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金大中氏の自由、その他に関する質問主意書
衆議院 第76回 第10号承知していない ×1
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
金大中氏の自由、その他に関する質問主意書
一 一九七三年一一月一日に行われた田中総理と韓国の金鐘泌総理との会談により、金大中氏の出国を含めた自由の回復及び金大中事件の真相の解明は、韓国政府の日本政府に対する約束事項であり、この約束を韓国政府に履行させることは日本政府の日本国会と日本国民に対する公約であつた。
それ故に三木総理は今国会においても、金大中事件については本人の自由回復のためにさらに格段の努力をし、その経過について国会に報告すると確約した。
にもかかわらず、この公約とは裏腹に総理は金大中氏は裁判の係争中であるため出国できないという韓国政府の口実を用い実際上は自由の回復ができぬことを認めている。
金大中氏の係争中裁判とは今から八年前の一九六七年八月に大統領選挙法違反で、また同九月に国会議員選挙法違反で起訴されたものである。この公判はその後三年を経過した一九七〇年すなわち金大中氏が大統領選挙に立候補する直前に第一回から第五回までが行われ、その後再開されたのは四年後の一九七四年六月すなわち田中・金両総理によつて金大中事件に政治的結着がつけられたという日から七箇月を経過した時点であつた。
この裁判の経過を見るならば「対立候補に対する政治的報復である」という金大中氏の言葉や「明らかに政治裁判である」というライシャワー教授の言葉をまつまでもなく、この裁判が韓国政府の言うような三権分立の原則にのつとつた公正なものではなく対立候補の妨害や金大中氏の出国阻止を目的とした政治裁判であることは明らかである。
また、金大中氏は一九六七年以後一九七一年と一九七二年にも日本とアメリカを旅行しており金大中氏の友人の記憶によれば毎年二度は日本を訪れていたのである。三木内閣の閣僚の中にも総理を始め数名がこの間に東京で金大中氏と懇談している。従つて金大中氏が裁判の係争中であるため出国できないという口実には根拠がない。この根拠のない口実を認めることは、韓国政府の金大中氏の出国を阻止する政治的策謀に屈服することであり、金大中氏の自由回復も含め政治的解決を見てという日本政府に対する約束をすべて踏みにじつているものと言わねばならない。
三木内閣はこれに基づく国会の公約違反をどう考えているか、左の諸点について回答を得たい。
(1) 政府は、金大中氏の裁判の事実経過をどのように認識しているか。
(2) 一九七三年一一月一日の田中・金会談において、金大中氏の裁判問題について論議したかどうか。もし論議したならば、その事実を国会と国民に対し発表しなかつた意図は何か。
二 金大中事件の発生によつて日本国民は外国の公権力である韓国情報部が国内に暗躍していた恐るべき事実を知ることができた。こうした経験に基づき政府は外国公権力が国内において捜査脅迫逮捕などの行為を行うことによつて、再び日本の主権が侵害されたり、また日本に居住する日本人及び外国人の基本的人権が犯されることのないよう万全を期してきたものと私は確信する。
外国公権力の日本国内における行為について、次の点を明らかにされたい。
(1) 金大中事件以後、外国公権力によつて、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が犯された事例はあつたか。
(2) もしあつたならば政府はその事実にどう対応したか。
(3) 韓国中央情報部のその後の国内の活動について、どのような調査を行い、どのような調査結果がでているか。
(4) その調査結果に基づき、どのような外交措置がとられたか。
以上四点を明確に答弁されたい。
三 第七十六回臨時国会予算委員会において、衆議院は金大中氏拉致事件の主謀者とみなされる金東雲氏に日本警察の捜査に応ずるため出頭要求することが決定され、これに対し政府は、最初は国会側の意思を韓国政府に連絡すると答え次には責任をもつてその約束を実行すると確約した。
その後それがどう措置されたかを承りたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
(1)(一) 金大中氏の選挙違反裁判の事実経過については、次のとおりと承知している。
金大中氏は、一九六七年四月の第六代大統領選挙に関連して大統領選挙法違反容疑で、同年八月二日ソウル刑事地方法院に起訴され、同年六月の第七代国会議員選挙に関連して国会議員選挙法違反容疑で、同年九月六日ソウル刑事地方法院に起訴され、また一九七一年四月の第七代大統領選挙に関連して大統領選挙法違反容疑で、また同年五月の第八代国会議員選挙に関連して国会議員選挙法違反容疑で、同年七月二十六日ソウル刑事地方法院に起訴された。
これらは一括審理され、一九七五年九月十二日検察側は金大中氏に懲役五年を求刑し、同年十二月十三日ソウル刑事地方法院は、金大中氏に禁錮一年及び罰金刑宣告猶予の判決を下し、金大中氏は直ちに控訴した。
(二) 金大中氏に係る選挙違反裁判については、韓国の司法機関による韓国人に対する裁判であるので、日本国政府としてこれにコメントすることは適当でないと考える。
(2) 田中・金両首脳会談においては、金大中氏の選挙違反にかかわる裁判の問題については、論議されなかつた。
二について
(1)及び(2) 我が国において、外国の公権力の行使により、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が侵害されたような事例は承知していない。
(3)及び(4) 政府としては、韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行つているとの事実はは握していない。
したがつて、特別の外交措置を執るという問題は生じていない。
三について
政府としては、昭和五十年十月二十九日衆議院予算委員会(第七六回国会)の審議の際の小林進委員の金東雲元書記官の出頭要請問題に関する発言につき、委員長から「私もごもつともな御発言と思いますので、委員長として政府に対し善処方を要望しますが、外務大臣いかがでございますか。」との発言があり、外務大臣は「政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任をもつて委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」と答弁し、更に委員長より「二十一日に小委員会ができておりますので、これに、回答の各大臣から報告をいたすことにいたします。」との発言が行われているので、結果については、この委員長の発言の趣旨にそつて外務大臣より報告する。
右答弁する。
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