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蚕糸価格政策に関する質問主意書

衆議院 第107回 第15号

提出者
衆議院
提出日
1986年11月21日
内閣転送 1986年11月22日
答弁書受領日
1986年12月5日
提出から14日
答弁の項目数
12
質問 2,619字/答弁 2,616字

質問本文

衆議院議長 原 健三郎 殿

蚕糸価格政策に関する質問主意書

最近、生糸・絹織物製造業者、流通段階における問屋業者の中に大型倒産や工場閉鎖が続出し、零細経営者の中には、自殺者が出るなど、大きな社会問題となつている。

この原因のひとつは硬直化した一元輸入制度にある。

輸入生糸価格の三倍もする国産生糸を原料として経営が成り立つものではない。

国際経済の現状に背を向けた蚕糸価格安定制度は、以前のような需給調整機能を失い、角をためて牛を殺す結果となつている。

私は、財政的破綻を来している我が国の生糸価格支持制度を改めることが今日の中小・零細企業を救うとの立場から、次の質問をする。

一 国際化時代にふさわしい農業政策の推進が求められているが、政府は生糸・繭等の農産物価格政策のあり方を見直す考えをもつているのかどうかまず質問する。

二 臨調最終答申は、蚕糸砂糖類価格安定事業団(以下、蚕糖事業団)について、制度の抜本的検討を行うこと。また、需給事情に即して毎年度の行政価格を見直すことを求めているが、現状はその期待に答えていない。

また、会計検査院は、五十八年度決算報告で、蚕糖事業団に関し、特記事項として、問題点を指摘しているというが、その要点を明らかにされたい。

三 蚕糖事業団の生糸在庫について、私の調査によると、在庫総量十四万五千俵(六十一年八月現在)のうち、五十四年度分、約二千四百俵、五十五年度分は約二万四千八百俵が保管されていることが判明した。こうした古い糸が、今日まで何故放出されていないのか、その理由を明らかにされたい。

四 このような古い糸を含め大量の在庫を事業団はかかえているが、適正在庫(この場合、政令で認められている買入限度数量、三万俵の半分と想定した数量)になるまでには、どの程度の年月を要するのか、その計画、見通しを明らかにされたい。

五 蚕糖事業団は、長期保管生糸のため約二千億円に近い長期借入を行つているというが、具体的数字と金利レートを明らかにされたい。

また、特別勘定・繰越欠損金額は、いくらか明らかにされたい。

六 私は、去る十一月四日、生糸業界の現状調査のため、民間企業の団体である横浜生糸問屋協会の幹部と懇談会を持つた。その際、私に了解なく、蚕糖事業団の職員が終始身分を隠し会議に同席し、その内容を逐一記録していたことが判明した。この会議は、農水省、事業団の紹介で設定されたものでなく、私自身の申し込みにより行われたものである。民間企業の団体である問屋協会が事業団職員の出席を要請することは考えられず、ましてや私が求めたものではない。農水省の指導のもとに出席したのか、事業団の判断によるものなのか、その責任の所在を明らかにされたい。

七 日本器械製糸工業組合は、加盟組合員に対し六十一年九月二十九日理事長名で「生糸・生産並びに出荷の緊急調整についてお願いの件」として次のように通知した。

「(前文略)九月二十九日、工業組合正・副理事長会議を開催し検討した結果、行政当局のご指導もあり緊急の措置として、各組合長に対し、取敢えず、十月度の生産・出荷を再検討願い『前年度に対し二〇%以上の減産』の目標に操業の修正をお願い致し、併せて納会への渡し物の一層の自粛を要請することに致しました。(後文略)」と通知している。

同主旨の通知は、この他にも繰り返し行われているが、独禁法上問題はないか。

また、もし行政官庁の指導があれば、かかる行為は法令違反を免れるのか、明らかにされたい。

八 右にかかげた行為は、中小企業団体の組織に関する法律に基づく共同行為の認可を受けなければできない行為であると考えられるが、この組合の場合、どのような取扱いとなつているのか明らかにされたい。

また、認可を得ていない組合が、かかる行為を行うことは、一般論として許されるものかどうか、当局の見解を示されたい。

九 最近の生糸・乾繭先物取引所の現状を見る時、市場管理要綱、受託業務指導基準に反した行為が、まかり通つているとの指摘が多い。

本年九月十一日、横浜、神戸、前橋、豊橋の四取引所が、特定の大手取引員に対し、監査を行つたことは、事実か、事実ならばその目的、内容を明らかにされたい。

十 本年十月二十九日、前橋、豊橋乾繭取引所は、理事長名で取引員に対し「売買取引の受託の適正化について」の通達を出した。この中で、

(一) やむを得ず仮名を使用して受託せざるを得ない場合は承諾書に実名を明記させ、売買取引の主体を明確にすること。

(二) アキ口座及び他人名儀を使用する受託は行わないこと。

などを求めているが、この問題は、取引の前提として「受託業務指導基準」で明記されている事項である。何故、改めてこのような通達をするのか。この背景には、市場秩序を乱す行為があるからこそ、その自粛を求めていると推察される。

当局は、この事態をどのように把握し、どう対応しているか、明らかにされたい。

また、通産省所管の取引所では、かかる通達を行つた例があるか答えられたい。

十一 私の調査では、横浜、神戸、前橋、豊橋の四取引所で特定の大手取引員が「受託業務指導基準」「市場管理要綱」に反して、融資の斡旋、仮名口座、名儀貸し等の行為を行い取引の公正を失わしめている例がある。

また、長期間にわたつて実質的建玉制限を上回る取引を行うなどの行為は健全な運営とは言いがたい。

あまつさえ、仕手筋と一体になり生糸価格安定対策を利用し、この制度を仕手の救済措置に利用したことは暴挙である。このような行為がまかり通るならば商品先物市場の健全な発展は望めず、取引の公正さは保証されず、商品先物市場の衰退につながることは、自明の理である。

行政当局は、仕手筋を排除し、健全な市場運営を図るため取引員に対し、どのような指導を行つているか明らかにされたい。

十二 委託者にとつて現在資金を預かる取引員の財務内容や経営状態を判断する手段は、皆無に等しい。

安心して取引員に委託できるようになることが、商品市場の発展に不可欠である。

通産省は、東京工業品取引所の取引員に対し、その信頼性を高めるため、取引員の経営内容について公認会計士の監査制を採用している。

農水省所管の取引員には、どのような対応をしているのか、今後どういう方針で臨むのか明らかにされたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

今後の農政の展開に当たつては、農地の流動化及び農業生産の組織化を通ずる規模拡大等による生産性の向上、需給均衡の確保等が重要となつており、価格政策の運用に当たつても、これらの施策との関連に十分配慮した運用が肝要であると考えている。

また、去る十一月二十八日に農政審議会から農林水産大臣に対し、価格政策も含め、中長期的な農政の基本方向についての検討結果として、「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」が報告されたところであり、同報告も踏まえ、価格政策の運用に遺憾なきを期してまいる考えである。

なお、繭及び生糸については、二についてにおいて述べるとおり、昭和六十年四月、繭糸価格安定制度の抜本的改正のための法律改正が行われたところである。

二について

(一) 繭糸価格安定制度及び蚕糸砂糖類価格安定事業団(以下「事業団」という。)については、近年における生糸需給の不均衡、事業団における大量の生糸在庫の累積等蚕糸業をめぐる諸情勢にかんがみ、また、臨時行政調査会の最終答申及び(三)において述べる会計検査院の指摘も踏まえ、繭及び生糸の価格安定に関する措置の改善を図るとともに、事業団における生糸在庫の処理の円滑化を図るための措置を講ずることを目的とする「繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律」(昭和六十年法律第二十四号)が昭和六十年四月二十三日に公布され、同年五月一日から施行されたところである。

今後とも、この法律改正の趣旨に即した制度の適切な運営を行つていく考えである。

(二) 繭及び生糸の行政価格については、昭和六十年の法律改正により、従来の生糸の生産条件を基準とした価格設定方式から生産条件及び需給事情その他の経済事情を総合的に勘案した価格設定方式に変更したところである。

今後とも、この法律改正の趣旨に即した価格設定を行つていく考えである。

(三) 会計検査院の昭和五十八年度決算検査報告で特記された繭糸価格安定制度及び事業団に関する指摘の要点は、次のとおりである。

繭糸価格安定制度及びこれを運営する事業団の財政の現状は、危機的様相を呈しており、急激な国内生産の調整及び輸入の縮減ができないなど種々の困難な事情は認められるが、このまま放置すると、過剰在庫を整理することが困難となるばかりでなく、今後更に在庫量は増大し、損失は著増することになる。

このため、事業団の過剰在庫を解消することが緊要であり、繭糸価格安定制度について抜本的見直しを行うことが必要である。

三について

事業団の在庫生糸の売渡しについては、原則として先に買い入れた糸から放出することとしているが、生糸需要の減退に伴い、特に昭和五十四年度以降昭和六十年の法律改正までの間に事業団の生糸在庫が急増したため、古い糸の一部が残つているものである。

四について

事業団の在庫生糸については、昭和六十年の法律改正によりその処理の円滑化のための措置が講じられており、これにより、今後数年間をかけて処理することとしている。

五について

事業団の特別勘定の長期借入金は、昭和六十年度末において千九百五十二億円である。その金利については、特定の金融機関との個別取引に係る事柄であるので、具体的な数値は公表できないが、水準としては、通常の貸付金利より若干低いものとなつている。

事業団の特別勘定の欠損金は、昭和六十年度末において四百七十五億円である。

六について

御指摘の懇談会に事業団の職員が同席したことについては、横浜生糸問屋協会から事業団に対し、当該懇談会終了後事業団の横浜倉庫を視察する予定があるとの連絡が事前にあり、このため、事業団が同協会と相談の上、視察に際して遺漏のないようにと配慮したことによるものであるとの報告を事業団から受けている。

七について

日本器械製糸工業組合(以下「日器工」という。)の行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)に違反するかどうかについては、具体的な事実関係に係る問題であるので、現時点では答弁を差し控えることとしたい。

なお、一般的に言えば、行政官庁の指導の存在により、事業者団体の行為が独占禁止法違反を免れるものではない。

八について

日器工の行為については、中小企業団体の組織に関する法律(昭和三十二年法律第百八十五号)第十八条の認可を受けてはいないが、一般的に言えば、当該行為が行政指導の内容を通知するものであれば同条の認可の対象となるものではなく、生産数量について組合として組合員の同意の下に何らかの制限を行うものであれば同条の認可の対象となるものである。

九について

横浜生糸、神戸生糸、前橋乾繭及び豊橋乾繭の各取引所は、昭和六十一年九月十一日、特定の商品取引員に対し監査を行つたが、この監査は、各取引所の定款に基づき、商品取引員の受託業務の運営について行つたものであると承知している。

十について

農林水産省としては、適切な市場管理が行われることとなるよう従前から商品取引所を指導してきているところであり、御指摘の取引所の通達は、商品取引員の受託業務の適正化を期するために行つたものであると理解している。

なお、通商産業省所管の商品取引所において御指摘のような通達を行つた例はない。

十一について

農林水産省としては、商品市場における価格形成及び取引の公正の確保を図る観点から、商品取引員に対し、適正な受託を行うよう指導しているところである。また、商品取引所に対しても、商品取引員に対し適正な受託を行うよう指導監督すること、相場が過熱するおそれがある場合には委託臨時増証拠金を徴収すること等適切な市場管理を行うよう指導しているところである。

十二について

委託者の債権の保全を通じて商品取引員に対する信頼を確保するため、商品取引員に対し、一定の純資産額の保有、財務に関する定期的報告、商品取引所に対する受託業務保証金の預託等を義務付けるとともに、商品取引員が売買取引の受託により生じた債務を弁済することができない場合に代位弁済を行う指定弁済機関制度を設けているところである。

今後とも商品取引員に対する信頼を高めるため、その財務基盤の強化を図るよう、商品取引所を通じて商品取引員を指導してまいりたい。

右答弁する。

衆議院の原文

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