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組織犯罪対策法案と死刑に関する再質問主意書

衆議院 第142回 第40号お答えすることは困難 ×1承知していない ×5

提出者
衆議院
提出日
1998年6月2日
内閣転送 1998年6月3日
答弁書受領日
1998年6月30日
提出から28日
答弁の項目数
25
質問 5,785字/答弁 8,909字

質問本文

「組織的な犯罪に対処するための法整備に関する三法案」(以下、組対法案という)については、現在の日本の捜査機関に通信傍受などを認めて本当に問題は起きないのかという最大の問題点のほか、三法案のうちの一つ「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」に国連人権委員会決議(本年四月三日)で新たな法制化を制限されている死刑が盛り込まれた。このため、捜査機関の信用性をただす「日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する質問主意書」、同再質問主意書と並行して、組対法と死刑に対する国際的な動向と日本政府の対応について、「組織犯罪対策法案と死刑に関する質問主意書」(以下、前回主意書という)を本年四月二十七日に提出したところ、同年五月二十九日に政府答弁書(以下、答弁書という)の送付を受けた。

ところが、答弁書は組対法案や死刑制度の是非はともかくとしても、質問に正確に答弁しないなど内容が不十分で、事実誤認とみられる部分もあるので、以下再質問する。前回主意書提出後の動向にかんがみ、一部新たな質問も加えた。

一 組織犯罪対策をめぐる国際的動向について

(1) 答弁書「一の(1)について」によると、組織犯罪対策に関し、各国間で死刑を刑罰に規定することについて議論が行われたという事実は承知していないようだが、国連加盟国中、死刑廃止国(戦争犯罪を除く、以下同じ〉が過半数を超えていることにかんがみ、組織犯罪対策の刑罰に死刑を規定することについての議論があるかないか、情報収集に努めたか。それとも、死刑の存置はもっぱら自国の判断という見解から情報収集もしていないのか。

(2) 答弁書「一の(2)及び(3)について」によると、国連加盟国中、組織犯罪対策のための法律を制定している国が何力国あるかなどについて、政府は十分に調査していないようだが、今回の法案提出に当たり、政府は国際的な要請を強調しているにもかかわらず、基本的なデータさえ答弁できないという姿勢に問題はないと考えるか。

(3) 答弁書「一の(2)及び(3)について」で、アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国、フランス共和国については言及があったが、三国において組織犯罪に関し、一定の組織的な犯罪の加重処罰、マネーロンダリング行為の処罰その他を内容とする刑事法を整備した経緯、国会等における議論の概要を明らかにされたい。アメリカでは死刑が最高刑となっているようだが、ドイツ、フランスでも死刑が最高刑になっているのか。三国に言及しながら、この点についてはアメリカの事例しか答弁がないので、他の二国についても明らかにするように求める。また、日本の組対法案に盛り込まれているのに、三国の組対法案の例に記載がない通信傍受に関する議論はどうだったのかも併せて答弁されたい。

(4) 答弁書「一の(4)について」によると、組対法案の最高刑に死刑が盛り込まれたのは、従来の殺人罪に対する刑の上限と比較して「殊更引き下げるべき理由はない」と言うが、組対法案では組織犯罪の重罰化が骨子となっており、刑罰の下限引き上げも盛り込まれている。裁判での求刑意見が一般の殺人罪では無期懲役となるケースでも、組織犯罪であるとして死刑を求める場合も想定されるのではないか。

(5) 答弁書「一の(5)について」には「組織的な犯罪に対する厳格な対応を求める国際的な動向にかんがみ、それぞれの国の刑罰体系の中で組織的な犯罪について重い刑を定めることは、国際的な要請にかなった対応であると考えている。」とあるが、(2)でただしたように何力国に組対法があるかも答弁できない現状で、「国際的な動向」や「国際的な要請」を事実としてどのように評価すればいいのか。また、「重い刑」という漠然とした答弁ではなく、国連加盟各国において、どのように重罰化が図られているのか、具体的に明らかにされたい。とりわけ、死刑廃止国における組織犯罪の重罰化について、詳細に説明されたい。前回主意書の質問は前述の国連人権委員会決議や国連加盟国中、死刑廃止国が過半数を超えている現状で、死刑を組織犯罪対策法案の最高刑にすることも国際的な要請なのかどうか、また死刑を最高刑とすることについて、日本に組織犯罪対策を求めたとされる国のうち死刑廃止国にはどのように説明したのかなどについてただす趣旨だったが、答弁と食い違いもあるようなので、この点についても改めて答弁されたい。

二 死刑廃止を求める決議と死刑をめぐる国際的動向について

(1) 答弁書「二の(1)及び(2)について」によると、前述の国連人権委員会決議に際し、日本政府が反対票を投じたのは「我が国は、死刑制度の存廃の問題については、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまない」との理由とされるが、票決に当たり、こうした趣旨を各国に説明したか。また、これまでに国連などの議論の中で「国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまない」と主張した具体的な日時、場所、それに対する各国の反応、日本の意見が採り入れられずに死刑廃止に向けた決議がなされた経緯などを明らかにされたい。

(2) 「国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまない」理由として、各国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を挙げているが、ヨーロッパ諸国を中心とする死刑廃止国と日本における国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等の異同を明らかにされたい。

(3) 答弁書「二の(3)について」には「ロビンソン国連人権高等弁務官は、第五十四回国連人権委員会において死刑問題決議が採択された後、右決議を支持する旨の発言を行ったものと承知している」とあるが、ロビンソン氏は決議採択後に「米国や日本にも死刑廃止を訴えたい。近い将来、満場一致で死刑廃止決議が採択されることを望んでいる」とコメントしたのではないか。死刑廃止国アイルランド元大統領のロビンソン氏が国連人権高等弁務官に選出された際、日本政府は反対したのか。

(4) 答弁書「二の(4)について」によると、死刑に関する各国の考え方は「(国連人権委員会決議における)各国の投票態度及び立場表明」から国際的に一致した意見はないと認識しているようだが、同決議に当たっての各国の「立場表明」の内容を明らかにされたい。また、答弁書「二の(1)及び(2)について」に記載された反対票を投じた国のうち、現在他国と戦争中の国、人権侵害が発生しているとして日本が警告を発している国、核実験を断行するなど自国の論理のみによって国際社会の潮流を理解しない国はどこか、具体的に列挙されたい。

(5) 答弁書「二の(5)について」には「死刑制度の存続が我が国の外交活動一般に影響を与えることはなく」とあるが、死刑制度を存置していることが犯罪の国際共助、外国人の犯人引き渡しなどの支障となったことはこれまでに一度もないのか。

(6) 答弁書「二の(6)について」には「国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており」と断言している。しかし、過去十年において総理府や読売新聞などが実施した世論調査では確かに「存置」が過半数を超えたが、朝日新聞が衆院議員を対象に実施した調査などでは「廃止」「停止」が「存置」を上回っている。こうしたデータも踏まえずになぜ断言できるのか。

(7) 答弁書「二の(7)について」によると、政府は国際協調主義の原則を宣明した日本国憲法前文について「死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度のような基本的には各国の決定、処理にゆだねられていると考えられる事項について、我が国が自らの判断でその在り方を決定することを否定する趣旨のものでないことは当然」と解釈しているが、前回主意書で指摘した憲法前文中の「政治道徳の法則」に死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度は含まれると考えるか。

三 ルワンダの公開処刑について

(1) 答弁書「三の(1)について」には本年四月二十四日の死刑執行が記載されているが、その後民族大量虐殺の責任者などに対する死刑執行はないのか。

(2) 答弁書「三の(2)について」によると、日本政府は他国の具体的な司法判断に関することについては答弁しないが、ルワンダ共和国政府には平和で安定した国家の再建に努力し、国際社会としてもかかる努力を支援していくことが重要と考えているようだが、後段のルワンダ政府に対する考え方は同国や日本内外に公表したものか。国連加盟国中、日本政府と同様の理由で今回の大量死刑に対するコメントを「差し控えた」国はあるか。逆に大量の死刑執行に対し、人権侵害として批判した国はあるか。また、コメントを差し控えた国と批判した国において、人権意識に異同はあるか。

(3) 前回主意書においては「国連人権高等弁務官がルワンダでの今回の公開処刑にどういう態度を取ったか、承知しているか」とともに「そうした弁務官の姿勢をどのように評価するか」と質問した。「評価」についての見解が答弁書「三の(3)について」にないので、改めて答弁を求める。なお、広辞苑によると、「評価」とは「善悪・美醜などの価値を判じ定めること」と定義されている。

四 組織犯罪対策法と死刑について

(1) 答弁書「四の(1)について」には、組織犯罪対策は「国際的に一致した認識」とあるが、国連などで満場一致で決議されたことがあるのか。具体的に明らかにされたい。もし、そうした事例がなく、サミットなどにおける先進国の共通認識という意味で「国際的に一致した認識」と判断しているのであれば、中国などサミットに加わっていない国の意向が「国際的に一致した認識」に含まれない理由を明らかにされたい。また、前回主意書において質問したのは、組対法は「国際的要請」で、死刑は国連で廃止を促す決議が繰り返されても「自国の判断」と主張する日本政府の姿勢は国際的に理解を得られているかをただしたのであり、こうした二つの姿勢が矛盾しているかどうかの政府見解を質問したのではない。諸外国に対して、こうした二つの姿勢を明確に説明し、理解を得ているかどうか、また諸外国から異論が示されていたならば、どういう議論になったのかなどを尋ねたものであり、改めて答弁を求める。

(2) 答弁書「四の(2)について」には、元オウム真理教の林郁夫被告に対する東京地検検察官の論告は「本来死刑が相当であると判断しながら無期懲役を選択したというものではなく」とあるが、報道によると、論告の要旨はこれまでの判例を指摘しつつ「犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的悪影響といった、いわば犯罪行為とその結果またはそれと直接関連する量刑要素を考慮すれば、正しく極刑をもって臨むほかないと言うべきである」といったん死刑相当の意見を述べた上で、特段の事情として、答弁書前記部分にあるように「組織的な凶悪犯罪の解明と犯罪組織の中枢の検挙による将来における凶悪犯罪の防止に大きく貢献したことなど」を考慮し、無期懲役を選択したとされている。正確な事実はどちらか。また、政府が認識している「司法取引」とはどういうものか、説明されたい。

五 林郁夫被告に対する判決について

(1) 林郁夫被告に対する本年五月二十六日の東京地裁判決は、検察官求刑どおり無期懲役を言い渡したが、判決理由では検察官が情状酌量しなかった犯行当時の事情(例えば、麻原彰晃の犯行指示に逆らうことは困難だったことなど)も刑を減軽する理由に加え、もっぱら逮捕後、組織犯罪の解明、将来の犯罪防止に貢献したという検察官の意見と異なった見解を示した。これまでの判例で、死刑相当としながら情状酌量して無期懲役に刑を減軽した事例のうち、犯行当時の事情を斟酌することなく、主に逮捕後の捜査に対する「大きな貢献」だけを酌量したケースはあるか。

(2) 組対法に関する自民、社民、さきがけの与党協議で、法務省は組織犯罪の重罰化を図ることで「求刑の弾力化が図られる」と説明したが、「弾力化」とはどういう趣旨か、改めて説明されたい。林郁夫被告に対する無期懲役の求刑は「弾力化」を示唆するケースなのか。

(3) 本年五月三十一日付け朝日新聞朝刊に八王子市の男性が「無期懲役にとどめた林被告の判決を支持する」と投書している。その中で、男性は自分が娘を交通事故で亡くし、加害者を憎んだ経験を書いた上で「人間にはいかなる理由でも、人を殺す権利はない。戦争でも、裁判でも、である」「正しい理由があれば、人間は人間を殺してもよいという論理こそが、人類の悲劇を繰り返してきた原因ではないだろうか」と指摘している。こうした国民の声をどのように受け止めるか。

六 報道と死刑について

(1) 本年五月十三日の衆議院法務委員会では、五人の委員が死刑制度や死刑に関する情報公開などについて集中的に質問し、真剣な議論が交わされた。この日の議論とそれに対する報道をどのように受け止めたか。

(2) 検察当局が新聞、テレビの記者に対し、事件の被疑者逮捕や家宅捜索などを事前に報道したとして、その後の取材はもちろん、庁舎内の出入りさえも禁止するようなケースはあるか。あるとすれば、いかなる法令に基づく措置か。

(3) 大蔵省などの接待汚職事件の最中、東京地検がそれまで複数あった取材の窓口を次席検事だけにしたという報道があったが、事実か。事実とすれば、どのような事情によるものか。現在も同様か。

(4) 刑事事件や事件にかかわる今回の組対法案などをめぐる報道について、取材を受ける側の法務・検察当局や警察当局にはどのような態度が求められると考えるか。

(5) 死刑廃止条約の批准を求めるNGOなどによると、最近は国会の会期外に執行してきた死刑について、法務省内で「今度は通常国会の会期内に執行する」と話している幹部がいるというが、事実か。会期末は間もなくだが、執行するのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の(1)について

各種の国際会議において組織的な犯罪に対する対策と死刑存置の問題は別個に議論されているものであり、我が国が参加した組織的な犯罪対策に関する国際連合等の国際会議において組織的な犯罪に関し死刑を刑罰に規定することの当否が議論されたことはなく、また、我が国が参加していない他の地域における国際会議においてそのような議論が行われたという事実は承知していない。

一の(2)について

国際連合に加盟する国は合計百八十五か国であるところ、そのすべての国について組織的な犯罪対策のための法律を制定しているか否かなどを調査することは困難であり、また、必要なこととは考えていない。

組織的な犯罪に対処するための法整備に関する三法案を国会に提出するに当たっては、国際連合における会議を含む主要な国際会議の内容や主要国における法整備の現状等を調査して国際的な動向を把握しているものであって、何ら問題はないと考えている。

一の(3)について

アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国及びフランス共和国において一定の組織的な犯罪の加重処罰、マネー・ローンダリング行為の処罰及び通信傍受を内容とする刑事法を整備した経緯については、次の事実を承知している。

アメリカ合衆国の連邦法においては、千九百七十年(昭和四十五年)、一定の組織的な形態で行われる薬物犯罪についての加重規定が設けられ、千九百九十四年(平成六年)、犯罪組織と一定の関連をもって行われる殺人についてその刑罰に死刑を最高刑として定め、死刑が定められていない連邦法の第二級殺人や州法の殺人よりも加重する規定が設けられた。また、同国においては、千九百六十八年(昭和四十三年)、犯罪捜査のための通信傍受制度に関する法律が整備され、千九百八十六年(昭和六十一年)、法律で定める多数の犯罪を前提犯罪として、マネー・ローンダリング行為を処罰する規定が設けられた。

ドイツ連邦共和国においては、千九百九十二年(平成四年)の法改正により、一定の組織的な盗品譲受け等の加重処罰規定及びマネー・ローンダリング行為の処罰規定が設けられ、また千九百六十八年(昭和四十三年)に導入された通信傍受の対象犯罪の拡大等が行われ、千九百九十四年(平成六年)の法改正により、一定の組織的な恐喝の加重処罰規定が設けられ、マネー・ローンダリング行為の前提犯罪の拡大、通信傍受の対象犯罪の拡大等が行われた。

フランス共和国においては、一定の組織的な窃盗、放火等の加重処罰規定が設けられていたが、千九百九十二年(平成四年)に制定された新しい刑法典においては、これらのほか、麻薬の違法製造、強盗、詐欺等の罪についても、一定の組織的な類型の加重処罰規定が設けられた。また、同国においては、千九百九十一年(平成三年)、犯罪捜査のための通信傍受制度に関する法律が整備され、千九百九十六年(平成八年)、すべての重罪及び軽罪を前提犯罪として、マネー・ローンダリング行為を処罰する規定が設けられた。

これらの法整備については、いずれも、組織的な犯罪等に適切に対処するために必要な措置として行われたものと承知している。

ドイツ連邦共和国及びフランス共和国においては、死刑制度が廃止されているので、殺人罪につき、死刑は刑罰として定められていない。組織犯罪対策法案と死刑に関する質問に対する答弁書(平成十年五月二十九日内閣衆質一四二第二八号。以下「前回答弁書」という。)一の(2)及び(3)についてでは、殺人罪の加重類型につき死刑を法定刑として定めている国の例として、アメリカ合衆国の連邦法についてお答えしたものである。

一の(4)について

死刑の必要性、情報公開などに関する再質問に対する答弁書(平成十年三月二十四日内閣衆質一四二第一〇号。以下「平成十年三月答弁書」という。)一の(6)についてでお答えしたとおり、死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であって、極刑を科することもやむを得ないと認められる場合に行われるものであるところ、これは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案(以下「組織的犯罪処罰法案」という。)第三条の殺人の罪の場合も同様であると考えている。

一の(5)について

国際連合における会議や主要国首脳会議等における議論、主要国における法整備の状況等から、組織的な犯罪に対する厳格な対応を求めることが国際的な動向であり、国際的な要請であると考えている。

死刑制度を廃止した国を含め、国際連合に加盟する合計百八十五か国において、組織的な犯罪に関し、刑の重罰化がどのように図られているかについては、そのすべてを把握しているわけではない。

前回答弁書一の(5)についてでお答えしたとおり、それぞれの国の刑罰体系の中で組織的な犯罪について重い刑を定めることは、国際的な要請にかなった対応であると考えており、一定の組織的な殺人の罪の法定刑の上限を維持し、下限を引き上げることも、組織的な犯罪に対して厳格な対応を求める国際的な要請にかなったものであると考えている。

なお、組織的犯罪処罰法案第三条において、一定の組織的な殺人の罪の法定刑の上限を刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十九条に規定する一般の殺人の罪の刑の上限と同一としたことについては、我が国の刑罰体系上当然のことであって、諸外国に対して特段説明を要するようなものではなく、また、諸外国から説明を求められたこともない。

二の(1)について

国際連合の場では、千九百九十四年(平成六年)十一月二十五日の第四十九回国連総会第三委員会及び千九百九十七年(平成九年)四月三日の第五十三回国連人権委員会において、御指摘の趣旨の発言を行っているが、特に我が国の発言に対し、各国から反応があったという事実はない。

第五十三回国連人権委員会における死刑問題決議は、イタリア共和国が本問題に関する国際連合での議論を継続させることを意図として提出したものと承知しており、千九百九十七年(平成九年)四月三日に、賛成多数により採択されたものである。

第五十四回国連人権委員会における死刑問題決議の採択の経緯は、前回答弁書二の(1)及び(2)についてでお答えしたとおりであり、右採択に際し、我が国は、発言を行わなかった。

二の(2)について

各国における国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等は、それぞれの国ごとに異なるものであり、また、死刑の必要性、情報公開などに関する質問に対する答弁書(平成十年二月十三日内閣衆質一四二第一号。以下「平成十年二月答弁書」という。)一の2についてでお答えしたとおり、死刑制度を廃止した国においても、その廃止に至る背景には様々なものがあると考えられるので、死刑制度を廃止した国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等と我が国のそれらとを単純に比較してその異同を明らかにすることは困難であると考えている。

したがって、死刑制度の存廃の問題は、基本的に各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまないと考えているところである。

二の(3)について

千九百九十八年(平成十年)四月三日付け国連記者発表によると、ロビンソン国連人権高等弁務官は、いつの日か死刑が全会一致により廃止されることを希望する旨発言したものと承知している。

同弁務官の選出については、国連事務総長により指名され、国連総会により承認されたものであるところ、我が国は、同総会における承認に賛成した。

二の(4)について

第五十四回国連人権委員会においては、イタリア共和国が宗教を理由として死刑を正当化することはできない旨述べるなど、七か国が死刑制度の廃止を目指す立場から意見を表明し、他方、シンガポール共和国が死刑の問題は最も重大な犯罪の被害者の身体の安全の問題との均衡を図るべきである旨述べるなど、九か国が死刑制度を存置する立場から意見を表明したものと承知している。

反対票を投じた国のうち、他国と現実に武力紛争を行っている国があるとは承知していない。また、コンゴー民主共和国、ルワンダ共和国及びスーダン共和国について、我が国は、同委員会におけるそれぞれの国の人権状況の改善を求める内容の決議に賛成した。

なお、お尋ねの「国際社会の潮流」とは具体的にいかなるものを指すのか判断しかねるので、「国際社会の潮流を理解しない国」については答弁を差し控えたい。

二の(5)について

前回答弁書二の(5)についてでお答えしたとおり、死刑制度の存続が我が国の外交活動一般に影響を与えることはないと考えている。

個別の逃亡犯罪人引渡し請求の事例に関しては、平成十年二月答弁書五の3についてでお答えしたとおりである。また、国際捜査共助に関しては、我が国における死刑制度の存続が影響を与えた例はない。

二の(6)について

国会議員の間で死刑制度の存廃に関する意見が分かれていることは承知している。

他方、総理府世論調査は、調査テーマについて広く国民全体の意識を把握することを目的として、統計的理論に基づき国民一般から無作為に抽出した者を対象に実施しているものであるところ、平成十年三月答弁書一の(1)について及び一の(2)についてでお答えしたとおり、昭和三十一年四月から平成元年六月までの間に五回にわたり行われた総理府世論調査の結果では、いずれも、「今の日本で、どんな場合でも死刑を廃止しようという意見に賛成か、反対か」という質問に対して反対意見が多数を占めた上、平成六年九月実施の総理府世論調査の結果でも、死刑制度の存廃について、「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が七十三・八パーセントであったことから、これまで「国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており」とお答えしているところである。

二の(7)について

死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度のような基本的には各国の決定、処理にゆだねられていると考えられる事項について、我が国が自らの判断でその在り方を決定することは、憲法前文中の御指摘の部分の趣旨とは関係がなく、これに反するものではないと考えている。

三の(1)について

御指摘の責任者等に対し、死刑が執行されたとの情報は有していない。

三の(2)について

我が国としては、ルワンダ共和国(以下「ルワンダ」という。)政府が、平和で安定した国家の再建に努力し、国際社会としてもかかる努力を支援していくことが重要と考えている旨を、関連の国際会議等の機会に表明し、また、ルワンダに対しても伝えている。

死刑の執行に関する他国のコメントについては、その発出状況の詳細及び発出にかかわる判断の理由について承知していないため、我が国と同様の理由から大量死刑に対するコメントを差し控えた国があるかどうか、また、他国のコメントの発出状況と人権意識との関係については承知していない。

なお、死刑の執行後に発出されたコメントとしては、フランス共和国の外務報道官が、「ルワンダの閣議が、ルワンダの司法当局により宣告された死刑の執行を許可する決定を行ったと承知している。フランスは死刑を廃止しており、それゆえこうした決定に同意することはできない。」旨述べたほか、イギリスが欧州共同体(EU)議長国として、「EUは、ルワンダにおける民族大量虐殺犯二十二名の本日の公開処刑に極めて失望した。」との議長声明を発出したと承知している。

三の(3)について

我が国は従来から国連人権高等弁務官が各国政府との対話等を活発に行っていることを評価している。国連人権高等弁務官が千九百九十七年(平成九年)十二月にルワンダを訪問し、また、先般、ルワンダ政府に対し、公開処刑を行う旨の決定を再考するよう促す趣旨の声明を発出したことについても、このような同弁務官の積極的な姿勢を示すものとして評価している。

四の(1)について

組織的な犯罪に対処するための問題は、国際連合における会議や主要国首脳会議等において、重要な課題の一つとして継続的に取り上げられていると承知している。

例えば、千九百九十四年(平成六年)、中華人民共和国など主要国首脳会議非参加国を含む百四十二か国が参加した国際組織犯罪に関する世界閣僚級会議においては、国際組織犯罪と闘うことの宣言とそれに係る世界行動計画を提唱する「国際組織犯罪に関するナポリ政治宣言及び世界行動計画」がコンセンサスにより採択され、これは、同年の国連総会で、同様、コンセンサスにより承認されている。また、マネー・ローンダリング対策は、組織的な犯罪に対処するために必要かつ有効な施策として重要な意義を有するものであるところ、二十六の国及び地域並びに二つの国際的な機関が参加するマネー・ローンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は、千九百九十六年(平成八年)、コンセンサス採択により、マネー・ローンダリング罪の前提犯罪を薬物犯罪から重大な犯罪に拡大すること等を内容とする勧告を行った。さらに、国連経済社会理事会の委員会の一つである国連犯罪防止刑事司法委員会は、千九百九十五年(平成七年)以降、国際組織犯罪条約の問題について継続して議論を行っており、千九百九十八年(平成十年)四月に開催され、中華人民共和国など主要国首脳会議非参加国を含む百か国以上が参加した第七回同委員会において、この条約を策定するための政府間の特別委員会を設置する旨の決議案がコンセンサスにより採択されたところである。

このような国際的な動向から、前回答弁書四の(1)についてでお答えしたとおり、組織的な犯罪に対して各国が協調して対応することが喫緊の課題であることは国際的に一致した認識であると考えている。

一の(1)についてでお答えしたとおり、組織的な犯罪に対する対策と死刑存置の問題は別個に議論されているものであって、前回答弁書四の(1)についてでお答えした組織的な犯罪に対処するための法整備を行うことと死刑制度の存廃の問題に関する我が国の立場については、諸外国に対してこれらを併せて説明を要するようなものではなく、また、この点に関し諸外国から説明を求められたことも異論が示されたこともない。

四の(2)について

事実は、前回答弁書四の(2)についてでお答えしたとおりである。

林郁夫被告人に対する論告の御指摘の部分は、「犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的悪影響といった、いわば犯罪行為とその結果又はそれと直接関連する量刑要素を考慮すれば、特段の事情のない限り、正しく極刑をもって臨むほかないと言うべきである。」旨述べたものであるが、これは、右文言に明らかなとおり、各般の情状のうち、いわば犯罪行為とその結果又はそれと直接関連する量刑要素に限って考慮した場合を仮定して述べたにすぎないものであって、検察官は、その他の情状を含めた各般の情状を併せ考察して、無期懲役が相当であると判断して、その旨の求刑を行ったものである。

なお、司法取引とは、一般に、刑事事件において、検察官と被疑者、被告人とが交渉し、事件の処分等について合意することであると理解している。

五の(1)について

林郁夫被告人に対する無期懲役の求刑は、前回答弁書四の(2)についてでお答えしたとおり、検察官において、各般の情状を併せ考察して、無期懲役が相当であると判断したことによるものであり、御指摘のように、組織的な凶悪犯罪の解明と将来における凶悪犯罪の防止に貢献したことのみを被告人に有利な情状として考慮したというものではない。

一般に、裁判所による量刑は、それぞれの事案ごとに、その犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を含む各般の情状を併せ考察してなされるものであり、お尋ねのような裁判例は、承知していない。

五の(2)について

組織的犯罪処罰法案第三条の規定による刑の加重は、現行法の法定刑では違法性の評価が不十分であり、その尺度の中では適切な量刑がなし得ないと思われる罪について、この規定に該当する場合の類型的な違法性の高さに着目して法定刑を引き上げることによってその違法評価を明示し、適切な量刑をなし得ることとするものである。このうち、法定刑の上限を引き上げる罪については、刑事責任の軽重に応じ、その重い者に対しては重い刑を、その軽い者に対しては軽い刑を求刑することが可能となるとの意味で、求刑の弾力化が図られると考えている。

林郁夫被告人に対する無期懲役の求刑は、検察官において、刑法第百九十九条に規定する現行の殺人の罪の法定刑の範囲内で、当該事件における各般の情状を併せ考察して無期懲役が相当であると判断したことによるものであり、前記法定刑の上限の引上げによる求刑の弾力化と関係するものではない。

五の(3)について

平成十年二月答弁書一の1についてでお答えしたとおり、我が国における死刑制度の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。

なお、国民の間に御指摘のような意見もあることについては、事実として受け止めている。

六の(1)について

死刑制度、死刑に関する情報公開等については、御指摘の法務委員会における議論とそれに対する報道を始め、様々な議論があることを承知しており、これらの議論の動向には、今後とも関心を払ってまいりたいと考えている。

なお、死刑制度の存廃の問題については、前回答弁書二の(6)についてでお答えしたとおりであり、死刑に関する情報公開については、事柄によっては、それを開示することにより、個人の生活の平穏等の私的な権利利益を害し、又は公務の適正な遂行等の公共の利益を損なうおそれも認められるのであり、これらの利益を保護するためには、事柄によっては開示しないことも必要であると考えている。

六の(2)について

報道機関が、その独自の取材により捜査をめぐる情報を事前に報道し、捜査の遂行に深刻な影響を及ぼしたときには、検察当局として、その後の取材や取材のための庁舎内への出入りをお断りする場合もあるものと承知している。

例えば、東京地方検察庁においては、従来より司法記者クラブとの間で、報道の自由と捜査の秘密及びその適正な遂行との調和を図るため、互いに意見を交換し、検察庁側から捜査妨害となるような取材は差し控えられたいこと及びそのような取材がなされた場合は不本意ながら取材をお断りする場合があることを要望するなどして、両者の間では、いわば紳士協定的な一定のルールができており、同検察庁ではこのルールにのっとって適切に対応しているものと承知している。

六の(3)について

東京地方検察庁においては、かねて、次席検事のほか、各部の部長等が報道機関の取材に対応し、捜査、公判への影響や関係者の名誉等に慎重に配慮し、必要かつ相当な範囲の広報を行っているところであるが、お尋ねの事件の捜査当時、報道機関相互の激しい取材競争の下で、その独自の取材により捜査をめぐる情報が事前に報道される事態が生じた。このため、検察が捜査をめぐる情報を漏らして世論作りをしており、その結果、関係者が自殺に追い込まれるに至ったなどとの誤解に基づく批判が一部にあり、更に同様の批判を招きかねない状況にあると考えられたので、このような誤解を避けるとともに、報道機関にも捜査をめぐる取材及び報道の在り方について配慮を求める趣旨で、本年三月十三日から同月末日までの間、一時、取材の窓口を次席検事に一本化する措置を採ったものである。

六の(4)について

刑事事件に関する情報を公判以外の場で明らかにすることは、現在及び将来における捜査、公判に対し不当な影響を及ぼしたり、事件関係者の名誉等を損なうおそれが大きいので、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四十七条本文は、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」と規定し、また、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条第一項が公務員の守秘義務を定めており、検察及び警察としても、刑事事件に関する情報の秘密を厳守しているところである。

しかしながら、刑事訴訟法第四十七条ただし書が、「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」としていることなどから、国民の関心の高い事件等につき、被疑者の逮捕、起訴等の重要な局面において、事後的に、広報の責任者である次席検事、都道府県警察の幹部等が、捜査や公判に支障を生じさせず、かつ関係者の名誉等を害することがないように、その範囲を慎重に判断しながら、逮捕の理由となった被疑事実や捜査経緯の概要等を公表することは、差し支えないものと考えている。

組織的犯罪処罰法案等の法律案に関しては、その正確な理解を得るため、法案の趣旨、概要等について報道関係者に説明の機会を設け、また、個別の取材に応じて説明をしてきている。

六の(5)について

個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1承知していない ×5

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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