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薬物乱用及び再犯防止対策と治療回復支援に関する質問主意書

衆議院 第165回 第237号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×1承知していない ×1個別の事案 ×1

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2006年12月12日
内閣転送 2006年12月18日
答弁書受領日
2006年12月22日
提出から10日
答弁の項目数
22
質問 5,221字/答弁 6,419字

質問本文

十一月に開かれた「アジア・太平洋地域の薬物取締機関長会議」(国連加盟の二十七ヶ国・二地域が参加)がタイ・バンコクで開かれ日本も参加した。

いまや、世界的な薬物乱用問題の解決に我が国も積極的に貢献しなければならない。これまでの薬物乱用防止対策と薬物乱用・依存者を取り巻く現状は依然として厳しい情勢にある。特に、青少年の薬物乱用の多くは、薬物に対する詳しい知識が不十分であり、乱用のもたらす恐ろしさを知らないことに起因する。

薬物乱用が中・高校生を中心とした若年層の間で急増している問題に内閣をあげて取り組むために、平成九年に内閣総理大臣を本部長とする「薬物乱用対策推進本部」が設置され、平成一〇年には「薬物乱用防止五か年戦略」、平成一五年には「薬物乱用防止新五か年戦略」が決定された。

我が国において麻薬・覚せい剤が社会問題化したのは、第二次世界大戦後のことである。戦後六〇余年を経た今日において終息するどころか、その乱用は益々多種多様化の様相を呈している。

我が国における薬物事犯の検挙者数を見ても二〇〇五年(平成十七年)には約一万六千人に、そのうち覚せい剤事犯が約一万三千五百人と五年ぶりに増加した。特に、二〇歳代を中心とした若年層への乱用の拡大が顕著であり、憂慮すべき状況にある。

これら、いずれも大きな社会問題であり取締りの徹底は勿論のこと、薬物依存症からの「回復」の道と医療的・社会的対応システムがほとんど育ってきていない。唯一、民間の自助グループ「ダルク」が薬物乱用・依存者の「回復」のプログラムに取り組んできたが、既に薬物問題を取り巻く社会的ニーズの拡大によって「ダルク」が充分に対応しきれなくなっているのが現状である。

諸外国では薬物乱用・依存対策として、司法、医療、福祉の連携した総合的な「回復」支援、社会復帰支援、研究調査を行う機関が作られており、総合的に問題解決に取り組んでいる。

我が国でも、そうした省庁を超えた体制作りが必要である。

「薬物乱用防止新五か年戦略」の中で治療の充実、社会復帰の支援、関係機関の連携の強化と言われているが具体性がなく不十分ではないか。

よって次の事項について質問する。

一 薬物依存症及び、薬物依存症から統合失調症と事実上区別できない中毒性精神病になった者には、国民年金法(昭和三十四年 法律第百四十一号)(抄)第六十九条「故意に障害又は・・・」第七十条「故意の犯罪行為若しくは重大な過失により・・・」等の定めにより、障害基礎年金が支給されない場合が多い。しかし、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の中で「「精神障害者」とは・・・精神作用物質による急性中毒又はその依存症・・・を有する者」と謳われている通り、薬物依存症者は「精神障害者」なのであり、国民年金法等の定めは、生活の自立の芽を欠くものになっている。五十年近く経過した法律は今日の社会では適当なのかどうか、運用、又は支給要件等の法改正をされては如何。

二 国民健康保険法及び健康保険法で「被保険者が、自己の故意の犯罪行為により・・・」と定めていることにより、医療機関によっては保険給付等が行われない場合がある。依存症の診断基準として「DSM‐�W」が使われており、その中で「薬物使用のため身体的・心理的問題が起こっているにもかかわらず使い続ける」としているように、依存症者は自己のコントロールが出来ない状態である。医療給付の対象外とすることは、回復の道を閉ざすことになる。医療給付の対象外とすることのないように、医療機関への指導徹底が必要だと考えるが政府の見解は如何。

三 ダルク施設入所者の多くが、生活保護費を受給しながら回復プログラムに取り組んでいる。生活保護手帳の中の、第六最低生活費の認定の中の三臨時的一般生活費の(セ)a「アルコール症若しくはその既往のある者又はその同一世帯員が、断酒を目的とする団体の活動を継続的に活用する場合」とあるが、薬物依存症が自助グループに参加するための移送費は明記されておらず、多くの自治体では移送費が支給されない。移送費支給の対象とするよう認定要件の見直しを求めるが、政府の見解は如何。

四 現在、全国約四十箇所のダルク施設があり、そのいくつかで障害者自立支援法の障害福祉サービス給付事業所となるべくNPO法人資格の取得などの努力をしている。しかし、全国の多くの市町村では薬物依存症に対する理解が必ずしも十分ではない。したがって、市町村障害者福祉計画及び都道府県障害福祉計画に薬物依存症による精神障害者を受け入れる障害福祉サービス事業の必要量が含まれない可能性が強い。社会的病理としての薬物問題解決の面からも市町村及び都道府県への指導徹底が必要と考えるが、政府の認識は如何。

またダルクでは地域生活支援センターとして事業認可を受けようとしているところが多い。「専門性の高い相談支援事業及び広域的な対応が必要な事業」として薬物依存症の社会復帰事業を都道府県地域生活支援事業として位置づけるなどし、薬物依存症対策事業を積極的に進めていくよう国が指導することが必要であると考えるが、政府の見解は如何。

五 仮釈放期間中若しくは出所後にダルクに入所した者に刑事施設で投与される処方せん薬によって引き起こされた依存症が多く見られる。刑事施設内での処方せんの投与の現状について問う。

六 出所後に身元引受人に、刑事施設内の処方せんの内容が伝えられない。継続した医療行為を受けるためにも、処方せんの内容を明らかにすることが必要だと考えるが、どのように対応されているのか。

七 刑事施設内の薬物依存症、精神疾患の専門の医師の配置が不十分ではないか。現状はどの様な態勢になっているか。

八 薬物依存症者が幻覚・妄想等の中毒症状を呈しているときに、家族に暴力を振るったり、暴れて家を壊したりしても、精神保健福祉法の定める措置入院(その精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼす恐れがある)と認めないことが多い。また、指定病院での受け入れを拒否される場合がある。現状をどのように把握されているのか。今後の対応策を問う。

九 法務省は保護観察所において、平成十六年度から、覚せい剤事犯の仮出獄者に対して、本人の自発的意思に基づく簡易尿検査を開始し、結果、陽性反応が認められるなど、再使用の疑いがある場合には、警察等の協力を求めることとし、それによって薬物の再乱用の防止に効果をあげることができたとしているが、具体的にどれほどの効果があげられたのか明らかにされたい。

十 法務省は保護観察官の直接的関与を強化し、薬物事犯関係の保護観察対象者の問題性に着目した処遇を実施するとともに、共通する特性に着目して、この種の対象者及びその家族等に対して集団処遇を実施しているとしているが、これらの施策に対して実施状況はどうなっているのか。また、どのような具体的な効果があげられたか。

十一 薬物事犯者が仮釈放期間中の居住地としてダルクに入所し、回復のためのプログラムを受けることは再犯防止の観点から大変有効であると考える。仮釈放期間中にダルクの長が身元引受け人になりダルクに入寮した場合に、薬物事犯者の矯正処遇の一環として、薬害等に関する処遇プログラムを実施している更生保護施設と同等の、法務省予算での生活援助ができないか。

十二 全国の保健所、精神保健福祉センター等に寄せられる薬物依存症に関する相談件数は正確に把握されているか。それは実際の依存症に苦しんでいる人の数と比べ大きな乖離があると思うが、実態をどのように認識されているか。乖離があるとすれば、相談窓口の整備、受け易いように強化することが急務であり政府の見解は如何。

十三 厚生労働省は国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部において、薬物乱用・依存に関する様々な方面からの調査を行い、情報の収集、分析、評価に努めている。それらの研究成果をどのように薬物依存症者の治療・社会復帰に還元しているのか具体的に示されたい。

十四 厚生労働省は財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターに平成十七年度には約七千六百五十万円の委託金を出し、同センターでは乱用防止に対する活動を行っている。乱用防止には薬物乱用者に対する再乱用防止対策を同時に行うことで相乗効果を持たせることが出来ると考えるが、再乱用防止のための対策にはどれだけの予算があてられているのか問う。また、具体的にどのような施策を行っているのか。

十五 薬物依存の問題は、単に司法の問題か、医療の問題かと分けられる問題ではない。欧米諸国では、薬物依存・中毒者の治療、社会復帰支援のために、治療共同体や自助グループを活用しながら、福祉、司法、医療のそれぞれの分野で連携してそのケアを行っている。薬物防止新五か年戦略では「目標4(3)治療、社会復帰支援のための関係機関の連携強化」としているが、薬物依存・中毒者の治療、社会復帰の支援によって再乱用を防止するためには、民間の力との連携が不可欠であると考えるがどうか。また実際に、関係機関との連携をどのように行っているのか示されたい。

十六 「薬物乱用防止新五か年戦略目標4(4)薬物依存・中毒者の家族に対する支援等」の施策の内容として、「保護観察所における、薬物事犯対象者の家族に対する、薬物乱用の有害性及び本人への対応に関する知識を付与するための講習会の実施」「保健所・精神保健福祉センターにおける薬物相談窓口における、本人及びその家族からの薬物関連問題相談」「薬物関連問題を有する者の家族を対象とした家族教室の開催等」をあげている。その効果として、「家族に対する講習会の実施によって、薬物乱用の有害性及び本人への対応に関する知識を家族に与え、本人の薬物の再乱用の防止に効果をあげることができた。また、講習会の講師として関係機関の職員を招くことによって保健観察所と関係機関との連携が促進された。」「また、保健所、精神保健福祉センターにおける薬物相談、家族教室を通じて、本人及び家族に対する支援、薬物に関する知識の普及が図られた。」としているが、具体的にどれほどの効果があげられたと把握しているのか。

十七 薬物依存・中毒者に対する医療は専門性が高く、薬物依存・中毒者を受け入れる医療機関は限られている現実がある。診断治療技術の研究開発とその普及の整備は、国立精神・神経センター等を中心として進められていると聞くが、同センター精神保健研究所薬物依存研究部には診断・治療開発研究室がある。しかし、この研究室には人員がついておらず、事実上、組織図上の絵空事に過ぎないが、人員がつかないのはなぜか。

十八 薬物依存症の中には、医師の処方した薬物に依存するというケースがある。それらを踏まえると、依存している薬物を切るための解毒治療を行う専門センターとしての役割を公立の精神科病院や精神保健福祉センター等が行うことが望ましいと考えるがどうか。

十九 刑事施設に入っている薬物依存・中毒者の多くが薬物依存症という病気により、出所後に使用欲求がコントロールできないこと、また若年から薬物依存にかかっているため生活や就労の能力が訓練されていないことなどのために、薬物乱用を何度も繰り返すことが起きているため、司法と医療と生活・就労への統合された援助が必要であり、省庁を超えた援助を行うための体制を作る必要があると考える。欧米では、ドラッグコートという特別の裁判で、刑罰の代替として治療の命令が出る方式などがとられているように、司法と治療及び社会復帰支援が結びついた体制をつくる必要があると考えるがどうか。見解を示されたい。

二十 薬物乱用をストップするためには、薬物使用を行っていた際の人間関係や地縁から離れた施設での回復が効果的であり、国立精神・神経センターの平成十四年度に行ったダルクの調査でもそうした結果が明確になっている(七施設の調査では、県内出身者は一〇%であった。)市町村や都道府県を超えて利用できるシステム(特に生活保護費の受給要件)が構築されることが望ましいが、どう考えるか認識を示されたい。

二十一 薬物乱用に伴う注射針のまわし打ち等によるC型肝炎、エイズ等の感染症に対して、どのような対策が必要であると考えるか。

二十二 薬物乱用の繰り返しにより慢性的な精神障害を生じているものが少なくない。それらのものの自立支援のためにも、薬物後遺症居住施設及び指導員の必要性があると考える。しかし、既存の障害者の施設を利用しようとしたときに、薬物乱用の経験があるものに対して、受け入れを拒否されるケースが少なくない。この実態をどう把握しているか問う。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第六十九条及び第七十条の規定は、故意、重大な過失等により障害又は死亡という保険事故を生じさせた者に対し年金給付を行うことは、保険集団全体の利益を損なうなど、制度の公益的な性格を損ない、また、保険制度における保険事故発生の偶然性の尊重の趣旨に反するものでもあるため、社会保険方式を採る公的年金制度の趣旨にそぐわないことから、こうした者に対する年金給付を制限するために設けられているものであり、社会保険方式の根幹をなすものであることから、これらの規定の改正を行うことは考えていない。

また、これらの規定の適用に当たっては、こうした考え方に基づき、年金給付の制限を行っているものであり、「薬物依存症者」であるか否かで判断しているものではない。

二について

健康保険及び国民健康保険等の公的医療保険制度についても、一についてで述べた考え方に基づき、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百十六条及び国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第六十条等において、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に疾病にかかり、又は負傷した場合は保険給付を行わないと規定しているところである。これらの場合に当てはまるか否かについては、薬物依存症になった原因や経緯等により判断することとなるが、例えば被保険者が自ら違法に薬物を使用して薬物依存症となった場合など明らかに自己の故意の犯罪行為が原因である場合に、医療機関が保険給付を行わないことは健康保険法第百十六条等の規定に反するものではなく、一般的に、御指摘のような医療機関への指導は必要ないと考えている。

三について

御指摘のとおり「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和三十八年四月一日付け社発第二百四十六号厚生省社会局長通知)においては「薬物依存症者」がいわゆる自助グループに参加するための移送費の支給について明記されていないが、当該グループの活動が民間活動として行われるものであっても、国又は地方公共団体から当該活動に対し補助が行われている等の場合で社会復帰に効果が期待できると認められる場合には、当該グループに参加する「薬物依存症者」は、同通知の第六の二の(七)のアの(セ)のcの社会復帰相談指導事業等の対象者に該当し、移送費の支給の対象となるものであり、地方公共団体に対してその旨の周知を図っているところである。

四について

障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第八十八条第一項に規定する市町村障害福祉計画及び同法第八十九条第一項に規定する都道府県障害福祉計画(以下「障害福祉計画」という。)は、同法第八十七条第一項に規定する基本指針に即して、地域における障害者の実情及びニーズを把握した上で作成することとされており、障害福祉計画においては薬物依存症による精神障害者に係る必要なサービスについても地域の実情に応じて適切に定められるものと考えているが、厚生労働省としても、障害福祉計画が適切に策定されるよう必要な助言等を行ってまいりたいと考えている。

また、御指摘の薬物依存症者のための社会復帰の事業は、特に専門性が高いなど広域的な対応が必要な相談支援事業であると認められる場合には、障害者自立支援法施行規則(平成十八年厚生労働省令第十九号)第六十五条の十五に規定する障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な事業であって広域的な対応が必要なものに該当するものとして都道府県の地域生活支援事業として位置付けられ得るものであり、その判断は都道府県において適切になされるものと考えている。

五について

薬物依存症を含む精神疾患者に対する治療は、医師が、個々の患者の症状に応じてその内容を決定するものであり、刑事施設内においても、幻覚、妄想等の精神症状を来たしている者については、向精神薬による薬物療法を施す場合があるが、そのような場合においても、薬物依存を高めることがないように留意しつつ、医師の適切な判断により処方薬を投与しているところである。

六について

刑事施設の医師が、被収容者の釈放後も引き続き医療機関での診療が必要であると判断した場合には、円滑に治療を継続できるよう、紹介状の交付を希望する被収容者又はその保護者等に対し、病名、治療の経過、現在の処方の内容等を明らかにした紹介状を釈放時に交付する取扱いとしている。

七について

専門的な精神科治療を必要とする被収容者については、医療刑務所等において、精神科医師を配置して各種の精神科治療を行っており、医療刑務所等における治療までは必要としない軽度の者については、一般の刑事施設において治療を行っているところである。近年、精神科治療を必要とする被収容者が増加傾向にあることから、常勤の医師に加え、非常勤の精神科医師や作業療法士を配置するなどして精神科医療の充実に努めるとともに、被収容者の処遇に携わる職員に対しても、精神疾患の特徴や精神障害を有する被収容者の処遇方法等に関する正しい知識を付与するための医療関係研修を実施しているところである。

八について

御指摘のような場合については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十八条の二の規定に基づき厚生労働大臣の定める基準に基づき、同法第十八条第一項に規定する精神保健指定医の診察による高度かつ専門的な判断により、同法に基づく措置入院の決定が適切になされているものと考えている。

また、措置入院処分が行われた場合には、同法第十九条の八に規定する指定病院の管理者は、同法第二十九条第四項に基づき、病床に既に措置入院等をさせた者がいるため余裕がない場合のほかは、措置入院に係る精神障害者を入院させなければならないこととされているところであり、適切に指定病院での受け入れがなされているものと考えているが、厚生労働省としては、今後とも、同法に基づいた適切な措置入院がなされるよう努力してまいりたい。

九について

覚せい剤事犯の仮釈放者等に対する保護観察処遇において、簡易尿検査を活用する目的は、本人の自発的意思に基づき、あらかじめ検査期日を示して定期的に尿検査を実施することにより、覚せい剤を使用しない結果を積み重ね、最終的に覚せい剤のない生活習慣を習得させることにある。平成十七年には、全国の保護観察所で、覚せい剤事犯の仮釈放者のうち検査を受けることに同意した者は、その約半数の二千四百四十二名であったが、その者に対し延べ五千二百九十一回の尿検査を実施したところ、九十九%以上が陰性となっており、保護観察所の簡易尿検査で陽性となり最終的に警察等の捜査機関で実施された精密な尿検査でも陽性となったのは延べ実施回数の〇・〇九%に当たる五回という結果からみて、薬物の再乱用の防止に効果を上げていると考える。

十について

御指摘の薬物事犯保護観察対象者の問題性に着目した処遇としては、九についてで述べたとおり、覚せい剤事犯の仮釈放者等に対する簡易尿検査を実施しているところである。

また、御指摘の集団処遇としては、薬物事犯対象者に対する保護観察官による直接的処遇の一環として、シンナー等乱用対象者に対する集団処遇及び覚せい剤事犯対象者の家族等に対する講習会を実施している。

シンナー等乱用対象者及び保護者に対しては、平成十七年度は集団処遇を四回実施しており、五十名の保護観察対象者及び四十一名の保護者が参加している。

また、覚せい剤事犯対象者の家族等に対しては、平成十七年度は講習会を四十一回実施しており、五百六十九名の家族等が参加している。

なお、平成十七年度には、全国で二十四の更生保護施設において、酒害・薬害教育を実施しており、二千百五十一名の保護観察対象者等が参加している。

こうした集団処遇への参加者の態度は真摯なものであり、また、参加した家族からは、終了後、「勉強になった。」、「為になった。」、「気持ちが楽になった。」などの感想も寄せられているなど、参加者は相応の参加の意義及び効果を認めていると認識している。

十一について

仮釈放中の者に対する宿泊場所の提供等に係る更生保護施設等に対する予算措置としては、犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第四十条に基づく更生保護事業を営む者その他の適当な者に対する委託費があり、ダルク等更生保護事業を営む者以外の者に委託できるか否かは個別判断によることとなるが、委託費を支給する場合においては、被保護者の生活を援助する費用としては、更生保護施設に委託する場合と同等の費用が支払われる。

十二について

平成十七年度における全国の保健所及び精神保健福祉センターに寄せられた薬物依存症等に関する相談件数は、保健所に寄せられたものが五千三百七十三件、精神保健福祉センターに寄せられたものが三千九百十五件となっており、合計で九千二百八十八件となっている。

御指摘の「実際の依存症に苦しんでいる人の数」については、薬物依存症が社会的に表面化しにくいこと等から、その実態を把握することは困難であるが、厚生労働省としては、薬物相談担当者等の資質の向上など相談体制の充実を図っているところである。

十三について

国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部を中心として、厚生労働科学研究費補助金により、平成十七年度及び平成十八年度の二年間にわたり「薬物乱用・依存等の実態把握と乱用・依存者に対する対応策に関する研究」を実施するなど薬物乱用等に関する研究に取り組んできているところである。これまでの研究結果を踏まえ、国立精神・神経センターにおいて医療機関、精神保健福祉センター等の医師、看護師等に対する研修を行い、薬物依存の診断、治療、予防等に携わる人材の質の向上に努めるなど、研究成果を薬物依存症者の治療や社会復帰に還元しているところである。また、平成十八年度から薬物依存症者及び薬物中毒者本人の治療や社会復帰を助けるためのカウンセリング理論等をまとめたハンドブックを作成し、精神保健福祉センター等に配布することとしているところである。

十四について

薬物再乱用防止のための対策の予算については、平成十八年度予算において再乱用防止対策事業費として七百二十一万円が計上されており、薬物依存症者及び薬物中毒者本人の治療や社会復帰を助け、再乱用を防止するためのカウンセリング理論等をまとめたハンドブックや、薬物依存症者及び薬物中毒者の家族向けに自立を助ける上での留意点等をまとめた自立補助読本等を作成し、配布することとしている。

十五について

薬物依存症者及び薬物中毒者の治療及び社会復帰の支援を行うに当たっては、民間との連携が必要な場合もあると考えており、例えば、薬物事犯保護観察対象者の社会復帰を支援するために、保護観察所において、他の刑事司法機関、医療・福祉機関など関係機関との連携に加えて、必要に応じて自助グループをはじめ民間団体等の協力を得ることも行っているところである。また、関係機関の連携については、全国六ブロックにおいて薬物中毒対策連絡会議を年一回開催し、薬物依存症者及び薬物中毒者の治療及び社会復帰支援に関する業務を行う関係機関の専門家による情報交換等を行い、その強化を図っているところである。

十六について

お尋ねについては、保健所、精神保健福祉センターにおける薬物相談及び家族教室を通じて、薬物乱用の有害性並びに薬物依存症者及び薬物中毒者の回復に向けた適切な知識を家族に与え、薬物依存症者等に対する理解を深めることにより、薬物再乱用の防止が図られているほか、十についてで述べたような効果があったものと理解している。

十七について

国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室については、薬物依存及び中毒性精神障害の診断技術及び治療法の開発の研究等を行うため、平成十一年四月に定員を伴わない室として設置したものであり、当該研究室に属する研究員は配置していないが、現在、その所掌に係る研究等については、薬物依存研究部の研究員が実施しているところである。

十八について

御指摘の「解毒治療」については、精神医療において専門性が高い治療ではなく、精神医療の一環として既に一般的に行われているものと承知しており、御指摘の「解毒治療」を専門的に行う機関として、公立の精神科病院や精神保健福祉センター等を位置付けることが望ましいものとは考えていない。

十九について

御指摘の司法と治療及び社会復帰支援が結び付いた体制については、保護観察所において、医療、精神保健、福祉、就労等の援助を専門的に行う関係機関と連携して、疾患や薬物依存症を抱える保護観察対象者の処遇に当たる体制の整備に努めており、その中で、個別の事案の必要性に応じて、医療施設を紹介したり、保護観察対象者本人やその家族が援助等を受けられるよう精神保健福祉センター、保健所、市区町村等の相談窓口に関する情報提供や紹介を行っている。また、社会復帰支援については、平成十八年度から、薬物事犯者も含めた出所者、保護観察対象者等を対象として、法務省と厚生労働省が連携する体制により、総合的就労支援策を実施しているところであり、今後とも、このような薬物依存・中毒者に関わる関係機関の連携体制を強化してまいりたい。

なお、裁判所が刑罰の代替として治療を命ずる制度を設けるなど、刑罰の在り方に関わる検討を行うのであれば、その必要性のほか、刑罰の目的に照らし相当か、国民に受け入れられるか、我が国の法体系に整合するかなどといった点についても、十分に検討する必要があると考えている。

二十について

御指摘の「市町村や都道府県を越えて利用できるシステム(特に生活保護費の受給要件)」の趣旨が必ずしも明らかではないが、例えば生活保護制度においては、既にダルク施設に入所中の被保護者が、他の市町村や都道府県のダルク施設に長期間にわたって入所するような場合には、当該施設の所在地を所管する保護の実施機関が当該入所者に対して保護を行うこととされ、市町村や都道府県を超えて利用できる仕組みとなっているところであり、その円滑な実施に努めることが重要であると考えている。

二十一について

政府としては、薬物の乱用を根絶することにより、注射針の回し打ち等による感染症の罹患等の問題の解決も図ることができるという観点から、薬物乱用防止対策を徹底しているところである。

なお、厚生労働省においては、同省のホームページ等においてC型肝炎ウイルス等の感染の予防策として、注射器や注射針を共用することの危険性について注意喚起を行っているところである。

二十二について

障害者自立支援法第二十九条第二項に規定する指定障害福祉サービス事業者等が、薬物を乱用した経験のある障害者に対して、サービスの提供を拒否する事例については、その実態を把握していないが、障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)及び障害者自立支援法に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十二号)において、指定障害福祉サービス事業者等は、正当な理由がなく、サービスの提供を拒んではならないこととされており、例えば、薬物を乱用した経験があることのみをもってサービスの提供を拒否することは認められないものであり、このような受入れ拒否がなされることのないよう今後とも、同法の適切な運用に努めてまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×1承知していない ×1個別の事案 ×1

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