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北朝鮮工作組織による日本人誘拐拉致に関する質問主意書

衆議院 第140回 第1号

提出者
衆議院
提出日
1997年1月23日
内閣転送 1997年1月27日
答弁書受領日
1997年2月7日
提出から15日
答弁の項目数
6
質問 2,723字/答弁 1,299字

質問本文

日本国政府は、日本国民の生命・身体の安全を確保する責務を負っていることは明らかであるところ、特に北朝鮮との関係において、果たしてこの責務を果たしているのか否かについて当職は、重大な疑いを持たざるを得ない。

即ち、昭和六十二年に起きた大韓航空機爆破事件の犯人金賢姫に日本人化教育をした李恩恵なる人物は、既に、かつて東京都豊島区内に在住し、その後失踪した日本人女性と断定されているが、この女性以外に拉致により失踪し、北朝鮮に連行されたと思われる日本人は、人数確定は現時点で不能なるも、北朝鮮の亡命工作員の証言では、平壌に二十人いるとのことである。

ところで、一九九四年末に韓国に亡命した北朝鮮工作員は左のとおり供述し、これは昭和五十二年十一月十五日、中学校からの帰宅途中に失踪した女子中学生横田めぐみ(昭和三十九年十月五日生、失踪前の住所:新潟市水道町二)の本書添付資料である昭和五十二年十一月二十二日付新潟日報及び新潟中央警察署作成の「この少女を探してください」と題する公開手配書(共に写し)から伺われる同人の失踪状況と見事に符合しており、したがって、同人は、北朝鮮工作員により、同年十一月十五日拉致され、北朝鮮に連行されたと断定し得るのである。

亡命工作員の供述(現代コリア・一九九六年十月号三十一頁)

「日本の海岸からアベックが相次いで拉致される一年か二年前、恐らく七六年のこと、十三歳の少女がやはり日本の海岸から北朝鮮へ拉致された。どこの海岸かは知らない。少女は学校のクラブ活動だったバトミントンの練習を終えて、帰宅の途中だった。海岸からまさに脱出しようとしていた北朝鮮工作員が、この少女に目撃されたために捕まえて連れて帰った。

少女は賢い子で、一生懸命勉強した。『朝鮮語を習得するとお母さんのところへ帰してやる』と言われたからだった。そして、十八になった頃、それがかなわぬこととわかり、少女は精神に破綻をきたしてしまった。病院に収容されていたときに、その事実を知った」

新潟日報の記事(昭和五十二年十一月二十二日付)

「新潟中央署は、十五日夕方、クラブ活動を終えて帰宅途中、姿を消した女子中学生について、家族からの要請もあり、公開手配した。同署はこれまでの捜索の結果、誘かいなどの疑いはほぼなくなったが、行方不明が長引けば、なんらかの犯罪に巻き込まれる恐れもあるとして、二十一日、公開して市民らの協力を得ることにした。

突然行方不明になったのは、新潟市水道町二、銀行員横田滋さん(四五)の長女めぐみさん(一三)=同市寄居中学一年=。

同署の話では、めぐみさんは、十五日の放課後、クラブ活動のバトミントンの練習に参加しており、同六時三十五分ごろ、クラブの一年生女子二人と学校の正門を出た。うち一人は、正門を出てすぐ別れ、もう一人とも、学校から約二百メートル海岸寄りの新大教育学部角の十字路で別れたまま、消息を絶った。

同日午後十時ごろ、母親から届け出を受けた同署は、県警機動隊の協力も得て、付近一帯を中心にこの一週間、延べ千人を動員して捜索したが、全く手がかりはない。

家出あるいは自殺の恐れについて、家族は『日記や手紙を見ると悩みはあったようだが、家出するほどの悩みは心当たりがない』また友だちも『ふだんと特別変わった様子はなかった』と話している」

以上のとおり、横田めぐみは、十三歳の時、拉致されるという残酷な運命に陥ったことが亡命工作員の供述により裏付けられた。ここにおいて、この同人を救出することは、国家の責務であると思料する。さらに李恩恵はじめ他の数々の拉致された日本人の安全も国家の責務として、当然にすみやかに確保されなければならない。そして、日本国政府が、この決意を示し、具体的に行動することが、右日本人らの安全を確保する方策である。

よって、以上の事実をふまえ、次のとおり質問する。すみやかに回答されたい。

一 失踪者横田めぐみに関し、前記亡命北朝鮮工作員から前記供述を得た韓国政府より我が国政府にその供述の裏付けのための照会が平成七年六月から同年十一月の間に為されたと当職は聞いているが、韓国政府からこの照会があったのか。あったとすればその内容。また、照会があったとして、それに対し、我が国政府は調査したのか。したとすればその調査内容。さらに我が国政府は韓国政府に回答したのか。したとすればその内容。

二 横田めぐみ失踪の翌年夏、日本海岸及び九州の海岸などで北朝鮮工作員によるアベック拉致事件が連続して起こっているが、横田めぐみ失踪に関し、北朝鮮工作員による拉致の可能性は検討されたのか。検討したとすれば、北朝鮮に対し、いかなる対処を為したのか。

三 政府は、横田めぐみ及び李恩恵を含め、我が意に反し、違法手段により北朝鮮に拉致された日本人を把握しているか。把握しているとすれば何人か。また、その氏名及び失踪前の住所は。

四 国民を守るという政府の責務に鑑み、政府は北朝鮮に拉致された日本人救出のため、何か対処を為してきたのか。為したとするならば、その時期及び内容は。それに対する北朝鮮側の態度は。

特に、失踪者横田めぐみに関し、北朝鮮に対して政府として取った措置はあるか。あるとすればその内容。また今後、北朝鮮に対しいかなる態度で臨むつもりか。予定する行動があるならばその内容は。

五 北朝鮮亡命工作員の供述どおり、日本人を拉致して海岸から北朝鮮に連行する行為が、北朝鮮政府による組織的犯行とするならば、これは北朝鮮による我が国の重大な主権侵犯であると思われるが、政府はどう認識しているか。日本国内における日本人の拉致を認知し得なかったことにおいて、我が国政府は国民保護の能力がないことになり、また、本問題を我が国政府として放置すれば、自国民保護を基本的責務とする民主主義国家の政府として、その正統性が失われると思料されるが、政府はいかに認識しているか。

六 北朝鮮国内には、横田めぐみのように拉致された日本人とともに、たとえば、帰国者の日本人妻などとして渡航し、その後日本に帰国できず消息不明に陥っている多数の日本人が存在するが、近年北朝鮮からの亡命者が増加傾向にあり、その亡命者の供述が北朝鮮国内の重要な情報源となっている。

そこで、我が国政府としては、右亡命者達から右日本人の消息に関する情報を収集しているのか否か。

収集しているとすれば、現時点でのその内容は。

右質問する。

添付資料

一 昭和五十二年十一月二十二日付「新潟日報」記事(写し)

二 新潟中央警察署作成の「この少女を探して下さい」と題する書面(写し)

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

お尋ねの事項については、御指摘の失踪者の安全に配慮する等の観点から、外国政府との間のやりとりの有無を含め、答弁は差し控えたい。

なお、本件については、御指摘の報道には、その時点で接したところであり、その内容を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。

二について

御指摘の失踪者については、昭和五十二年十一月十五日夕刻、新潟市内において中学校から帰宅する途中で消息を絶ち、その後、現在まで行方不明となっているものと承知している。

本件については、捜査当局において御指摘の可能性も含めて所要の捜査を実施しており、また、関係機関において関連情報の収集に努めているところである。

なお、御指摘の失踪者が拉致されたか否かについては、現在までのところ確認されていないと承知している。

三について

北朝鮮に拉致された疑いのある日本人の数は、これまでに六件、九人であり、また、拉致が未遂であったと思われるものは、一件、二人であると承知しているが、その者の氏名及び失踪前の住所については、本人の安全及びプライバシーの保護の観点から、答弁は差し控えたい。

四について

北朝鮮に拉致されたと疑われる日本人のうち、李恩恵については、平成三年五月に同人が失踪中の日本人女性である可能性が高いと判断するに至ったことを踏まえ、同月に開催された日朝国交正常化交渉の第三回本会談において照会を行った。同交渉においては、第四回本会談以降、本会談の開催のたびごとに本問題についての実務者協議(以下「実務者協議」という。)を開催し、北朝鮮に同人の消息等についての調査を強く求めたところである。これに対し、北朝鮮は、李恩恵事件は韓国の陰謀でありそのような問題はそもそも存在しない等の主張を繰り返し、平成四年十一月の第八回本会談の際の実務者協議において北朝鮮が一方的に退席したことにより、日朝国交正常化交渉が中断しているところであり、実務者協議も行われていない。

また、御指摘の失踪者の件については、捜査当局において所要の捜査を行っているところであり、関係機関において関連情報の収集に努めているところである。

五について

御指摘の北朝鮮に関する内容が主権の侵害にあたるか否かについては、事実関係が明らかでないため、断定することはできないが、一般論としては、外国又はその機関が我が国の領域内で公権力の行使とよばれるような行為を我が国の同意を得ずに行うことは、我が国に対する主権の侵害となると認識している。

また、そのような場合には、主権国家として自国民保護の観点も含め所要の措置を講ずる所存である。

なお、御指摘の亡命工作員の供述については、引き続き、捜査当局において所要の捜査を進めるとともに、関係機関において関連情報の収集に努める所存である。

六について

御指摘の日本人の方々の消息に関する情報については、政府として、北朝鮮についての種々の情報収集の中でその収集に努めているが、情報の有無、その入手経路及びその内容については、これらの方々の安全に配慮するとの観点やプライバシーの保護の観点から、具体的に答弁することは差し控えたい。

衆議院の原文

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