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「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問主意書
衆議院 第147回 第11号
質問本文
「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問主意書に対して、二千年二月四日に回答を得たが、なおも不明な点があり、借家人の重大な権利に関わる問題が残されており、新法による混乱が生ずる前に確認すべくさらに質問主意書を提出するものである。
一 市民が具体的に、定期借家について相談する窓口はどこになるのか。消費者センターなどでも受付けるのか。宅建業界の相談窓口に行くべきか。また、弁護士対応の窓口は設置されるのか、またそれはいつまでの期間か。十分な相談期間であるのか。
二 定期借家契約では、当然契約期間を定めるが、「借家人が死亡するまで」というような、いわゆる不確定期限での定期借家(生涯型の定期借家)は認められるか。借家人本人は、死亡するまで居住したいが、相続人は他に住宅を保有し借家権の相続をしない場合など可能ではないか。
三 三八条四項に定める「終了する旨の通知」は、定期的借家という例外的借家における賃貸人の義務であるが、従ってこの通知は、期間満了までにしなければならず、期間満了後も漫然と賃貸人が家賃を受け取っていた場合は、正当事由が適用される普通借家関係が成立すると考えられるがどうか。
四 建設省が公表した「定期賃貸借標準契約書」では、再契約を予定した内容となっているが、再契約の可能性がある定期借家契約を繰り返す場合、借地借家法三二条の賃料増減請求権の適用をまぬかれる目的と見なされ、普通借家契約になる可能性があるのではないか。
五 賃貸人は、定期借家の借家契約を終了させるためには、努力義務を果たすべきであり、懈怠した賃貸人は保護する必要はないのではないか。
賃貸人が「終了する旨の通知」の義務を懈怠した場合は、契約の更新ではなく、新たな借家関係が成立することになるのではないか。
六 「定期借家」は、契約期間を満了すれば、確実に借家関係が終了するものであるが、期間満了後は、賃貸人が終了の通知を行った後、六ヵ月後に借家関係が終了するというのは、賃貸人の一方的通知によって借家関係が終了すると解釈できる。一方的通知による契約の終了は定期借家になじまず、また定期借家の趣旨に反するのではないか。これは事実上、「不定期借家」となるのではないか。長い間通告義務を懈怠した後であれば、権利の濫用が成立し、終了通知の効力がないのではないか。
七 期間終了後も、賃貸人から通知がない場合、定期借家が継続しているとも解釈できるがそうか。
その場合、定期借家が継続した状態ならば、期間の定めのない「定期借家」状態なのか。
八 契約期間が定められてこそ定期借家であり、「期間の定めのない定期借家」は、法解釈上論理矛盾があるのではないか。
九 「七」の状態は、新たな借家関係が成立したと解釈できるのではないか。
十 附則三条について
(1) 住宅新報二千年二月四日号によると、附則三条を脱法するために、居住用建物賃貸借を合意解約した後、他のサブリース業者に賃貸し、そのサブリース業者と従前の借家人が同一の建物について定期借家することをアドバイスしているが、附則三条では「当事者が」と規定しているので、「当事者」が交代すればよいのか。この行為は、附則の趣旨に反する明らかな脱法行為で、無効ではないか。
(2) 「説明義務」では、「あらかじめ」説明しなければならないと定めている。説明のための書面は、定期借家契約書と別のものであり、別途作成を要するのか。
(3) 説明義務に定められた説明は、誰に説明資格があるのか。不動産仲介人が仲介人の立場で説明したとしても、賃貸人が説明したことにならないのではないか。
(4) 賃貸住宅の性能表示制度とは具体的にどのようなものになるのか。
十一 中途解約と支払債務及び占有権について
(1) 「定期借家」において、中途解約が成立する条件はなにか。
(2) 賃借人が、解約事由がないのに、勝手に退去した場合は、賃料支払い義務が残るが、勝手に賃借人が出て行っただけで、第三者に貸すことは不法行為に当たるか。
(3) 賃料は使用の対価であり、賃貸人は使用させる義務があり、第三者に賃貸してしまった場合、その段階で、賃貸人側の債務不履行として解除できるのではないか。
(4) 賃借人が解除をしない場合、形式的には、賃料の支払義務が残り、家主は物理的には第三者にも賃貸が出来ることになるが、本来の賃貸人の使用させる義務からすれば、第三者への賃貸は、使用させる義務の不履行になり、法的に認められないのではないか。
(5) 第三者に賃貸した上で、旧賃借人に賃料を請求することは、権利濫用となり、信義則で制限の必要があるのではないか。
(6) 債務不履行の解除について
債務不履行の解除の場合、残存期間の賃料相当額が損害額となるのか。
(7) 賃貸人が、直ちに同じ物件を賃貸して賃料を取得できる可能性があれば、過失相殺の法理で損害を削減できるのではないか。
十二 回答は、借家人保護が十分であるという証明になっていない。苛酷条項が必要でないとされる理由を開示されよ。「一般の契約の場合と異ならない」とはどういう意味か。建物賃貸借は、民法上の賃貸借の保護では不十分であるので、借地借家法による保護が必要としてきたはずである。
十三 公団・公営住宅の建替えなどの場合、これまでは存続保護が機能し、建替え後も居住が保証されていたが、新法施行後、定期借家契約による新規契約とすることはあるのか。
右質問する。
政府答弁書
一について
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法(平成十一年法律第百五十三号。以下「特別措置法」という。)第五条の規定による改正後の借地借家法(平成三年法律第九十号。以下「法」という。)第三十八条に規定する定期建物賃貸借(以下「定期借家」という。)については、法務省及び建設省並びに地方公共団体の担当部局のほか、消費生活センター、不動産関係団体等において、相談、問い合わせ等に応じているところである。
また、特別措置法第五条の規定が平成十二年三月一日から施行されることに伴い、新たな契約形態である定期借家契約の締結等に関する賃借人等からの相談が予想されたことから、建設省においては、その前後の同年二月から五月までの予定で社団法人日本住宅協会内に定期借家相談センターを設けており、同所において弁護士が相談に応じているところである。
二について
定期借家契約は、期間の定めがある建物賃貸借契約について認められるものであり(法第三十八条第一項)、賃借人の死亡という不確定な期限を定めても定期借家契約には当たらない。
三について
法第三十八条第四項の規定により、賃貸借の期間が一年以上である場合には、賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下「通知期間」という。)に賃借人に対し期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知(以下「終了通知」という。)をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないが、賃貸人が通知期間の経過後に賃借人に対し終了通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、その終了を賃借人に対抗することができるとされており、賃貸人は、当初の契約に定められた賃貸借の期間の満了後に終了通知をすることも可能である。
また、賃貸人が期間満了後も賃借人に対し終了通知をしない場合には、賃貸人は、賃貸借の終了を賃借人に対抗することができないとされていることから、賃借人が賃貸人に対して賃貸借の終了を主張しない限り、従前の賃貸借契約が継続している状態になるものと解される。したがって、この場合に、賃貸人による更新拒絶につき正当の事由が必要とされる類型の建物賃貸借(以下「普通借家」という。)関係が新たに成立することにはならない。
四について
定期借家の期間満了後に、同一の当事者間で、同一の建物について再度定期借家契約を締結したとしても、それは両当事者の自由な意思によるのであって、このような定期借家契約が繰り返されたとしても、当事者の意思と異なる普通借家になるものではない。なお、再契約が繰り返されたとしても、直ちに法第三十二条の借賃増減請求権に係る規定の適用を免れる目的があるとみなすこともできないと考えられる。
五について
三についてで述べたとおり、賃貸人は、当初の契約に定められた賃貸借の期間の満了後も終了通知をすることは可能であるが、通知期間内に終了通知をしない場合には、当初の契約に定められた賃貸借の期間が満了しても、その終了を賃借人に対抗することができないという不利益を被ることになる。そして、賃貸人が期間満了後も賃借人に対し終了通知をしない場合には、賃借人が賃貸人に対して賃貸借の終了を主張しない限り、従前の賃貸借契約が継続している状態になるものと解されるのであって、御指摘の「新たな借家関係」がいかなるものを指すのか明らかではないが、新たに普通借家関係が成立することにはならない。
六について
三についてで述べたとおり、賃貸借の期間が一年以上である場合に、賃貸人が賃借人に対し終了通知をしないときは、賃貸借の終了を賃借人に対抗することができなくなるにすぎないのであって、この終了通知の制度が定期借家になじまず、定期借家制度の趣旨に反するとはいえない。また、賃貸人が長期間にわたって終了通知をしない状態が続いた後にこの通知をしたとしても、直ちに権利の濫用に当たるとはいえないと考えられる。
七から九までについて
御指摘の「期間の定めのない定期借家」及び「新たな借家関係」がいかなるものを指すのか明らかではないが、三についてで述べたとおり、当初の契約で定められた賃貸借の期間が満了したが、賃貸人が期間満了後も賃借人に対し終了通知をしない場合には、従前の賃貸借契約が継続している状態になるものと解されるのであって、新たに普通借家関係が成立することにはならない。
十の(1)について
特別措置法附則第三条は、同法第五条の規定の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、法第三十八条の規定を適用しないものとしている。
したがって、賃貸人が、従前の賃借人との間の賃貸借契約を合意解除した後、同一の建物をいわゆるサブリース業者に賃貸し、そのサブリース業者が従前の賃借人に定期借家契約により転貸をすることは、原則として特別措置法附則第三条に抵触しないが、当該業者が単なる名義貸しをしているにすぎないなどの特段の事情があるときは、同条を潜脱するものとして、これに違反すると解されることもあり得ると考えられる。
十の(2)について
法第三十八条第二項の規定により、賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、定期借家は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならないとされており、この書面は、同条第一項の書面とは別途に作成されることが必要であると解される。
十の(3)について
法第三十八条第二項に定める説明等の義務は賃貸人が負うものであり、不動産仲介人が、単に仲介者の立場で説明等をしても、この義務が履行されたことにはならないと解される。ただし、不動産仲介人が、賃貸人からその義務の履行をする代理権を授与された上、代理人として賃借人に説明等をするのであれば、賃貸人の義務は履行されたことになる。
十の(4)について
御指摘の「賃貸住宅の性能表示制度」は、特別措置法第二条第二項の「住宅の性能を表示する制度」を指すと解されるが、建設大臣が指定した住宅性能評価機関が、基準に基づき客観的な住宅性能評価を行い、性能評価書を交付すること等を内容とする、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)における「住宅の性能に関する表示基準及びこれに基づく評価の制度」がこれに当たると認識している。
十一の(1)について
当事者間で中途解約につき合意で定めた場合のほか、賃借人の法定の中途解約権については、法第三十八条第五項が、居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は、賃貸借の解約の申入れをすることができると定めている。
十一の(2)から(5)までについて
賃借人が解約事由がないのに勝手に建物から退去した後、賃貸人が当該建物について第三者との間で賃貸借契約を締結してこれを引き渡した場合には、当該第三者の賃借権に対抗力が認められるため(法第三十一条第一項)、従前の賃借人に対する賃貸人の債務(当該建物を使用等させる債務)は履行不能となり、従前の賃貸借は終了すると解される。したがって、賃貸人が第三者と賃貸借契約を締結して当該建物を引き渡した後は、従前の賃借人が、それ以降の賃料支払義務を負うことはないと解される。
なお、賃貸人の右のような第三者への賃貸が不法行為の要件を充足するときは、賃貸人は、賃借人に対してその責任を負うことになる。
十一の(6)及び(7)について
賃借人の債務不履行を理由として賃貸人が賃貸借契約を解除した場合には、賃貸人は、賃借人に対し、債務不履行と相当因果関係が認められる損害の賠償を請求することができるが、その判断に当たっては、当該建物の第三者への賃貸の可能性の有無、それまでに通常必要とされる期間等も考慮されるものと考えられる。
十二について
御指摘の「苛酷条項」とは、賃貸借が終了したが賃借人に明渡しを求めることが苛酷となる場合にこれを制限する趣旨の条項を意味するものと思われるが、賃借人に建物の明渡し義務があれば、他の一般の契約の場合と同様に強制執行の対象となり得るのであって、その意味で、定期借家であるからといって「一般の契約の場合と異ならない」としたものである。
このような「苛酷条項」が設けられなかった理由については、建物の賃貸借の在り方に係る立法政策の問題として、国会において審議された結果であると考えている。
十三について
都市基盤整備公団が賃貸住宅を建て替える場合においては、都市基盤整備公団法(平成十一年法律第七十六号)第四十五条の規定により、建替えにより除却すべき賃貸住宅の居住者で当該賃貸住宅の建替えに伴いその明渡しをするものを、その申出により当該賃貸住宅の建替えにより新たに建設される賃貸住宅に入居させなければならないとされている。賃貸住宅の建替えにより新たに建設される賃貸住宅への入居に係る賃貸借契約を定期借家契約とするかどうかは、都市基盤整備公団において、定期借家制度の定着状況、入居希望者の意向等を踏まえた検討を行った上で、判断するものと認識している。
公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。以下同じ。)の事業主体(同条第十六号に規定する事業主体をいう。以下同じ。)が公営住宅建替事業により公営住宅を建て替える場合においては、同法第四十条の規定により、建替えにより除却すべき公営住宅の入居者で当該建替えに伴いその明渡しをするものを、その申出により当該建替えにより新たに整備される公営住宅に入居させなければならないとされている。建替えにより新たに整備される公営住宅への入居に係る賃貸借契約については、公営住宅は住宅に困窮する低額所得者のために賃貸する住宅であり、入居者が高額所得者となること等特段の事由がない限り居住が継続することを前提として現行制度が成り立っていることから、事業主体は、入居者との間で期間の定めがない賃貸借契約を締結しているところであり、定期借家契約とすることはないと認識している。
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