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修復腎移植問題に関する質問主意書

参議院 第173回 第68号お答えすることは困難 ×2承知していない ×7

提出者
参議院
提出日
2009年11月27日
内閣転送 2009年12月2日
答弁書受領日
2009年12月8日
提出から11日
答弁の項目数
26
質問 8,615字/答弁 4,146字

質問本文

一 わが国臓器移植においてもっとも実施数が多く、かつ移植待機者の多い腎臓移植について

1 過去二十年間における献腎移植(「心停止後」および「脳死下」)、生体腎移植、さらに修復腎移植における腎臓移植の実施数、術後の生存率、生着率(五年後、十年後、十五年後)を示されたい。

2 過去二十年間における生体腎移植における親族(六親等内の血族、配偶者など)、第三者間の内訳を示されたい。

3 過去二十年間における海外渡航腎臓移植者数を示されたい。

二 腎臓移植希望者の現状について

1 現在の腎臓移植希望者の登録数、平均待機日数を示されたい。

2 全国における献腎登録者数を示されたい。

3 提供臓器数の圧倒的に少ないわが国で、国内でこれをまかなう厚生労働省の方針と具体的施策を示されたい。

三 修復腎移植について、厚生労働省は「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正においてこれを原則禁止とした。

1 修復腎移植問題に関する調査委員会は五つあった。厚生労働省の調査班(班長:相川厚・東邦大学医学部教授)は、臓器提供のみに関係し院内に調査委員会が設置されなかった六つの病院について調査し、平成十九年三月二十六日には、全例の摘出を「問題あり」とする調査結果を公表した。この委員会は摘出に関する調査委員会であるが、範囲外である移植に関しても言及し、全例を「適応なし」、「疑問」と範囲外の言及をしている。市立宇和島病院の調査委員会(委員長:深尾立・千葉労災病院長)は、同年四月二十九日に全体的に否定的な調査結果を公表した。一方、香川労災病院調査委員会(委員長:井上一病院長)は同年四月十一日、四件の摘出は医学的には妥当だったと判断した。呉共済病院外部調査委員会(委員長:田辺昇弁護士)も同年六月二十五日、「患者と強い信頼関係で結ばれており診療は適切だった」とし、「医学的に否定することは適当ではなく今後の研究課題」とした。宇和島徳洲会病院の調査委員会(委員長:貞島博通院長)は平成二十年一月十二日、六例の摘出と十一例の移植すべてを適応あり、または容認できる範囲のものとした。このように、修復腎移植に関する調査結果は、調査委員会の間で大きく違う。

しかし、平成十九年五月十一日には、厚生労働省は改正のためのパブリックコメントの募集を告知、その段階で「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の改正案は作成されている。なぜ、全調査委員会の報告書を待たずに原則禁止の方向性を打ち出せたのか。五つの調査委員会の報告書をどのような段階で誰が、総合的に判断したのか。

四 修復腎移植を原則禁止した「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正は、「厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」での審議を前提としていた。しかし、その審議方法に大きな疑問がある。

同委員会では、第二十四回(平成十八年十一月二十七日)および第二十五回(平成十九年四月二十三日)において修復腎移植に関する審議が行われている。特に第二十五回では修復腎移植をどう捉えるかの議論が沸騰し、結論はまとまらないまま継続審議となった。永井良三委員長(東京大学大学院医学系研究科教授)も、「もう少し事務局と相談して、それをまた今日欠席の先生方を含めてその辺を持ち回りで御審議いただき、それでまだ合意が得られないということであれば次回さらに継続審議ということでいかがでしょうか。」と発言している。しかし、その後、同委員会は平成二十一年九月十五日まで開催されず、第二十六回の同委員会では修復腎移植についてまったく言及されていない。この会議の中で、原口真臓器対策室長(当時)は「今回の一連の事件の教訓としては、行われていた病腎移植はまず否定されなければいけないというのが一点だと思っております」と発言し、事務局が「結論有りき」の姿勢を明確にしてさえいる。

修復腎移植を原則禁止した「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正は、「厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」での十分な審議と結論を経ていたのか。なぜすべての調査委員会の結果が出ない不十分な情報下で修復腎移植の是非を問う議論がなされたのか。

五 修復腎移植を原則禁止とした「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正時に、厚生労働省はその判断を一部の学会関係者等の見解に基づいて行っている。宇和島徳洲会病院や呉共済病院(広島県)などの調査委員会が最終的な結論を出していない段階で、日本移植学会、日本透析医学会、日本泌尿器科学会、日本臨床腎移植学会の四学会は平成十九年三月三十一日、「現時点では妥当性がない」とする見解を発表したが、この見解には疑問が大きい。

1 同年四月一日付の産経新聞は、「当初予定されていた五学会のうち日本病理学会、日本腎臓学会が参加を見合わせた。代わりに、日本移植学会副理事長が以前理事長だった日本臨床腎移植学会が参加する「数合わせ」で、権威を維持した形だ」と評している。厚生労働省は、こうした摘出と移植の妥当性を組織的に客観的な検証に基づいて判断できる病理専門医の判断が入らない、また、専門学会間で見解が一致していない見解に、どのような意味があると考えるか。

2 摘出と移植の妥当性を唯一判断できる病理学会は、「五学会でご議論の結論が病理学会として充分に賛同できるものであれば、そのときに日本移植学会のご了解の上で、六学会として参画する可能性はございます」と見解を発表しているが、その後病理学会へは協力要請はなされたのか。また、そのことを厚生労働省は確認しているか。

六 修復腎移植を原則禁止へと導いた医学的な根拠のひとつに、その生存率、生着率の低さがある。一部の学会関係者等の見解発表前日の平成十九年三月三十日、日本移植学会の高原史郎・大阪大学教授が、市立宇和島病院における二十五件の修復腎移植の成績だけを取り上げ、「生着率、生存率が低く、がん患者からの腎移植は特にそれが顕著だ」と記者会見した。

1 すでに四十二例の修復腎移植のデータが出そろっていたにもかかわらず、なぜ修復腎移植全例による生存率や生着率を出さなかったのか。また、記者会見では、「中間報告」とされていたが「最終報告書」は作成されているのか。それぞれ政府の承知しているところを示されたい。最終報告書が作成されているのであれば、その概要を示されたい。

2(1) 宇和島徳洲会病院は、市立宇和島、呉共済の二病院と共同で集計した病腎移植の全症例のうち検証可能な四十二例の追跡調査結果をもとに生存・生着率を算出した。このデータを確認、検証はしているのか。

(2) 学会関係者の検討対象にならなかった二病院(宇和島徳洲会病院、呉共済病院)では平成三~十八年に計十七例の病腎移植が行われ、うち十六例が生存、十五例が生着しており、生存・生着率とも好成績である。一方、市立宇和島病院では二十五例中十五例が生存、うち七例が生着しており、成績が劣っている(いずれも当時)。結果的に学会は不成績の病院だけを取り出して解析したことになる。特にがんの症例だけに限ると、学会関係者の検討対象にならなかった二病院では、腎がん、尿管がんの修復腎移植六例すべてが生存・生着している。これら二病院のデータを加えると、前記の一部の学会関係者等の見解とは大きな違いが出てくる。厚生労働省は、こうした隔たりのある医学的データだけを基に修復腎移植を否定したのではないか。

七 修復腎移植を原則禁止へと導いた一部の学会関係者等の見解は、修復腎移植に医学的妥当性がないとする三つの主張がある。

1 第一に、これらの学会関係者は「四センチ以下の小径癌は部分切除が標準的治療」と主張している。この主張は、現実の医療の実態から大きく乖離している。小径腎癌の部分切除について、国内では十分な学術的調査が行われているとはいいがたい。学会関係者は四センチ以下の小径癌は部分切除が適切と指摘しているが、それは、今後の方向性としてはあり得たとしても、少なくとも実地との乖離を無視して、国内の学会が主張できるものではない。修復腎移植問題の発生を機に藤田保健衛生大学の堤寛教授が実施した国内調査によると、四つの大学病院を含む十四の病院の病理部に提出された九百四十一件の摘出腎臓のうち、四センチ以下の腎癌が部分切除されていたのは、平均で三十%、中央値で十七%に過ぎなかった。つまり大多数の四センチ以下の腎癌は全摘されていた。

米国における腎癌摘出に関する調査論文でも、全体の九十二・五%が根治的腎摘出術(全摘出)になっている。一部の学会関係者等の主張する「四センチ以下の小径癌は部分切除が標準的治療」が正当な主張であるとするならば、全摘した場合は標準治療に当たらないのか。また、独立行政法人国立病院機構に属する全国の病院、公立病院、旧国立大学病院等での小径がん治療における部分切除数・率を示されたい。

2 第二に、これらの学会関係者は、「移植に使われる腎臓なら本人に戻すべき」と主張している。しかし、いったん取り出した腎臓を再び患者さんに戻す「自家腎移植」は、さらに数時間の手術時間を要し、高齢者や他の基礎疾患を持つ患者などには侵襲性が高く、技術的にも難易度が高い手術であるため、合併症の危険性が高く、現実の医療では非常に症例数が少ない。安全性を重視するため、自家腎移植よりも全部摘出治療を望む患者さんが多いと聞く。

一方で腹腔鏡を用いた最新の術式は高度な技術を要し、腎臓の全部摘出の割合は再び高くなりつつある。現時点でさえも国際的には、いまだ全部摘出が平均的医療であり、ましてや修復腎移植実施当時(一九九三年~二〇〇六年)は、当然の判断だと思われる。全国的に少数である「自家腎移植」が修復腎移植否定の根拠となっているのではないか。また、こうした調査もせず厚生労働省は一部の学会関係者等の主張を鵜呑みにしたのではないか。

さらに、「自家腎移植」をすべきだったと主張するのであれば独立行政法人国立病院機構に属する全国の病院、公立病院、旧国立大学病院等での「自家腎移植」の実施数、実施割合を示されたい。

3 第三に、これらの学会関係者は、「癌が転移する」ため修復腎移植は医学的妥当性がないと主張している。しかし、日本移植学会などが癌転移の可能性の根拠とする「イスラエル・ペン腫瘍登録」のデータベースは古い。ペン教授の後継者である米シンシナティ大学のブエル教授らは、腎がんを切除した腎臓を移植に用いた十四例を五年間追跡し、一例も再発がなかったと報告している。一方、ヨーロッパの中で最も先進的ながん患者登録と移植者登録をリンクさせた「がん追跡調査」を行っているイタリア国立移植センターと米ピッツバーグ大学は、二〇〇二年から二〇〇四年の間に癌の様々なリスクを有する死体ドナー五十九例由来の臓器による百八例の移植を対象分析し、結論として、「新生物のリスクを有するドナー由来の臓器から、レシピエントが暴露される癌伝播のリスクは、少なくとも我々のコホート(大規模調査)では低いことを示している」とし、さらに移植後に発生した腫瘍がドナー由来かレシピエント由来なのかに関しても、遺伝子解析した結果では、ドナー由来のものはなかったと報告している。そして、切迫した状態の移植患者が臓器を待っていて、癌のリスクを有するドナーが利用可能な場合には、利用可能性を注意深く探るべきであるとしている。

現実問題として、国内修復腎移植四十二例でもがんの転移は確認されていない。

一部の学会関係者等の見解は、これらの事情を認識していないか、無視している。厚生労働省は移植におけるがん転移の最新の医療情報を示されたい。

八 修復腎移植は世界的な移植臓器不足の中、国内外で数多く実施されている。こうした事実がまったく報じられないまま、患者救済の道が閉ざされている。

1 一部の学会関係者等が「あり得ない医療」と否定した修復腎移植は、これまで国内で学会発表されたものだけでも百例近くある。平成五年には日本移植学会の大島伸一氏の公認の下、藤田保健衛生大学で第三者への修復腎移植が行われている。第二十五回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(平成十九年四月二十三日)でも、死体腎移植の際に使用される腎臓も阻血性変化が発生しているため病的であることや、生体腎移植時に疾患があり修復して移植されることがたびたびあると指摘されている。厚生労働省はこうした医療現場、移植現場での実態を把握しているのか。また、これまで多数行われた国内の修復腎移植の実績を把握しているのか。

2 オーストラリアのクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授らも現在まで標準治療として六十例以上を行い、がんの転移はない。平成十九年十二月には、米カリフォルニア大サンフランシスコ校で腎細胞癌を修復した腎臓を移植した症例が、平成二十年には米メリーランド大学が五例の修復腎移植を発表している。平成二十年八月には第二十二回世界移植学会(シドニー)で藤田士朗・フロリダ大学准教授が日本国内の修復腎移植四十二例を、デビッド・ニコル教授も自らの実績を発表し、大きな反響を得ている。厚生労働省はこうした海外の修復腎移植の実態を把握しているか。また、関係論文の収集検討は行っているのか。

九 修復腎移植について、海外の実態を調査するためとして、厚生労働科学研究費補助金を受け「国外における修復腎移植の研究に関する調査」(主任研究者:高原史郎・大阪大学教授)が実施され、その報告が行われた。

1 この調査報告はイギリスの古い移植ガイドライン(二〇〇三)及び個人的な見解の電子メールのみに基づいている。通常医療として多くの患者を救っているニコル教授に対しては「電子メールで何度も問い合わせたが返答がなかった」と報告している。しかし、ニコル教授は「そのような問い合わせはまったくなかった」と証言している。公的な資金を投入したにもかかわらず、これほど杜撰な報告内容だと厚生労働省は認識しているか。

2 平成二十年二月二十一日に開催された「修復腎移植を考える超党派の会」でもこの調査報告が取り上げられ、参加した国会議員から厚生労働省に対して、「病腎移植先進国のオーストラリア、アメリカ、イタリアなどの調査報告がなぜないのか」、「厚生労働省に都合のいいデータだけを出しているのではないか」との質問が出たが、厚生労働省側は、「現在調査中」、「この会合には間に合わなかった」などと答えた。「現在調査中」と答えたものは、その後調査が終了しているか。終了しているのであれば、その報告書の概要を示されたい。

十 修復腎移植四十二例は、特殊医療であるため保険適用がないとされている。

1 レセプト請求に際して、複数の医師が「病気の臓器を修復して移植に使用」という内容を手書きで付記していたことを証言している。一部は高額医療費の審査の過程で、厚生労働大臣の委任業務である東京本部での社会保険診療基金の特別審査会で審議され、認められている。請求を認めた審査機関は、どのような判断を行ったのか。また、その責任はどのようなものか。

2 修復腎移植は愛媛県だけではなく広島県でも実施されている。なぜ愛媛県だけが処分の対象となり、広島県はそうでないのか。特殊医療であるとすれば日本国内で平等に保険診療に関する法令上の解釈がなされるべきではないのか。

3 修復腎移植は国内の大学病院などでも多数実施されているが、それらのうち保険請求が行われていたものに関しては、すべて返還請求、あるいは保険医療機関の指定取り消しを求めるのか。

4 修復腎移植は、既存の医療機器や薬剤、術式を使った移植である「同種腎移植術」の枠組みの中で行われていた。厚生労働省の特殊医療の定義はなにか。修復腎移植が特殊医療に当たるとする根拠は何か、特殊医療に該当するか否かは誰の責任と権限で審査し決定されるのか。

十一 現在、修復腎移植は原則禁止のままであるが、臨床研究としてのみ実施できる。

1 臨床研究として医学的適応を認めながら、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」(ガイドライン)において、修復腎移植を原則禁止としたままなのはなぜか。

2 平成二十一年一月二十七日、臓器移植対策室長名でガイドラインの取扱いについて新たな通達を出し、臨床研究の対象疾患に制限がないことを改めて確認した。このような通達はなぜ行われたのか。

3 第二十五回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(平成十九年四月二十三日)においても、永井良三委員長(東京大学大学院医学系研究科教授)は、「あえて病的腎をどうするかというように記載する必要はないように私は思います。これは非常に奥の深い問題で、医療と研究というところに踏み込んできた問題ですね。そういう形で事務局と打ち合わせをさせていただき、また先生方に回覧させていただきます。それでもまだ問題があるということであれば、さらに継続審議としたいと思います」と発言した。この点について、どのような話し合いや回覧などが行われたのか。また厚生労働省は修復腎移植に関する臨床研究の推進に関して、現在どのような努力をしているのか。

十二 修復腎移植の臨床研究は容認されているが、現実的にはその実施が非常に困難な環境下にある。

1 臨床研究が開始された場合、当該医療機関もしくは患者の負担が大きく、実地医療としての定着にはまだまだ課題が多い。厚生労働科学研究費補助金などでの研究支援などは検討されているのか。また、臨床研究の場合、又は、仮に先進医療として承認された場合、術後の免疫抑制剤などの医療費はどのように扱うのか。さらに、今後、保険収載の道筋は具体的にどのようになるのか。

2 日本移植学会は、生体腎移植ガイドラインにおいて、ドナーの適応基準として、「疾患の治療上の必要から摘出されたものは移植の対象から除く」と規定している。また臨床研究においては学会による倫理委員会による二重審査などを条件づけている。平成二十年四月の診療報酬改定では、死体腎移植手術がまったく増加しないにもかかわらず、厚生労働省は、生体腎移植手術の診療報酬を一挙に四割以上という異例の削減を行い、さらに生体腎移植実施に関し、日本移植学会のガイドラインや倫理指針を順守していること、死体腎移植一例か生体腎移植五例以上を経験した医師を含む常勤医二人以上、などの施設基準を初めて打ち出した。単に私的な一学会に過ぎない日本移植学会のガイドラインなどの条件の設定によって、保険診療としての修復腎移植の実施が極めて困難となっているが、厚生労働省はこの事態をどのように考えるか。

十三 移植臓器不足と海外渡航移植の自粛という世界的な流れの中で、各国に自国内での臓器獲得の努力が求められている。すでにアメリカを始め欧州各国でも「拡大ドナー(Expanded Donor)」、「境界ドナー(Marginal Donor)」などの呼称で、「絶対安全なドナーはいない。完全に健康とはいえないドナーの臓器でもメリットが多ければ、多少のリスクがあるドナーからの臓器でも積極的に利用すべきである」という考え方が広がっている。修復腎を求める民事裁判では、「修復腎移植を受ける権利」が主張されている。また、「臓器の移植に関する法律」の基本的理念においても「移植術を必要とする者に係る移植術を受ける場合は、公平に与えられるよう配慮されなければならない」としている。

1 民意の吸い上げに関しては、パブリックコメントの募集(平成十九年五月十一日~六月十一日)を実施したが、どのような意見がどれだけ寄せられ、どのような検証がなされたかを詳細に示されたい。

2 これまで厚生労働省には七十万人を超える修復腎移植推進を求める署名が提出されている。また、長崎医療センターの松屋福蔵・泌尿器科医長らのグループが行った献腎移植希望登録更新者と透析患者を対象とした意識調査では、条件つきを含めた約半数が修復腎移植を受けたいと希望している。こうした状況に対して、厚生労働省はさらに広く、深く患者の声に耳を傾けるべきではないか、また、具体的な対応策はあるのか。

十四 腎臓移植までに十七年も待つという極めて深刻なドナー不足の現状は、生存権が侵害されているとさえ言える。したがって修復腎移植を含めて臓器移植問題を解決することはきわめて重要かつ緊急の課題であると考える。

1 「修復腎移植を考える超党派の会」(会長:杉浦正健・元法務大臣)は、平成二十年五月十三日に修復腎移植容認の見解を示したが、この見解に対してはどのような対応をしたのか、この内容に関して検討や調査はなされたのか。

2 国内で最も数が多く実施されている移植医療である腎臓移植に関し、現状での絶対的な提供臓器不足の中にあって生体腎移植、死体腎移植に次ぐ「第三の腎移植」として修復腎移植を生かすことは考えていないのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

お尋ねの献腎移植については、平成七年四月から平成二十年十二月までの十三年九か月間について把握しており、その心停止下及び脳死下での実施数は二千百十八件及び百三十三件であり、心停止下での生存率及び生着率は、それぞれ五年後が八十九・六パーセント及び七十五・一パーセント、十年後が八十四・一パーセント及び五十八・三パーセント、脳死下での生存率及び生着率は、それぞれ五年後が八十九・八パーセント及び七十七・七パーセント、十年後が八十七・二パーセント及び七十五・五パーセントである。

また、お尋ねの生体腎移植については、「臓器移植ファクトブック二〇〇八」(日本移植学会広報委員会編)によると、昭和六十三年から平成十九年までの二十年間における実施数は一万千六百七十七件である。生存率及び生着率については、把握していない。

また、お尋ねの「修復腎移植」とは「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について」(平成九年十月八日付け健医発第一三二九号厚生省保健医療局長通知。以下「運用指針」という。)第十二の八に規定する病腎移植を指すものと考えるが、そうであるとすれば、過去二十年間の実施数は四十二件である。生存率及び生着率については、正確な数値を把握していない。

一の2及び3について

お尋ねについては把握していない。

二の1について

お尋ねの登録数及び平均待機日数は、平成二十一年十一月二日現在、一万千八百十四名及び二千七百五十一・三日である。

二の2について

お尋ねについては、臓器提供意思表示カード等の件数を把握する仕組みとなっていないことから、お答えすることは困難である。

二の3について

厚生労働省としては、一人でも多くの移植を必要とする者に対し国内での移植の機会を提供できるよう、臓器移植に関する普及啓発や提供意思の表示方法の周知等について積極的に取り組んでいるところであり、引き続き適正な移植医療の実施に努めてまいりたい。

三、四、六の2(2)及び十一の3について

厚生労働省としては、病腎移植については、関係学会から、その医学的、倫理的妥当性に対する否定的見解が示されたこと、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(以下「臓器移植委員会」という。)において運用指針を改正して迅速に対応する必要がある旨の指摘があったこと等を踏まえ、速やかに対応方針を示すこととし、平成十九年七月十二日の運用指針の改正により、現時点では医学的妥当性がないので、臨床研究として行う以外は、これを行ってはならないこととしたものである。その後、宇和島徳洲会病院における調査委員会報告書が公表されるに至ったが、厚生労働省として総合的に判断した結果、当該運用指針を変更する必要はないと考えたものである。

また、臓器移植委員会においては、第二十五回会合の終了後に各委員に対して運用指針の改正案を示した結果、了承が得られたものであり、十分な審議が行われたものと考えている。

また、病腎移植に関する臨床研究の推進については、特段行っていない。

五の1について

御指摘の見解は、宇和島徳洲会病院等の調査委員会での検討を基礎とするものであるところ、当該委員会には日本病理学会から派遣された委員も加わっていたことから、病理学の専門的知見を反映したものとなっていると考えている。また、日本腎臓学会も御指摘の四学会とともに御指摘の見解に名を連ねており、日本病理学会もこれら五学会に協力的な立場として対応しているものと承知している。

五の2について

御指摘のような要請がされたか否かについては、確認していない。

六の1について

日本移植学会が御指摘のように市立宇和島病院において行われた病腎移植症例の予後について統計解析を行ったのは、同病院が同学会に対してその旨の依頼をしたからであると承知している。また、その最終報告書は日本移植学会雑誌「移植」第四十三巻第五号に公表されているとおりである。

六の2(1)について

御指摘のデータについては確認し、検討を行ったところである。

七の1について

御指摘の「根治的腎摘出術(全摘出)」が御指摘の「標準治療」に当たるか否かについては、政府としてお答えする立場にない。

また、お尋ねの部分切除数及び部分切除率については、把握していない。

七の2について

お尋ねについては、三、四、六の2(2)及び十一の3についてで述べたとおりである。

また、お尋ねの実施数及び実施割合については、把握していない。

七の3について

お尋ねの情報については、厚生労働科学研究成果データベースのホームページにおいて、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)の成果として公表しているところである。

八の1について

御指摘の実態については承知しており、また、お尋ねの実績については一の1についてで述べたとおりである。

八の2について

お尋ねの実態については、御指摘の教授が病腎移植を行ったことについては承知している。また、関係論文については、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)において収集、検討されたところである。

九の1について

御指摘の調査報告は、国内外の必要な文献の収集、分析等を踏まえ取りまとめられたものであり、「杜撰」であるとは考えていない。なお、御指摘のような証言については承知していない。

九の2について

お尋ねについては、「国外における病腎移植の研究に関する調査」(平成十九年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)の対象となった事項の調査は終了しており、その成果については厚生労働科学研究成果データベースのホームページにおいて公表している。

十の1について

社会保険診療報酬支払基金に確認したところ、御指摘のような事実はなかったとのことである。

十の2について

厚生労働大臣等は、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号。以下「療担規則」という。)に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する保険医療機関等に対し、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十三条等又は第七十八条等の規定に基づく指導又は報告等の徴収(以下「指導等」という。)を行うこととなるが、その完結の日から療担規則第九条の規定による帳簿等の保存期限を経過しているものについては、適正な指導等を行うことが困難であることから指導等の対象とはしていない。御指摘の広島県の事例については、当該保存期限を経過していたため、指導等の対象とはならなかったものである。

十の3について

御指摘のような請求がされているか否かについては把握していないが、仮にそのような請求が行われた事実が明らかとなった場合には、関係する保険医療機関に対して当該病腎移植に係る診療報酬の返還を求めるとともに、必要に応じて当該保険医療機関の指定の取消しの処分等を行うこととなる。

十の4について

特殊療法等とは、療担規則第十八条において禁止されている特殊な療法又は新しい療法等をいい、具体的な療法がこれに該当するかは、関係学会の見解を踏まえ、安全性、有効性等の観点から医学的な妥当性がないと判断して、厚生労働大臣が決定する。病腎移植についても、関係学会からその医学的、倫理的妥当性に対する否定的な見解が示されたこと等を踏まえ、これに該当すると決定したものである。

十一の1及び2について

病腎移植については、現時点では医学的妥当性がない治療法であるが、将来臨床研究等を通じて有効性及び安全性が確立し、医学的に妥当となる可能性が残されていることから、御指摘のような取扱いとしているところである。御指摘の通達は、このような趣旨を入念的に記述し、発出したものである。

十二の1について

臓器移植の成績向上に関する研究については、平成二十二年度厚生労働科学研究費補助金の免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業の移植医療分野において公募を行っているところであり、申請された課題について必要な評価を行った上で、採択課題を決定することとなる。

また、移植後に使用される免疫抑制剤等については、御指摘のいずれの場合においても、保険給付の対象としている。

病腎移植に限らず、新たな医療技術については、日本医学会分科会に属する学会等から保険適用についての御提案を受け、中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織の下に設けられた医療技術評価分科会において検討を行った後に、又は、先進医療として承認され、先進医療専門家会議において検討を行った後に、同協議会において当該医療技術の安全性、有効性等について科学的な根拠に基づく評価を行い、その保険適用の可否について検討を行うこととなる。

十二の2について

我が国の医療保険制度においては、疾病等に対する有効性、安全性等が確立した治療を保険適用の対象としているところ、病腎移植については、現時点では医学的に妥当性がない治療法であることから、もともと保険適用の対象とはしていないところである。

十三の1について

御指摘の意見公募手続において提出された意見の数及び内容並びに当該意見の内容を考慮した結果及びその理由については、厚生労働省のホームページにおいて、「「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正に関する意見募集の結果について」として公表している。

十三の2及び十四の2について

病腎移植については、患者からのものを含め、様々な意見があることは承知しているが、現時点では医学的妥当性がない治療法であることから、臨床研究として行う以外はこれを行ってはならないこととしているところであるが、将来臨床研究を通じて有効性及び安全性が確立し、医学的に妥当となる可能性は残されており、当該研究の推移を見守ってまいりたいと考えている。

十四の1について

御指摘の見解に対しては、特段の対応はしていない。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2承知していない ×7

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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