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アイヌ民族問題に関する質問
参議院 第107回 第10号
質問本文
アイヌ民族問題に関する質問主意書
アイヌ民族が国から無償下付を受けた土地及びその他の共有資産の保有に関し、現在、「北海道旧土人保護法」が適用されているが、右法律は、現行憲法上問題があると思料する。
また、政府の国連事務総長に対する市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)第二十七条に関する報告(昭和五十五年十月)に「本規約に規定する意味での少数民族はわが国に存在しない」旨の記述があるが、右報告内容については疑義なしとしない。
よつて、右の見解のもとに、以下の諸点について質問する。
一 「北海道旧土人保護法」について
1 右法律にいう「北海道旧土人」とは、何人を指称するのか。アイヌ民族を指称するものと理解してよいか。
2 右法律を適用するためには、当然に、「北海道旧土人」すなわちアイヌ民族とそれ以外の日本国民とを識別することが前提となるが、この識別の法的基準はどのようなものか。
3 アイヌ民族を「北海道旧土人」と呼称することは、アイヌ民族を侮蔑的・差別的に取り扱うものであり、「人種により差別されない」という憲法第十四条の精神に照らして疑義あるものと思料するが、政府の見解はどうか。
4 アイヌ民族が土地を取得し、所有・占有して以来、すでに五十年以上(最長期間では八十年以上)経過しているにもかかわらず、なお、右のような土地所有権に対する制限を付することは、合理的な差別とは考えられず、法の下の平等を定めた憲法第十四条の精神に照らして疑義あるものと思料するが、政府の見解はどうか。
5 右法律第十条によるアイヌ民族の共有財産に対する北海道知事の管理・処分権に関し、
(イ) 法律制定当時の、右知事の権限の根拠(理由)はいかなるものか。
(ロ) 右の根拠(理由)は、現在においても妥当するものと思料しているのか。
(ハ) 現在、右制定当時の根拠(理由)以外に、右法条の妥当性を認めるに足る他の根拠(理由)が存在するのか。
6 行政機関が、アイヌ民族の固有の共有財産を管理・処分する権限を保有することは、憲法第十四条の精神に照らし疑義あるものと思料するが政府の見解はどうか。
二 政府の国連に対する前記報告について
1 一般論として、アイヌ民族は日本民族と「種族的、宗教的又は言語的」に異なる民族であるといわれるが、政府の見解はどうか。
2 政府が国連に対し、アイヌ民族がB規約第二十七条にいう「種族的、宗教的又は言語的少数民族」に該当しない趣旨の報告をした根拠を明らかにされたい。
3 仮に、政府の国連に対する右報告の根拠が、B規約草案を審議した国連第三委員会において採択された「同規約第二十七条にいう“少数民族”の意義に関する注釈(合意事項)」によるものであるとすれば、右注釈(合意事項)の国内法規としての適用根拠を明らかにされたい。
4 右報告に関連して、中曽根総理大臣の昭和六十一年十月六日の参議院予算委員会における「日本は単一民族という非常にいい誇るべき長所がある」旨の発言及び遠藤法務大臣の昭和六十一年十月二十三日の参議院法務委員会における「日本国には国籍を有する国民に少数民族はない」旨の発言の両発言は、いずれも、アイヌ民族が日本における少数民族ではないとしたものだが、政府として、現在においても、右発言の趣旨を維持するものであるか否か。
5 中曽根総理大臣及び遠藤法務大臣の右発言について
(イ) 両発言は、アイヌ民族の意見を、何らかの形で、事前調査した上でなされたものなのかどうか。
(ロ) 多数者が少数者の存否を判断する場合、少数者の意向と全く無関係に、多数者の独自の判断に基づいて結論を導くという方法は、独善的判断方法と批判する見解があるが、政府の見解はどうか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
「北海道旧土人」とは、ウタリの人たちを指称するものである。
一の2について
現在、北海道旧土人保護法の適用に当たり、ウタリの人たちであるか否かを識別する必要は生じていない。
一の3について
「北海道旧土人」という呼称は、適切ではないと考えている。
一の4について
北海道旧土人保護法第二条第二項の規定は、同法第一条の規定により無償下付した土地について、無償下付の目的が達せられるよう必要な制約を定めたものであり、憲法第十四条には違反しないものと考えている。
一の5及び6について
北海道旧土人保護法第十条の規定は、ウタリの人たちの共有財産について、何らかの事情によりウタリの人たちの共同管理が困難な場合において、その保全のため北海道知事が代わつて管理することができることとした規定であり、適切な共同管理の方法がある場合に当該方法による管理を行う途は当然開かれているところである。
二の1及び2について
市民的及び政治的権利に関する国際規約に関して昭和五十五年に提出した報告中の同規約第二十七条に係る部分は、同条全体の趣旨に照らし、同条に規定された権利を否定された少数民族は我が国に存在しないとの趣旨を記述したものである。
二の3について
御指摘の注釈は、条約の解釈に当たり、参考となる資料である。
二の4について
中曽根内閣総理大臣及び遠藤法務大臣の発言は、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十七条に規定する権利を否定された少数民族は、我が国に存在しないとの趣旨を述べたものである。
なお、日本民族は、長い歴史のなかで諸民族が混合一体化して形成されたものといわれており、アイヌ民族もその中の一つであつたと考えられていること及びその子孫の方々が現存していることは事実であることについては、昭和六十一年十一月十日の参議院予算委員会における中曽根内閣総理大臣の答弁において、述べているところである。
二の5について
発言の趣旨は、二の4についてにおいて述べたとおりであり、事前調査を必要とする事柄ではないと考えられる。
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