず生存権をも奪われる深刻な事態に直面し、三木内閣の社会的不公正の是正方針とは逆の方向に進んでいる。
よつて次の諸点について、政府の明確な見解と施策についてただすものである。
一、昭和四十七年の労働省調査によると、わが国の十八歳以上の心身障害者は一七二万人、そのうち未就業者は九三万人にも達している。
こうしたなかで、現行の身体障害者雇用促進法は、障害者の雇用率を、民間一・三%、非現業官庁一・七%、現業官庁一・六%と定めているが、これらの法定雇用率はただたんに努力目標ないしは道義的な規定にとどまり、これを守らなくても、とくに企業にとつて不利になるようにはなつていない。
その結果、法定雇用率の未達成企業が、全体の三六%にも及び、しかも大企業ほどその割合が高くなつている。こうした実態から、身体障害者の雇用を促進強化するために、「身体障害者雇用促進法」を抜本的に改正し、法定雇用率未達成企業に対して、罰金等の罰則適用をはじめ、現行法定雇用率を引き上げる。また雇用率は企業規模に応じて段階的に設定し、企業の社会的責任を明らかにすべきである。
二、政府機関全体としてみると法定雇用率は達しているが、個々の省庁の雇用実態をみると沖繩開発庁、外務省をはじめ八省庁が雇用ゼロとか著しく低いことが本年二月二十六日の参議院決算委員会での私の質疑で明らかになつた。
そこで政府が本格的に身体障害者の雇用を促進させようと民間企業を指導するのなら、政府自らが法の精神を守らなければ指導する資格も説得力もない。
法定雇用率が著しく低い(特に雇用ゼロの)省庁の雇用改善計画と、その実施状況を明らかにし、さらに、現行の非現業官庁一・七%、現業官庁一・六%の法定雇用率を引き上げる必要がある。
三、身体障害者の民間、官庁の法定雇用率達成の中味を吟味すると比較的軽度の身障者で占められていることが分る。
したがつて、中度ないし重度の身体障害者については、いぜんとして就職は困難となつており、しかも未就職者が滞留化しつつある現状である。こうした現状を是正するための具体的かつ強力な施策が急務である。
そこで現在の民間及び官庁における中度及び重度の身体障害者の雇用実態を明らかにするとともに、身体障害者雇用促進法を改正して、中度ないし重度の身体障害者の雇用の義務化をとくに明確にする必要がある。
四、身体障害者雇用促進法第十四条によると公共職業安定所長は、身体障害者の雇用を促進するために「特に必要があると認めた場合」には、雇用率未達成で一〇〇人以上の労働者を使用する企業に対して、障害者の雇い入れに関する計画書の提出を命ずる権限がある。
しかし、この権限が行使されて、雇用促進の行政指導が徹底されていれば今日のような身体障害者の雇用不安はいくぶんなりとも解消していたと思われる。
そこで今後企業に対して計画書を提出させることができる第十四条の職業安定所長の権限を最大限に行使し身体障害者の雇用を保障すべきであるが、この行政姿勢を明らかにされたい。
五、現在、身体障害者の雇用促進の行政指導の対象となるのは、七七人以上の労働者が働く事業所である。こうした行政指導の下では、金融業を中心とした大企業の支店、営業所の規模がこの基準以下であるなら実質的に行政指導の対象にならないといつた“しり抜け”になつている。
このような不公平な弊害をなくすために、事業所単位の行政指導を改め、企業単位の法定雇用率の設定と行政指導を強化すべきである。
六、昭和四十六年の厚生省の精神薄弱者実態調査によると、十五歳以上の精神薄弱者の数は約十九万四千人でそのうち就業者は約六万四千人就業率三三%となつており、その就業率は身体障害者の就業率六〇%に比較してかなり低くなつている。
この大きな原因の一つに、精神薄弱者は、いぜんとして身体障害者雇用促進法の外に置かれているからである。精神薄弱者の判定、労働能力の評価など技術的な問題があるとしても今後精神薄弱者についても、身体障害者と同様の措置を講ずる必要がある。
七、現在、事業主に対する雇用助成措置として心身障害者雇用奨励金制度があり、一人一カ月一〇、〇〇〇円(重度障害者の場合は一二、〇〇〇円)、支給期間十二カ月(重度障害者の場合は十八カ月)となつている。
この程度の予算措置で雇用促進がなされると期待するのは無理である。雇用義務の強化を進めることとあいまつてさらに十分な予算措置を講ずるべきである。
八、さらに身体障害者の職場適応訓練についてみると、現行制度では、都道府県知事が、民間事業主に委託して訓練期間中に、訓練生に対して、月額五四、〇〇〇円の訓練手当を支給し、訓練を行う事業主に対して、委託費(一カ月九、〇〇〇円、重度障害者の場合は一カ月一〇、〇〇〇円)が支給されている。しかし、今日の物価水準のなかでこの程度の訓練手当と委託費で障害者が安心して、一般労働者と同様に働き得るまで職場に対する適応性を高め、訓練終了後は事業所に引き続き雇用してもらうことは、はなはだ困難といわざるを得ない。こうした実態について政府はどのような改善処置を講ずるのか。
九、身体障害者の職域の拡大と職業訓練の充実が、急務となつている。身体障害者の職業訓練は、現状ではきわめて不十分である。さらに職業訓練体制の不備とあわせて、就業が可能な職域の開発研究も遅々として進んでいない。
今後とくに重度の身体障害者の能力を積極的に開発し就業の場を拡大するために、抜本的な施策の展開が必要である。政府の具体的な対策を伺いたい。
一〇、最後に身体障害者の雇用を促進させるためには、政府、企業のみならず国民的課題として、とりくまなければならない。そのためにはややもすると偏見をもつて、身体障害児者問題ととりくむ姿勢を是正するために初等教育の場から身体障害児者に対する正しい教育の普及が必要であるが、政府の具体的な教育施策と方針を明確にし誠意ある答弁を期待する。
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政府答弁書
一、について
身体障害者が健常者に伍して働き、社会経済活動に参加し得るようにすることは身体障害者対策の最重点課題であるとの認識に立つて、政府においては、従来から身体障害者雇用促進法に基づく身体障害者雇用率制度を中心として各種の施策を講じてきたところであり、事業主をはじめ国民各層における身体障害者の雇用促進についての理解は相当の前進をみてきた。
しかしながら(1)身体障害者の就業率は一般に比しいまだに低く、特に重度の身体障害者の就業率はかなり低い状況にあること、(2)身体障害者雇用率については、全体としては法定雇用率が達成されているものの、なお就職希望者が多数存在し、また、雇用率未達成の事業所が三十五・五パーセントもあり、特に大規模事業所ほど雇用率未達成の事業所の割合が高いこと等身体障害者の雇用状況は必ずしも満足し得るものではない。
このような現状にかんがみ、現在、事業主に対する身体障害者の雇用義務の強化、雇用助成措置の拡充等を主たる内容とする身体障害者雇用促進法の改正を含め、身体障害者の雇用促進対策の強化について検討を進めているところである。
二、について
昭和四十八年十月現在において身体障害者雇用率を達成していなかつた政府機関は十機関であつたが、昭和四十九年十月現在においては六機関となつた。未達成機関においては、身体障害者の採用に関する計画を作成するとともに、人事担当課長会議を開き、相互の情報交換、雇用促進のための協議を進め、身体障害者の採用に鋭意努力しているところである。
また、政府機関に係る身体障害者雇用率の引上げについては、民間企業に係る身体障害者雇用率との関連等も考慮しながら、今後検討を進めてまいりたい。
三、について
昭和四十八年の労働省の「心身障害者就業実態調査」によると、中度及び重度の身体障害者の就業率は、それぞれ六十三・五パーセント、四十五・一パーセントとなつており、国民全体の就業率七十一・二パーセントに比し、特に重度障害者の就業率が低い状況にある。
かかる状況に対処し、特に重度の身体障害者の雇用の促進を図るため、政府においては、従来から重度障害者について、心身障害者雇用奨励金の支給額の加算及び支給期間の延長、職場適応訓練の委託費の加算等特別の配慮を加えてきたところであるが、今後とも、身体障害者雇用率の算定において重度障害者について特別の配慮を加えることの検討を進める等重度障害者の一層の雇用促進に努めてまいりたい。
四、について
身体障害者雇用促進法第十四条の規定に基づく身体障害者の雇入れに関する計画の作成の命令については、本年二月、作成を命ずる場合の基準を改正し、その積極的な活用を図ることとしたところであり、今後とも、この制度を活用して身体障害者雇用率未達成事業所に対し、身体障害者の雇入れについて強力に指導してまいりたい。
五、について
現行の身体障害者雇用率制度が事業所単位に適用されていることにより御指摘のような問題点もみられるが、企業単位に雇用率を適用した場合には、多数の事業所を有する企業について個別の事業所の雇用率のは握やこれに対する指導が困難になる等技術的な問題が生ずることもあり、今後慎重に検討を進めてまいりたい。
六、について
精神薄弱者については、御指摘のとおり、その判定が困難であること、労働能力の評価方法も確立されていないこと、その適職の範囲は身体障害者以上に限定されていること等の問題が存在しているので、今後は、これらの問題の解決に努めるとともに、その改善状況を見まもりつつ、従来から行われてきた各種の雇用助成措置の活用を図る等により、精神薄弱者の雇用の促進に努めてまいりたい。
七、について
身体障害者の雇用促進を図るためには、事業主が積極的意欲をもつて身体障害者を雇用し得るように事業主に対して助成措置を講ずることが必要であるという観点から、従来より心身障害者雇用奨励金の支給、身体障害者作業施設等設置資金の融資等事業主に対する雇用助成措置の強化に努めてきたところであるが、今後とも、これらの雇用助成措置の一層の充実に努めてまいりたい。
八、について
職場適応訓練の訓練手当及び委託費については、従来から額の引上げ、重度の身体障害者に係る委託費の加算等逐次改善措置を講じてきたところであるが、今後とも引き続き職場適応訓練制度の充実に努めてまいりたい。
九、について
身体障害者の職業訓練については、従来から身体障害者職業訓練校の設置、訓練科の増設、訓練期間の延長等の措置を講じてきたところであるが、今後とも引き続き身体障害者の職業訓練実施体制の充実に努めてまいりたい。特に重度障害者の能力開発については、職業評価から職業訓練、職業指導等に至るまでの一貫した職業リハビリテーションを行う国立職業リハビリテーションセンター(仮称)の設立の具体化を進めているところであり、今後ともその対策の充実に努めてまいりたい。
十、について
心身障害児に対する教育については、人間尊重の精神、教育の機会均等の理念から、これら児童・生徒に対し、教育の場を準備し、その心身の状態と適性等に応じた教育を実施するとともに、その教育活動として障害をもたない児童・生徒との交流を積極的に進めている。また、障害をもたない児童・生徒に対しても、学校教育全体を通じて心身障害児に対する理解を深めるよう指導しているところである。
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