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野菜の供給安定に関する質問
参議院 第91回 第8号
質問本文
野菜の供給安定に関する質問主意書
米を主食とし、野菜、魚、畜産物等を副食とする我が国の食生活は、栄養的にみても極めてバランスのとれたものであり、日本人の平均寿命の長さも、この食生活によるところが大きいといわれている。
副食の中では、野菜が中心的地位を占めており、ビタミンの補給源として重要であるばかりでなく、最近ではその繊維が、人体の生理に重要な係わりを持つことが明らかにされ注目を浴びている。
したがつて、野菜は国民の食生活と健康のためにも常に安定的に供給される必要がある。
しかるに、昨年の秋以降、野菜は異常な供給不足に陥り、価格も前年に比べ数倍ないし数十倍に及ぶ暴騰を続けた。最近はやや落ちつきを取り戻しつつあるとはいえ、なお、例年に比べ高水準にある。
この直接の原因は、昨年秋以降の再度にわたる台風の襲来、長雨、病害虫の発生等にあるとされているが、政府の取つた対策が適切さを欠いていたことも事態を深刻化させた一因になつていると思われる。
そこで、この際、国民の食生活の安定と健康を守る立場から、次の諸点について政府の明確な見解を求めるものである。
一 価格安定対策について
(1) 昨年秋の台風の後、十一月に入つて肥培管理、再播種、再定植等の指導をしたが、識者からは、遅きに失したとの批判が出ているが、対策が遅れた理由は何か。
また、今年に入つて、野菜価格安定緊急対策が五億一千七百万円の予算で、二月十五日から行われたが、この時期には既に、野菜価格はピークに達していた。そうなる前に、なぜこのような総合的な対策を取らなかつたのか。
(2) 昨年から今年にかけて、産地でのいわゆる畑買い、青田買いは目に余るものがあつた。農協の共販事業を突き崩し、現行の野菜価格安定制度を危くするこのような商人の行動に対して、有効な対策を講じえなかつたのはなぜか。
一部の県では、その実態調査を行つたようであるが、今後同様の事態を繰り返さないためにも、詳細な調査を広く実施し、それに基づいて対策を確立すべきだと思うがどうか。
(3) 緊急対策の一環として、野菜供給安定基金の野菜高騰時対策実験特別事業である契約キャベツの放出が行われたが焼け石に水であつた。
本事業が、真に高騰時対策として有効性を発揮するためには、契約規模の拡大、対象野菜の増加等思い切つた事業の拡充を図る必要があるのではないか。
(4) もう一つの高騰時対策に、野菜供給安定基金の野菜売買保管事業があるが、皮肉なことに、その対象野菜である馬鈴しよ、玉ネギが豊作であつたため、放出の機会がなく、折角の制度も、今回は機能しえなかつた。
現在、本事業の対象野菜が、馬鈴しよ、玉ネギの二つに限られているのは、主として、保管技術上の理由からであると思われるが、インスタント食品の普及に伴い、冷凍野菜、乾燥野菜等、野菜加工、保管技術の進歩と需要の増大が見られる今日、対象野菜を追加することも可能なのではないか。
また、技術的に保管の困難な野菜は、いわば畑での保管である前述の契約栽培制度によつて、これに代えることを考えるべきだと思うがどうか。
二 生産対策について
(1) 近年、野菜は、暴騰、暴落を繰り返すようになつている。その大きな原因の一つとして、主産地化の進行の結果、比較的少数の大産地の豊凶が、直ちに、大消費地市場への供給量の変動につながるようになつたことが挙げられる。
したがつて、このような傾向を緩和するためにも、小規模な多数の産地を育成し、供給の弾力性を取り戻す必要があるのではないか。
そのためには、野菜指定産地の指定要件の大幅な緩和等、小規模産地の振興策を図るべきではないか。
(2) 近年、野菜主産地における地力の低下が激しい。これは、化学肥料の長年にわたる多用の結果であるが、異常気象時における極端な収量の低下につながるものとして、専門家も事態を憂慮している。こうしたことも今回の異常な生産減に拍車をかけた要素になつたと思われる。
したがつて、有機物増投等のための地域農業生産総合振興事業等の土壌対策を飛躍的に拡充すべきではないか。
三 重要野菜需給調整特別事業について
(1) 水田利用再編対策に伴う野菜への転作等によつて、野菜生産が、基調としては、過剰基調に転じたとして、昭和五十五年度から重要野菜需給調整特別事業を発足させることにしている。
しかし、生産者サイドに立つた作付や出荷の調整が強力に行われれば、野菜の高値安定につながり、結果として、消費者に大きな負担をかける結果にならないか。
特に、作付制限を厳しく実施したときに、今回のような自然災害が重なれば、深刻な事態になることは必至である。
需要見込量の作成、作付計画及び出荷計画の承認に当たつて、これらの点をどう配慮していく考えか。
(2) 高値につながりやすいこの種の生産者対策事業を実施するからには、同時に、消費者のための高騰時対策が一体的に進められるべきである。
しかるに、高騰時対策である野菜価格安定緊急対策事業の予算は、昭和五十四年度の十四億五百万円が昭和五十五年度では五億四千万円と、約四割に激減している。こうした状況を見る限り、昭和五十五年度における政府の野菜政策は著しく安値対策に偏つており、昨年から今年にかけて異常な高値に泣かされた消費者にとつて、納得のいかないものになつている。
今後、如何なる基本方針のもとに野菜の供給安定対策を進めようとしているのか。
右質問する。
政府答弁書
一について
(1) 被災後、政府においては、野菜価格安定対策として次の措置を講じてきたところである。
ア 台風直後には、主産県に対し、被災野菜の適正な肥培管理、再播種、再定植、ほうれんそう等代替野菜の追播等についての指導要請を行つた。
イ 昭和五十四年十一月には、京浜地域及び京阪神地域への並級野菜の出荷奨励措置並びに徳島県のだいこんの大被害に対処するための京阪神地域へのだいこんの出荷奨励措置を決定するとともに、同年十二月にはこのための事業を開始し、その後並級野菜については、対象地域及び対象品目を追加しつつ、昭和五十五年三月まで実施し、だいこんについては、同年一月まで実施した。
ウ 昭和五十五年一月下旬には、京浜地域及び京阪神地域において、野菜供給安定基金が契約栽培の対象としているキャベツのうち、収穫可能なもの約八百トンの安値販売を行つた。
しかしながら、冬野菜は作型による制約が大きいため、再播種、再定植されたキャベツ、レタス等の出荷は三月以降とならざるを得ず、春野菜の出回りを待たなければ野菜の本格的な供給増加が期待できない状況にあつた。
幸い、春野菜は作付面積が十分確保されており、生育もおおむね順調であるとの見通しが得られたので、その時点をとらえ、これら春野菜の早期出荷を基軸とし、野菜供給安定基金の契約キャベツの集中的放出、輸入の指導、小売価格の適正化等を内容とする野菜価格安定緊急対策を決定したところである。
(2) 野菜の出荷については、共同出荷、個人出荷及び商人出荷の三つの経路が併存しており、いずれの経路によるかは基本的には生産者の判断に委ねられている。しかし、野菜の計画的安定的供給を図るため、従来から生産出荷団体の共同出荷体制の整備に努めてきており、近年逐次共同出荷の比率が高まりつつある。政府としては、今後とも野菜集団産地育成事業の計画的推進及び価格安定制度の対象範囲の拡大を進めるとともに、需給の不安定な野菜については、昭和五十五年度から、新たに、重要野菜需給調整特別事業を行うこととしている。
野菜は、いずれの出荷経路をとるにしても、ほぼ全量が卸売市場を経由することとなるので、産地での「畑買い」等の商人の行動が全体としての卸売価格の形成に影響を及ぼすものではないと考えている。ただ、「畑買い」は、立毛中に取引されるものであるので、それが安い段階で購入された場合には農家の利益が商人に転化されることとなる(逆の場合は商人のリスクとなる。)が、これについては、農家の自覚と系統農協の指導力の強化にまつところが大きいものと考えている。
(3) 野菜供給安定基金の契約キャベツについては、台風等の影響による生育の遅れもあつて昭和五十五年一月には約八百トンの放出にとどまつたが、三月には約三千トンを集中的に放出し、野菜価格の安定にかなりの効果があつたと考えている。
この事業は、災害等による不作に備え野菜を追加的に生産しておくものであり、通常は当該野菜を廃棄することとなるので、この事業の拡充については農業政策上及び財政上の観点も踏まえて慎重に検討する必要があるものと考えている。
(4) 野菜の消費上重要なウエイトを占めるはくさい、キャベツ等の重量野菜の加工保管については、単価が安いため、冷凍野菜、乾燥野菜等に加工して保管する経費が著しく割高となるという問題点があり、加工野菜として売買保管事業の対象とすることは経済的観点からも現実的でない。
一般の野菜産地における計画的生産出荷については、野菜の安定的供給を図るため、今後とも一層努力することとしているが、災害等による不作時にのみ活用される契約栽培の拡大については前述のとおり慎重に検討する必要があるものと考えている。
二について
(1) 野菜指定産地の指定要件については、昭和五十一年に面積要件をそれまでのおおむね二分の一に緩和し、中規模産地も対象として指定を進めているところである。また、野菜供給の安定を図る上で中小規模産地の育成も重要であるので、野菜集団産地育成事業、特定野菜等価格安定対策事業等により地場野菜産地等の振興を図つているところである。
(2) 近年の地力の低下傾向等に応じた適切な土壌管理の推進を図るため、土壌調査、地力診断等を実施するほか、地域農業生産総合振興対策において、有機物増投、耕土改良等を拡充して実施しているところである。
三について
(1) 重要野菜需給調整特別事業における需要見込量については、その適正を期するため、生産、消費、流通等各方面の関係者の意見を十分に聴いて作成する考えである。また、生産出荷団体の作成する生産出荷計画については、作付けの段階で通常の不作にも対処できるようある程度余裕をみるとともに、出荷の段階で十分調整するよう指導することにより、この事業が野菜の需給の安定に資するよう配慮してまいりたい。
(2) 野菜価格安定緊急対策事業の昭和五十五年度予算額は、前年度より減少しているが、これは野菜供給安定基金に既造成資金があることを考慮したことによるものであり、事業実施のための資金は十分確保されている。
野菜価格の安定は、生産者、消費者双方にとつて重要な事柄であり、今後とも長期的視点に立つて需要に見合つた計画的、安定的な生産出荷を進めるとともに、短期的価格変動に対しては適時適切な対策を講じてまいりたい。
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