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使用済み核燃料の直接処分コスト試算が隠されていた問題に関する質問主意書
衆議院 第160回 第43号お答えすることは困難 ×3
質問本文
原子力発電所から生じる使用済み核燃料を再処理し、これからプルトニウムを抽出して利用するというのが、現在の日本の原子力政策における基本方針となっている。核燃料リサイクル、もしくは全量再処理などと呼ばれている。一方、日本を除くほとんどの原子力利用国では、再処理をしない直接処分と呼ばれる方法が選択されるようになってきている。日本でも、直接処分を選択肢とすることについて検討すべきとの意見は多く出されていたが、これまで政府は、直接処分は検討する必要もなしと、この議論そのものを封印してきた経緯がある。
ところが最近になって、一九九四年に、当時の通産省が直接処分をする場合のコストについて試算をしていたことが明らかになった。一九九四年二月四日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ会合における資料「核燃料サイクルの経済性試算について」(以下「事務局試算」という)がそれである。経済産業省・資源エネルギー庁もその存在を認め、さらに関係書類が残っていないかを現在調査中であると聞いている。さらに、これを機に、電気事業連合会、原子力委員会、動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル機構)、旧科学技術庁、原子力環境整備センター(当時の通商産業省からの依頼に基づく)においても、それぞれ独自に試算が過去になされ、それら一切が隠されていたことが次々と明らかになった。このようなコスト試算が各所で行われていることが、関係者には周知の事実であったことをうかがわせる。
資源エネルギー庁による虚偽答弁に関しては、答弁者、答弁資料作成者及び答弁の資料をつくる監督者が内規による処分を受けた。しかしながら、コスト試算資料作成と議論の経緯がどのようなものであったか、それら資料がなぜ十年間も存在すら明らかにされず、それによって再処理をしない場合の施策についての議論が封じられてきたのはなぜか、それが政策決定にどのように影響したのか、といった点については、まだ一切明らかにされていない。
この試算隠しが報じられた後の原子力委員会の原子力利用長期計画策定会議では、「再処理か直接処分かを議論する機会が失われた十年と言わざるを得ない。直接処分を本格的に検討しようという流れになるのを避けたのではないか」といった批判があった。原子力委員会では、これを背景に、再処理をしない場合のコスト試算を改めて行った上で、これに基づいて再処理の是非についても議論を行うこととなった。
このように、再処理と直接処分とを比較するコスト試算が隠されていた問題は、再処理の是非ばかりでなく、政府の核燃料サイクル政策、原子力政策の根幹に関る問題であることは間違いない。この問題の真相解明を怠り、政策を誤るようなことがあってはならない。
よって、以下質問する。
一 一九九四年二月四日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ会合における資料「核燃料サイクルの経済性試算について」(以下「事務局試算」という)を作成したのはなぜか。
二 また、事務局試算の作成にあたった担当者全員の名前、当時の役職と現職をそれぞれ示していただきたい。虚偽答弁で処分を受けた三名は一九九四年の当時、この試算の作成及び議論にどのように関り、どのような認識でいたのか。
三 第四回総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題WG議事概要(二〇〇四年原子力委員会新長計策定会議資料、以下「議事概要」という)における二月四日の会合の出席者について、「事務局:並木(審議官)、藤島(総務課長)、松井(原産課長)、稲葉(原電課長)、藤富(原管課長)、他」とあるうちの「他」とは誰か。全員の名前、当時の役職と現職をそれぞれ示していただきたい。
四 議事概要によると、二月四日の次の会合予定は二月十六日となっているがこの会合は開かれたのか。その後六月十日の総合エネルギー調査会原子力部会中間報告に至るまで、会合は何度開かれ、その出席者は誰で、議論の中身は何であったのか。
五 経済産業省資源エネルギー庁が平成十六年七月五日に作成した「平成六年二月四日『核燃料サイクルの経済性試算について』という資料」(以下、「七月五日文書」という)の中では、「専門家の委員の方々のご審議を経て」とあるが、具体的にどのような審議がなされたのか。
六 事務局試算では、再処理のコストは直接処分の約二倍(直接処分一・二三円、国内再処理二・三〇円、割引率五%)という結論であった。これについて、六月十日の総合エネルギー調査会原子力部会中間報告は、「我が国の場合、(中略)最終処分費の見積もりが極めて不透明であることから、両路線の比較を行うこと自体が困難である」と結論づけている。見積もりのうち、どこがどのように不透明であるのか。「比較を行うこと自体が困難」というのは具体的に何がどう困難であるのか。
七 「困難」との判断をしたのは誰か。
八 議事概要によると、電力会社の代表者は「発表され、非常に割高である場合、サイクル事業がなりたたなくなる」と述べ、当時の動力炉・核燃料開発事業団の幹部も「公表の仕方に配慮願いたい」と述べている。「困難」との判断は、このような意向に沿うためのものではなかったのか。
九 その後、試算を行った事実を一切明らかにしなかったのも、「公開された場合、核燃料サイクル事業が成り立たなくなる」との判断をしたからではないのか。
十 事務局試算について、「この資料の作成作業は十年以上前に行われたものであり、その後状況が大きく変化していると考えられます」(七月五日文書)とあるが、何がどう変化したのか。
十一 原子力委員会利用長期計画策定会議では、「再処理か直接処分かを議論する機会が失われた十年と言わざるを得ない。直接処分を本格的に検討しようという流れになるのを避けたのではないか」との委員からの批判の発言も出ている。事務局試算については、これに基づいて、再処理の是非について政策論議を開始すべきだったのではないか。
十二 再処理を行うか否かという、原子力政策にとって非常に重要な政策選択において、一方の選択肢についての重要な資料を国民の目から覆い隠すことによって、議論そのものを封じ、もう一方の選択肢だけを押し付けるようなやり方は問題があったのではないか。
十三 昨年来、資源エネルギー庁が事務方である総合エネルギー調査会電気事業分科会において、原子力バックエンド事業のコスト試算と制度・措置についての議論が行われている。ここでは委員から、再処理をしない場合のコスト試算も行うよう要請が出ており、例えば二〇〇三年十一月十四日の第十六回電気事業分科会において、ある委員は、「今回出されているものが、バックエンドコストのすべてなのでしょうか。(中略)もし半分という場合があるとすれば、逆に全量再処理をしないという選択肢も考えられるはずではないかと思います。今回の試算と合わせ、全量再処理する場合と、全量再処理しない場合も含めた三パターンについて、概算でも結構ですので、ぜひ出していただきたいと思います。」と述べている。電気事業分科会の議論の中でこのような委員の要請を拒否したのはなぜか。遅くともこの段階においては、再処理をしない場合のコスト試算を公開すべきではなかったのか。
十四 電気事業分科会は、「直接処分の分析・推計を行っていない」(「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)に対する意見募集 平成十六年七月十四日 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会事務局)ことを前提に、再処理をしない場合については一切議論せずに、原子力バックエンド事業に対する制度・措置についての議論を進め、その後、コスト試算隠しが明らかになり、「核燃料サイクル政策について、原子力委員会においても検討が行われようとしていることから、その結論を待つべき」(同前)との委員の意見があったにもかかわらず、「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)をまとめ、意見募集をはじめるなど、再処理を前提とした制度・措置策定を強引に進めている。状況を鑑みて、この作業は凍結すべきではないか。
十五 同様に、ウラン試験などの操業前試験を含めた六ヶ所再処理施設での建設事業及び、再処理を前提としたプルサーマル計画についても、これらの検討が終了するまで一旦凍結すべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「事務局試算」(以下「本件試算」という。)の作成理由については、これが資料として提出された総合エネルギー調査会原子力部会(以下「部会」という。)の核燃料サイクル及び国際問題ワーキンググループ(以下「ワーキンググループ」という。)の議事概要(以下「本件議事概要」という。)及び配付資料(以下「本件配付資料」という。)以外に、これを確認できる資料等が見当たらないが、本件配布資料においては、「これまで、核燃料サイクルの経済性については、OECD/NEAの試算を引用することが多かったが、本試算の根拠となる単価が我が国国内の個別単価と必ずしも一致しないこと、使用済燃料の英仏への輸送費等が含まれていないことなどから、本試算を直ちにわが国の核燃料サイクルコストに当てはめることは適当ではなく、今回新たに試算を行った」としているところである。
二について
本件試算は、平成六年当時、資源エネルギー庁原子力産業課において作成されたものであると考えられるが、課内における具体的な作業分担の全容は明らかでなく、お尋ねの担当者全員の名前等についてお答えすることは困難である。また、お尋ねの三名から本年三月十七日以降に聴取したところ、いずれも、平成六年当時、本件試算の作成及び作成に係る議論にかかわった記憶がなく、また、そのような試算が存在したとの認識もないとのことである。
三について
お尋ねの「二月四日の会合の出席者」については、本件議事概要以外にこれを確認できる資料等が見当たらず、「「他」とは誰か」とのお尋ねにお答えすることは困難である。
四及び五について
お尋ねの「専門家の委員の方々のご審議」とは、本件試算が提示された平成六年二月四日以降、同年六月十日までの間に開催されたワーキンググループにおける審議を指すものである。
当該ワーキンググループは、同年二月四日から六月十日までの間、二月四日及び十六日、三月二十八日並びに四月六日に開催されており、これらのワーキンググループにおいては、核燃料サイクル政策について、供給安定性、経済性、環境負荷等総合的な観点から議論が行われ、かかる議論を経て、部会において取りまとめられた中間報告書においては、我が国の場合、「最終処分費の見積りが極めて不透明であることから、両路線の比較を行うこと自体が困難で」あり、また、長期的なエネルギー供給の選択肢の確保並びに放射性廃棄物の適切かつ安全な処理及び処分の観点から、「核燃料リサイクル開発を継続する」としているところである。また、ワーキンググループを構成する委員については、別添のとおりである。
六について
本件議事概要によれば、本件試算については、ワーキンググループの委員の間で、直接処分の費用は処分場の立地状況やそれに係る許認可等の事情で大きく左右されること、立地事情等日本の特殊性を考えると経済協力開発機構や米国の計算は適用できないことなどについての議論が行われており、それらの議論を経て、「我が国の場合・・・最終処分費の見積りが極めて不透明であることから、両路線の比較を行うこと自体が困難である」との結論に至ったものである。
七について
お尋ねの「判断」は、ワーキンググループにおける審議を経て、部会においてなされたものである。
八について
部会及びワーキンググループにおいては、電気事業者の代表者のみならず学識経験者等社会の様々な立場を代表する者を委員として審議が行われていたところであり、平成六年六月十日に取りまとめられた当該部会の中間報告書の内容は、かかる委員の総意を反映したものであると考えている。
九について
当時の部会及びワーキンググループにおいては、他の多くの審議会と同様に、原則としてすべての配付資料について非公表の取扱いをしていたところであり、特に、本件試算について、御指摘のような「判断」をした上で公表しなかったということではない。
十について
お尋ねの状況の変化としては、実際に再処理工場を建設した経験等を踏まえ再処理等の費用を具体的に見積もることができるようになったこと、燃焼度の向上等の技術進歩があったことなどが挙げられる。
十一及び十二について
九についてで述べたとおり、当時の部会及びワーキンググループにおいては、原則として、すべての配布資料について非公表の取扱いをしていたところであるが、八についてで述べたように、ワーキンググループにおいては、本件試算を踏まえ、社会の様々な立場を代表する委員の間で核燃料サイクル政策について審議が行われたところであり、「議論そのものを封じ、もう一方の選択肢だけを押し付けるようなやり方」との御指摘は当たらないと考える。
十三及び十四について
これまでの核燃料サイクル政策は、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成十二年十一月二十四日原子力委員会決定。以下「現行の長計」という。)における「使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方」とする方針や「エネルギー基本計画」(平成十五年十月七日閣議決定)における「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方としており、これらのプロセスのひとつひとつに着実に取り組んでいくことが基本となる。」との方針を前提に進めており、現時点で、これら方針に何らかの変更があるわけではない。お尋ねの総合資源エネルギー調査会電気事業分科会(以下「分科会」という。)における審議については、現行の核燃料サイクル政策に係る方針を前提として行っているところであり、「再処理をしない場合のコスト試算」を提示しなかったことについて、特に問題があるとは考えておらず、また、分科会の中間報告である「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(以下「中間報告」という。)の取りまとめの作業を凍結する必要はないものと考えている。
なお、バックエンド事業に関する制度及び措置の在り方については、中間報告の取りまとめ以降も、核燃料サイクル政策に係る今後の政府内の検討作業及び国民的な議論の動向を踏まえ、必要に応じた見直しも含め、議論を進めていく必要があるものと考えている。
十五について
十三及び十四について述べたとおり、現時点で、現行の長計及び「エネルギー基本計画」の方針に何らかの変更があるわけではない。
他方、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」については、原子力委員会が、昭和三十一年からこれまでおおむね五年ごとに合計九回策定してきており、平成十二年十一月二十四日の現行の長計の策定から、来年十一月で五年を迎えることとなるため、同委員会が新たな「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の策定作業に着手したところである。
電気事業者によるプルサーマルの実施及びウラン試験の実施等日本原燃株式会社の六ヶ所再処理工場の稼働に向けた個別の事業の具体的な進め方については、このような状況も踏まえて、実施者である電気事業者や同社が安全確保を前提に地元の理解を得つつ判断するものであると考える。
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