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神奈川県警事件の責任などに関する質問主意書
衆議院 第146回 第6号お答えすることは困難 ×1
質問本文
神奈川県警外事課の警部補が覚せい剤を使用していた事実をもみ消したとして、当時の県警本部長ら九人が十一月十四日、横浜地検に書類送検された。同月十日から十二日の衆参両院の法務委員会でもこの事件について質問を続けているが、書類送検を受けて、取り急ぎ以下の点を質問する。国会法所定の答弁期間内に答えられたい。
一 書類送検
(1) 元本部長ら九人が書類送検されたことについて、政府はどのように考えているか。今回の事件について監督責任が最も重いのはだれか。
(2) こうした事件の再発防止に向けて、どのような対策を考えているか。
(3) 監察官という綱紀の保持に当たるセクションが自ら不祥事もみ消しに動いた事実は、監察制度そのものの限界を示していないか。
(4) 監察には警察の外部から人を入れ、公正な運用を図る必要があるのではないか。
(5) 今回の犯人隠避・証拠隠滅事件は警察の「組織犯罪」か。
(6) 複数の容疑者による犯人隠避・証拠隠滅事件で、容疑者全員の身柄を拘束せず、相互に連絡の取れる状態で捜査を進めた事件はほかにあるか。
(7) 今回のもみ消し事件発覚以降、容疑者が相互に連絡を取り合った事実は把握しているか。こうした事実があるかないか、電話の通話記録を調べるなどして捜査を尽くしたか。
(8) 書類送検の報道を見ると、元本部長らを逮捕せずに捜査したことに対して批判の声が多いが、政府はどのように受け止めるか。事件の重大性、犯人隠避・証拠隠滅という事件の性質などに鑑みて、正しい処理だったと胸を張ることができるか。
二 影響
(1) 朝日新聞の十一月十四日付け朝刊によると、神奈川県警の交通違反取り締まり件数は、八月までは前年を上回るペースだったのに、今回の事件が発覚後の九月と十月は前年同期より、それぞれ約一万五千件減少しているというが、事実か。事実とすれば、今回の事件の影響か。
(2) 同紙には「取り締まり現場で、警察官は『シャブ(覚せい剤)よりましだろ』とか『身内だともみ消すのに、こんな微罪でも市民は処分されるのか』などと食ってかかられる」と書かれているが、事実か。
(3) 同紙には「警察は身内に甘すぎるんじゃないかなあ。盗聴法なんかで、これからもっと、警察の力が強くなるんでしょう。こんなことじゃ、信用できないですよ」という会社員のコメントを掲載している。政府はどのように受け止めるか。
(4) 前記コメントにあるように、警察に組織犯罪対策の通信傍受をまかせても大丈夫か。警視庁や別の県警では、捜査情報を流し、現金を要求するなどした警官が逮捕されるなどしている。本当に大丈夫なのか。
三 緒方宅盗聴事件
(1) 十一月十二日の衆院法務委員会で、警察庁の石川重明官房長は共産党の緒方国際部長(当時)宅盗聴事件について初めて「警察官が責任を問われた事案」と答弁した。警察庁はこれまで「警察は過去も現在も盗聴は行っていない」と答弁してきたが、十二日の答弁は警察官が盗聴した事実を認めるという趣旨か。
(2) 緒方宅盗聴事件は国家賠償訴訟の確定判決や法務大臣答弁で、警察の組織的な犯罪であることが確認されている。にもかかわらず、警察庁はずっと事実を認めてこなかった。こうした事実を認めない、隠し通そうとする姿勢が今回のもみ消し事件を生んだ背景にあるとは考えないか。
(3) 共産党幹部宅盗聴事件と今回のもみ消し事件は、ともに神奈川県警で起きた。前記朝日新聞朝刊の社説は「都合の悪いことは、『知らぬ存ぜぬ』で押し通せばうやむやにできる。そんな思い上がりが、盗聴事件の負の遺産として県警に巣くっているのではないか」と指摘している。盗聴事件で容疑者が不起訴となり、警察庁も事実を否定し続ける中で、県警では都合の悪い事は上層部がもみ消してくれる、何をやっても罪には問われないという雰囲気になっていたのではないか。
(4) 緒方宅盗聴事件の捜査を振り返り、当時の検事総長はたとえ話の形態を取りながらも、警察組織と対決できなかった検察の力の限界を回想録に書いている。回想録はがん闘病中に書かれた「遺言」のような記録である。検察には「力の限界」があるのか。
右質問する。
政府答弁書
一の(1)について
本年十一月十四日、元神奈川県警察本部長(以下「元警察本部長」という。)等の警察の幹部職員による犯人隠避等の事件が横浜地方検察庁に送致されたことは、警察に対する国民の信頼を損なうものであり、誠に遺憾である。警察においては、今回の事態を厳粛に受け止め、不祥事案対策の推進に全力を挙げて取り組んでいるところであると承知している。
右事件の発生に係る監督責任の軽重については、捜査結果等をも踏まえて判断する必要があるので、答弁を差し控えたい。
一の(2)について
警察庁においては、都道府県警察に対する特別監察の実施、組織管理者研修の実施並びに国及び都道府県における公安委員会の管理機能の充実の措置を講じることとしているほか、都道府県警察に対して、公安委員会に対する適時適切な報告の励行、幹部職員に対する教養の徹底、監察体制の強化及び特別監察の実施等を指示し、不祥事案対策の推進に努めているところであると承知している。
一の(3)について
警察においては、職員による不祥事案が発生した場合、監察部門が中心となって速やかに調査を行い、解明された事実に基づき所要の懲戒等の処分を行うとともに、刑罰法令に触れる行為があると認められた場合には、刑事事件として適正な捜査を行い、厳正に対処しているところである。今回の事案において、県警察の監察担当幹部とそれを指揮する組織管理者たる幹部による誤った処理方針が原因となり、監察部門が本来の機能を正常に果たすことができなかったことは、誠に遺憾である。
一の(4)について
警察職員による不祥事案が発生した場合において、事実を迅速かつ効率的に解明し公正な処分を行うためには、警察の組織及び業務に精通し、かつ、刑事部門、交通部門等の執行部門から独立した者が監察業務に当たることが適当であること、また、個人のプライバシーの保護及び職務上知ることのできた秘密の保持に配慮する必要があることから、監察業務に外部の者を従事させることは適当でない。
一の(5)について
御指摘の「組織犯罪」とは具体的にいかなるものを指すのか判断しかねるが、元警察本部長等の警察の幹部職員が関与して犯人隠避等の行為が行われていた疑いがあるものと承知している。
一の(6)について
御指摘のような状態で捜査が行われた犯人蔵匿事件又は証拠隠滅事件の有無については、都道府県警察に対して報告を求めていないため、回答は困難である。
なお、警察庁が取りまとめた犯罪統計によれば、平成十年中に警察が検挙した犯人蔵匿事件又は証拠隠滅事件の被疑者は三百九人であり、うち百六十八人が身柄不拘束であった。
一の(7)について
捜査の具体的内容については、答弁を差し控えたい。
一の(8)について
神奈川県警察が今回の事件を捜査する過程で被疑者の逃亡や罪証隠滅のおそれ等の「逮捕の必要」の有無について判断した結果であると承知している。
二の(1)について
神奈川県警察における本年の道路交通法違反検挙件数は、一月から六月まで及び八月の各月においては、前年同期に比べ増加しているが、九月及び十月においては、今回の事件の影響によるものか否かは測りかねるものの、それぞれ前年同期に比べ約一万五千件減少している。
二の(2)について
本年九月以降、交通違反の取締りに関し、違反者等から御指摘の記事中の言動と同種の言動がなされた場合もあると承知している。
二の(3)について
犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成十一年法律第百三十七号。以下「通信傍受法」という。)に基づく通信の傍受は、通信の秘密やプライバシーにかかわるものであるだけに、国民からいささかの疑念も抱かれることのないよう、その実施の適正を確保していくことが重要であると承知している。
二の(4)について
通信傍受法においては、傍受令状による犯罪関連通信の傍受について極めて厳格な要件を定めるなど、関係者の権利保護及び処分の適正な実施の担保に十分配慮しているところであり、また、今後、通信傍受法に基づく通信の傍受を適正に実施するための方法その他の事項を国家公安委員会規則で定めるほか、警察庁において、都道府県警察に対して必要な指導を行うこととしていることから、警察による通信の傍受は適正に実施されるものと考える。
三の(1)について
本年十一月十二日の衆議院法務委員会における警察庁石川重明長官官房長の答弁は、御指摘の事件について、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において警察官による盗聴行為があったと認められ、また、その後の民事訴訟においても同様の行為があったことが推認されたという経緯を踏まえ、警察官が責任を問われた事案と認識している旨答弁したものである。
なお、御指摘の「警察は過去も現在も盗聴は行っていない」旨の答弁は、警察は組織としてはいわゆる盗聴行為という違法行為を過去においても現在においても行っていないということを答弁したものである。
三の(2)について
御指摘の国家賠償請求訴訟については、平成九年六月二十六日に東京高等裁判所において判決がなされ、確定しているが、同判決は、警察による組織的犯罪であると断定したものではないと承知している。
また、御指摘の法務大臣答弁については、平成十年三月十一日の衆議院法務委員会における下稲葉法務大臣の答弁のことであると思われるが、同答弁は、東京地方検察庁検察官において、神奈川県警察の警察官二名が緒方議員宅の電話の通信内容を盗聴しようとしたとの電気通信事業法違反の事実を認定した上で、両名を同法違反について起訴猶予処分とした旨の認識を示したものであり、警察による組織的犯罪であるとの認識を示したものではない。
なお、警察庁においては、これらの判決及び起訴猶予処分を厳粛に受け止めているところであり、その旨を国会等の場において累次答弁してきたところである。
三の(3)について
昭和六十二年当時、現職の警察官が検察庁の事情聴取を受け、起訴猶予処分を受けるという残念な事態を招いたことを踏まえ、神奈川県警察においては、必要な人事の刷新が図られるとともに、関係警察官を懲戒処分に付し、本部長通達を発し、情報活動に当たっていやしくも違法のそしりを受けることがないよう全捜査員に自覚させ、適正な職務執行を徹底させる等の措置を採ったものと承知している。神奈川県警察において、御指摘のような雰囲気になっていたとは考えていない。
三の(4)について
個人の著述の内容については論評する立場にないが、一般論として述べれば、検察は、いかなる犯罪であるかを問わず、常に法と証拠に基づき、厳正公平、不偏不党を旨として、刑事事件として取り上げるべきものがあればこれに適切に対処してきたものであり、今後も同様であると承知している。
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