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弁護士法第二三条の二に基づく照会に関する質問主意書
衆議院 第151回 第33号
質問本文
弁護士法第二三条の二第一項は、弁護士は、受任している事件について所属弁護士会に対し公務所等に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる旨規定し、同条第二項は、弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所等に照会して必要な事項の報告を求めることができる旨を規定している。
この制度は、司法における真実の発見と公正な判断に寄与するもので、弁護士が、依頼者の人権を守るための弁護活動において必要欠くべからざる手段であり、この制度が機能しなければ、国民の人権が不当に侵害されようとしても、弁護活動による救済を得られないおそれが生ずるため、同条による照会を受けた公務所等は、正当な理由がない限り照会事項に対して報告をすべきである、とされている。
ところが、近時いくつかの地方自治体が、弁護士会からの照会に対し、その照会の内容が公務所にとって守秘義務を負う事項であり、この照会に応ずることは地方公務員法第三四条、あるいは地方税法第二二条に規定する守秘義務違反となるとの理由で回答を拒否する事例が続出している。
例えば、富山県弁護士会は、弁護士法第二三条の二に基づく弁護士会長による照会をもって富山県婦負郡婦中町長あて平成一一年一一月三〇日付にて死亡者の印鑑(改印)登録手続の申請人と印鑑証明書交付申請の申請人の氏名の開示と申請書の写しの送付方を求めたところ、同町長は、同年一二月一六日付をもって照会に対する回答を拒否している。
右照会にかかる事案は、相続人が、被相続人の生前中にその所有不動産が他人名義に移転登記されていることを発見したため、他人が被相続人の実印を無断で改印して印鑑登録した上その印鑑証明書の交付を受けて登記に及んだ可能性があるとして、右登記の抹消を請求しようとする事件で、印鑑登録者が死亡しているため、印鑑登録者と右印鑑(改印)登録手続の申請人及び印鑑証明書交付申請の申請人との同一性を知ることが事案の解明につき不可欠でありかつ唯一の手段であることから、富山県弁護士会より右照会に及んだものであった。
これら回答を拒否する地方自治体は、いずれもが昭和三八年三月一五日付自治省税務局長あて内閣法制局第一部長回答(内閣法制意見年報第一〇巻一七頁中)に、弁護士会の照会は、結局は照会を申し出た弁護士の依頼者の利益のためのものであるから、他人の私人の秘密を犠牲にすべきではない、との趣旨の記載のあることを根拠としている。
しかし、この第一部長回答の趣旨は「公務所が守秘義務を負う事項に関する照会に回答することはすべて法に定める守秘義務違反となる旨を述べたのではなく、個々の具体的事案毎に、守秘義務により守られるべき公益と回答を受けることにより得られるべき利益とを比較衡量し、その結果回答を受けることによって得られるべき利益の方が勝る場合には、公務所は回答をすべき義務を負うものであること、そのような場合に回答を行っても、秘密漏洩の罪を負うこととはならない」(堀籠幸男「法制意見百選」六九三頁 昭和六一年株式会社ぎょうせい刊)、というものであり、地方自治体は、右第一部長回答の本来の趣旨を理解しないまま一律に回答を拒否しているものと思われる。
よって次の質問を行う。
一 地方自治体が、照会の内容を吟味しないまま右内閣法制局第一部長回答を根拠に守秘義務を負う事項であるとして回答を拒絶することは、弁護士法第二三条の二に違反し、同制度の趣旨を没却するものであり、本来公務所が守秘義務を負う事項に関する照会に回答することはすべて法に定める守秘義務違反となるのではなく、個々の具体的事案毎に、守秘義務により守られるべき公益と回答を受けることにより得られるべき利益とを比較衡量し、その結果回答を受けることによって得られるべき利益の方が勝る場合には、公務所は回答をすべき義務を負うものであること、かつそのような場合に回答を行っても、秘密漏洩の罪を負うこととはならないものと思われるが、内閣法制局長官としてはどのように考えるか。
二 総務大臣としては、このような誤った処理を行っている地方自治体に対しこれを改善する方策、例えばこの処理が誤りであることを周知徹底させる対策を検討すべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
政府としては、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二十三条の二に基づく照会があった場合に、地方公務員が地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条又は地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第二十二条の規定にかかわらずこれらの条に規定する秘密に該当する事柄を報告することができるか否かについては、次のように考える。
1 弁護士法第二十三条の二の規定に基づく照会制度は、弁護士が受任事件について、訴訟資料等の収集、事実の調査等、職務活動の円滑な遂行に資するべく設けられた規定であると考える。この制度は、弁護士の受任事件が訴訟事件となった場合には当事者の立場から裁判所の行う真実の発見と公正な判断に寄与するという結果をもたらすという点で公共的な側面を有すると考えられるが、同条でいう「受任している事件」は、委託を受けて、示談交渉、契約締結、法律相談、鑑定等を行う事件も含み、受任している訴訟事件に限られるものではない。
2 一方、地方公務員法は、第三十四条において、住民の信託を受けて公務の遂行にあたる職員が職務上知り得た秘密を漏らすことは公務の遂行を職員に信託した住民の信頼を裏切ることになることから、公務員に秘密を守る義務を課すとともに、第六十条において、この守秘義務に違反した場合の罰則を定めている。
また、地方税に関する調査に関する事務に従事している者自身が私人の秘密を知ることは、地方税の賦課徴収に必要であり、やむを得ないところであるが、右の事務に従事している者がその事務に関して知り得た私人の秘密をその意に反して第三者に知らせることは、地方税の賦課徴収に必要な限度を超えるものであり、ひいては納税者の税務当局に対する信頼を失わせ、税務行政の適切な遂行を損なうおそれがあることから、地方税法第二十二条はこのように秘密を漏らした場合においてはこれを罰することとしている。
3 弁護士法第二十三条の二の規定に基づく弁護士会からの照会の対象事項が、地方公務員法第三十四条又は地方税法第二十二条に規定する秘密に該当する場合には、秘密に該当する事項を開示することが正当視されるような特段の事由が認められない限り、秘密を漏らした者は地方公務員法第六十条又は地方税法第二十二条に規定する刑罰の対象となることから、照会に応じて当該事項を報告することは許されないものと解している。
なお、個別の事例において、秘密に該当する事項を開示することが正当視されるような特段の事由が認められるか否かを地方公共団体が判断するためには、弁護士会の照会の中で、照会に応じた報告を受けることによって得られる公共的な利益の内容がそれぞれの事例に即して具体的に明らかにされていることが必要であると考える。
また、最高裁判所は昭和五十六年四月十四日の判決において、弁護士法第二十三条の二に基づく弁護士会の前科等の照会について、「前科等の有無が訴訟等の重要な争点となつていて、(中略)照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、(中略)弁護士法二三条の二に基づく照会に応じて報告することも許されないわけのものではないが、その取扱いには格別の慎重さが要求される」として、「市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたると解するのが相当である。」と判示していることに留意する必要がある。
二について
総務省としては、弁護士法第二十三条の二に基づく照会があった場合に、各地方公共団体において一についてで述べた趣旨を十分理解した上での対応がなされるよう、今後とも助言等を行ってまいりたい。
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件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。