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瀬戸市紺屋田町・東印所町の珪砂採掘計画に関する質問主意書
衆議院 第159回 第197号
質問本文
瀬戸市の市街地でガラスの原料である珪砂を採掘する計画があり、県有林が鉱山として開発されようとしている。この鉱山の事業を行うのは愛知県珪砂鉱業協同組合という団体である。またこの開発予定地は瀬戸市紺屋田町と東印所町の山林十五ヘクタールであり、そのほぼ全域が愛知県の県有地である。そのためこの団体は平成十五年に愛知県から租鉱権を取得している。また、現地には保安林指定されている地区が八・五七ヘクタール含まれているため、同年九月に愛知県に保安林解除申請を提出し、愛知県からは当該申請書類が本年四月に国に進達されている。したがって九〇日間の審査期間を経て、問題がなければ愛知県瀬戸市に保安林指定解除が告示され、早ければ本年度中にも採掘が始まる。開発期間は十年と定められているが、この開発について質問する。
一 本事業により周辺の自然環境と生活環境が著しく破壊される危険性について
1 現地では環境省が平成十二年に取りまとめたレッドデータブックで絶滅危惧�U類に指定されたギフチョウが舞い、やはり絶滅危惧�U類のオオタカが飛来している。現地の湿地にはサギソウやイシモチソウ(いずれも絶滅危惧�U類)などが生息している。このように貴重な自然環境の存在が指摘されていながら、当該事業者は事業計画にあたっていまだに自然環境を調査していない。そればかりか砂防指定地内行為許可申請書で「特に保全すべき自然環境は存在しない」と結論付けている。調査をしていないのであるから「特に保全すべき自然環境は存在しない」とするのは根拠がない記述ではないか。政府の見解を伺いたい。
2 現地の西側には明治期・東京大学の教授であったオーストリア人アメリゴ・ホフマンが指導した砂防工事跡が隣接している。瀬戸市では中学の副教材で一ページを割いてこれを取り上げている。また愛知県は砂防工事の一〇〇周年に当たる二〇〇五年が「愛・地球博」の開催年であることから、現地で一連の記念事業を予定している。住民はこのような歴史的学術的な施設を大切に保存してほしいと願っている。ところが、この珪砂採掘計画が実施されれば、現地一帯が立ち入りできなくなるばかりか、施工地の五〇メートル以内に新たな禿山が出現し、現地の景観を台無しにする。このような計画が愛・地球博の開催地で進行することについて、どう考えるか、見解を伺いたい。
3 現地一帯は住宅の密集地であり北辺を除いて東、西、南に多数の住宅が立ち並び、市民が生活している。このような場所で鉱山開発計画が実施されれば、採掘が露天掘りで行われることから、採掘地から舞い上がる多量の砂埃が周辺市街地に降り注ぐことが懸念される。平成十四年の瀬戸市の気象データによれば風向は北西の風が八十五日、西北西六十二日、北北西五十七日などが記録されていて、夏の三ヶ月を除く九ヶ月間はほぼ一貫して北西から南東方向へ風が吹いている。その南東方向には老人福祉施設や幼稚園が立地していて、採掘予定地との間にはわずか五〇メートルの緑地帯があるのみである。瀬戸市ではかねてより珪肺に代表される呼吸器系疾患が高い罹病率を記録しているが、このような周辺地域への健康被害に関する懸念についてどのように考えるか。
また、採掘後は埋め戻しが行われるとされるが、埋め戻しには「公共工事の残土」が使われることになっている。現地では井戸水を利用している世帯があることから、建設残土に有害物質の混入があった場合、地下水の汚染が懸念される。埋め戻し用土に有害物質が含まれる可能性があるが、その点についてどのように考えるか。
4 現地では昭和三十二年に水害が発生し、二十二名の尊い命が失われた歴史があることから、当事業に対し不安の声が聞かれる。一方事業者側は保安林解除に先立って、地元の三つの自治会に毎年五万円ずつ十年間、合計一五〇万円を支払うことにし、昨年度よりすでにその支払いが始まっている。もし森林法第三十条または第三十条の二による解除の通知がなされた場合、保安林解除への異議意見書の受付が始まる。その前に金品を与える行為は不適切と思われるが、どう考えるか見解を伺いたい。
二 本事業により採掘される珪砂の量と品位の評価が過去の調査結果と相違していることについて
昭和四十九年三月に愛知県が取りまとめた「窯業地下資源の埋蔵量と今後の開発の方向 窯業地下資源開発計画」では紺屋田・印所の森での地下資源の状況が明らかにされている。別添資料である「瀬戸・常滑・三河地区窯業地下資源調査試錐一覧」十五ページ、十六ページに数箇所の試錐結果が収録されており、これによると採掘予定地のほぼ中央やや南に位置する試錐である委・東44−2では次のような層序である。
地表より表土一・〇〇メートル、次に砂礫一三・〇〇メートル、赤色微砂二・二〇メートル、その下に礫まじり砂質土四・二〇メートル、青サバ四・六〇メートル。その下は花崗岩の岩盤に至る。同様に現地で行われた他の試錐調査結果も、程度の差はあるものの、その傾向は共通している。
この結果を受けて、資料の本文八ページでは「東印所区域は、これまで未開発であり、鉱床の埋蔵が大いに期待されていたところである」と前置きした上で、「しかし(委)試錐の結果によれば、区域の北端を除いて、鉱床は欠如していることが明らかになっている」としている。また前出の別添資料である「瀬戸・常滑・三河地区窯業地下資源調査試錐一覧」の六十一ページでも該当する地区について「区域北端の一部を除いて採掘価値はないので可採量を推定せず」としている。
この砂礫は約二〇年後に行われた調査ではシラワキとされ、四八七・七万トンの埋蔵量が推定されている。そのほかに存在するのはC珪砂二四・六万トン、クロワキ二〇・九万トン、蛙目粘土一三・六万トン、木節粘土二・六万トンとされている。いずれの資料にもB珪砂は現れていない。
ところが今回提出された施業案では砂礫が利用価値の高いB珪砂として扱われ四〇〇万トンの埋蔵量が見込まれている。
現地の砂礫をB珪砂と評価変えしたのはなぜか。三〇年前は資源として評価されなかったものが、なぜ今になってB珪砂に昇格したのか。三〇年前の調査結果に誤りがあったのか。それとも三〇年間に評価の基準が変わったのか。お答えいただきたい。
現在は輸入珪砂に押されて珪砂価格は低迷し、精製されたB珪砂でも1トン二〇〇〇円前後にしかならない。一方土木工事で使われる砂、捨石などは1トン三〇〇〇円前後であることから、原砂を珪砂に精製することなくコンクリートの骨材や埋め立て用の土砂などとして販売したほうが収益性にかなっている。もし仮に、原砂をそのような形で販売した場合はただちに鉱業法第八十三条第一項第二号「施業案によらないで鉱業を行ったとき」に該当し、鉱業権を取り消すべきであると思われるがいかがか。
三 鉱業法の公益の概念を時代の要請に合わせて柔軟に解釈することの必要性について
この事業には「鉱業法」が適用されているが、その第一条には「この法律は、鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本制度を定めることを目的とする」とある。ここでいわれている公共の福祉とは何か。法が制定された昭和二十五年当時、わが国は外貨が不足しており原材料を輸入することには困難を伴っていたため国産で調達することは公益性を有していたであろう。しかし当時と現在とでは経済の情勢は大きく異なっており、国産を良しとする法制定当時の公益の概念は通用しないのではないか。見解を求める。
もし現地を森林として残した場合、市民には次のような公益が保証される。すなわち土石流の危険におびえることなく安心して眠ること、清澄な水に恵まれ、それを安心して使うことができること、浮遊物質のないきれいな空気のなかで窓を開け放って生活する権利、鳥や花を愛でながら豊かな自然を享受する権利、そして森林に点在する遺跡や遺構、文化財などに触れることもまた公益の一つといえる。資源の採掘が公共の福祉に寄与するといえる場合にも、実際に採掘するか否かの判断は、現況の森林を保全してその機能をひきつづき発揮させることによって得られるであろうこれらの公益と、比較した上で下されなければならないのではないか。政府の見解を求める。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
砂防法(明治三十年法律第二十九号)第二条の規定に基づき国土交通大臣が指定した土地(以下「砂防指定地」という。)においては、同法第四条第一項及び砂防法施行規程(明治三十年勅令第三百八十二号)第三条の規定に基づき、都道府県知事が条例をもって治水上砂防のため一定の行為を禁止又は制限できることとされている。愛知県においては砂防指定地内における行為の規制に関する条例(平成十五年愛知県条例第四号)第四条の規定により、砂防指定地において鉱物の採掘等を行う者は知事の許可を受けなければならないこととされているが、砂防指定地内行為許可申請について、お尋ねのような動植物の保護を内容とする保全をすべき自然環境の有無は同条による許可を行う際に確認すべき事項ではなく、同申請に係る鉱物の採掘については治水上砂防に悪影響を及ぼすものではないものと判断し、許可をしたところであるとのことである。
なお、一般に、事業者は、その事業活動を行うに当たって、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第八条の規定に基づき、事業活動に伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有しており、事業者が、その事業活動に係る環境の保全について適正に配慮することが望ましいと考えている。
一の2について
お尋ねの砂防工事跡は、愛知県珪砂鉱業協同組合(以下「本件事業者」という。)が租鉱権を有する愛知県瀬戸市東印所町及び同市紺屋田町の租鉱区(以下「本件租鉱区」という。)の外側に位置しており、当該砂防工事跡への住民の立入りを禁止する措置は特に予定されていないものと承知している。また、「禿山が出現」するとの御指摘については、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第八十七条において準用する同法第六十三条第二項の規定に基づき中部経済産業局長が認可した本件租鉱区に係る施業案(以下「本件施業案」という。)において、本件事業者が採掘後に採掘跡の植栽及び緑化を行うこととされているところである。
なお、同市は「愛・地球博」の開催地であるが、本件租鉱区は「愛・地球博」の会場から相当程度離れた場所に位置しており、本件施業案の認可に当たって、そのような事情を考慮すべきであったとは考えていない。
一の3について
本件事業者は、本件施業案において、鉱山道路に散水車によって常時散水すること、市道への出入口付近において路面及び側溝の清掃整備に努めることなどによって、輸送用のダンプトラックの走行による粉じんの発生を防止することとしており、中部経済産業局においては、本件租鉱区においては選鉱が予定されていないことや粉じんが飛散しにくい採掘方法が選択されていることなどから、輸送用のダンプトラックに係る粉じんの発生を適切に防止すれば、周辺地域において粉じんに起因する健康被害が生じることはないものと判断し、本件施業案を認可したところである。
また、採掘後の埋戻しについては、本件施業案において、「当該鉱山及び近隣自社鉱山の表廃土等を充当し、産業廃棄物は使用しない」とされているところであるが、中部経済産業局においては、「表廃土等」とは、「表廃土」のほか、産業廃棄物を含まない公共工事の残土であって、埋戻しに使用することについて本件租鉱区に係る土地の所有者である愛知県の知事の了解を受けたものを指す旨を確認した上で、かかる「表廃土等」の使用によって地下水の汚染が生じる可能性はないものと判断し、本件施業案を認可したところである。
一の4について
お尋ねの本件事業者による地元自治会に対する金銭の支払については、その詳細を承知しているわけではないが、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十七条第一項の規定に基づき本件事業者が行った保安林の指定の解除の申請については、解除の可否について判断するため、関係する法令等の規定に基づき厳正に審査を行っていく所存である。
二について
愛知県及び本件事業者からは、御指摘の「窯業地下資源の埋蔵量と今後の開発の方向 窯業地下資源開発計画」において、珪砂の割合が低いことから「採掘価値はない」とされた礫等と珪砂からなる「砂礫」等については、近年の選鉱技術の進歩により、礫等と珪砂の選別が可能となったことなどから、採掘に値する経済的な価値を有するものと評価されるようになったと聞いている。
また、本件施業案においては、粗鉱を「粗鉱のまま出荷」することとされている、すなわち、出荷する粗鉱については、その後選鉱等が行われることが前提とされているところであり、中部経済産業局においては、本件事業者に、粗鉱を珪砂精製業者以外の者に販売することはない旨確認しているところである。
三について
お尋ねの鉱業法第一条の「公共の福祉」の内容は、経済的な利益のみに限られるものではないと解されるところであり、同法第六十三条第二項の規定に基づく施業案の認可に当たっては、経済的な利益以外の一般公益についても考慮しているところである。
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