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沖縄での米軍ヘリ墜落「事故調査報告書」等に関する質問主意書
衆議院 第161回 第78号
質問本文
在日米軍岩国航空基地に配備されていた米軍CH53D型ヘリ(シースターリオン)が、二千四年八月十三日に沖縄国際大学構内に墜落した事故に関連して十月五日に、日米合同委員会第二分科会に調査報告書が提出され、それを受けて八日には関係自治体や報道機関に公開された。しかるに、報告書を吟味するいとまもない十三日には同型ヘリの飛行が再開され、十五日には、政府は米軍とともに岩国市、山口県を訪れ、同型機の岩国への帰還に同意して欲しい旨せまり、自治体の合意を取り付けた。
この経過は、事故報告書の公表が、事件の幕引きのきっかけ、ないし根拠となったことを示唆している。従って、次の事項について質問する。
一 事故報告書に関連して
1 全部でA4二百十ページの中で、一、二ページが公開されていないのは何故か、その理由を明らかにしていただきたい。ここには、報告書の名称や報告書を書いた主体が書かれていると考えられるが、報告書本体の重要な一部分であり、是非とも公表していただきたい。仮に公表は不適当と判断した場合には、その理由を明らかにされたい。報告書において、氏名が黒く塗られている部分などがあり、それはプライバシーの保護という理由があり、理解できないでもないが、一、二ページは、いわば報告書の表紙に当たる部分であり、公表できない理由は考えられない、明確なご説明をお願いしたい。
2 本報告は、正式の承認された報告書としては体裁が全く整っていないように見受けられるが、最終報告書なのか。つまり司令官の承認を受けた公式のものなのかどうか、その位置づけを明確にしていただきたい。
3 調査がWinfieldScottCarson海兵隊中佐一人で行われており、本文も氏が「I」を主語として構成されている。公的な組織による報告書であれば、調査委員会が組織され、調査委員会としての報告書が出されるのが通常の姿である。調査委員会は作られているのか否かを明確にしていただきたい。またカーソン中佐は、ヘリ等について技術的な内容に精通した技術者なのか明らかにされたい。
4 報告書には一部に乱丁があったり、誰に対するインタビューなのか明記されていないなど不備が目立つが、それらの修正を求めたか、この事実は、第三者が報告書の最終チェックを行っていないことを物語っているのではないか。理由を明らかにされたい。
5 インタビューでしばしば出てくる[modifiedquickrig]とは、このヘリ部隊に特有のものなのか否かを明らかにしていただきたい。少なくとも、報告書からは、以前から幅広く行われている操作であるような記述になっており、同型機に特有のものとは思えないが、その理由をご説明願いたい。
6 この報告書には、技術的検討報告は含まれているのか。技術報告が含まれているとしたら、どの部分か示してほしい。実は、本文の中に「技術報告」「engineeringreports」は、できてないことを示唆する記述がある(p.19of210)。カーソン中佐は、「技術レポートが、この兵長の話(コッターピンは、入っていることを確かめたという証言)が間違いであると証明することを信じる」(政府の仮訳では、十七ページの二行目に「技術報告書により、■■■兵長が間違っていることを確認することになると当職は信じている。」となっている部分である)と意見を述べている。原文ではカーソン中佐が“believe”“will”という単語を使っており、この時点で、技術的な調査の結論が出ていないことを示唆しているのではないか、ご説明を願いたい。
7 事故機は、フライトレコーダーやデータレコーダーを持つのか、持たないのか。持つのであれば、その解析結果は、報告書のどこに記載され、どう利用されているのか。これらの記述が見あたらないのである。技術調査がなされるとすれば、フライトレコーダーなどの解析が客観的な資料として不可欠であることは言うまでもないことである。以上のことからも、技術報告はまだ作られていないと判断できるが、政府はどう考えているのか、ご説明願いたい。
8 問題の焦点であるボルトの抜け落ちを防止するコッターピン(Cotterpin)は、元々装着されていなかったのか、それとも装着されていたが抜けてしまったのか、どちらなのか。この点は、証拠も含めて本報告書で明快にされているのか。「コッターピンの装着ミス」に関して、物証を含めて検討されていないまま、報告書が作られているのではないか。これらの記述を通じて、事故原因が明確になったという部分はどこなのか。この点が明らかでないと、報告書によって事故原因が明らかになったとは言い難いのではないか。ご説明をお願いしたい。
9 政府が作成した「事故調査報告書の概要」には、第五パラグラフに次のような記述がある。「事故発生原因は整備不良によるものであった。整備要員が実施されるべき整備の内容につき混乱し、また、事故機のフライト・コントロールの接続について決められた手順を守らず、コッターピンはテール・ローター・サーバーの接続ボルトに正しく装着されていなかった。」とある。
この記述は、報告書のどの部分から引き出したものか示してほしい。このような結論を引き出せる内容を報告書は持ち合わせていないようであるが、特に質問6、7、8に関わる問題などとの関連で省察していただきたい。前記のような結論を下すには、カーソン中佐の聞き取りだけでは不十分で、きちんとした技術的な検証が必要だと考えられるが、ご説明願いたい。
10 質問6、7、8、9などに関わって、本報告書に技術的に詳細な検討がなされていることが示されていることが証明されない場合、政府は、何をもって、飛行再開と岩国への帰還の受け入れを決めたのか明らかにしていただきたい。
二 その他
1 事故の直後の八月二十二日に同型ヘリ六機がイラクに向けて出たことに対して、当時政府は抗議したが、その後、現在までにどのような取り組みをしてきているか。本報告書からわかることは、事故は、米軍がイラクへのヘリ部隊の派兵を急いでいたなかで発生しており、事故が発生してからも、米軍の基本姿勢は変わることがなく、日本政府の抗議をもふりきる形で、二十二日には、六機をイラクに向けて飛行させてしまったのである。ここから見えるのは、沖縄県民の生命や安全よりも、イラク情勢との関連で一刻も早く沖縄からヘリ部隊をイラクに派兵させることを最優先させる米軍の変わることのない基本姿勢であるが、これに対して、政府はどのように考え、どのように行動しているのかご説明していただきたい。
2 事故が起きたとき、普天間基地には、十二機のヘリがいたと言われている。内一機が事故で墜落し、六機がイラクへ、残る五機が岩国に帰還する予定(そのうち三機は既に十月二十八日に帰還ずみ)である。岩国には、元々八機いたはずなので、イラクに行ったヘリの内、少なくとも二機は岩国に配備されていたものである。ご説明をお願いしたい。
3 事故を起こした同型機のうち八機は、二千二年二月に岩国に配備されたものであり、その時の配備理由は、「テロなどの不測事態が発生した場合における人道支援や災害救助活動」のためと地元自治体に説明がなされている。しかるに、イラクに派兵されたヘリは、明らかに、米軍のイラク占領、ないし戦闘に関わるものとして役割を持っているはずであり、安保条約六条の極東条項から見ても範囲を超えたオペレーションに関わっていることは明白である。政府として、このようなことを容認しない姿勢を示すべきではないのか。明確な説明をお願いしたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
お尋ねの「一、二ページ」については、本年十月五日に開催された日米合同委員会の下部機関である事故分科委員会(以下「事故分科委員会」という。)において、同年八月十三日に沖縄県宜野湾市で発生したアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)軍隊のヘリコプターの墜落事故(以下「本件事故」という。)に関する合衆国の事故調査報告書(以下「本件報告書」という。)とともに、事故分科委員会の合衆国側議長から日本側議長に提出された資料であることから、本件報告書と一連のページ番号が付されているが、本件報告書とは別の資料である。政府としては、本件報告書については、その全体を公表しているところである。
一の2について
本件報告書には、第一海兵航空団司令の本件報告書を承認する旨の文書(二十三ページから二十六ページまで)が含まれているところ、本件報告書は、同司令が承認した合衆国政府の正式な報告書であると承知している。
一の3について
政府としては、合衆国において、公的な組織による調査がどのように行われるべきとされているかについて、必ずしも詳細を承知しているわけではないが、本件報告書に係る調査(以下「本件調査」という。)について、複数の委員で構成される委員会は設置されていないものと承知している。
また、本件事故に係る事実関係等の調査を行った合衆国海兵隊のカーソン中佐は、本件報告書の予備陳述(五ページから七ページまで)の四の記述によれば、本件事故に係る事故機(以下「本件事故機」という。)と同型のヘリコプター(以下「本件同型機」という。)の操縦士、海軍航空安全幹部課程の修了等の経歴を有しているとのことであり、本件調査を適切に行うために必要な資質を有していたものと考えている。
一の4について
「誰に対するインタビューなのか明記されてない」との御指摘については、本件報告書のどの部分を指すかが明らかでないが、本件報告書には、一部、ページをつづる順序の乱れ等の不備があり、その修正の必要性については、合衆国政府に連絡したところである。
いずれにせよ、本件報告書については、一の2についてで述べたように、第一海兵航空団司令が承認したものであると承知している。
一の5について
お尋ねの「このヘリ部隊」が何を指すかが必ずしも明らかでないが、本件報告書の意見(十九ページから二十一ページまで)の十六においては、「modified quick rig」について、「証言は、この慣例がこの分遣隊に特有の、或いは、新しいものでもないことを示している」とされているところである。
また、「modified quick rig」が本件同型機に特有のものか否かについては、本件報告書において明確に述べられていないものと承知している。
いずれにせよ、「modified quick rig」については、本件報告書の勧告(二十一ページ及び二十二ページ)に記述されている再発防止策に加えて、航空機の安全の観点から、何らかの対応をとる必要があるか否か、今後、事故分科委員会等の場において議論してまいりたい。
一の6及び7について
本件報告書には、合衆国の技術者により作成された技術的な報告書が添付されているわけではないが、本件報告書の予備陳述の三によれば、本件報告書は、本件事故の原因に係る技術的分析等について、合衆国ノース・カロライナ州チェリー・ポイントの海軍航空補給廠H五十三支援班の航空宇宙技術者等本件同型機の機体構造等の専門家から意見を聴いて作成されたものであるとのことであり、本件報告書には、事故の原因に関する当該航空宇宙技術者からの聞き取りの結果も添付されているところ、本件報告書は、技術的な検討を経て作成されたものであると考えている。
また、合衆国政府からは、本件事故機にはフライト・データ・レコーダーやボイス・レコーダーは搭載されていなかったと聞いている。
一の8について
コッター・ピンが「元々装着されていなかったのか、それとも装着されていたが抜けてしまったのか」という点については、本件報告書の意見の五において、複数の証言に基づき、「コッター・ピンは、・・・装着されていなかった」と述べられており、「報告書によって事故原因が明らかになったとは言い難いのではないか」との御指摘は当たらないものと考える。
一の9について
お尋ねの「事故調査報告書の概要」の記述については、本件報告書の意見の一における「本事故は、整備上の過誤により惹起されたものであった。特に、整備要員が、事故機のフライト・コントロールを整備する上で、決められた手順を遵守しなかった。クイック・リグ又はフル・リグを実施していたかどうかについては、・・・混乱があった」との記述及び本件報告書の意見の五における「コッター・ピンは、テール・ローター・サーボをフォローオン・アームに接続するナット及びボルトを通して装着されていなかった」との記述を基に述べたものである。
また、「事故調査報告書の概要」は、あくまで本件報告書の要点をまとめたものであって、本件事故の原因に関する政府としての結論を示したものではなく、本件事故の原因の究明及び再発防止策の策定については、事故分科委員会において、本件報告書を踏まえ、日米合同委員会への報告等に向け、技術的観点を含め、更に細部の検討を行っているところ、これがまとまり次第、合衆国政府とも協議の上、可能な限り公表していきたいと考えている。
一の10及び二の1について
本件事故の発生後、合衆国政府は、事故原因についての更なる分析及び本件同型機についての綿密な点検が行われるまで、本件同型機を運用しない旨述べていたところである。しかしながら、本年八月二十二日、合衆国政府から本件事故の原因及び再発防止策についての十分な説明がないまま、普天間飛行場において本件同型機の運用が再開されたため、政府としては、かかる運用再開に反対するとの立場をとり、外務省北米局長から在日本国合衆国臨時代理大使に対して、同日、本件事故の原因及び再発防止策についての十分な説明がないまま、本件同型機の運用が行われることについて、強く抗議する旨述べたところである。
その後、同月二十七日の同省北米局参事官から在日本国合衆国大使館の公使に対する申入れを含め、累次にわたり、本件同型機については、本件事故の原因及び再発防止策についての十分な説明がないまま運用を再開させることがないよう合衆国に対し申入れを行った。これらの申入れを受けて、同月二十八日、同公使から同参事官に対し、本件同型機の運用は、これを行うことが適切と言い得る状況となるまで行わない旨の連絡があった。
同年十月五日に、合衆国政府から本件報告書が提出されたところ、これを踏まえ、日本側の専門家が普天間飛行場を訪問して、本件同型機の整備及び点検の状況について確認し、また、事故分科委員会において本件報告書の内容について検証した。かかる確認及び検証を通じ、政府として、本件事故の原因及び飛行再開に向けた再発防止策について、合衆国政府から十分な説明を聴取することができたとの認識を持つに至った。
このため、同月十二日に開催された「沖縄在日米軍ヘリ墜落事故関係大臣等会合」において、合衆国政府から本件同型機の運用を再開するとの申入れがあった場合、政府として当該申入れについて異論を唱えないことを確認したところである。
二の2について
合衆国政府に確認したところ、岩国飛行場に配備されているヘリコプター中隊に所属する本件同型機三機がイラクに移動したとのことである。
二の3について
合衆国軍隊の運用の詳細については、イラクにおけるものを含め、承知する立場にはない。その上で述べれば、合衆国軍隊は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条の規定に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国において施設及び区域を使用することを許されているものであるが、合衆国軍隊が、運用上の都合により、岩国飛行場に駐留する部隊を含む我が国に駐留する部隊を他の地域に移動させることについては、同条約上問題ないと考えている。
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