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水俣病問題における被害者救済に関する質問主意書
衆議院 第162回 第51号お答えすることは困難 ×1
質問本文
水俣病問題は、平成七年十二月十五日付で閣議了解された「水俣病対策について」(以下、政府解決策という)を受けて実施された総合対策医療事業(以下、総対事業という)等によって大幅な救済が実現している。しかし、チッソ水俣病関西訴訟における平成十六年十月十五日の最高裁判決(以下、最高裁判決という)で国及び熊本県の責任が認定されたことから、改めて被害者救済を中心とした問題の解決が求められることとなった。
熊本及び鹿児島両県での「公害健康被害の補償等に関する法律」(以下、公健法という)による認定申請者は、最高裁判決後急増し、すでに約千五百名という状況にある中、環境省は、平成十七年四月七日付「今後の水俣病対策について」(以下、環境省案という)を大臣自らが発表しているが、患者団体からは強い反発もあり、極めて問題点が多い。そこで緊急を要する被害者救済の観点から、以下の質問をする。
一 環境省案の中で、「国として、ここにすべての水俣病被害者に対し謝罪の意を表する」という表現があるが、「すべての水俣病被害者」とは具体的に何を示すのか、公健法上の認定者のみならず総対事業該当者や認定申請者、判決確定原告等も含める趣旨か、明らかにされたい。
二 環境省案では、総対事業のうち保健手帳のみの申請再開としているが、なぜ、同事業全体の再開ではなく保健手帳のみの申請再開としているのか、明らかにされたい。
三 現行の総対事業では、公健法上は水俣病とは認定されないものの、水俣病にもみられる四肢末梢優位の感覚障害を有する人を医療手帳対象者とし、四肢末梢優位の感覚障害以外の一定の神経症状を有する人を保健手帳対象者としている。しかし、環境省案では保健手帳のみの申請再開のため、本来であれば医療手帳対象者とされるべき人でも保健手帳しか交付されないことになるので、被害者間の公平性が保たれていないと判断せざるを得ないが、公平性はどのように確保するか。
四 現行の総対事業では、要するに四肢末梢優位の感覚障害の有無で交付すべき手帳の区別をしている。最高裁判決及び原審である大阪高裁判決ではこの区別は採用されず、むしろ二点識別覚異常の有無を重視しているが、総対事業ではこれを取り上げていない。この点からみても不公平と考えられる。結局のところ、四肢末梢優位の感覚障害の有無で医療手帳と保健手帳の差異を設ける意味はほとんどなくなっていると考えられるが、国はこの点をどのように評価しているか。
五 環境省案を前提にすれば、支給面においては、政府解決策においてチッソが負担した一時金を除外すれば、医療手帳と保健手帳との差異は療養手当の有無のみとなるのではないかと考えるが、その通りであるか、あるいは何らかの差異があるか、明らかにされたい。
六 環境省は公健法をどのように評価、認識し、水俣病対策の中でどのように活用しようとしているのか、明らかにされたい。
また昭和四十八年九月二十日の参議院公害対策及び環境保全特別委員会では、公健法案に次のような附帯決議が付されている。
「三 公害健康被害認定審査会の認定審査にあたっては、主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。
四 患者の認定審査を円滑にすすめる前提として、健康調査・診断の体制を早急に整備すること。そのために、公害病専門医師の養成、確保の措置を講ずるよう努力すること。」
これは遵守されていると考えるか。
七 最高裁判決後、公健法に基づく認定申請者が急増しているが、熊本県及び鹿児島県における検診や認定審査等の体制の現状をどのように把握しているか。また、そのような状況に対して、国はどのような対策を考えているか。
八 最近十年間の認定審査会にかかる実態をみたとき、申請者一人を処分するのにかかる費用と時間は平均してどの程度であるか、明らかにされたい。認定にかかる業務は国と県で費用負担しているが、この費用が多大にかかっているようであれば認定業務の見直しをすべきと思うが、そのような考えはないか、明らかにされたい。
九 最高裁判決以降、四月十二日までの約半年間の認定申請者数は熊本県八百八十五名、鹿児島県六百十名である。この申請者数は、鹿児島県では過去最高の昭和四十九年度一年間の三百八十九名をはるかに超えており、また熊本県においても昭和四十八年度の千九百三十七名や同五十二年度の千四百十二名、同五十三年度の千四十八名に迫る数である。かかる状況を鑑みたとき、国自らが水俣病の認定業務を担当するという考えはないか。例えば水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法を復活させて、両県と共に認定業務を分担する考えはないか。
十 平成七年十二月の政府解決策は「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図るため」のものであったとされたが、実際にはそうはなっていない。今回の環境省案は「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図る」ものに成り得ると考えているか。そう考えるのであればその根拠を、考えないのであればどのようにして「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図る」のか、現時点での考えを明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
環境省が平成十七年四月七日に発表した「今後の水俣病対策について」における「すべての水俣病被害者」としては、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号。以下「公健法」という。)第四条第二項の認定を受けた者、水俣病総合対策実施要領(平成八年一月十二日付け環保企第十四号環境庁企画調整局環境保健部長通知別紙。以下「実施要領」という。)第三章に規定する医療事業の対象である者、最高裁判所平成十六年十月十五日第二小法廷判決(民集五十八巻七号千八百二頁。以下「最高裁判決」という。)等の確定判決において損害賠償請求が認容された者、今後再開することとしている実施要領に規定する保健手帳(以下「保健手帳」という。)の交付の対象となる者等を考えている。
二、三及び五について
実施要領に規定する医療手帳(以下「医療手帳」という。)の交付の再開については、平成七年のいわゆる政治解決においては、医療手帳を交付された者に汚染原因企業から一時金を支給することとされていたなど、当時係属していた裁判等の和解としての側面を持つものであったことを踏まえ、今回の措置においてはこれを行わないこととしているものである。一方、保健手帳の交付の再開については、給付内容に関して療養手当の支給の有無という差異はあるものの、被害者間の公平性を可能な限り確保するという観点も踏まえ、医療費の給付については現行の医療手帳を交付された者に対するものと同等とし、医療費の自己負担分を全額支給する等の拡充を行った上で、これを行うこととしたものである。
四について
平成七年のいわゆる政治解決を踏まえ医療手帳を交付された者と保健手帳を交付された者との間で差異が設けられてきたことには、一定の合理性があると考えているが、今回の保健手帳の交付の再開に当たっては、二、三及び五についてでお答えしたこと等を考慮して、保健手帳を交付された者に対する医療費の自己負担分を全額支給する等の拡充を行った上で、四肢末梢優位の感覚障害を含む水俣病にも見られる一定の神経症状を有する者を幅広く救済の対象としているものである。
六について
公健法は公害健康被害の補償等に関する基本的な法律であり、水俣病についても公健法に基づき公害健康被害に係る被害者の認定及び補償が行われる仕組みとなっており、今後とも公健法を適切に運用してまいりたい。なお、公健法に基づき水俣病と認定された者(以下「被認定者」という。)は、患者団体と汚染原因企業との間で締結された協定書に基づき、その希望により、公健法に基づく補償に代えて汚染原因企業から直接補償が受けられることとされており、これまですべての被認定者が当該協定書に基づく補償を選択しているものと承知している。
御指摘の附帯決議については、公害健康被害認定審査会(以下「認定審査会」という。)における水俣病の認定の審査(以下「認定審査」という。)に当たり、認定の申請の際に提出される医師の診断所見も資料とされているところである。また、これまでも公健法に基づく水俣病の認定の申請を行っている者(以下「認定申請者」という。)の数等に応じて、検診の体制の確保に努めてきたところであり、最高裁判決後における認定申請者の増加に対しても、関係県市と協力して引き続き検診の体制の確保に努めていくこととしている。さらに、政府においては、従来から水俣病に係る各種調査研究を行っており、これは、水俣病対策にかかわる医師の資質の向上にも寄与していると考えている。
七について
熊本県及び鹿児島県における現時点の検診及び認定審査の体制については、最高裁判決後に急増している認定申請者に対して十分なものではないと認識している。このため、国としては、医療機関に対する検診の協力依頼及び認定審査会の円滑な運営に向けた取組を関係県市と協力して行ってきたところであり、引き続き検診及び認定審査の体制の整備に向けた取組を進めていくこととしている。
八について
お尋ねの費用及び時間については、正確な数値をお答えすることは困難である。また、現時点では、公健法に基づく認定業務に要する費用という観点からの業務の見直しについては、考えていない。
九について
水俣病の認定業務の推進のためには、検診及び認定審査に係る医師の確保が不可欠な条件であるが、このような業務に携わることができる医師の数は限られていることから、現時点においては、国及び関係県市が協力して、これらの医師の確保を始めとした検診及び認定審査の体制の整備を行うことが重要であると考えており、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法(昭和五十三年法律第百四号)の改正については考えていない。
十について
「今後の水俣病対策について」で示した対策は、平成十八年に水俣病のいわゆる公式確認から五十年という節目の年を迎えるに当たり、平成七年のいわゆる政治解決や最高裁判決も踏まえ、医療対策の一層の充実や水俣病発生地域の再生、融和の促進等を図るために行うものであり、水俣病問題の最終的かつ全面的な解決に向けて、関係者の理解と協力を得ながらその実施に取り組んでまいりたい。
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