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障害児教育の条件整備に関する質問主意書
衆議院 第100回 第26号
質問本文
衆議院議長 福田 一 殿
障害児教育の条件整備に関する質問主意書
政府は、国連が提唱した「全面参加と平等」を実現するための抜本的な障害者施策の改善について具体的な対策を明らかにしないまま、逆に教育、福祉切捨ての「行政改革」を推進している。国連の提起を待つまでもなく、障害児教育の条件整備を進めることは、憲法、教育基本法に基づく国の当然の責務といわなければならない。昭和五十四年に、養護学校の義務制が実施されて以来、それまで障害が重いゆえに就学猶予・免除されていた子供たちも激減した今日、障害児教育の条件を整備することは緊急かつ肝要な課題となつている。しかるに、障害児教育を取り巻く状況はその体制及び条件ともに大きく立ち後れている。
私は、これまでにも障害児者対策の立後れをとくに重視し、予算委員会分科会等の質問を通じて、滋賀県の「近江学園」、「あざみ寮」、「もみじ寮」、「びわこ学園」、「こだま共同作業所」などの抱えている困難な諸問題を明らかにしてきたところである。
今回さらに、滋賀県における障害児教育、取り分け八幡養護学校をめぐる条件整備の立後れを具体的に指摘しつつ、すべての障害児にゆきとどいた豊かな教育の実現、教育水準の向上を願つて、とくに重要と思われる次の諸点について質問し、政府の適切かつ具体的な答弁を求めるものである。
一 八幡養護学校の施設の全面改築について
1 八幡養護学校の校舎は、老朽化に加えて障害の重度化への対応が全くできていないため、校舎の全面改築が強く望まれている。しかしながら、国の基準(耐用年数、建設単価への国庫助成など)は、小・中学校に準じたものとなつており、養護学校の持つ特別な機能を十分に考慮したものとはなつていない。養護学校建設、改築に対する現行基準の改正について、国としての方針を明らかにされたい。
2 同校は設立当時、県下でただ一つの肢体不自由児の養護学校であつたことから、年々児童・生徒数が大幅に増え、昭和五十四年養護学校の義務化が実施された年には、当初の三十二人から百十九人に膨れ上がり、現在は百二十九人と四倍以上にもなつている。そのため施設の増築は運動場を次々とつぶして進められ、昭和五十四年から現在までの四年間だけで千百九十四平方メートルの建物が新設された結果、その分、運動場は昭和五十四年に八千百平方メートルもあつたものが、五十八年には三千百平方メートルへと激減してしまつた。その結果、ついに今年は、中・高等部の運動会を他校を借りて実施せざるを得なくなつた。こうした事態は、義務化した障害児教育にふさわしいといえるのか。
3 安上りの増築の結果、平屋で渡り廊下によつて継ぎ足す方法によつているため、まさに“うなぎの寝床”ともいうべき形となつている。そのため廊下面積は、本校校舎及び寄宿舎面積の三〇・四%を占め、廊下の総延長は、約五百七十メートルにもなつている。この外、老朽化が著しいため、�@校舎全体が非常に暗い �A音楽室・保健室では雨漏りがする �B床が低く湿気が多いため非衛生的である �C体育館は天井が低く床には穴があいている ―― などのおそまつな状況となつている。これが重度でかつ重複の障害を持つ肢体不自由児教育施設として適切な状況といえるのか。
4 こうした現実こそ、義務化に当たり、当然の教育条件の整備を怠つていた現れではないのか。八幡養護学校の全面改築に向けて、政府としても滋賀県と十分協議しながら推進を図るべきではないか。
二 訪問教育について
1 障害が重く医療体制が不備であつたり、通学が不便であるなどの事由によつて、養護学校へ通学できない障害児を対象に養護学校の担当者が訪問教育を実施している対象児は、滋賀県下で現在三十二人となつている。滋賀県教組障害児教育部、滋賀高教組障害児学校部が調査したところによると、このうち三分の一に当たる十一人については、通学や教員増などの条件が整えばすぐにでも通学が可能な状態である。政府は、通学を希望する障害児のために、辺地のスクールバスの確保、又はタクシー代の助成、さらには養護学校に寄宿舎の配置及び受入れ校の教員増について、特別の援助を検討すべきではないか。
2 残りの二十二人も障害が重いことによる訪問教育となつているケースが多く、各校に医療保障体制が整備されることによつて、訪問教育から学校での教育に切り替えることが可能になる場合も見受けられ、この点についても政府としての今後の対策を明らかにされたい。
3 やむなく訪問教育に頼らざるを得ない場合であつても現在、その担当教員の個人的な犠牲の上に訪問教育制度が成り立つているのが実情である。滋賀県教組、滋賀高教組などの調査によれば、平均値をもとに算出した場合、訪問教育担当児を四人受け持つている教員は、年平均一万三千キロメートル以上、三人を受け持つている教員でも一万キロメートル以上も、自家用車を利用して訪問しているとの結果が出ている。これに対し、補助はわずかにガソリン代だけというおそまつな状況である。政府としても訪問教育担当教員の加配及び公用車等の配置のため、適切なる援助を行うべきではないか。
4 滋賀県下でも、訪問教育対象児は基本的には、小学部・中学部に限られている。そのため、一つの例として、義務化の年に小学部六年に編入された児童は、本来なら九年間の義務教育があるにもかかわらず、中学三年終了まで四年間しか教育を受けることができず、高等部教育がないため在宅になつているというケースが起きている。教育の機会均等の立場からも、政府として訪問教育対象児の高等部教育を保障できるよう特段の措置を講じるべきだと思うがどうか。
三 妊娠障害について
障害児学校で働く婦人教員は、過酷な労働条件下に置かれ、体をこわす人が続出している。とくに妊娠出産障害は深刻で、滋賀県下においても、滋賀県教組障害児教育部、滋賀高教組障害児学校部が調査した結果、障害児学校で働く教職員で過去二年間に妊娠又は出産した人七十一人のうち、五四・九%の人が「何らかの異常があつた」と回答し、妊娠障害の中で最も多い異常としては、「切迫流産」が四三・六%も占めている。八幡養護学校では、昨年一年間に妊娠、出産した八人の教員のうち正常出産はたつた一人で、あとは切迫流産三人、流産二人、死産一人、帝王切開一人となつている。妊娠初期の母性保護を徹底するため、妊娠が判明した時点から補助教員を配置できるような措置をとるべきではないか。
四 突出した軍事費を削減し、また、特定の政治家がその力で公共事業を特定の地域に集中し、その見返りとして莫大な政治資金を受け取つているような政・財界のゆ着問題にメスを入れることによつて、行財政の無駄を省き、障害児教育など福祉や教育の分野にまわすことこそが本当の行政改革というものではないのか、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
1 公立学校の建物改築については、具体の建物の危険度を判定し補助することとしており、その判定に際し、養護学校の建物は、小・中学校等のそれに比し有利な取扱いを認めているところである。
また、建築単価についても養護学校については、施設の実態を勘案し小・中学校等よりも高い単価とされている。
したがつて、養護学校の新増築又は改築に当たつての現行の国の基準を改定することは考えていない。
2及び3 養護学校の用地取得及び建物の補修については、各設置者が実施することとされており、御指摘の八幡養護学校についても滋賀県において用地の拡張及び補修を行う計画があると聞いている。
4 本件については、建築経過年数等からみて補助する考えはない。
二について
1 心身障害児の養護学校への通学を確保するために、国は都道府県に対し、スクールバス購入費について補助するとともに、特殊教育就学奨励費として、児童・生徒が最も経済的な通常の経路及び方法により通学する場合の交通費の支給に要する経費について補助を行つている。また、寄宿舎を新設する場合には、施設整備費について国庫補助を行つている。さらに、公立の養護学校の教職員については、公立養護学校整備特別措置法に基づき、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下「標準法」という。)により算定した定数を基礎として、その給与費の二分の一を国庫負担しているところである。
2 養護学校において医療管理体制を整備することには限界があるので、各養護学校においては、医療機関との密接な連携を図りながら、児童・生徒の障害の状態に応じて適切な健康管理が行われるように留意しつつ、教育を実施しているところである。
3 いわゆる訪問教育担当の教職員定数については、標準法により、重複障害学級の例に準じて算定しているところであり、この教職員定数は昭和六十六年度までの十二年計画で改善を実施しているところであるが、現在、昭和五十七年度から昭和五十九年度までのいわゆる特例適用期間中は、その改善を抑制している。
また、訪問教育の実施に当たつては、条例に基づいて旅費が支給されるほか、各都道府県の実情に応じて教員を派遣するために必要な措置が講じられているところである。
4 養護学校の高等部の教育は、義務教育ではないので、訪問教育を行うための特段の措置を講ずることは考えていない。
三について
女子教職員の母体の保護を図り、学校教育の正常な実施を確保するため、女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律により、公立学校においては、任命権者は、当該女子教職員の産前産後の休業の期間を任用の期間として、当該学校の教職員の職務を補助させる教職員を臨時的に任用することとされている。
四について
政府は、内外の諸情勢の変化に対応しつつ行財政の役割を見直し、簡素にして効率的な行政を実現することを目指して行財政改革を推進しているところである。改革方策の立案、推進に当たつては、行財政のあらゆる分野にわたり、聖域なき見直しを行うとの基本姿勢で臨んでいるところであり、困難な財政事情の下にあつて真に必要な施策に配慮しつつ、歳出の節減合理化を図つているものである。
右答弁する。
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