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死刑執行と法務省に関する質問主意書
衆議院 第144回 第1号承知していない ×1検討してまいりたい ×1個別の事案 ×1
質問本文
報道によると、法務省は一九九八年十一月十九日、死刑確定者三人の刑を執行したと発表したという。政府は死刑について、これまでの法務委員会質疑や質問主意書に対し、繰り返し議論の必要性を答弁してきた。さらに、死刑の議論については「一定期間処刑を実験的に停止し、その存続や改善方法を立法府に委ねたらどうか」とする最高裁判決の補足意見がある。今回の執行も国会閉会中であり、法務省は明らかに国会と最高裁をないがしろにしたと言わざるをえない。
また、国連加盟国の過半数は死刑を廃止し、死刑廃止条約も締結され、ジュネーブの規約人権委員会は十一月五日、重ねて日本に死刑廃止議定書の批准を勧告するとともに、国際的なレベルからあまりにもかけ離れた日本の人権擁護の姿勢を改めて批判した。こうした状況下での死刑執行は暴挙であり、厳しく非難する。政府には自重と法務省に対する監視を求めるものである。
とはいえ、法務省が死刑の執行を公表したことは、これまで何度も求めてきた情報公開のほんのわずかな一歩として評価する。ただ、今回の情報公開の程度が全く不十分だったことは新聞などでも指摘されたとおりである。「57人の死刑囚」「死刑」「死刑執行人の記録」など、死刑についての著作が相次いで出版され、死刑に関する情報公開を求める声が大きく、法務省が旧態依然として独りよがりに考える「心情の安定」を死刑確定者も国際世論も全く望んでいないことが明らかになる中で、法務官僚の都合だけで死刑に関する情報をどこまで隠し続けられるか。それは法務省がどこまで国民世論と国際的潮流を無視し、東京地裁の法廷での麻原彰晃被告に見られる「唯我独尊」の態度を続けられるかを正面から問うものである。以下、死刑執行と「唯我独尊」の法務省について、これまでの質問主意書のやりとりの一部も踏まえながら質問する。
一 十一月十九日の死刑執行
(1) 死刑執行の当日に執行者数を発表したのは初めてか。
(2) どのような形で発表したのか。法務省の誰が何時何分、どこで誰に向けていかなる形で発表したのか。
(3) 執行者数を発表した理由を明らかにされたい。
(4) 執行された三人は誰か。三人の判決や確定記録を十分精査しても死刑に処すことに一点の曇りもなかったということか。
(5) 執行された三人には、いつ死刑の執行を通告したか。
(6) 執行を通告しようと、三人の死刑確定者を各舎房から出そうとした際、死刑を執行したことのある元刑務官の著作から以下に引用したような状態になったか。
「刑務官は自然と足音を殺して舎房の廊下を歩いた。『田村、出房だ』警備隊長が窓から静かに声をかけた。『はい』田村は立ち上がって服装を整えた後、部屋の中央に正座した。房を出るときの決まりである。扉が開いても、刑務官が出ろ!と言わなければ立ってはいけない。扉が開かれた。『出なさい』『うわぁ!』スリッパを揃えて廊下に出ようとした田村は多数の刑務官を見て大声を上げ、房の奥に逃げ込んだ。『出てこい!』警備隊長が叫ぶと同時に、房に飛び込み、田村の襟首をつかんで引きずり出そうとした。『ギャー!人殺し!』『この野郎!おい、担ぎ出せ』警備隊長が怒鳴った。舎房にはほかに二人の死刑囚と二十七名の被告人がいる。不気味なほどシーンと静まり返っていた。息を凝らして成り行きを見ているのかもしれない。田村光男は刑務官に手足を持たれ、手提げバッグのように、軽々と振り回され、二度三度、身体を扉の枠にぶつけられてから、一気に舎房を出て渡り廊下を数メートル走っていた。口にはタオルが詰め込まれていた。コンクリートの廊下に投げ飛ばされた田村は手錠を掛けられた」(元広島拘置所総務部長の坂本敏夫著「死刑執行人の記録」から)
(7) 拘置所長が死刑の執行を通告した際、三人の死刑確定者は以下に引用したような状態になったか。
「田村は刑の言い渡しという儀式のために丸太のように担がれて講堂に運ばれる。渾身の力を込めて暴れる田村、それを押さえ付ける刑務官たち、共に必死の形相だった。講堂では、所長、総務部長、処遇部長、庶務課長、会計課長、企画部門の首席矯正処遇官、僧衣を着た教誨師、それに牧村が田村の到着を無言で待っていた。廊下を喧騒の固まりが移動して来る。牧村はいやな予感がした。慌てて廊下に出ると、果たして刑務官の肩の高さに担がれた田村がやってくる。『田村光男、刑の執行指揮書がきた。これから死刑を執行する』所長が大きな声を出して言った。(中略)『田村君、田村君』牧村の呼びかけに、田村はまったく反応を示さなかった。(中略)『田村光男、遺言はないか?遺書を書く時間を与えることができるが……』刑務官に両脇を抱えられ、身動きできない田村に所長が言った。『……』田村は所長を睨みつけた。『何だその目付きは!』田村の前に処遇部長が立ち塞がった。『ウウ……』田村は顎を突き出した。『隊長!タオルを取ってやれ』牧村が言った。警備隊長は所長を見た。所長は処遇部長の後ろに隠れている。」(同書)
(8) 三人の死刑確定者は刑を執行され、刑務官に殺害された際、元刑務官二人の著作から以下に引用するような状態だったか。
「九時五十分、打ち合わせの通り、田村が刑場に入った。警備隊長以下五人の刑務官に取り囲まれていた。(中略)右側に祭壇があり、香が炊かれ、生花と果物、それに菓子が供えられていた。左側にはカーテンが引かれていた。このカーテンは薄いブルーの布地だった。その向こうの処刑室を田村は見ることができない。(中略)牧村は晒の白布を取って、田村の後ろに回り、目隠しをした。『首席さん、お世話になりました』田村が小さな声で言った。警備隊長が金属手錠を後ろ手に掛けた。カーテンが開けられると同時に田村は、警備隊長に促されて祭壇に背を向けて刑壇に向かった。一メートル四方の刑壇の中央で静止をさせるのと同時に、首にロープが掛けられ、膝が縛られた。警備隊長がロープを締めて金具の部分を後頭部に当て手を上げた。午前十時五分、牧村の合図で執行ボタンが押された。田村の身体は刑壇から沈んだ。ロープと滑車の衝撃と田村の頸部脊椎の骨折と筋肉の断裂などの音が一瞬のうちに混ざって、『ダン!』という耳を裂く合成音が刑場に響いた。所長、検事、牧村がほぼ同時にポカリと穴の開いた刑壇の周りに走り寄り、吊された田村を覗いた。ロープが激しく揺れて、きしんでいる」(同書)
「処刑台の踏み台の上に立たされ、吊されている麻の綱の輪になった部分を首にかけられたとき、Xは突然、『お母さん!』と大声で絶叫した。Xの首に綱をかけた職員が踏み台から外に出るのと同時に、保安課長が片手をあげて合図した。その瞬間、Xの足もとの板がバタンと左右に開き、その音とともに、彼の身体は四角い暗い穴のなかに落ちていった。綱は震えながらピンと張りきり、しばらくの間、前後左右に揺れたり、回ったりしながら、綱自体がビリビリ震えている。見守っている職員たちは、いっせいに合掌の手に力を入れ、読経の声もいちだんと大きくなる」(元刑務官の戸谷喜一著「死刑執行の現場から」)
(9) 執行された三人の死刑確定者は遺言を残したか。
(10) 三人の執行にかかわった各拘置所の刑務官の「心情の安定」について、調査や配慮を尽くしたか。
(11) 三人の執行場所となった各拘置所長は、元刑務官の著作から以下に引用するような心境で、執行に当たったのか。
「昨日(執行前日)のことだった。『田村はおとなしく死刑台に乗りますかね』処遇部長の言葉に所長が答えた。『法務省は検事がトップだ。検事は法秩序を守ることしか考えていない。刑務官にいい人を求めてはいないんだよ。そう、法秩序だ。いいか、失敗は許されないということだ。とにかく殺すこと。うまくやるんだ。君たちはそのために私の補佐をしているんだ。足を引っ張るんじゃないぞ」(坂本敏夫著「死刑執行人の記録」)
(12) 前掲の「死刑執行人の記録」には、執行直前に通告する「騙し討ちのような突然の処刑」に死刑確定者が抗議する場面が描かれているが、これは事実か。
(13) 三人の執行で「騙し討ちのような突然の処刑」に抗議したケースはあったか。
(14) 三人の死刑執行が発表された十一月十九日、新聞、テレビは執行された死刑確定者の名前を報道していたが、報道に誤りはなかったか。報道機関に対し、死刑執行の報道について、法務省は訂正ないし抗議を行ったか。
二 参院選公示日の死刑執行
(1) 前回参院選が公示された一九九八年六月二十五日に死刑を執行したか。執行したとすれば、どこで誰を処刑したか。
(2) 執行したとすれば、処刑された死刑確定者について、判決や確定記録を十分精査しても一点の曇りもなかったのか。
(3) 執行したとすれば、処刑された死刑確定者にはいつ執行を通告したか。
(4) 前国会の質問主意書に対する答弁によると、六月二十五日午後七時ごろに議員が法務省で面会した刑事局総務課長は、その前後にプライベートな時間を省内で過ごし、議員と面会したときだけ公務に復帰したということである。国民の税金で負担されている俸給の計算の元となる勤務時間はどのようになっているのか。いったん勤務を終了しても省内に残り、再び勤務し、さらに省内でプライベートな時間を過ごすことは、法務省の職員にはよくあることなのか。
(5) 前国会の質問主意書に対する答弁によると、政府は「法務省の職員は勤務時間終了後、速やかに退庁しているものと承知している」のに、刑事局総務課長はこの日、勤務を終了しても省内にいた。これは政府が承知しない異例の事態と解するべきなのか。
(6) 法務省が主催する矯正施設の長を集めた会同には、どんな種類があるか。
(7) 矯正施設の長を集めた会同後、通例懇親会は開かれるか。開かれるとすれば、そこに刑事局総務課長は出席するか。
(8) 一九九八年六月二十五日に矯正施設の長を集めた会同は開かれたか。
(9) 法務大臣の指揮により、拘置所で刑務官が苦悩しながら命令された死刑の執行に当たった日に、法務省内で公務、プライベートを問わず、飲酒することは適当か。
(10) 六月二十五日、私たち議員が面会した刑事局総務課長は省内で飲酒していたと見受けられるが、前国会の質問主意書に対する答弁で、政府は「勤務時間終了後の職員のプライバシーにかかわる事項であり、お答えする立場にない」という。死刑執行当日、処刑された死刑確定者とその遺族の心情、現場の刑務官らの苦悩に配慮せず、死刑執行の起案にかかわる関係部局の幹部が省内で飲酒することは極めて不適切と考えるが、調査し、処分を検討するつもりはないのか。厚生省、大蔵省、防衛庁などで不祥事が後を絶たない中、内閣は政府全体の問題として熟慮の上、答弁されたい。
三 最高機関
(1) 国権の最高機関はどこか。
(2) 死刑をめぐり、国会で議論が続き、最高裁判決の補足意見も一定期間執行を中止して国会で議論することを求めているのに、死刑の執行を繰り返しているのは、法務省が自らを国会や最高裁を超えた「最高機関」と錯覚しているからではないか。
(3) 法務省は一九九八年十一月五日、ジュネーブの規約人権委員会で、日本に対して死刑に関する勧告を採択したことを知っているか。知っているとすれば、どのような内容を勧告されたか。
(4) 死刑をめぐる規約人権委員会の勧告に対し、どのように考えるか。
(5) これまでの質問主意書に対する答弁で、政府は執行された死刑確定者の中に「無実の者は含まれていないと確信している」と繰り返してきた。その根拠は三審制の裁判と再審制度に加え、執行前に判決や確定記録を十分精査しているからという。三審制の裁判にも誤りがあることは、再審で四件も死刑確定者の無罪判決が相次いだことで明らかと考えるが、どうか。
(6) 再審制度がどこまで冤罪を救済できるか、政府はどのように考えるか。法務省矯正局長通達で、死刑確定者の外部交通が著しく制限され、満足に弁護士とも交信できない現状を踏まえて答弁されたい。
(7) 執行前の判決と確定記録の精査は、どれくらいの時間をかけてやっているのか。関係者の事情聴取などをしているか。
四 法務省の綱紀粛正
(1) 厚生省、大蔵省、防衛庁は汚職事件などで幹部、元幹部らが逮捕、起訴され、綱紀粛正を誓ってきた。それが十分に徹底されているかどうかは今後の問題だが、一連の汚職事件などを摘発した検察と組織、人事的に一体の法務省では、綱紀粛正にどのような施策を講じてきたか。
(2) 一九九八年五月一日と二十五日、現法務省刑事局長の松尾邦弘氏の自宅にナイフ入りの脅迫状が送り付けられたり、玄関に火炎瓶などがおかれたりしたと報道されているが、事実か。捜査はどうなっているか。
(3) 報道によると、前橋地検は一九九八年十月二十三日、地検内にある証拠品の金から現金百八万円を盗んだ窃盗容疑で、同地検の検察事務官を逮捕したとされるが、事実か。事実とすれば、刑事処分と庁内の処分はどうなったか。また、再発防止などのために監督責任者の処分は適正になされたか。
(4) 報道によると、秋田県警秋田署は一九九八年四月二十日、テレホンクラブに通い、知り合った高校一年の女子生徒と淫行した同県青少年健全育成条例違反容疑で、秋田地検の検察事務官を逮捕したとされるが、事実か。事実とすれば、刑事処分と庁内の処分はどうなったか。また、再発防止などのために監督責任者らの処分は適正になされたか。
(5) 前掲の元広島拘置所総務部長坂本敏夫氏の著作「死刑執行人の記録」には、刑務所内で収容者の「ハト」(外部に伝言して謝礼をもらう)行為をでっち上げられ、退職に追い込まれる刑務官のケースなどが紹介されているが、事実か。
(6) 同書には、矯正施設の封建的な体質、人事の不公正などが指摘されているが、事実か。事実とすれば、改善のためにどのような対策を講じているか。
(7) 同書には、国家公務員上級試験に合格し、法務省に入った職員が検事しか幹部に登用されず、局長になれないためにやる気をなくしている様子が描かれているが、こうしたケースは本当にあるのか。局長、部長以上で、検事以外の職員は何人いるか。
(8) 法務省内で、職員が人事の不満などから刑事事件に発展するような嫌がらせをしたケースはあるか。
(9) 一九九六年から九八年にかけて、法務省・検察庁職員が逮捕、起訴された事件はどれだけあるか。事件の概要、刑事処分、判決内容、省内処分、監督者の処分などを具体的に明らかにされたい。
(10) 一九九六年から九八年にかけて、法務省・検察庁職員が内部調査で国家公務員法の懲戒処分を受けたケースは何件あるか。また、どのようなケースがあるか。
五 隼君事件
(1) これまでの質問主意書に対する答弁によると、東京都世田谷区の片山隼君の交通事故で、隼君の両親が東京地検に加害者の刑事処分などを照会した際、「説明する義務はない」などと対応した同地検の女性職員は、後日法務大臣がこうした対応を国会で陳謝したにもかかわらず、何の処分も受けていないという。この状態は現在も変わらないか。
(2) 不適切な対応をした東京地検の女性職員には、口頭で注意したか。
(3) 国民の官庁に対する信頼を醸成するには、その官庁の仕事全体への評価を高めるとともに、官庁の窓口の対応にも十分気を配ることが必要と考えるが、どうか。
(4) 不適切な対応をした職員を処分もせず、放置しておくことは適切か。
(5) 報道によると、東京地検は再捜査の結果、隼君をはねた運転手を起訴し、次席検事は従前の捜査が不十分だったことを認めたとされるが、事実か。報道機関に対する発表内容を明らかにされたい。
(6) 報道によると、次席検事のコメントの中には、従前の捜査を担当した検事(副検事)が「捜査をあせった」との指摘もあったようだが、事実か。
(7) 運転手起訴で、捜査の不十分さが明らかになったとすれば、従前の捜査を担当した検事(副検事)にはどのような処分がなされたか。また、再発防止などのために監督責任者の処分は適正になされたか。
(8) 朝日新聞一九九八年十一月二十八日付け朝刊には、隼君事件の運転手起訴を当然とした上で「忘れてならないのは、隼君の死以前もそれ以後も、同じように命を奪われた歩行者が大勢いるということです。今回の事故を契機にして、青信号でも安心して歩けない現在の道路環境のあり方を改善していくのでなければ、犠牲者の方々の尊い命は報われないのではないでしょうか」と指摘する投書が掲載された。政府はどのように考えるか。
(9) 前掲の投書は続けて「通学路などの生活道路と自動車道路が完全に分離されるのが理想ですが、当面、スクランブル交差点で採用されているような分離信号を大幅に導入するなど、歩車分離の方策が早急に必要だと思います。交通関係者の皆さんの創意と行動力に期待します」と意見を述べているが、政府はどのように考えるか。
六 謙抑的姿勢
(1) 行政府はミスがあれば、すみやかに改めて国民に謝罪するとともに、再発防止のため、関係者を適正に処分する。さらに、新聞の投書などの国民の声や国会の議論に誠実に耳を傾け、より適正な行政の運営に謙虚に取り組む姿勢が必要と考えるが、違うか。法務省にはこうした姿勢があるか。
(2) 私はこれまでの死刑に対する姿勢、隼君事件、相次ぐ不祥事、内部処分をしないで過ちを過ちと認めない態度、度重なる質問主意書のやりとりなどから、法務省の職員には「公僕」としての十分な自覚が欠けていると考えるが、政府はどう考えるか。
(3) 同様の理由から、法務省は国民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢に欠けると考えるが、政府はどう考えるか。もし、そうでないと主張するならば、国民の声に謙虚に耳を傾けた実例を挙げられたい。
(4) 元毎日新聞記者の山本祐司氏の著書「特捜検察物語」によると、検察は一時期苦しんだ時代もあったようだが、法と証拠に基づき、適正な捜査を続けてきた。過労死した検事などもおり、タブーを排し、社会正義の実現に尽くすその姿には胸打たれるものがある。しかし、時として法務省はそうした検察の捜査にいわゆる「国家有用論」の立場から介入し、社会正義の実現を妨げようとしたことがあると同書では指摘されているが、事実か。
(5) 法務省には死刑執行という人を殺害する権力がある。それに加えて社会正義の実現に尽くす検察の権力を都合よく利用すれば、相手が立法府であろうと裁判所であろうと、中央官庁であろうと、不当に介入できる危険性がある。だからこそ歴史的に「謙抑的」という言葉に象徴されるような姿勢が求められ、過去のほとんどの時代は法務省自身が厳しく自らを律してきた。しかし、私は前掲の理由から現在の法務省は必ずしも「謙抑的」ではなく、逆に強権的でさえあると考えるが、政府はどう考えるか。
(6) 大蔵省汚職、防衛庁の背任と汚職、中島洋次郎議員の政党助成金不正事件など、検察は社会正義の実現のため、頑張っている。一部報道によれば、法務省の高官と最近まで法務省高官だった検察首脳がこうした事件の捜査に不当に介入していると指摘されているが、こうした事実はあったか。
右質問する。
政府答弁書
一の(1)及び(2)について
平成十年十一月十九日午後一時ごろ、法務大臣官房秘書課広報室職員が、法務省内において、新聞社等の記者に対し、「本日、死刑確定者三名に対して、死刑の執行をしました。」旨記載したメモを配布するなどして、死刑執行の事実を発表した。
調査した範囲では、法務省が、死刑執行の当日に執行者数を発表したのは、このときが初めてである。
一の(3)について
これまで死刑執行に関し、その事実を公表してこなかった理由は、国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表して、刑の執行を受けた者やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないこと、個々具体的な死刑執行の事実の公表は、死刑を執行された者の遺族の感情、他の死刑確定者の心情の安定等を損なう結果を招きかねないこと等の問題があるためであり、その基本的な考え方自体は現在も変わっていない。
しかしながら、他方で、情報を公開することにより、刑罰権行使が適正に行われていることについて国民の理解を得るとの要請もあるので、前記の基本的考え方は変えることなく、可能な範囲で情報を公開することとし、死刑執行後に執行の事実及び執行を受けた者の人数に限って公表したものである。
一の(4)について
死刑の執行を受けた者の氏名については、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。
死刑の執行に際しては、法務大臣は、省内関係部局をして判決及び確定記録の内容を十分精査せしめ、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討し、これらの事由等が存在しないことが確認された場合に、死刑執行命令を発しており、平成十年十一月十九日の執行に際しても所要の精査及び検討を遂げたものである。
一の(5)について
個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
なお、一般的な取扱いとして、死刑の執行の告知は、当日、執行に先立ち行っている。
一の(6)から(9)までについて
個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
一の(10)について
死刑制度などに関する質問に対する答弁書(平成十年八月二十一日内閣衆質一四二第六四号)五の(9)についてでお答えしたとおり、刑務官の心情の安定を期するための特別の措置はないが、同答弁書五の(5)についてでお答えしたとおり、死刑執行に当たる職員の心情等については、十分耳を傾けなければならないものと考えているところであり、本件においても同様の姿勢で臨んだものである。
一の(11)について
御指摘のような職員個人の心境については、お答えする立場にはない。
一の(12)並びに四の(5)及び(6)について
御指摘の著作は、小説であり、事実を記録したものではないと承知している。
一の(13)について
個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
一の(14)について
平成十年十一月十九日に死刑の執行を受けた者の氏名を報道する新聞等があったことは承知しているが、法務省が、その報道に対して訂正の申入れや抗議を行った事実はない。
なお、死刑の執行を受けた者の氏名に関する報道内容に誤りがあったか否かについては、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。
二の(1)について
平成十年六月二十五日、三名の死刑確定者に対して死刑の執行をした。
右死刑の執行を受けた者の氏名や執行場所については、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。
二の(2)について
平成十年六月二十五日の死刑の執行に際しても、一の(4)についてでお答えしたとおりの所要の精査及び検討を遂げたものである。
二の(3)について
個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
なお、一般的な取扱いは、一の(5)についてでお答えしたとおりである。
二の(4)について
法務省刑事局総務課長の正規の勤務時間については、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)等に定められており、月曜日から金曜日までの午前九時三十分から午後零時三十分まで及び午後零時四十五分から午後五時四十五分までとされている。
正規の勤務時間以外の時間における勤務については、正規の勤務時間における勤務を終了した後においても、更に勤務の必要が生じた場合には、同法律等の定めるところにより勤務を行うことがある。
二の(5)について
一般に、法務省の職員は、勤務時間終了後、速やかに退庁しているものと承知しているが、職員個々の事情により、勤務時間終了後、即時に退庁していないケースもある。
二の(6)について
御質問の会同としては、「矯正管区長、刑務所長、少年刑務所長及び拘置所長会同」、「矯正管区長、少年院長及び婦人補導院長会同」及び「矯正管区長、少年鑑別所長会同」がある。
二の(7)について
通例、御質問のような懇親会が開催されているが、御指摘の職員は、出席していないと承知している。
二の(8)について
御質問の日には「矯正管区長、少年鑑別所長会同」が開催されている。
二の(9)及び(10)について
勤務時間終了後の職員のプライバシーにかかわる事項については、お答えする立場になく、また、法務省刑事局総務課長の行動を調査し、その処分を検討するつもりはない。
三の(1)について
憲法第四十一条は、国会は国権の最高機関である旨定めている。
三の(2)について
死刑問題に関して様々な議論があることは承知しているが、現在、我が国においては死刑制度があり、憲法第七十三条第一号は、法律を誠実に執行することを内閣の事務として定めているので、政府としては、国会によって制定された法律の誠実な執行の一環として死刑執行を行っているものである。
三の(3)について
法務省においては、平成十年十一月五日、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「規約」という。)に基づき設置された人権委員会が、規約に基づく日本政府第四回報告に対する審査の結果を踏まえて、死刑に関し、我が国に対して、死刑の廃止に向けた措置を講ずること及びそれまでの間死刑の適用が規約第六条2に従い最も重大な犯罪に限定されるべきこと並びに死刑確定者の拘禁状態が規約第七条、第十条1に従い人道的なものとされることを勧告する旨の最終見解を採択したことを承知している。
三の(4)について
規約に基づき設置された人権委員会が我が国に対して行った死刑の廃止に向けた措置等に関する勧告については、死刑制度の存廃をめぐる様々な意見の一つとして謙虚に受け止めている。
しかし、死刑制度の存廃の問題については、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものである。我が国においては、死刑制度の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当でないと考えている。
また、我が国では、個別の事件における死刑の選択は、昭和五十八年七月八日最高裁判所第二小法廷判決において示された判断を踏まえて、極めて厳格かつ慎重に行われており、死刑は、罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対してのみ科されていると考えている。
他方、同委員会が我が国に対して行った死刑確定者の拘禁状態に関する勧告についても、同様に一つの意見として謙虚に受け止めており、引き続き、死刑確定者に対し適正な処遇を行ってまいりたい。
しかしながら、死刑確定者については、心情の安定に配慮しつつその身柄を確保するという収容の目的等にかんがみ、面会や信書の発受に一定の制約を設け、あるいは執行前ではなく、執行後速やかに家族等に連絡する取扱いは、規約第七条及び第十条1に違反するものではないと考えている。
三の(5)及び(6)について
我が国においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査公判を通じて慎重な手続により有罪が確定されている上、再審制度が保障されており、有罪を認定することについては、適正な判断がなされているものと考えている。加えて、死刑は、その言渡しを受けた者の生命を断つ極刑であり、一度執行されれば回復し難いこととなるのであるから、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討するために、判決及び確定記録の内容を十分精査せしめているので、死刑を執行した者の中には誤判による無実の者が含まれていることはないと確信している。
なお、御指摘の法務省矯正局長通達は、昭和三十八年三月十五日付け法務省矯正局長依命通達「死刑確定者の接見及び信書の発受について」を指すものと思われるが、死刑制度などに関する質問に対する答弁書一の(14)についてでお答えしたとおり、同通達においても、再審弁護人との外部交通は禁じておらず、死刑確定者が再審のために弁護士と接見し、及び信書を発受することは、制約されていない。
三の(7)について
死刑の執行に際しては、個々の事案に応じて、判決及び確定記録の内容を十分な時間をかけて精査するとともに、所要の調査を遂げ、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討しているところである。
四の(1)について
法務省においては、平成八年十二月二十七日、綱紀粛正について法務省職員倫理規程(平成八年法務省人訓第二千九百八十三号大臣訓令)を定めるとともに、会同、会議、研修等の機会を利用して注意を喚起するなどして、その周知徹底を図っている。
四の(2)について
平成十年五月一日、御指摘の法務省関係者の自宅郵便受け内にナイフ及び脅迫状が、同月二十五日、同自宅玄関先に火炎瓶及びマッチが、それぞれ置かれているのが発見されており、現在、警視庁において所要の捜査を行っているものと承知している。
四の(3)について
御指摘の件は事実である。
当該検察事務官については、刑事処分として、平成十年十一月十日、窃盗の罪の容疑により前橋地方裁判所に起訴した。
また、同年十一月四日、同検察事務官に対し、免職の懲戒処分を行った。
さらに、監督者らに対しては、俸給月額の百分の五の減給一月間の懲戒処分等を行っているほか、このような事件の再発防止のため、改めて各種会同及び協議会において綱紀の保持に万全を期すよう指示等を行っている。
四の(4)について
御指摘の件は事実である。
当該検察事務官については、刑事処分として、平成十年四月二十二日、秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例(昭和五十三年秋田県条例第三十三号)違反の罪の容疑により秋田簡易裁判所に起訴し、同日同裁判所により罰金五十万円の略式命令が発せられた。
また、同日、同検察事務官に対し、停職二月間の懲戒処分を行った。
なお、監督者に対する処分は行っていないが、このような事件の再発防止のため、改めて各種会同及び協議会において綱紀の保持に万全を期すよう指示等を行っている。
四の(7)について
法務省においては、かねてから、適材適所に配慮した公平な人事管理を行っている。
法務本省の局長及び部長以上については、計十一名のうち、現在、検事でない者は二名である。
四の(8)について
御質問のようなケースがあったとは承知していない。
四の(9)について
平成八年から平成十年までの間、法務省及び検察庁職員が逮捕されかつ起訴された事件については、次のとおり、六件把握している。
1 検察事務官が、刑事事件の証拠品である現金合計百六十八万六千円を窃取した事実で公判請求され、第一審で懲役一年、第二審で懲役一年、四年間執行猶予の有罪判決の言渡しを受け、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが訓告の処分を受けている。
2 拘置所職員が、未決勾留中の被告人に逃走用に供する金切り鋸一丁等を手渡し、同人を逃走させようとしたが未遂に終わった事実で公判請求され、第一審で懲役二年六月に処せられ、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが戒告等の処分を受けている。
3 検察事務官が、十八歳未満の少女に対しみだらな性行為をした事実で略式請求され、罰金五十万円に処せられ、同事件については、本人が停職二月間の処分を受け、その後辞職している。
4 法務省本省職員が、地下鉄電車内で女性乗客に対しいわゆる痴漢行為に及んだ事実で略式請求され、罰金五万円に処せられ、同事件については、本人が俸給月額の百分の十の減給一月間の処分を受け、その後辞職している。
5 検察事務官が、刑事事件の証拠品である現金合計八百八十万円を窃取した事実で公判請求され、現在公判係属中であり、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが俸給月額の百分の五の減給一月間等の処分を受けている。
6 少年院職員が、十八歳の女性に対し、電話により、同女の身体に危害を加えかねない気勢を示したり、同女との性交渉の場面の写真を公開する旨告知するなどして脅迫した事実で公判請求され、現在公判係属中であり、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けている。
四の(10)について
平成八年、同九年及び同十年に国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)上の懲戒処分を受けた法務省及び検察庁職員数は、それぞれ百十二人、九十人及び七十九人(平成十年については、十二月一日現在)である。その内容は、一般服務関係、通常業務処理関係、公金官物取扱関係、横領等関係、収賄・供応関係、交通事故・交通法規違反関係、公務外非行関係、監督責任関係の各事実である。
五の(1)及び(2)について
御指摘の職員に対し、処分や口頭による注意は行っていない。
五の(3)及び(4)について
御指摘のとおり、国民の官庁に対する信頼を醸成するには、その官庁の仕事全体への評価を高めるとともに、官庁の窓口職員の対応にも十分気を配ることが必要であり、被害者やその遺族等から事件の処理結果等について照会があった場合には、被害者等の心情にも十分に配慮し、誠実に対応してまいりたい。
なお、東京地方検察庁においては、五の(1)及び(2)についてでお答えしたとおり、御指摘の職員に対し、処分は行っていないが、平成十年八月三日から被害者等通知制度を実施するとともにその旨職員に周知徹底させるなどして、被害者等から事件の処理結果等の照会を受けた場合に適切に対応しているところである。
五の(5)について
東京地方検察庁次席検事は、御質問の事件の公訴提起に際し、報道機関に対し、「再捜査の結果新たな証拠を収集し得たのであるから、結果的に言えば、捜査が不十分であったわけで、先の業務上過失致死事件の不起訴処分は誤りであったと言わざるを得ない。これを反省の契機として、一層被害者の立場に配慮した検察権行使に努めたい。」旨表明している。
五の(6)について
東京地方検察庁次席検事が、御質問のようなコメントをした事実はない。
五の(7)について
御指摘の件について、担当検察官、監督者いずれに対しても処分は行っていない。
五の(8)について
政府としては、歩行者の交通事故を防止するため、今後とも、車両の運転者に対する交通安全思想の普及の徹底に努めるとともに、交通安全施設等整備事業の推進等により道路交通環境の整備に努めてまいりたい。
五の(9)について
政府としては、歩行者の交通事故を防止するため、今後とも、交通の安全と円滑を総合的に勘案した上で、人と車の交通を分離するための各種の施策を必要に応じて推進してまいりたい。
六の(1)から(3)までについて
職員の過誤については、法務省においても、その内容、結果の重大性、当該職員の責任の程度等の諸事情を勘案して、処分の要否を検討し、所要の措置を講じているところである。
また、法務省においては、その所掌事務を行うに当たり、国民の意見等に謙虚に耳を傾け、可能な限り行政に反映させているところであり、こうした観点から、例えば、国民の間で関心が高まっている犯罪被害者に対する通知につき、一層の充実を図っている。
さらに、公務員は、国民全体の奉仕者であり、法務省職員は、そのような自覚の下で、その職務を誠実に執行しているところである。
六の(4)について
御質問のような事実はない。
六の(5)について
法務省においては、その所掌事務を法令に従い誠実に執行しているところである。
六の(6)について
御質問のような事実はない。
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件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。