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アイヌ民族に係る歴史教科書の記述等に関する質問主意書
衆議院 第190回 第53号
質問本文
昨年五月十八日付北海道新聞記事に、「旧土人保護法 教科書検定で修正 『適切記述求める』」との見出し記事が掲載されている。右によると、十七日に札幌市内でひらかれた北海道アイヌ協会の本年度総会にて、加藤忠理事長の挨拶で、二〇一六年度から学校で使われる一部の歴史教科書で、「北海道旧土人保護法」に関する記述が文科省の検定意見によって修正されたことについて、「明治以来の北海道開拓とアイヌ民族の同化政策に十分な言及がなされておらず、歴史的経緯を正しく理解するには十分な説明ではない」と述べた。また、文科省が四月に公表した教科書検定結果では、一社(以下、「日本文教出版」とする。)の歴史教科書において、「北海道旧土人保護法」の説明でもともとは「アイヌの人々の土地を取り上げて」とされていた記述が、「アイヌの人々に土地をあたえて」などと修正された。同法はアイヌ民族に土地を「下付(下げ渡し)」するとしており、文科省はこれに沿って検定意見をつけたとのことである。
右と「政府答弁書」(内閣衆質一八九第二三五号)を踏まえ、質問する。
一 過去に政府に対し提出した質問主意書で、「北海道旧土人保護法」に関し説明を求めたところ、「政府答弁書」(内閣衆質一八九第二三五号)では、「旧土人保護法」は、「困窮に瀕していたアイヌの人々に対し、土地を無償で下付し、農耕を奨励するなどアイヌの人々の生活の安定を図ることを目的として制定されたものである。」と答弁されている。(「旧土人保護法」にかかわって)実質、和人のみに与えられた、「北海道土地売貸規則」、「地所規則」、「北海道地券発行条例」、「北海道土地払下規則」、「北海道国有未開地処分法」及び、「旧土人保護法」の違い、またこれらの規則・法の実施後に開墾したことによる問題、和人の学校及びアイヌの学校の違いについて政府はどのような認識を有しているか答えられたい。
二 過去に政府に対し提出した質問主意書で、明治以来の北海道開拓とアイヌ民族の同化政策に対する政府の認識を問うたところ、『政府としては、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の報告書(平成二十一年七月)において「近代国家形成過程の中で、土地政策や同化政策などにより、先住民族であるアイヌの文化は深刻な打撃を受けたといえる。」と指摘されているものと承知している。』との答弁がなされている。右答弁は、有識者懇談会で出された報告書の文章を引用しているだけで、それを踏まえた政府の見解が答えられていない。答弁で記された有識者懇談会の文章を踏まえ、政府の見解如何。
三 「旧土人保護法」に先立つ、「北海道土地売貸規則」、「地所規則」、「北海道地券発行条例」、「北海道土地払下規則」、「北海道国有未開地処分法」によって、アイヌの土地・資源・生業がどうなったと考えるか。政府の見解如何。
四 「旧土人保護法」に先立つ、アイヌのサケ漁・シカ猟禁止によって、アイヌの生業や生命はどうなったと考えるか。政府の見解如何。
五 質問一、二、三、四を踏まえるならば、日本文教出版の旧土人保護法に至る説明、同法の影響記述は、説明不足と考えるが、政府の認識如何。
六 過去に政府に対し提出した質問主意書で、日本文教出版が編集した北海道旧土人保護法の記述について、文科省の誰がチェックをして、日本文教出版の担当者に指摘したか明らかにするよう求めたが、政府は質問に対し答えていない。改めて、文科省の誰がチェックをし、日本文教出版の担当者に指摘したか明らかにされたい。
七 過去に政府に対し提出した質問主意書で、文科省の検定意見書によって修正された、日本文教出版の歴史教科書に記述されている「北海道旧土人保護法」の説明は、歴史的経緯を正しく理解するために十分な説明がなされているかと問うたところ、「政府答弁書」(内閣衆質一八九第二三五号)において、「…「生徒が誤解するおそれのある表現である。(旧土人保護法の趣旨)」という記述の欠陥は解消されたものと考えている。」との答弁をされている。質問一、二、三、四を踏まえるならば、文科省の検定意見によっても、「旧土人保護法」の記述の欠陥は解消されていないと考えるが、政府の見解如何。
右質問する。
政府答弁書
一、三及び四について
御指摘の「北海道土地売貸規則」、「地所規則」、「北海道地券発行条例」、「北海道土地払下規則」及び「北海道国有未開地処分法」並びに「アイヌのサケ漁・シカ猟禁止」については、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の報告書(平成二十一年七月。以下「有識者懇談会報告書」という。)において、「近代的な土地所有制度の導入により、アイヌの人々は狩猟、漁撈、採集などの場を狭められ、さらに狩猟、漁撈の禁止も加わり貧窮を余儀なくされた」ことが指摘されている。
また、北海道旧土人保護法(明治三十二年法律第二十七号。以下「旧土人保護法」という。)については、先の答弁書(平成二十七年五月二十九日内閣衆質一八九第二三五号。以下「前回答弁書」という。)二についてでお答えしたとおりであるが、有識者懇談会報告書において、「アイヌの人々に下付された土地には農地に適さないものも少なくなかった」こと及び「アイヌの子弟の日本語の習得を優先する教育が行われたが、理科や地理などは教えられず、就学年限を四年間(和人は六年間)とした時期もあるなど、和人の子弟との間には格差が見られた」ことが指摘されている。
このような事実関係については、政府としても同様に考えている。
二について
お尋ねについては、前回答弁書三についてでお答えしたとおりであり、このような事実関係については、政府としても同様に考えている。
五から七までについて
教科書において、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、申請図書の発行者等の判断に委ねられているが、御指摘の申請図書における旧土人保護法に関する「アイヌの人々の土地を取り上げて、農業を営むようにすすめました。」という記述については、教科用図書検定調査審議会において調査審議が行われた結果、旧土人保護法の趣旨をアイヌの人々の土地を取り上げるものと生徒が誤解するおそれのある表現であることから、記述の欠陥として「生徒が誤解するおそれのある表現である。(旧土人保護法の趣旨)」との検定意見を付すことが適当であるとされた。これを受け、文部科学省は、当該検定意見を申請者である日本文教出版株式会社に対して通知し、当該記述の修正を求めた。
当該検定意見を踏まえ申請者である日本文教出版株式会社から提出された修正後の「アイヌの人々に土地をあたえて、農業中心の生活に変えようとしました。」という記述について、教科用図書検定調査審議会において調査審議が行われた結果、必要な修正がなされたと判断されたことから、政府としては、「生徒が誤解するおそれのある表現である。(旧土人保護法の趣旨)」という記述の欠陥は解消されたものと考えている。
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