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国公立医療機関による無断血管摘出・冷凍保存事件に関する質問主意書
衆議院 第140回 第9号お答えすることは困難 ×1
質問本文
今般、国立循環器病センター(以下、センター)と奈良県立医科大学第三外科により、平成五年十一月二日に遺族の同意の無い組織摘出が行われ、センターに血管が冷凍保存され、遺族がその返還を求めている事件が明らかになったが、移植医療の適正を期し、開かれた移植医療の発展に資するために、以下質問する。
一 レシピエント病院以外の医療機関であるセンターと奈良県立医大第三外科が、関西医科大学救命救急センターにドナー候補者が存在することを知った経緯と、どんな臓器・組織が提供されそうだとの通報を受けたのか、時系列で具体的に答えよ。併せて、腎臓バンクや腎臓移植ネットワークの関与についても答えよ。
二 センターと奈良県立医大がドナー候補者が存在することを知ってから、摘出チームを派遣するまでの経緯を時系列で具体的に答えよ。
三 センターと奈良県立医大第三外科の医師らによる臓器提供報告書によれば、十一月二日二十時三十分に腎臓チーム摘出開始、二十一時十五分血管チーム摘出開始、二十一時三十五分処置終了となっている。
�@ センターと奈良県立医大第三外科から派遣され摘出を行った医師は誰か。そしてその医師らの診療科目などの専門領域は何か。
�A 文部省からの資料によれば、奈良県立医科大学外科学第三講座は、心臓移植・心疾患を主な研究領域としている。その講座の医師とセンターの心臓血管外科の医師らが共同して血管を摘出した理由を具体的に答えよ。
�B 血管チームは、組織摘出の際に、組織提供承諾書の当該組織の承諾の有無を確認したのか。仮にしなかったとすれば、それはなぜか。承諾があるという旨の告知を誰かから受けていたのか。
�C 臓器提供報告書では、「遺族への感謝状 ― 今回は送付せず」とあるが、それはなぜか。
�D 採取した血管はどのくらいの長さか、またその部位はどこか。血管以外に採取した組織や臓器はなかったのか。
四 平成八年六月になってセンターの高本部長は「死体腎臓周囲血管採取報告書」を作成し本件に関係する訴訟の代理人に提出している。
ドナーの腎臓周囲血管を採取するためであれば、心臓外科を専門とする奈良県立医大の医師も関与する必要はなく、また腎臓チームと同時に摘出を行えば、レシピエントの医療機関との移植術施行の際のトラブルに有効に対処するためのコミュニケーションも可能と考えるが、血管摘出を腎臓摘出チームと同時に行わなかった理由を具体的に答えよ。
五 センターでは液体窒素を利用した高度な冷凍保存設備を持っていると承知している。厚生省の説明によれば、平成九年二月末日現在、センターの冷凍設備で保存されている組織は二十四件あり、その内訳は、血管十一、心臓弁七、皮膚六とのことである。
�@ 保存されている数と内訳に間違いはないか。
�A 保存されている組織それぞれについて、提供承諾書の有無、承諾書の中の当該組織の摘出の承諾の有無及び遺族の当該組織保存の認識の有無について、ひとつひとつ答えよ。
�B それらの組織は、摘出された臓器に付属するものではなく、臓器本体とは別個の組織部分の承諾によって摘出されたものと解して良いか。二十四例それぞれについて、答えよ。
�C それらの組織を冷凍保存している目的は何か。
�D 現在の組織の冷凍保存技術では、さまざまな組織はどのくらいの期間保存が可能なのか。
�E 長期冷凍保存された後に医療に利用された組織について、遺族には利用の事後報告を行っているのか。
�F 数時間のうちに移植される臓器の場合とは異なり、組織は何年も保存が可能である。家族の肉体の一部が長期冷凍保存されることは、遺族の心情を考えると、あまりに無機質的であり、組織を医療材料として考えていることになる。そのような医療のあり方、医療材料の調達のあり方について、国はどのように考えているか答えよ。
六 角膜及び腎臓の移植に関する法律は、移植術に使用しなかった部分は焼却しなければならないと定めている。しかし、実際は焼却はされず三年以上もの間保存されていた。摘出したのは、移植する腎臓の周囲血管であったという主張に立てば、これは同法第七条違反の疑いがある。その認識を伺う。
七 脳死臨調答申では、移植医療にかかる問題事例を審査する審査委員会の設置が要請され、過日ようやく設置された。平成七年六月に発覚した、米国で利用されなかった腎臓を輸入し、東京女子医科大学の太田和夫教授らがネットワークを通さずに移植した、いわゆる「US腎事件」や、今回の摘出事例は、審査委員会での調査・審査の当然の対象と考えるが、どのように日本腎臓移植ネットワークに対して指導をしていく所存か。
八 このような事件の発生の原因としては、医療従事者の教育、実習、入学試験及び資格試験など諸制度のあり方が深く関係していると考える。特に倫理面において、移植医療の適正を期すために対策や再発防止策をどのように講じるつもりか、それぞれについて答えよ。
右質問する。
政府答弁書
一及び二について
厚生省において、御指摘の組織(血管、心臓弁等臓器以外の人体の組織をいう。以下同じ。)の摘出に関し、血管摘出を行った国立循環器病センター(以下「センター」という。)の高本真一医師に報告を求めたところ、平成五年十月三十日夕刻に組織凍結保存ネットワークのコーディネーターからセンターの本村昇医師に対して「腎臓以外も摘出できる可能性があるので、関西医科大学の千代孝夫医師から組織摘出チームの派遣の要請があった」との連絡があり、同月三十一日深夜にセンターの大北裕医師及び本村医師の二名が同ネットワークの組織摘出チームとして関西医科大学に行き十一月一日午前九時三十分まで待機し、さらに、同月二日午後七時三十分から高本医師を加えた三名が同大学に行き再度待機し、別の医師による腎臓移植のための腎臓摘出終了後の午後九時十五分から血管摘出を行ったとの回答があったところである。
また、文部省において奈良県立医科大学に確認したところ、同大学第三外科学の庭屋和夫医師から、詳細な時刻は不明であるが、組織凍結保存ネットワークのコーディネーターから同医師に対して「腎臓移植に伴い心臓弁の提供があるかもしれない」との連絡があり、同医師が関西医科大学に行き待機した旨の報告があったとの回答があったところである。
腎臓バンク及び腎臓移植ネットワークの関与については、組織凍結保存ネットワークの当該コーディネーターは、財団法人大阪腎臓バンクからコーディネーターの業務を委嘱されていた者であったところであり、また、社団法人日本腎臓移植ネットワークは当時設立されていなかったところである。
なお、組織凍結保存ネットワークは、組織摘出及び組織保存並びに組織移植に関する啓発活動を行う任意の団体であり、近畿圏内の医療施設の関係者を構成員とし、組織摘出及び組織保存に関して、センターや奈良県立医科大学第三外科学等の医師に、コーディネーターが連絡を行っているものと承知している。
三の�@及び�Aについて
厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、同医師、大北医師及び本村医師の三名が組織凍結保存ネットワークの活動として関西医科大学に行き、当該血管の摘出を行ったとの回答があった。これら三名の医師の専門領域は、いずれも心臓血管外科である。また、文部省において、奈良県立医科大学に確認したところ、同大学第三外科学の庭屋医師は組織凍結保存ネットワークのコーディネーターから連絡を受けて関西医科大学に行き待機したが、当該摘出には参加していない。
三の�Bについて
厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、当該摘出に当たって関西医科大学の千代医師から高本医師に対して摘出は腎臓の周囲の血管にとどめる旨の指示があり、同医師は、その指示の範囲内において腎臓摘出に伴う血管摘出に関する遺族の承諾があるものと認識し、遺族が千代医師に提出した臓器・組織提供承諾書に基づいて当該承諾があることの確認は行わなかったとの回答があったところである。
三の�Cについて
厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、御指摘の血管摘出は腎臓移植に使用されるための腎臓の摘出に伴うものであり、当該腎臓摘出についての感謝状が遺族に贈られるので別途の感謝状を贈る必要はないと考えたためであるとの回答があったところである。
三の�Dについて
厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、当該摘出において摘出した血管の部位及びその長さは、腎動脈分岐部下方腹部大動脈及び腎静脈分岐部下方下大静脈それぞれ約二センチメートルずつであり、これらの血管以外に当該摘出において摘出した組織や臓器はないとの回答があったところである。
四について
厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、組織凍結保存ネットワークの活動として行う血管の摘出については、腎臓とは別の部位から行うことが通常であり、腎臓摘出終了後に行うこととしていたため、御指摘の事例においても腎臓摘出終了後に血管摘出を行ったものであるとの回答があったところである。
五の�@について
本年二月二十八日現在センターに保存されている臓器及び組織は、三の�@及び�Aについてで述べた血管以外には、御指摘の二十四件及びすい臓ランゲルハンス氏島二件の合計二十六件である。
五の�A及び�Bについて
五の�@についてで述べたセンターで保存している二十六件の組織に関する提供承諾書等の有無、摘出承諾の有無及び臓器本体とは別個の組織部分の摘出の承諾の有無は、それぞれ表のとおりである。また、遺族の当該組織の保存の認識の有無については、記録がなく確認できない。
五の�Cについて
高本医師等が同種組織移植の臨床応用のための研究を目的として凍結保存を行っていると承知している。
五の�Dについて
組織の凍結保存技術は研究段階であり、お尋ねの保存可能な期間については、現在必ずしも明確な結論が得られていないと承知している。なお、センターの医師が当該研究に関して組織の摘出の同意を得る際に遺族に対し、理論上は半永久的に保存可能と説明したことがあると承知している。
五の�Eについて
お尋ねの遺族に対する事後報告については、一般的には、当該組織の摘出を行った医師の判断により行われるものであるが、厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、センターにおいて同医師が凍結保存された組織を使用した場合については、遺族に対する事後報告を行っているとの回答があったところである。
五の�Fについて
組織移植は、組織の修復困難な損傷等に対して有効な治療方法であり、凍結保存された組織の移植は、人工的に製造されたものに比べて、生着率等において優れているものと承知している。
また、組織を摘出する際には、遺族に対して組織移植の意義等について十分に説明した上で承諾を得るとともに、組織の摘出及びその凍結保存に当たっては礼意を失わないよう特に注意することが必要と考えている。
六について
御指摘の血管の摘出及び凍結保存については、摘出された血管は腎臓の周囲の血管であったが、当該摘出は腎臓を摘出した医師とは別の医師が行ったものであること、腎臓を摘出した医師は当該血管の摘出及び凍結保存について、血管を摘出した医師との間で指示、照会等の関わりが認められないこと等の現時点で把握した諸事情に照らすと、当該血管が当該腎臓移植に使用されるために摘出されたものと考えることは困難であり、角膜及び腎臓の移植に関する法律(昭和五十四年法律第六十三号)第七条の適用はないものと考えている。
七について
御指摘のいわゆる「US腎事件」については、平成七年九月に社団法人日本腎臓移植ネットワークにおいて調査結果がまとあられたと承知しいてるが、同ネットワークに対しては、この調査結果を先般同ネットワークに設置された審査委員会に説明して審査の参考とするよう指導してまいりたい。
御指摘の血管の摘出事例は、平成五年十一月に行われたものであり、社団法人日本腎臓移植ネットワークの発足以前の事例であること、また、当該血管摘出が腎臓移植に使用されるために行われたものと考えることは困難であることから、当該審査委員会の審査の対象となるものではないと考えているが、当該事例が審査の参考となるよう同ネットワークに対して情報提供してまいりたい。
八について
医療従事者が高い倫理観を持つことは重要であり、このため、従来から医療従事者の資格試験及び養成に関して、「医の倫理」について、医師等の国家試験の出題基準に含めること、医師の卒後臨床研修の目標として当該研修を行う機関に対して明示すること、各種の医療従事者の養成施設の指定基準においてカリキュラムに盛り込むこととすること等の施策を講じているところであり、今後ともこうした施策の充実に努めてまいりたい。また、医療従事者を養成する大学及び養成施設の入学者選抜において、面接の実施及びその内容の充実等の自主的な取組を行っているものが多いと承知しているが、今後、これらの大学及び養成施設に対してこうした取組をより一層進めるよう働きかけてまいりたい。
さらに、移植医療におけるコーディネーターについては、社団法人日本腎臓移植ネットワークにおいて、腎臓移植のコーディネーターを対象として、移植医療に関する医学的な基礎知識、家族への説明等の実践方法等幅広い研修が行われているところであり、今後、これらの機会を活用して移植医療に関する倫理について注意を喚起し、適正な移植医療の確保等に努めてまいりたい。
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