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金大中事件の政治決着に関する質問
参議院 第82回 第18号承知していない ×1
質問本文
金大中事件の政治決着に関する質問主意書
わが国の主権と民主主義の根幹にかかわる重大な金大中事件が発生して以後、すでに四年有余を経過したが、捜査当局による事件の解明は殆んど進展をみていない。この最大の理由が、昭和四十八年十一月二日の、田中角榮元総理と韓国金鐘泌(当時)総理の会談及び昭和五十年七月二十二日三木内閣による金大中事件の外交的決着、いわゆる政治決着であることは、政治決着以降、捜査により判明した新事実が皆無に等しいことでも明白である。
しかも、福田総理は本年二月二十二日、参院予算委員会で、わが党の上田耕一郎議員の質問に対し、刑事事件のなりゆきによつては、政治決着の見直しもありうると言明したが、捜査当局の最高首脳である三井警察庁警備局長自身が、十月二十日参院予算委員会で、私の質問に対し政治決着が捜査の制約になつていることをはつきりと認めていることはきわめて重大である。
この事実は、金大中事件の真相を徹底的に究明し、KCIAの犯行による明白な主権侵害であることを明らかにするうえで、政治決着の見直しが不可欠であることを明瞭に示している。
さらに重大なことは、政治決着が真相究明の障壁となつているというだけでなく、政治決着それ自体にも数々の重大な疑惑が指摘されていることである。
従つて、政治決着そのものをめぐる重大な疑惑を徹底的に解明することも、金大中事件解明の不可欠な要件となつている。
以上の立場から、次の諸点について政府の明確な回答をもとめる。
一 政府は、田中親書の全容公表について、外交文書であり、国際慣例から全文の公表はできないとしてきたが、相手国の韓国政府では、昭和四十八年十一月五日、韓国国会に対し、日本政府以上に詳細な報告をおこなつている。その報告によれば、田中親書は、大統領の“このような国際間にあり得る刑事事件によつて、両国間にいささかたりともその友好関係に亀裂が生じてはならない”と述べた意見に対して全面的に考えを一にするものであります。と表明したとされているが、これは事実か。
親書の重要な部分をかくして、このような、秘密とり決めがなされたことが民主主義に反することは明らかであり、かつまたロッキード事件後、フォード大統領親書、三木親書の全文が公表された前例にもかんがみ、田中親書の全文をこの際公表すべきだと思うが、政府の見解を問う。
二 十月二十七日参院法務委員会で、中江アジア局長は、私の質問に対し政治決着について「私どもはちょつと詳細を承知し得ないところで政治判断が下された」と答弁している。
これは、政治決着が、田中総理の個人的政治的判断に基づくものであつたことを示しているのではないか。政府の見解を問う。
三 十月二十七日参院法務委員会で、三井警察庁警備局長は、私の質問に対し政治決着で金東雲からの直接事情聴取の可能性を放棄することについて、事前の相談がなかつたことを明らかにしている。金東雲からの事情聴取が、金大中事件の真相究明にとつて不可欠であることは、高橋警察庁長官が、昭和四十八年九月十一日衆院地方行政委員会で明瞭に述べているにもかかわらず、なにゆえに、事前の相談もなしに政治決着を強行したのか。
四 福田首相は、十月二十日の参院予算委員会で、政治決着が「時宜の措置であつた」と答弁し、いまさら、政治決着を見直すことは、日韓関係にとつて「大変な問題になります」と答弁している。
捜査の制約になつている政治決着が、なにゆえに「時宜の措置」であつたというのか。また、大変な問題とはいかなる事態をさしているのか。
五 捜査当局自身が、捜査の制約になつていることを明言している政治決着をなぜ見直さないのか。
六 金総理は昭和四十八年十一月五日韓国国会で、金東雲捜査の問題について、「日本ではこれで捜査が終結」したと明瞭に報告している。これは、日本政府の説明と大きく相違しており、しかもその後の事実経過は、金総理報告の正しさを証明している。従つて、政治決着とそれにいたる全経過に関する外交記録について全容の公表をもとめる。
七 日韓協力委員会が、政治決着に介入したことは、同委員会報告や岸信介氏ら当事者の言明でも明らかである。しかも、この日韓協力委員会には現通産大臣の田中龍夫氏も事務総長として加つていた。そこで朴大統領と岸、田中氏ら日韓協力委員会との会談で何が話し合われ、どういう結論を得たのか。また、その結果、日本政府や田中総理らにいかなる進言をしたのか。この際、政府の責任で日韓協力委員会の動きと政治決着にいたる経過の全容を明らかにせよ。
八 政府は昭和五十一年一月十六日小林進議員の質問主意書に対する回答で「わが国において、外国の公権力の行使により、基本的人権が侵害された事例は承知していない」「韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行つているとの事実は把握していない」と答弁している。しかし、十月二十日参院予算委員会で、私がKCIA要員が来日している事実について調査を要求したところ、中江アジア局長は調査を約束した。その調査結果について明らかにせよ。
以上の諸点について、政府の明確かつ誠実な答弁をもとめる。
右質問する。
政府答弁書
一について
昭和四十八年十一月二日付けの田中総理大臣発朴大統領あての親書の主たる内容は、これまでに政府が要旨として発表したところに尽きている。右親書は、一国の総理が他国の元首にあてた外交文書であり、全文を公表することは国際慣例からみて適当でないので差し控えたい。
二について
御指摘の答弁は、金大中氏事件の処理に関しては、外務省、警察庁を含め事務的に種々の角度から検討を進めてきたが、最終的には、これらを踏まえた上で、当時の政府首脳の間で高度の政治判断が行われた旨を述べたものである。
三について
金大中氏事件の捜査の問題については、昭和四十八年十一月の田中総理大臣と韓国の金鐘泌国務総理との間で、「事件の真相究明については両国の捜査を今後とも続け、韓国側は、金東雲を取り調べたのち相応の措置をとり、捜査の結果とともに日本側に通報する」との了解が成立した。右了解は、もとより同人につき我が国が独自の捜査を続けることを否定するものではなく、また既に、同人の身柄が韓国にあるという状況下においては、韓国が捜査を行うことは当然であり、かつ、その結果を我が国に通報するという内容なのであるから、そもそも捜査当局の了承の有無が問題となるようなものでなかつたものである。
四について
1 金大中氏事件に関連して、韓国は、昭和四十八年十一月、当時の金鍾泌国務総理を我が国に派遣し、日本政府と国民に対し深甚なる遺憾の意を表明するとともに、今後類似の事件が生じないよう万全の策を講じる旨等の意向を表明し、また同時に、同総理が携行した朴大統領親書の中においても同様の趣旨が明確に表現されていた。
政府としては、韓国の以上のような態度を評価し、日韓友好関係の維持という大局的見地に立つて、この機会に韓国との間で決着をつけた次第であり、かかる措置を「機宜の措置」と述べたものである。
2 将来、韓国側の日本国内における公権力の行使を明白に裏付ける重大な証拠が新たに出た場合には、外交的決着を見直すこともあり得ることは、韓国側に対してもはつきりと念を押してあるが、そのようなことがないのに、両国政府の最高首脳の間で了解をみた決着を覆すことは、国際信義上も問題である。「大変な問題」とは、かかる意味で用いられた言葉である。
五について
去る十月二十日の参議院予算委員会における政府答弁は、本件事件の被害者並びに関係者から、我が国において事情聴取を行うことにつき述べたものであるが、本件に関しては、外交的決着以前にも金東雲書記官の外交特権、被害者並びに関係者が韓国にいるという事実等からくる制約があつた次第であり、外交的決着は、上述のような状況の中で、日韓関係全般という大局的な見地から「四について」で述べた趣旨で行われたものであつて、現在これを見直さねばならないとは考えていない。ただし、我が国捜査当局は同事件の捜査を継続しており、将来韓国側の日本国内における公権力行使を明白に裏付ける重大な証拠が新たに出た場合には外交的決着を見直すこともあり得るというのが、政府の立場である。
六について
金大中氏事件の捜査の問題については、昭和四十八年十一月の田中総理大臣と韓国の金鍾泌国務総理との間で、「三について」で述べたような了解が成立しており、日本側が捜査を終結させることを約束するというようなことはそもそもあり得ないことである。
また、外交的決着に至る経過については、国会における政府答弁等を通じて既に充分明らかにされているものと考える。
七について
政府としては、民間の機関である日韓協力委員会の活動については何ら承知していない。
八について
一般に、在本邦韓国公館に、韓国中央情報部の機関として活動する者がいるか否かについては、既に昭和四十八年八月に韓国政府に照会した結果、御指摘の委員会において政府委員から御説明したとおりの回答を得た次第であるが、更に橋本敦議員より御指摘のあつた六名の者については、国会質疑において御指摘のあつた諸点を示しつつ、改めて韓国政府に対し照会し、次のとおりの回答を得たところである。
(1) 金在鉉以下六名の者が在京大使館に勤務する間に、中央情報部の肩書を有し、その機関として活動した事実はない。
(2) 「中央情報部駐日公使顧問」なる役職は、存在しない。
(3) 一般的に、韓国政府は、安全保障上の理由から政府各部の公務員の名簿を外部に発表しない方針をとつており、これは中央情報部についても同様である。したがつて、過去及び現在における特定の人物の中央情報部所属の有無について明らかにする立場にない。また、どのような人物が現に中央情報部に所属し、また所属したかについても、中央情報部法第五条の規定により公開しないこととしている。
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件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。