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「旧土人保護法」を廃止し、アイヌ系住民の民族的民主的権利を守る新立法措置をとること等に関する質問
参議院 第91回 第23号
質問本文
「旧土人保護法」を廃止し、アイヌ系住民の民族的民主的権利を守る新立法措置をとること等に関する質問主意書
今日、アイヌ系住民は、日常生活上さまざまな不当な差別をおしつけられ、就職、結婚、子どもの教育など特別の困難を余儀なくせられている。アイヌ系住民の多くは生業が安定せず、収入が低いため劣悪な生活環境におかれている。とくに、農漁村ではとり残された孤独の老人がふえる一方、仕事を求めて都市へ流れる数は急激にふえつつある。また、適切な保護政策がとられてこなかつたため、ユーカラなど貴重な民族的文化、言語、生活様式も失なわれようとしている。
アイヌ系住民を今日の深刻な事態におとしいれたものは、アイヌ系住民の民族的権利を無視し、差別的政策をとつてきた明治以来の政府のこれまでの政策にある。
私は、アイヌ系住民の民族的権利を保障し、いつさいの差別を一掃し、かつ生活にたいする特別の対策を実施すべきであるとの立場から、以下政府に質問する。
一 「旧土人保護法」の廃止とそれにかわる新しい立法措置について
(一) アイヌ系住民に対する歴代政府の過酷な支配と抑圧について、これを反省し、その民族的権利を保障すること、同時に今日なお残している「旧土人」なる蔑称をとりのぞくことは、政府の当然の責任である。
政府は、依然として「旧土人保護法」を残し、それにかわる新しい立法の検討をすすめようとしていないが、その理由を明確にされたい。
(二) 「旧土人保護法」の再検討をしない理由の一つに、従来政府は、アイヌ系住民の意見がまとまつていないことをあげてきた。しかし、北海道ウタリ協会は、すでに昭和五十三年度総会において、「旧土人保護法」とそれにかわる法律について検討する「特別委員会」を発足させており、同協会野村理事長ら協会役員は一致して「新しい法律を是非制定してほしい」と関係者に要請している。
こうした関係者の熱意に応えて、政府は、ただちに「旧土人保護法」を再検討し、新しい立法についての検討に着手すべきだと考えるが、どうか。
(三) 現在、政府部内に、アイヌ問題を総合的民主的に検討する機関さえおかれていないのは、昭和四十八年三月、「審議会を作つて検討することが望ましい」(厚生大臣、北海道開発庁長官)とした国会答弁を無視する、政府の重大な怠慢である。
政府が、ただちにアイヌ系住民を含む関係者の審議会を政府部内に作り、自らの約束を実行するのは当然であると考えるが、どうか。
(四) 政府は、アイヌ対策の窓口を北海道開発庁におき、関係省庁連絡会議を随時開いているときく。しかし、昭和四十九年三月、町村北海道開発庁長官(当時)は、「北海道開発庁は、開発法にもとづいて、北海道に関係する公共事業だけをやるたてまえになつており、役所の構成も、人的関係も窓口にはふさわしくない」(衆院予算委分科会)と答え、北海道開発庁をアイヌ問題の窓口とすることは適当でないとした。私も、北海道開発庁の窓口では、単なる予算対策のみとなり、アイヌ問題の総合的体系的な対策にのりだすことはできないと考えている。
そこで政府にきくが、北海道開発庁をアイヌ問題の窓口とする措置は、便宜的、経過的なものなのか、それとも将来にわたつて継続されるのか。
(五) いずれにしても、政府としてアイヌ系住民に対する総合的体系的な施策を緊急にとる必要がある。その意向があるかどうか、その施策を企画する場合、どの省庁が行うにふさわしいと考えるか明確にされたい。
二 民族的文化の保護について
アイヌ系住民は、世界的叙事詩といわれるユーカラをはじめすぐれた独自の民族的文化をもつている。しかし、このすぐれた文化は、政府が戦前アイヌ語やアイヌ風俗を事実上禁止、ないしは抑圧し、戦後もほとんど何らの保護対策もとつてこなかつたこととも相まつて、アイヌ語を話せる古老が年々いなくなるなど、滅亡の危機にさらされている。アイヌ文化は、国民的な財産であり、それは当然、政府の責任において守られなければならない。
そこで政府にたずねたい。
(一) 昭和四十九年三月、政府は、「いまだんだん古老が減つてしまう状態であるので、そういう方々の現存しているうちに、こういう文化遺産を一つ残さず保存することは、われわれ和人の重大な責任である」(北海道開発庁長官)とのべている。にもかかわらず、現在は、アイヌ文化の映画作成、アイヌ語のききとりや資料館の建設にわずかの補助がされているにすぎない状態である。
これでは到底、「文化遺産を一つ残さず保存する」などといえるものでないことは明白である。予算増など抜本的対策を講ずべきだと考えるが、どうか。
(二) アイヌ系住民が非常に多い沙流郡平取町二風谷には、アイヌ語を話せる人は若干名いるが、これらの人たちは毎年夏になると観光地に出稼ぎに行き、アイヌ語の語りや踊りでほそぼそと生計を立てている。しかし、観光地の仕事があまりに過重なため、健康を害する人も数多くでている状態である。
そこで、アイヌ語を話せるこれらの人々が出稼ぎに行かなくても、居住地等で、アイヌ語の伝承保存に専念できる体制を、国が責任をもつて緊急につくる必要があると考えるが、どうか。
(三) ユーカラのみならず、ウェペケレ(アイヌ説話)、カムイノミ(神を祈る儀式)なども歴史的価値ある民族的文化である。その保護保存のため、ユーカラを語れる人やカムイノミなどを、人間国宝や有形、無形文化財として指定する措置をとるべきではないか。
三 北海道の「ウタリ対策新計画」について
(一) 北海道が昭和四十九年からすすめている「ウタリ福祉対策七カ年計画」は本年度終了し、来年度には新計画をスタートさせるべくその策定作業が現在行われている。
こうしたアイヌ対策について、北海道や市町村にだけまかせるのではなく、国民的課題として重視し、政府自身が責任をもつた計画を策定すべきであると考える。
北海道の新計画策定について、政府の基本的態度を明らかにされたい。
(二) 北海道がすすめている新計画の策定作業に、当然、ウタリ協会の意見などがとり入れられるようアイヌ系住民の代表を含む適切な機関が設けられるべきである。しかしながら現実には、そうした体制がなく、関係者の意見も十分くみつくされているとはいいがたい。
そこで政府としても、北海道に、そういうことのないようアイヌ系住民の意見が正しく反映されるための助言などを行うべきであると思うが、どうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
(一)及び(二) 北海道旧土人保護法の存廃については、北海道庁を始めとする地元関係者の意見も尊重しながら検討していくべきものと考える。
また、今日までのウタリ諸対策の実施によりウタリをとりまく社会的、経済的環境等は漸次改善されつつあるものと考えるので、新しい法律の制定が必要であるとは考えていない。
(三) ウタリ対策事業は、広範多岐にわたり、関係省庁も多いので、これらの対策の総合的な検討を行うため、関係省庁で協議の結果、「北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議」を設置し、関係省庁が連絡を密にして、国の立場からも総合的なウタリ対策を積極的に協力、推進してきたところである。
また、北海道においては、「北海道ウタリ福祉対策」(昭和四十九年度~昭和五十五年度)の策定時及び毎年度の概算要求時に、ウタリの意見を十分徴していると聞いている。
このような方法で、今日までウタリ諸対策を実施してきたことにより、ウタリをとりまく社会的、経済的環境等は漸次改善されつつあるものと考えるので、審議会の設置が必要であるとは考えていない。
(四)及び(五) 北海道が進めているウタリ対策を円滑に推進していくためには、国においても関係行政機関相互間の事務の緊密な連絡を図る必要があるので、政府は、昭和四十九年五月三十日に「北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議」を設置し、同会議の運営に関する事務は、北海道と極めて密接な関係にある北海道開発庁において行わせることとしたものである。
このような体制で、今日まで鋭意ウタリ諸対策を推進してきたことにより、ウタリをとりまく社会的、経済的環境等は漸次改善されつつあるものと考える。したがつて、今後ともこのような体制で、関係省庁間で密接な連けいを図りつつ所要の対策を推進していく考えである。
二について
(一) アイヌの衣食住、生業、芸能等の民俗文化財については、歴史民俗資料館の建設助成を行つて関連資料の収集保存を助けるとともに、北海道教育委員会の行う北海道内アイヌ民俗文化財についての総合的な調査及び保存団体が行う儀式、食物等についての記録映画の作成について助成を行い、その保存の充実に努めているところである。
(二) 民話や民俗芸能、年中行事等地域における伝統文化の伝承活動については、地方公共団体や保存団体に対して助成を行つているので、アイヌ民俗文化財の伝承について講習会等の事業を行う計画があれば、右助成の中で対応することを検討したい。
(三) アイヌ民俗文化財については、衣食住等の生活用具コレクション及びまるきぶねが重要有形民俗文化財に指定されており、ユーカラ、アイヌ建築技術・儀礼、春採と阿寒のアイヌ古式舞踊が記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択されているが、今後とも歴史的価値あるものについては、文化財保護審議会の審議を経て指定、選択の措置を考慮してまいりたい。
なお、人間国宝といわれているのは、重要無形文化財のことであるが、これは芸能や工芸技術における高度に練磨された芸術的な伝統技法の保存のために行われる措置であつて、口頭伝承や習俗等については、事柄の性質上該当しないものである。
三について
北海道が自ら積極的に進めようとして策定した「北海道ウタリ福祉対策」について、これまで政府としても関係行政機関相互間の緊密な連絡を図りつつ積極的に協力してきたところである。
現在、北海道においては、新しい「北海道ウタリ福祉計画」(仮称)を策定中と聞いているが、同計画については、策定をまつて政府としても所要の検討をいたしたいと考えている。
また、同計画の策定に当たり、北海道は、北海道ウタリ協会などウタリ関係団体のほか学識経験者等の意見を十分聴取することとしていると聞いている。
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