ことばで探す › 衆議院 第75回
金中大事件及び文世光事件に関する質問主意書
衆議院 第75回 第29号
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
金大中事件及び文世光事件に関する質問主意書
昭和四十八年八月八日東京において発生した韓国の元大統領候補金大中氏の拉致事件及び同四十九年八月十五日ソウルにおいて発生した朴大統領狙撃事件等に関連して行われてきた一連の国会審議において、政府は誠意を欠き、一時しのぎの答弁を行い、時間の経過の中で、国会における答弁とは無関係に問題を処理しようとしている。この事実は、国権の最高機関たる国会の権威を傷つけ、主権在民の憲法の大本をも揺るがすものだという強い批判と怒りの声が、広範な国民の間に沸き起こつている。
私は、国民の代表として、また日韓問題を追求し続けてきた一員として、こうした国民の批判に重大な責任を感じ、私の過去における質問において正確な答弁が得られなかつた問題点について、ここに質問する。
一 三月四日の衆議院予算委員会における私の質問に対し、宮澤外務大臣は、「日韓閣僚会議を開くとすれば、それが日韓国民レベルの友好の契機となるというふん囲気ができなければならないと、韓国の南副総理に言つて賛同を得た」と答弁した。また六月初旬に韓国の金首相と会談した三木首相は、「今後両国で国民相互の信頼関係を築くため、互いに努力しよう。定期閣僚会議再開については、国民レベルでの末長い日韓友好の契機でなければならない。」と述べたと報道されている。
国民はこれらの発言を、一応道理にかない筋のとおつた見解であると受けとつた。国民相互の信頼関係を築くための前提は、政府の国会答弁で一貫していた「一切の政治的圧力を排して金大中事件の真相を解明する」という方針を貫くことである。すなわち指紋という物的科学的証拠を残した金東雲一等書記官を中心に、劉永福副領事を初めとする事件直後に日本から消えた全容疑者及び犯行に使用したと思われる車両などの捜査を進めて事件の全容を明らかにすること、韓国政府による我が国に対する主権の侵害を立証すること、金大中氏の原状回復を実現してその人権問題も解決すること、等である。
しかるに、最近「金東雲問題について政治的決着をつけ、日韓定期閣僚会議を開く」という外務省見解が発表され、また宮澤外務大臣の訪韓が伝えられている。
政府は、従来の国会答弁を反古にし、国民の期待を裏切り、日本国民を日韓ゆ着の泥沼に一層深く引きずり込むつもりなのか。政府の誠意ある解答を得たい。
二 三月四日の予算委員会において私が、「日本の捜査当局は韓国側から、文世光の発射した弾丸が夫人に命中した証拠となる科学的捜査資料を得ているのか」と質問したことに対し、三井脩警察庁警備局長は、「持つております」と確答し、「その内容は、文世光が本件狙撃事件に使用いたしました拳銃の番号、並びに試射弾丸の送付をうけ、鑑定の結果間違いないという結論がでております。」と答弁した。
この答弁は、国民の代表である私に対して誠実を欠くのみならず不正確であり、日本国民を欺くものと思考する。というのは政府が答えた二つの資料は、日本の警察から盗んだ拳銃であるという証拠でしかなく、文世光が現場で発射し、その弾丸が陸夫人に命中したことを示す証拠品ではないからである。この問題点は、世界中が不可解に感じているところであり、この答弁ではこの疑問を解明する力にはなつていない。韓国の捜査発表においても、文世光の裁判においても、陸夫人の解剖結果、特に命中した弾丸はどの角度から入り、どの拳銃から発射されたのかという点、また貫通した弾丸が発見されたのかどうかについても、何ら明らかにされず、韓国政府に対する疑問には何ら答えていない。
私は、こうした不誠実な答弁によつて、国権の最高機関の権威が傷つけられることを恐れ、立法府と国民に対する政府の責任を明らかにするために、金大中拉致事件及び文世光事件の捜査経過及び結果を、包み隠さず正確に答弁することを要求する。
右質問する。
政府答弁書
一について
日韓定期閣僚会議は昭和四十二年以来毎年開催してきており、日韓間の相互理解を深める上で相当の役割を果たしてきたと考える。金大中氏事件が発生した昭和四十八年も、同事件の外交的決着をみた直後の十二月に閣僚会議を開いており、昭和四十九年は朴大統領狙撃事件の発生等で日韓双方の都合がつかず開催できなかつたが、次回会議は本年中の双方にとつて都合のよい時期に開催したいと考えている。開催時期は今後両国政府間で詰めていくことになつているが、政府としては折角閣僚会議を開催するからには有意義なものにしたいと考えていることに変わりはない。
なお、外務大臣が諸外国の政府首脳と意思疎通を図り相互理解を深める目的で外国を訪問することは随時行われているものであり、外務大臣の訪韓もこのような観点から考慮しているものである。
二について
(一) 金大中事件については、被害者及び犯行現場にいた参考人がともに日本にいないという悪条件の下に、警察は、事件発生後、警視庁に特別捜査本部を設置し、現場を中心とした捜査を続けた。この結果、ホテル・グランドパレスのエレベーター内における目撃者をはじめとする数名の証人を発見し、これらの人々の証言及び在本邦大韓民国大使館一等書記官金東雲(当時)の指紋が現場遺留指紋と一致したことから、同人が犯行に加担した容疑が濃厚となつたので、昭和四十八年九月五日、同人の任意出頭を求めたが、これに応じなかつた。また、他の共犯者については特定するに至らず、捜査を続けている。
犯行に使用された車については、大韓民国在横浜領事館副領事劉永福(当時)所有の「品川五五も二〇七七」である容疑が濃くなつたが、断定するには至つていない。
金大中氏が連れ込まれたという「アンの家」、連行に使用された船舶等についても捜査を行つたが、発見に至つていない。
韓国側からは、事件発生以来、外務省を通じ、数次にわたり捜査結果の通報を受けているが、更に昭和四十九年十月二十五日、重ねて金東雲書記官の取調べ内容等韓国側捜査結果の通報を依頼した。しかし、これに対する回答はいまだ得ていない。
(二) 文世光事件について、警察は、本事件の重要性にかんがみ、国内法の範囲内においてできる限りの捜査を推進することを基本方針とし、事件発生後、大阪府警察本部に特別捜査本部を設置して捜査に努めた。
その結果、文世光が吉井美喜子の協力により、同女の夫名義の旅券を、昭和四十八年十一月及び昭和四十九年七月の二回にわたつて不正に取得し、香港及び韓国に渡航したことが明らかとなつたので、吉井美喜子を昭和四十九年八月十六日、旅券不実記載及び出入国管理令違反の幇助の容疑で逮捕し、大阪地方検察庁に送致した(昭和五十年三月七日、大阪地方裁判所判決(確定)懲役三月、執行猶予一年)。
また、文世光の自宅、同人が使用していた車両等の捜索により、大阪府南警察署高津派出所において盗難にあつた拳銃のうち一丁(回転式ニューナンブ、三十八口径、No.六九三六五三)、同派出所侵入に使用した工具等が発見され、更に、韓国から文世光が犯行に使用した拳銃で試射した弾丸及び薬きようの送付を受け、大阪府警察本部保管に係る前記盗難拳銃のうちの他の一丁(S.Wチーフス、回転式三十八口径、No.四〇二五〇八)の試射弾丸及び薬きようと対照したところ、せん条こん及び撃針こんが一致したことから、文世光が犯行に使用するため拳銃を窃取したものと判断されるに至つた。これらの捜査結果から、大阪府警察は、昭和四十九年十二月二十五日、文世光を窃盗、殺人予備、旅券不実記載、出入国管理令違反等の容疑で、大阪地方検察庁に送致した(昭和五十年一月二十二日、不起訴処分決定)。
なお、文世光による陸英修夫人殺害の状況について、大韓民国ソウル刑事地方法院は、その判決(昭和四十九年十月十九日)中において、文世光は大阪府南警察署高津派出所から窃取した拳銃のうちの一丁(S・W)で同夫人を殺害した旨判示しているところである。
右答弁する。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。