Kurage 質問主意書アシスト

ことばで探す › 衆議院 第150回

諫早湾干拓水門閉め切りによる沿岸漁業への被害対策および農地造成に関する質問主意書

衆議院 第150回 第62号

提出者
日本共産党
提出日
2000年11月30日
内閣転送 2000年12月1日
答弁書受領日
2001年1月23日
提出から54日
答弁の項目数
11
質問 2,708字/答弁 3,214字

質問本文

十月十三日に「諫早湾水門閉め切りによる沿岸漁業への被害対策に関する質問主意書」を提出し、十一月十四日に答弁書を受領した。しかし、以下に述べるとおり、事実に則していないきわめて不十分な答弁といわざるをえない。

よって、次の事項について再度質問する。

一 答弁書別表一で主要魚介類の推移を示しているが、これでは有明海全体の魚介類の推移はつかめない。質問主意書で例にあげたにもかかわらず、アゲマキ、シタビラメ、コノシロ等の推移が示されていないし、有明海では他にもボラ、アナゴ等数多くの種類の魚介類の水揚げがある。しかし、同表ではわずかに七項目が示されているにすぎない。また、統計年も一九九八年(平成十年)で終わっているし、漁獲量も有明海沿岸四県の合計を示したものと思われる。しかし、これでは試験堤防着工以後ここ十数年間の水揚げ高の変動はもちろん、諫早湾干拓潮受堤防閉め切り後の劇的変化は全く明らかになっていない。あくまでも漁獲量に著しい変化がみられないというのであれば、実態を正確に示した資料に基づいて答弁すべきである。漁獲量は政府にその気があれば直近の月まで把握できる。最新の資料を含め、過去十五年間の有明海の県別、漁協別の主要十五種以上の漁獲量の推移を示した上で、漁獲量の変化についてどう認識しているか明確に答えられたい。

二 調整池の水質を検討する「諫早湾干拓調整池等水質委員会」(農水省九州農政局設置)が十一月十六日に福岡市で開かれ、事業完成時点での「水質再予測」を今年度中に行うとのことだが、水質汚染は漁業被害という目に見える形で現実に進んでいるのであり、完成時点などといっている場合ではない。長崎県小長井漁協での一時は年間約五億円もあったタイラギの水揚げは皆無で、アサリも全滅に近い。佐賀県大浦漁協のタイラギの水揚げも一九九五年に約二〇〇トンあったものが昨年は皆無である。廃業してしまった漁家もある。干拓事業に際して諫早とその周辺漁協はわずかな補償金しか受け取っていない。第三者による水質調査、底質調査等漁業への影響を解明する調査を行い結果を明らかにすることと、被害状況を反映させた補償を改めて行うのが当然ではないか。

三 「国営土地改良事業等再評価実施要領」に基づく再評価の際、意見聴取を行う関係団体の範囲に長崎県以外の有明海沿岸各県や漁協等を含める考えはないとのことだが、事業の影響は土地だけでなく水質にも現れている。潮流は県境には関係なく循環しており、水産被害は諫早湾を越えて広範囲に広がっている。土地改良法に固執して逃げるのではなく、影響を受ける関係者すべての意見を聴取するのが行政の当然の責務ではないか。

四 周辺漁協からの求めにより、潮受堤防排水門の開閉操作をほぼ毎日行うようになった。これは調整池内の水質が予想外に悪化したため、頻繁に排水せざるをえなくなったとしか考えられない。このこと自体が、調整池の水質が良好に保たれているという宣伝が破綻したことを示すものではないか。

五 干拓事業が防災機能を高めるともされてきた。しかし、昨年七月に起こった集中豪雨の際には死者一名、多数の床下・床上浸水の被害が出て、諫早市内の九割の世帯に避難勧告が出された。その後、建設省があわてて既設堤防側のクリークの大幅拡張としゅんせつ工事を行い、本明川ダム建設工事も計画されている。このことも、調整池をつくれば諫早市の水害はなくなるという宣伝が破綻していることの証明ではないか。

六 干拓事業によってかんがい用水が確保された優良農地が造成されるというが、かんがい用水は具体的にどのような方法で確保されるのか。汚染された調整池の水では耕作に利用できないと考えられるがどうか。

七 調整池の絶対高はマイナス一メートル、農地の最低位の絶対高はマイナス三メートルだが、このような土地でなぜ塩害が起こらないのか。今後も地下への海水の浸透が続くことは避けられないと考えられる。また、実証栽培を行ったのはまだ小江干拓地だけで、ここは干陸でない埋め立て地である。埋め立て地だけの実証結果で、干陸による干拓地域で塩害が起こらないという保障はどこにあるのか、明らかにされたい。

八 干拓事業によってつくり出される耕作地(畑)は、計画では千三百二十六ヘクタールになっている。一方、農水省の統計資料によると一九八九年から一九九九年までの十年間に、長崎県内で消失した畑の面積は二千九百ヘクタール(一九八九年の二万八千二百ヘクタールが、一九九九年に二万五千三百ヘクタール)である。この変化の理由についてどう認識し、今後どう推移していくと考えているか。これ以上新たに耕作地を造成しなくても、今ある耕作地の消失に歯止めをかけることが現実的かつ有効で、焦眉の課題と考えられるがどうか。

九 干拓が完成した後の土地価格は、十アール当たり七十万円と提示されている。夫婦の労働力が主体の農家一戸で仮に十ヘクタールを耕作するとして、この価格で購入すれば七千万円となる。農水省の統計調査によると、長崎県の一九九九年の農家一戸当たりの所得は四百七十三万五千円である(農業百三万五千円、農業外三百七十万円)。全国統計でも、五ヘクタール以上の露地野菜農家の同年度の平均耕作地面積は約十三ヘクタール、平均農業所得は十アール当たり約十万四千円、一戸当たり平均所得は約八百五十三万円である。「諫早湾干拓営農構想検討委員会」で示されたモデルでは、バレイショ・タマネギ・ニンジンの組み合わせで、農業所得は年間三千三百万円が示されている。全国平均から考えても、現在の農作物の生産者価格の暴落も勘案すれば、このモデルはとても現実的なものとは考えられない。ここに入植しても農業経営は全く成り立たないのではないか。

十 いったいどれだけの人が、新しい造成地で営農しようとしているのか。その正確な動向を把握して干拓事業を進めているのか。来年度に諫早周辺の農家に対し、アンケート・面接を行って営農の動向を調べるというが、結果としてどのくらい入植希望者がいれば、この干拓事業が成り立つと考えているのか。また、入植者の見込みが少なければ、どうするつもりなのか明らかにされたい。

十一 これ以上の漁場破壊、環境破壊は絶対に許されない。事業中止はすでに国民的世論となっている。環境破壊により周辺漁民を苦しめ、優良農地造成の保証も入植者の見通しもない干拓事業は即刻中止すべきである。少なくとも有明海の漁業を元の状態に戻すために、すみやかに潮受堤防を開くことを改めて強く求めるがどうか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

農林水産省においては、統計法(昭和二十二年法律第十八号)に基づく指定統計調査として海面漁業生産統計調査を実施しているが、これは、漁業協同組合別でなく、漁業に係る社会経済活動の共通性に基づいて農林水産大臣が設定した漁業地区(以下単に「漁業地区」という。)別に調査を実施しているところであり、お尋ねの趣旨の過去十五年間の有明海の県別及び漁業地区別の主要十五種の漁獲量の推移は、別表一のとおりである。なお、漁業地区と漁業協同組合との対応については、別表二のとおりである。

過去十五年間の有明海の漁獲量の推移については、魚種や地域により増減の傾向に違いはあるものの、昭和六十年以降の期間でとらえた場合、総じて減少傾向にあると見られるが、平成九年四月の潮受堤防締切りの前後でその傾向に著しい変化は見られない。

二について

農林水産省九州農政局においては、国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)の実施に当たり、環境監視が適切かつ円滑に実施されるよう長崎県に設置された学識経験者で構成される諫早湾干拓地域環境調査委員会の助言、指導を踏まえつつ、潮受堤防の内外で環境モニタリングを定期的に実施している。これまでの結果によると、潮受堤防の締切りの前後で、周辺海域の水質、底質等において明確な変化が認められないことから、潮受堤防の締切りが漁業に対して影響を及ぼしているとは判断できない。このため、改めて漁業補償を行う考えはないが、引き続き、環境モニタリング等を実施することにより、水質、底質等の状況を注意深く監視するとともに、関係漁業者に対してその結果を説明してまいりたい。

三について

本事業を含めた国営土地改良事業の再評価は、事業の長期性にかんがみ、その効率的な執行及び透明性を確保する観点から実施しているものであり、その結果を踏まえ、必要に応じて土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)に基づく土地改良事業計画の変更を行うこととしている。したがって、国営土地改良事業の再評価の際、意見を聴取すべき関係団体の範囲については、同法において国営土地改良事業の土地改良事業計画の変更の際に農林水産大臣が直接的又は間接的に協議しなければならない相手方を勘案して運用することとしているものであり、同法に規定されていない者から意見を聴取することは考えていない。

四について

淡水化が進行している調整池について、そこから排水される淡水と諫早湾内の海水とのより速やかな混和が図られるよう一回当たりの排水量を減少させるために、諫早湾周辺の漁業協同組合等からの要望も踏まえ、試験的に、小潮のため排水できない日を除く毎日、潮受堤防排水門からの排水を行っている。

なお、二についてで述べたとおり、潮受堤防を締め切り、調整池からの排水を開始した後の周辺海域の水質、底質等は、その前のそれらと明確な差異が認められない。

五について

平成十一年七月二十三日の大雨は、最大時間雨量が百一ミリメートル(気象庁地域気象観測所諫早観測所)という記録的なものであり、この大雨により、調整池の背後地の一部の家屋で浸水被害が生じたが、背後地において浸水被害が生じるか否かは、降雨の強度及び分布、地域における排水能力、排水先の河川等の水位変化等により総合的に決まるものである。同日の大雨に関しては、調整池の水位を低く保った結果、河川、排水路等から調整池への排水が速やかに行われ、調整池の機能は適正に発揮されたと考えている。なお、この大雨による死者一名の人的被害は、調整池に流下する河川の流域外の地点、すなわち本事業により発揮される防災機能の対象区域外の地点で発生したものである。

また、平成十一年七月二十三日の大雨以降、建設省(平成十三年一月六日以降は国土交通省)においては、既設堤防側の背後地においてクリーク拡張工事は行っておらず、本明川の河川区域において実施しているしゅんせつ工事、ダム建設等の河川事業については、本明川水系工事実施基本計画(平成十二年十二月十九日以降は本明川水系河川整備基本方針)に基づき昭和四十四年度から計画的に実施しているものである。

六について

干拓地のかんがい用水については、全量を淡水化された調整池に依存することとしている。

調整池は、現在工事中であるが、工事完了後の水質の汚濁源については、内部堤防の完成による干陸部や底泥からの溶出等の減少、調整池の水際での水生植物の繁茂等による巻き上げの減少のほか、調整池流域における生活排水処理施設の整備等水質保全対策の一層の進ちょくによる流入の減少が見込まれることから、工事完了後において、調整池の水をかんがい用水として利用できると考えている。

七について

調整池は、現在淡水化が進行しており、工事完了後は、中央干拓地は淡水化された調整池に囲まれることとなることから、干拓地地下に海水が浸透することはない。また、干陸した中央干拓地の土壌中の塩分を除去するため、小江干拓地内の試験ほ場に設置したかんがい施設及び暗きょ排水施設と同等の能力を有する施設を設置するとともに、土壌改良も同様に行い、塩害の発生防止に努めることとしている。

八について

農林水産省が公表している「耕地及び作付面積統計」によれば、平成十一年の長崎県の畑地面積は、宅地転用や耕作放棄等の増加により、平成元年の約三万五千九百ヘクタールから約七千ヘクタール減少し、約二万八千九百ヘクタールとなっており、長崎県によれば、畑地面積は今後とも減少傾向が続くと見込まれている。

こうした状況の中で、国としては、中山間地域等直接支払制度の実施等により耕作放棄の抑制や耕作放棄地の再活用を一層進めることとしているが、平坦な農地が乏しい長崎県において生産性の高い農業を実現するためには、大規模で平坦な優良農地を造成することも重要なことであると考えている。

九について

本事業の営農計画等についての意見を集約するために長崎県に設置された諫早湾干拓営農構想検討委員会においては、長崎県の農業振興計画や県内の労働力、労働時間、農産物価格、機械・施設装備等を示した「長崎県農林業基準技術」を基に諫早湾干拓営農モデルを試算しており、このうち、御指摘の「バレイショ・タマネギ・ニンジン」の組み合わせによるモデルの経営内容は、別表三のとおりである。

このモデルは、長崎県の大規模経営に対応した営農の技術の実態に基づくものであり、干拓地における営農は十分成り立つものと考えている。

なお、長崎県においては、本事業により造成される干拓地で早期に安定的な営農が可能となるよう支援策の検討を進めているところである。

十について

農林水産省九州農政局においては、平成九年度から三年間にわたって諫早湾周辺地域の農家及び九州各県の農業生産法人に対し、干拓地での営農の意向調査を行ったが、その結果を踏まえ、平成十一年十二月に国営諫早湾土地改良事業変更計画を決定したところであり、その中では、干拓地に入植九十五戸、増反百三十三戸の合計二百二十八戸で営農することを想定している。

なお、この意向調査結果では、営農意欲の高い畑作や畜産の農家等から干拓地の農地面積を上回る農地利用の要望があるほか、関係行政機関へも直接干拓地利用の希望が寄せられていることから、干拓地は農地として有効に利用されるものと考えている。

十一について

本事業は、平坦な農地が乏しい長崎県において、かんがい用水が確保された優良農地の造成を行うとともに、高潮、洪水、常時の排水不良等に対する防災機能の強化を図るものであり、地元から事業の促進を強く求められていることから、本事業を中止し、水門を開放することは考えていない。今後とも漁場を含めた周辺環境にも十分配慮しつつ、本事業の着実な推進に努めることとしている。

衆議院の原文

似た質問主意書

件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。

提出 2000年10月13日 小沢和秋(日本共産党) 答弁 2000年11月14日
衆議院 第150回 第13号検討してまいりたい ×1
提出 2008年4月17日 赤嶺 政賢(日本共産党) 答弁 2008年4月25日
衆議院 第169回 第303号
提出 2001年10月5日 佐藤謙一郎(民主党・無所属クラブ) 答弁 2001年10月26日
衆議院 第153回 第7号

この論点で次の質問を書くなら

アシストで並べる