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日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問主意書
衆議院 第142回 第58号承知していない ×4
質問本文
五月六日提出の「日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する再質問主意書」(以下、「再質問」とする)に対する同月二十六日付け政府答弁書(以下、「第二回答弁書」とする)には不明、不十分な箇所があるほか、質問に答弁していない部分もあるので、以下第三回質問をする。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案については、通信や財産の秘密を捜査機関に合法的に捕捉させる条項が盛り込まれている。これまでの歴史を踏まえて日本の捜査機関にこうした基本的人権にかかわる秘密を捕捉させて大丈夫なのか、恣意的に運用されないか、逸脱した運用がないかなどの点が最大の問題点となっているので、一部新たな質問も加えた。
一 共産党幹部宅盗聴事件の事実認定
(1) 第二回答弁書「一の(1)について」によると、東京地検検察官は共産党幹部宅盗聴事件で不起訴となった警察官二人に「盗聴を指示したり、その承認を与えた者が存在したと認めるに足りる証拠はないと判断している」としながら、「被疑者両名は、その地位等に照らして本件の首謀者ないし責任者的立場にあったとは認め難い」「両名以外に本件犯行を実行し、又はこれに加功した者を認めるに足りる証拠はない」(三月二十七日付け政府答弁書「一の(4)について」、第二回答弁書「一の(2)について」)と判断している。こうした判断は二人以外に「首謀者」とか「責任的立場」にあった者は特定できなかったが、いずれにしても警察官二人は盗聴という警察による組織的犯罪の末端で実行行為に関与したにすぎないから、起訴猶予としたということか。「はい」「いいえ」で答弁されたい。
(2) (1)で「はい」と答弁された場合、検察による警察の組織的犯罪の追及は困難ということか。
また、こうした警察の組織的犯罪が将来反復継続しないように、検察としてどのような措置を講じたか。
(3) (1)で「いいえ」と答弁された場合、どの部分がどういう根拠で違うというのか、具体的に説明されたい。三月二十七日付け政府答弁書、第二回答弁書の訂正があれば、併せて言及されたい。
(4) 元検事総長の故伊藤栄樹氏は回想録「秋霜烈日」で、「わが国でも、かりに警察や自衛隊という大きな実力部隊をもつ組織が組織的な犯罪を犯したような場合に、検察は、これと対決して、犯罪処罰の目的を果たすことができるかどうか、怪しいとしなければならない」と書いているが、現在の検察は大丈夫か。「大丈夫」と言うなら、その理由と根拠を述べられたい。
(5) 第二回答弁書「一の(2)について」で「両名以外に本件犯行を実行し、又はこれに加功した者を認めるに足りる証拠はない」とあるが、関与した東京地検の捜査官全員は十分な捜査が尽くされたと認識しているか。途中で捜査が打ち切られ、十分な犯罪処罰の目的を果たせなかったと忸怩たる思いの捜査官がいるのではないか。
(6) 第二回答弁書「一の(3)について」に記載されている神奈川県警本部長による書面について、事実認定と責任の所在に関する要旨を明らかにされたい。また、共産党幹部宅盗聴事件の関係者に対する「相応の懲戒処分」の内容を示されたい。
(7) 第二回答弁書「一の(4)について」「二の(1)について」に記載されている警察庁警備局長通達について、事実認定と責任の所在に関する要旨を明らかにされたい。
二 責任の所在
(1) 第二回答弁書「二の(1)について」によれば、警備局長通達以後十年余にわたり、適正な職務執行に努め、今後「違法な傍受が行われることはないと確信している」と強調されているが、共産党幹部宅盗聴事件以後に違法な傍受があったことや今後、違法な傍受がなされたことが発覚した場合、警察当局と法務、検察当局は明確に責任を取るということか。
(2) 再質問では「『我が国の行政機関においては、違法な傍受は行われていない』と断言しているが、根拠は何か」とただしたのに、第二回答弁書では「根拠」について答弁がない。答弁されたい。
(3) 五月二十日の法務委員会で、警察庁の伊達警備局長は「警察官による盗聴行為」があったことを認め、その「反省」を踏まえて厳しく戒めると発言したが、「盗聴行為」や「反省」という言葉を使って共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任の所在について明らかにしたのはこれが初めてか。
初めてとすれば、なぜこれまでは、こうした発言ができなかったのか。
(4) 共産党幹部宅盗聴事件で起訴猶予となった警察官二人は現在、どのような職務を担当しているか。
三 令状請求手続き
(1) 第二回答弁書「三の(1)について」によると、令状請求時に提出した疎明資料を事後に改変すれば、懲戒処分や刑事罰の対象となるが、過去にこうした事例で懲戒処分や刑事罰を科せられた事例を明らかにされたい。
(2) 第二回答弁書「三の(2)について」によると、逮捕状、差押・捜索許可状又は検証許可状について請求後に「その要件が欠けることが判明したこと」によって請求を取り下げたケースがあると答えているが、こうした場合、逮捕、差し押さえなどの要件を十分に精査しなかった捜査員に対してどのような懲戒処分がなされるか。過去の懲戒事例を明らかにされたい。
(3) 令状請求時の疎明資料は適正手続きを担保するため、裁判所に残しておくべきと考えるが、どうか。
四「警察が狙撃された日」
(1) 三一書房から出版された「警察が狙撃された日」によると、共産党幹部宅盗聴事件は公安警察の中核とされる「チヨダ」(事件当時は「サクラ」)による組織的犯罪と指摘されているが、「チヨダ」の概要、予算措置、国会に対する報告の経緯などを明らかにされたい。
(2) 同書によると、「チヨダ」は警察庁警備局警備企画課の裏理事官に率いられているというが、警備企画課の人員、予算を明らかにされたい。また、「チヨダ」はスパイの獲得工作、尾行、盗聴技術などの研修を行っているというが、その費用は国費か。また、こうした研修はいかなる法律に基づいてなされているのか。
(3) 同書の出版をめぐり、警視庁が著者割り出しのために三一書房の取引銀行に捜査照会した事実はあるか。あるとすれば、いかなる法的根拠によるものか。また、こうした出版社と著者に対する圧力が平然と行われるようなら、共産党幹部宅盗聴事件以後、違法な捜査はないとする政府答弁に強い疑念を持たざるを得ないが、どうか。
右質問する。
政府答弁書
一の(1)及び(2)について
一の(1)の御質問に対する答弁は、「いいえ」である。
一の(3)について
東京地方検察庁検察官は、御質問の事件について、警察による組織的犯罪であるとまでは認定していない。
一の(4)について
個人の著述の内容については論評する立場にないが、一般論として述べれば、検察官は、常に法と証拠に基づいて厳正公平、不偏不党を旨として刑事事件を適切に捜査、処理すべき職責を担い、これを果たしてきており、今後も同様であるものと承知している。
一の(5)について
東京地方検察庁検察官は、御質問の事件について、所要の捜査を尽くした上、適切な処理を行ったものであり、御指摘のような捜査官がいるとは承知していない。
一の(6)について
御質問の書面は、神奈川県警察所属の警察官二名が本件盗聴に関与していたとの東京地方検察庁検察官の事実認定を前提としたものであり、その要旨は、日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する再質問に対する答弁書(平成十年五月二十六日内閣衆質一四二第三〇号。以下「前回答弁書」という。)一の(3)についてで答弁したとおりである。
また、右二名の警察官に対しては、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)上の懲戒処分である戒告処分がなされたものと承知している。
一の(7)について
御質問の警察庁警備局長通達は、警察官が電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)違反により起訴猶予処分を受けたことにかんがみ発出されたものであるが、業務管理、指導教養及び人事管理を徹底し、情報収集活動の一層の適正推進に努めるよう指示することを内容としたものであり、御質問の件についての事実認定と責任の所在に関する記載はない。
二の(1)について
違法な行為に対しては、法令に基づき厳正に対処すべきものと考えている。
二の(2)について
我が国の行政機関においては、職員は、法令を遵守する義務を負い、法令に従い、適正に職務執行を行っているところであるので、前回答弁書二の(2)についてで「違法な傍受は行われていない」と答弁したものである。
二の(3)について
平成十年五月二十日の衆議院法務委員会において、警察庁伊達興治警備局長は、「いわゆる緒方宅事件につきましては、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において、警察官による盗聴行為があったと認められ、また、その後の民事訴訟におきましても同様の行為があったことが推認されておるわけでありますが、このことにつきましては、警察としても厳粛に受けとめており、まことに残念なことであると考えているところでございます。警察としましては、本件の反省を踏まえ、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる所存であります。」と答弁している。この答弁は、御指摘の件に係る警察の認識をより明確に表現したものである。
二の(4)について
御質問の警察官二名のうち、一名は神奈川県警察に在職し、一名は退職している。
なお、当該在職者の具体的な職務等については、警察業務の遂行に支障が生ずるおそれもあり、また、プライバシーへの配慮も必要なことから、答弁を差し控えたい。
三の(1)及び(2)について
御質問のような懲戒事例等があったとは承知していない。
三の(3)について
日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する質問に対する答弁書(平成十年三月二十七日内閣衆質一四二第一七号)三の(5)についてで答弁したとおり、現在の令状の請求及び発付の手続は、適正に行われているものと考えており、令状請求の際に提供される資料を裁判所で保管することとする必要はないものと考えている。
四の(1)について
御質問の「チヨダ」というものは承知していないので、答弁することができない。
四の(2)について
警察庁においては、局部単位の定員は定められているものの、局部内における各課への人員の配置については、その時々の治安情勢、行政需要等に応じて総合的、弾力的な運用が行われており、警備局警備企画課の人員についても、警備局の定員(二百八十一人)の枠内において弾力的な運用が行われているところである。また、警察庁の予算は、各課別に区分されていないので、警備局警備企画課の予算については、答弁することができない。
その余の御質問については、「チヨダ」というものを承知していないので、答弁することができない。
四の(3)について
警視庁において、犯罪捜査の必要性から、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百九十七条第二項に基づき、株式会社三一書房の取引銀行に対する照会を行ったことは承知しているが、犯罪捜査以外の目的でこのような照会を行うことはあり得ないものと考えている。
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