ことばで探す › 衆議院 第142回
トラック事業の経営環境とそこで働くトラック労働者の労働条件改善に関する質問主意書
衆議院 第142回 第46号
質問本文
景気の長期低迷の下で、昨年四月からの消費税の引き上げや今年度からの軽油引取税の暫定税率の五年間延長などによるコスト増は、営業トラック事業(以下「トラック事業」)の経営を悪化させている。特に、このようなコスト増を届出運賃に転嫁できない中小零細トラック業者の経営は深刻な状態となっている。さらに荷主やトラック業界大手による優越的地位の濫用によって、運賃の中から一方的に金額を差し引く「値引き」や「協力金」の強要が常態化し、中小零細トラック事業者の経営を一層苦しめている。また、元請であるトラック業界大手が運賃ダンピングによって中小トラック業者の市場に参入し、これをさらに中小零細トラック業者に運賃を安く下請化させる実態が多くなってきている。
トラック事業者の経営圧迫が、トラック労働者の労働条件を切り下げ、過労運転、過積載、速度違反などによる事故多発などの大きな原因になっているとの認識は、トラック業界では常識となっている。九六年度のトラック労働者の労働条件を全産業と比較すれば、一時間当たりの時給では、全産業平均が二千三百五十五円に対して、トラック事業を含む陸上貨物運送事業では千八百四十八円と五百円以上の格差があり、労働時間数では全産業平均が二千二百四十四時間に対して、二千五百九十二時間と三百四十八時間も長くなっている。トラック事業の労働災害死亡者数は九六年は三百十三人と、この五年間で五十人も増加、労働省は昨年四月二十五日に「陸上貨物運送事業における労働災害防止の徹底」(労働基準局長指導)を(社)全日本トラック協会など三団体に異例ともいうべき指導を行っている。
このようなトラック事業の経営環境と労働条件を改善をすることは緊急な課題となっている。以下の事項について質問する。
一 運輸省は九七年六月の「協力金」問題でトラック業界への調査にもとづき、九七年六月十八日付で荷主の事業者団体宛に「トラック事業の取引の正常化に関する協力依頼について」を、(社)全日本トラック協会宛には、「トラック事業における公正取引の確保について」の「通達」を出した。この「通達」が実効性をあげるため、次のような対策が求められている。
1 トラックの届出運賃の遵守をさせるために、荷主等の一方的な運賃の「値引き」や「協力金」を強要する取引契約はやめさせるべきだ。そのためには政府は、罰則を含めた実効ある具体的な措置を、政府あげて取り組むべきではないのか。
2 トラック事業者の元請と下請の間や利用運送事業者と実運送事業者であるトラック事業者との間での「値引き」や「協力金」の強要をなくするために、運輸省は同事業を所管する責任官庁として、実効ある対策を緊急に取るべきでないのか。
3 また、荷主等の優越的地位の濫用による不公正な取引である「値引き」や「協力金」の強要をやめさせ、事業者の届出運賃の遵守の重要性を喚起するためにも、貨物自動車適正化事業機関の指導項目にあった「運賃の割戻はしないか」の項目を復活させるべきではないのか。
二 トラック事業者の圧倒的部分を占める中小零細トラック事業者は、高速料金の相次ぐ値上げをはじめ、昨年四月には消費税率の引き上げ、今年度からは軽油引取税の暫定税率が再び五年間延長などによるコストの増加によって経営が圧迫されている。全日本トラック協会の九五年一月のアンケート調査では、前回の軽油引取税率の税率増加分の運賃への転嫁ができた事業者は一五%にすぎず、多くの中小零細トラック事業者は自己負担を強いられている。
1 軽油引取税や消費税等の税金や高速料金の引き上げ等によるコスト増加が、どのようにトラック事業者の経営を圧迫しているのか、政府はその実態について調査したことがあるのかどうか。調査しているのであれば、その結果を明らかにされたい。
2 政府は経営圧迫している税金や公共料金のあり方を見直して、中小零細トラック業者の負担を軽減すべきではないのか。
三 トラック事業者の経営環境が悪化し、トラック労働者の長時間運転による過労運転や無理な運行スケジュールによる速度違反、過積載など労働条件の切り下げや安全性無視が横行している。トラック事業が事故多発業種といわれるのも、同事業の経営環境の悪化が大きな原因であると考えている。そこで、過積載と過労運転防止策について具体的に質問する。
1 過積載防止対策としてトラック車両に自重計の設置を義務づけるための関係法令等の改正をすべきではないのか。
2 荷物名やその重量、積み込んだ日時、運送場所名とその着時間予定等を書き込んだ「輸送状」の発行を荷主等(利用運送事業者を含む)に義務づけるべきではないのか。
四 陸上貨物運送事業において、交通労働災害を含めた死亡災害が九二年の二百七十人から四年連続で増加したために、九七年四月二十五日付で労働基準局長名による陸上貨物運送事業労働災害防止協会、(社)全日本トラック協会、日本路線トラック連盟のそれぞれの会長宛に、「陸上貨物運送事業における労働災害防止の徹底について」の指導が行われた。しかし、九八年は若干減ったものの、依然として二百九十人もの高い水準にある。
1 このようなトラック業者を含む陸上貨物運送事業の事故多発の原因について、(社)全日本トラック協会は、第一に厳しい時間指定、第二に深夜運転の増大、第三に長時間・過労運転、過積載をあげている。政府としては、事故多発の原因を、どのように認識しているのか。
2 政府はいままで事故多発対策を、どのように行ってきたのか、また、今後はどのような対策を行おうとしているのか、具体的に明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1及び2について
貨物自動車運送事業者が収受する運賃及び料金は、基本的には、荷主又は利用運送事業者との間で任意に定められるものである。貨物自動車運送事業者は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)第十一条第一項等の規定に基づき、運賃及び料金をあらかじめ運輸大臣に届け出ることとされており、一般貨物自動車運送事業者については、運輸大臣は届出のあった運賃及び料金が同条第二項に規定する各号のいずれかに該当する場合には変更を命ずることができることとされている。
なお、運輸省においては、運賃及び料金に係る事項を含め、貨物自動車運送事業の健全な運営の確保に資するため、貨物自動車運送事業者に対し、荷主との協力関係の確立に努めるよう所要の指導を行うとともに、利用運送事業者に対し、貨物自動車運送事業の正常な運営を阻害しないよう所要の指導を行っているところである。
一の3について
全国貨物自動車運送適正化事業実施機関は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関におけるそれまでの指導実績を踏まえ、指導項目についてその重点化を図る観点から見直しを行い、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関は、平成七年度から、当該見直し後の指導項目に基づき指導を行っているところであるが、引き続き、運賃及び料金の割戻しに関する事項を含めて運賃及び料金に係る不当な取扱いに関する指導を行っているものと承知している。
二の1について
お尋ねの趣旨の調査は、特段行っていないが、例えば、運輸省の自動車運送事業経営指標(一九九八年度版)によれば、平成八年度において、一般貨物自動車運送事業の総費用に占める軽油引取税等を含めた燃料費の割合は、約四パーセントである。
二の2について
租税は、国民、地域住民等が必要とする公的サービスを賄うための財源であり、法律や条例に基づき国民にその負担を求めるものである。御指摘の消費税は消費一般に広く負担を求める間接税であり、軽油引取税は地方の道路目的財源として受益者負担的な性格を持つ間接税である。
また、公共料金については、従来から物価や国民生活への影響を十分考慮して厳正に取り扱ってきたところである。
いずれにしても、これらをどのように価格に転嫁するかは価格設定の在り方の問題であり、消費税率及び軽油引取税の税率の引上げの際には、貨物自動車運送事業者及び荷主に対し、税率引上げ分が適正かつ円滑に転嫁されるよう周知徹底したところである。
三の1について
過積載による運送の防止については、関係省庁の緊密な連携の下に、貨物自動車運送事業者及び荷主に対する指導及び監督の強化並びに違反事業者に対する厳正な処分を行っているところである。この結果、悪質な過積載の事例は減少してきているところであり、今後とも、これらの施策を継続してまいりたい。積載重量計の貨物自動車運送事業の用に供する自動車への備付けについては、耐久性や精度の向上等技術的な問題点の検討を行っているところであるが、その検討結果、過積載による運送の状況等を踏まえつつ、適切に対処してまいりたい。
三の2について
運送に必要な事項は、運送の引受けの際に荷主から貨物自動車運送事業者に対して通知されるものであり、これを踏まえ、過積載、過労運転等を防止し、輸送の安全を確保することは、貨物自動車運送事業法第十七条等の規定により貨物自動車運送事業者の義務とされている。
なお、政府としても、輸送の安全の確保を含め、貨物自動車運送事業者と荷主との協力関係の確立に努めるとともに、同法第六十四条の規定に基づく荷主への勧告等関係法令の適切な運用を図っているところである。
四の1について
労働省の調査によれば、陸上貨物運送事業における交通労働災害の原因としては、自動車の運転者の前方不注意、不適切な運転操作、速度超過等が多くなっている。また、これらの災害の中には、拘束時間が長い、休息期間が短いなど労働時間等の管理が不十分であることや、事業者の走行管理が不十分であること等が背景となっているものも存していると考えられるところである。
四の2について
政府としては、陸上貨物運送事業における交通労働災害を防止するために、交通労働災害防止を担当する管理者の選任、適正な走行管理等について定めた「交通労働災害防止のためのガイドライン」の周知徹底を図るとともに、労働時間等の適正な管理に関する「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第七号)の周知徹底を図っている。
また、貨物自動車運送事業法の規定に基づき、過労運転、過積載による運送の防止等輸送の安全の確保を図るため、事業者に対する監督を強化するとともに、貨物自動車運送適正化事業実施機関が行う指導の徹底等を図っている。
さらに、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)に規定する最高速度違反行為、過積載をして自動車を運転する行為及び過労運転に係る下命又は容認の禁止規定、都道府県公安委員会による指示及び使用制限命令規定、両罰規定等に基づき、自動車の運転者の違法行為の取締りに加え、自動車の使用者に対する責任の追及を行っているところである。
今後とも、これらの取組を通じて交通労働災害防止対策の徹底に努めてまいりたい。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。