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供述調書の信用性判断に関する質問主意書

衆議院 第125回 第18号お答えすることは困難 ×1承知していない ×2個別の事案 ×1

提出者
衆議院
提出日
1992年12月9日
内閣転送 1992年12月10日
答弁書受領日
1993年1月22日
提出から44日
答弁の項目数
7
質問 1,793字/答弁 927字

質問本文

いわゆる狭山事件、一九六三年、埼玉県狭山市でおきた女子高校生殺害事件は、概略、つぎのような経過をたどっている。

五月一日午後七時三十〜四十分頃、被害者宅玄関ガラス戸に脅迫状が差し込まれているのを被害者の兄が発見した。五月二日夜十二時頃、脅迫状に指定された佐野屋に被害者の姉の登美恵さんが身代金に見せかけた紙包みを持って犯人の現れるのを待ち、捜査本部は四十人の警察官を張り込ませた。現れた犯人と被害者の姉との間で約十分にわたるやりとりがなされたが、警察はついに犯人を取り逃がすという大失態を演じ、五月三日より開始された山狩り捜査によって、翌四日朝に被害者の遺体が発見され、同日午後七時から九時にかけて県警鑑識課所属の警察医の五十嵐勝爾氏によって解剖され、鑑定が作成された。

この捜査の経緯におけるいくつかの疑問点について尋ねる。

一 一九六三年五月九日付『朝日新聞』埼玉版によれば、五月八日、埼玉県議会の社会党議員から捜査経過について説明を求められ、犯人取り逃がしの失敗をきびしく追及された際に、上田・埼玉県警本部長(当時)は、「いまのところ犯人は単独か共犯であるか決め手はない。とにかく殺してから金を要求した犯罪は前代未聞で悪質きわまりない」と答えたと報じられている。この上田・埼玉県警本部長の「犯人は殺害後に身代金を要求した」という根拠は何か。

二 同じく、五月四日付『朝日新聞』夕刊には、「死後三日を経たものと見られ、本部では殺害の犯行時間は一日午後三時か四時ごろではないかとみている」と報じられている。

この犯行時間の根拠は何か。

三 警察は通常、殺人事件がおきたとき、死亡時刻を何時の時点で、どのように発表するのか。

犯行時刻の推定は、事件の解明にとって重要な捜査であるが、科学捜査では、どのように犯行時間ないし死亡時間の割り出しがおこなわれているか。

四 これまでの冤罪事件では、多くの場合、自白に信用性がないことが証明され、誤判が明らかになっているケースが多い。自白の信用性の判断は重要な問題であるが、自白の信用性を判断する基準は何か。

五 狭山事件で、石川一雄氏の自白によれば、体重五十四キロの被害者の死体を前にかかえて、死体隠匿場所に選んだ畑の中のイモの貯蔵用の穴まで運び、足に木綿ロープをくくりつけ、さらにそれに荒縄を結んで、この穴(二・七メートル)に逆さづりにしたとなっている。殺害地点からこのイモ穴までの距離は、検察官の実地検証によれば、約二百メートルである。

また、自白によれば殺害現場は雑木林の中であるが、犯行時の心理として、わざわざ雑木林内から人目につきやすい農道を通って死体を運ぶのは不自然であり、また、五十四キロの死体を二百メートルも前にかかえて休まず運んだという自白内容は明らかに経験則に反していると思われる。弁護団は、ボディビル歴のある男性に五十四キロの人形を運搬する実験をおこない、心拍数などを測定することにより、このような死体運搬がありえないことを証明する意見書を提出している。このような自白は常識的にありえない。

検察官は、常識的にありえない自白調書でも証拠としての証明力があると思うのか。

六 同様に、死体の足首を木綿ロープで縛り、それに荒縄を結びつけて逆さにつるし、穴に出し入れすれば、死体足首に損傷・痕跡が残るのが経験則上考えられるがどうか。

七 一九六三年七月三日付『朝日新聞』埼玉版には、「警官エキストラで・ロケさながらの検証」という見出しで、石川一雄氏の自供に基づく実地検証が七月四日午前十一時すぎから浦和地検の滝沢弘検事、特捜本部の青木一夫・諏訪部正司両警部らの指揮でおこなわれたことを報道している。そのなかで、「死体をつるしたイモ穴が調べられた。警官がナワで体をしばられて穴につり下げられ、普通の男の力で引上げられるかどうかなどが調べられた」と書かれている。また、「八ミリ映写機で撮影するなど映画のロケーションさながらの検証」とも書かれている。これは自白の信用性を判断するうえで重要な資料と考えられ、この「つり下げ実験」の模様を撮影した八ミリフィルムも存在するはずである。

この実地検証の記録および八ミリフィルムは現在、どこに、どのように保管されているのか。

弁護団からの要求があれば開示するべきだと思うがどうか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

当時の埼玉県警察本部長が御指摘のような発言をした旨の新聞報道があることは承知しているが、発言内容の根拠については承知していない。

なお、御指摘の狭山事件において、「犯人は殺害後に身代金を要求した」という事実関係については、第一審である浦和地方裁判所の昭和三十九年三月十一日の判決において、右事実があったものと認定され、控訴審及び上告審においても、右認定は覆されていないところである。

二について

御指摘の新聞報道の根拠については承知していない。

三について

一般に、犯行時刻又は死亡時刻は、死体の解剖結果や被害者の生前の行動等の捜査結果を総合的に踏まえて推定されており、その後において、捜査に支障がないと認められる範囲でその内容が発表される場合もあると承知している。

四について

我が国の刑事訴訟においては、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十八条により、証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねるとして自由心証主義を採ることとしている。したがって、自白の信用性を判断する基準を一般的に示すのは困難であるが、自白の信用性は、当該自白の内容及び他の証拠を総合的に勘案し、個々の事案において、個別具体的に判断される事柄である。

五について

前記事件における自白の信用性については、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、答弁は差し控えたい。

六について

前記事件における自白の信用性については、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、答弁は差し控えたい。

なお、東京高等裁判所は、昭和四十九年十月三十一日の控訴審判決において、「足首の痕跡については、被害者がソツクスを履いていたこと、足首に力が加わるのは死体を芋穴へ出し入れするときだけの短時間であること、しかも芋穴の口が狭いこともあつて死体の出し入れの作業を静かにしなければならないこと(現に被告人自身そのように供述している。)などを考え合わせると、死体の足首に索溝などの痕跡が残らないことも十分納得できる」と判示している。

七について

前記事件については、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、証拠の開示等に関する答弁は差し控えたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1承知していない ×2個別の事案 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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