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中国遺棄化学兵器処理事業に関する再質問主意書
衆議院 第169回 第300号お答えすることは困難 ×3
質問本文
一 中国吉林省ハルバ嶺における処理事業について
(一) 平成一二年度から一九年度まで(二〇〇〇〜二〇〇七)八年間のハルバ嶺における処理施設建設に関する質問に対し、次のような答弁があった。
候補地の立地調査(平成一四年度)等を含めて、要員宿舎予定地の地質・測量調査、安全化処理作業事前調査、廃水溝調査、環境基準策定実験、発掘回収地域地形測量、実処理施設建設候補地調査(平成一五年度)、発掘回収施設に係る初歩設計、施工図設計、フィージビリティスタディ報告書の作成(平成一六年度)等、その後も環境調査などの実施となっている。これらの調査は、処理事業実施の為に行われたものと考えるが、八年に渡る調査の結果を踏まえ、直ちに処理施設建設が可能か否かについてはどのような状況にあるのか。「答弁書」六に、調査の知見、成果等は内閣府で管理している・・・と記されているが、未だに設備建設に着手できない理由を説明されたい。
(二) 実際の処理に着手するまでにどのような調査が不足しているのか。
(三) 処理場は何時完成し、砲弾の実処理作業は何時開始されるのか、明確にされたい。
二 ハルバ嶺以外の四万四千発の化学砲弾処理事業について
(一) 「移動式処理設備」は、中国各地で偶然に発掘、回収された四万四千発の化学砲弾等の処理を目的とするものであり、ハルバ嶺に埋設されていると推定される約三十万から四十万発は対象と考えていないと理解してよいか。
(二) 「答弁書」七の文中で、「移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から」とあるが、「移動式処理設備の導入」のどこが「合理的」なのか、その根拠を示されたい。
(三) 「移動式処理設備」一式は一日にどのくらいの処理能力があり、四万四千発を処理するのにどれだけの日数を要し、どのような順序で処理していくのか、具体的な計画を示されたい。
(四) 「答弁書」七の文中、「日中双方に遺棄化学兵器の所在に関する資料は十分なものがなく、すべての埋設地等を特定することは困難であり、今後も新たに発見される可能性も否定できない」とあるが、今まで「資料」発見にどれだけ努力したのか、具体的に示されたい。
すでに研究者が調べた資料も明らかになっている。防衛省にはまだまだ資料があり、旧軍の連隊日誌などを丹念に調べるなど組織的に取り組めば有益な情報が得られるはずだと考える。最大限の努力をすべきだと思うがいかがか。
(五) 移動式処理にはどれだけの費用を要するのか、概算予定額を示されたい。また、今後移動式処理設備を何台導入する予定か明らかにされたい。
(六) 「移動式処理設備」によって、ルイサイトや「あか」剤に含まれている有機砒素は無害化処理できるのか。もしできないとすれば、どのような方法を考えているのか。また、処理後の環境汚染調査にはどのように取り組むのか計画を説明されたい。
(七) 「処理作業」とは発掘から完全に無害化=無毒化までと理解してよいか。
三 (株)遺棄化学兵器処理機構(以下機構)について
二〇〇八年度から機構との随意契約を解除し、一般競争入札で受託会社を決めるとしたが、機構に関し以下質問する。
(一) 内閣府は二〇〇四年三月設立の機構と同年四月一日に業務委託契約を締結しているが、その契約内容を明らかにされたい。
(二) 機構は、資本金三億円が建設コンサルタント大手のPCIグループ全額出資、遠藤博之社長が元PCI専務取締役というPCI関連会社である事を承知の上で「内閣府遺棄化学兵器処理担当室の補助者としての役割」を遂行させる為、内閣府が設立させたものと承知している。内閣府の責任は重大であると考えるが、内閣府はどのような責任を取るつもりなのか、明確な説明責任が内閣府にあるのではないか。
(三) 二〇〇一年(平成一三年)二月に設立されて以降、PCI・日揮共同企業体が担ってきたPMC(プロジェクトマネジメントコンサルタント)業務内容は、二〇〇四年四月から機構の業務に取り込み、「機構からの再委託」という形を取って同共同企業体がPMC業務を継続することとされた(平成一五年度内閣府委託業務報告書「中国遺棄化学兵器処理事業基本計画書」)。機構とPMCとの関係を明らかにされたい。
(四) これまでPMCと随意契約で支払われた各年度ごとの金額と機構設立後、機構から再委託で随意契約された各年度ごとの金額の全てを明らかにされたい。
(五) 機構の予算執行状況について「会計検査を年二回受け処理事業について指摘を受けた事はない」としているが、予算の水増し、不正流用等がPCIグループ全体で行われている事が明らかになりつつある(捜査中)。内閣府遺棄化学兵器処理担当室との関連性はないか。
(六) 今後数千億の事業費が見込まれている当事業に於いて不正再発防止にどのように取り組もうとしているのか示されたい。
四 被害者への救済及び医療体制について
(一) 「答弁書」八で述べている『請求権』問題は、日中戦争中の「損害賠償」に限られており、今次の遺棄化学兵器による事故や健康被害と同一視した答弁書は、問題解決の本質から大きく逸脱している。裁判所も遺棄化学兵器による事故、健康被害は「国際慣習法ならびに人道法に反する」と認定した。
一方、日本国内の毒ガス被害者には、不十分ながら医療・生活面での救済措置が、多年に渡って続けられてきた。日本政府はこの機会に人道的な立場で「正義と公正」をもとに早急に救済措置を取るべきではないか。
(二) 二〇〇三年APEC首脳会議(一〇月二〇日バンコク)の前に次のような報道がなされた。
『旧日本軍毒ガス事故、三億円支払い日中合意、医療体制の確立も』(二〇〇三年一〇月二〇日付朝日新聞)。
同記事によれば「類似の事故に備えて医療体制を確立する事で一致し、具体策を今後協議する」としている。また、日中間で交わした「覚え書」(一九九九年七月三〇日)第五項にも記載されているはずである。
この医療体制について一切語られる事はないが、日中間で合意した協議事項が現在どのようになっているか政府は説明責任がある。明らかにされたい。
五 国際条約により「処理事業の再延長はできない」と決められている。規定の二〇一二年まで残る五年間で終了できる実処理の進行計画など、その年次計画を説明されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の(一)及び(二)について
中国吉林省ハルバ嶺において遺棄化学兵器を処理するため、発掘回収施設及び実処理施設(以下「処理施設」と総称する。)を建設することとしており、そのためには、処理施設に係る安全事前評価報告書、環境影響評価報告書、職業病危害事前評価報告書等の報告書を日中間で作成した上で、その事業承認を中国政府から取得する必要があるが、発掘回収施設については、現在、環境影響評価報告書の内容の最終的な調整を日中間で行っているところであり、また、実処理施設については、現在、安全事前評価報告書、環境影響評価報告書及び職業病危害事前評価報告書に必要なデータを収集するための調査等の作業を日中間で行っているところである。このため、処理施設の建設に必要な事業承認が中国政府から得られていない状況にある。
一の(三)について
一の(一)及び(二)についてで述べたとおり、実処理施設を建設するためには、各種報告書を日中間で作成した上で、その事業承認を中国政府から取得することが必要である。また、昨年四月の日中首脳会談において表明した移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から、中国において遺棄化学兵器を処理する事業(以下「処理事業」という。)全体の在り方について検討を行っているところである。したがって、現時点において、お尋ねについて明確にすることは困難である。
二の(一)について
移動式処理設備については、主としてハルバ嶺以外の中国各地で発掘回収された遺棄化学兵器を処理するために導入する予定であるが、その運用の在り方については、今後、中国政府と協議することとしている。
二の(二)について
中国における遺棄化学兵器については、半世紀以上前の古い化学砲弾等が長期間土中等に埋設されていたもので、変形、腐食及び化学剤の一部漏洩等がみられる等、不安定な状態にあり、また、処理施設の建設を予定しているハルバ嶺に埋設されているもののほかに、同地域から遠く離れた中国各地においても発見され、これまで約四万四千発を発掘回収している。これらの中国各地において発掘回収した化学砲弾等については、その輸送に化学剤の漏洩や爆発等のリスクを伴い、輸送の安全を確保することが困難な場合があることから、中国政府の考えも聴取しつつ検討を重ねた結果、ハルバ嶺まで輸送して処理するよりも、移動式処理設備を使い化学砲弾等の保管場所近辺において処理する方が合理的であると判断したところである。
二の(三)について
移動式処理設備の処理能力については、今後入札により採用する処理技術及び処理対象物等によって異なるため、現時点でお答えすることは困難である。
また、お尋ねの具体的な計画については、移動式処理設備を運用する場所について、日中間で協議し、最初の運用場所を南京とすることで一致しているが、その後については日中間で協議しているところである。
二の(四)について
政府としては、防衛省に保管されている戦史資料等についての累次にわたる調査のほか、旧日本軍関係者等からの聴取等を通じて、中国における遺棄化学兵器の所在に関する情報の収集に努力してきているが、現時点ですべての埋設地等を特定できる十分な資料は得られておらず、引き続き関係府省間で協力しつつ必要な調査を行っていく考えである。
二の(五)について
移動式処理設備については、現時点で一基導入する予定であるが、当該設備の導入及び運転については、平成二十年度から平成二十三年度までの四か年度の事業として、国庫債務負担行為で約百九億円を計上している。このうち、平成二十年度予算においては、約五億円を計上しているところである。
二の(六)について
移動式処理設備は、ルイサイトや「あか」剤等の化学剤を含む砲弾等を処理した際に残る有機砒素をほとんど無機化することができると考えられており、このため、移動式処理設備による処理後の廃棄物は、ハルバ嶺の実処理施設において、最終的な無害化処理等を行う予定である。
また、処理後の環境汚染調査等の環境保全対策については、中国側と協議の上適切な措置を実施することとしているが、現時点でどのような措置を実施するかについては、お答えできる段階にはない。
二の(七)について
お尋ねの「処理作業」の意味が明らかではないが、処理事業においては、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(平成九年条約第三号。以下「化学兵器禁止条約」という。)に従い遺棄化学兵器を廃棄するため、それを発掘回収するとともに、発掘回収した遺棄化学兵器を廃棄するための準備を進めている。なお、化学兵器禁止条約の実施及び検証に関する附属書第四部(A)十二においては、「化学兵器の廃棄」とは、化学物質を実質的に不可逆的に化学兵器の生産に適しないものに転換する過程並びに弾薬類及び他の装置を不可逆的に使用することができないようにする過程をいうと規定している。
三の(一)について
内閣府は、株式会社遺棄化学兵器処理機構(以下「機構」という。)に対し、お尋ねの業務委託契約において、発掘回収施設等の建設や各種装置の製造に係る基本設計及び設計管理の技術コンサルティング業務、ハルバ嶺における発掘回収・実処理事業、ハルバ嶺以外の中国各地において発見された遺棄化学兵器等の発掘回収事業の事業実施計画の立案並びに建設会社・運営会社の選定等を総合的に処理する遺棄化学兵器処理事業総合管理業務を委託した。
三の(二)について
処理事業については、中国において長期間埋設された大量の遺棄化学兵器を処理するものであり、知見及び技術を新たに蓄積しながら進めていくという特殊性を有すること、また、ハルバ嶺における事業が本格化するに当たり、行政組織の運営の効率化の観点等の理由により、内閣府が発掘回収施設等を調達、維持・管理することは困難であったことから、コンサルティング業務及び調達業務を一体的に処理する管理会社が必要であると判断し、機構と契約したところである。しかしながら、既に機構が設立されてから四年が経過し、内閣府においては、処理事業の実施に必要な知見等が蓄積されてきたことから、平成二十年度は機構と契約を行っていない。
三の(三)について
機構においては、内閣府と業務委託契約を締結していた平成十六年度から平成十九年度までの間も、プロジェクト・マネージメント・コンサルタント(以下「PMC」という。)がそれまでに蓄積した技術的な知見等を活用することが適当であると考えたことから、機構のコンサルティング業務の一部をPMCに再委託していたものである。
三の(四)について
内閣府が随意契約によりPMCに支出した金額は、平成十二年度が約〇・五億円、平成十三年度が約十・四億円、平成十四年度が約十六・〇億円、平成十五年度が約三十八・三億円である。
また、機構が再委託で随意契約によりPMCに支出した金額は、平成十六年度が約三十四・一億円、平成十七年度が約二十三・七億円、平成十八年度が約二十・七億円である。
三の(五)について
内閣府においては、機構の役員等に対して事実関係の聴取を行ったほか、機構及びPMCから提出された四半期ごとに作成される業務月報等の支出状況報告書、機構等からの委託承認願等に基づき、契約や執行に不適切な点がないか再確認を行ってきたところであるが、現在のところ、御指摘のような不正事実の有無について確認されていない。
三の(六)について
三の(五)についてで述べたとおり、不正事実の有無については確認されていないが、内閣府としては、従来、随意契約により民間企業に処理事業についての業務を委託してきたところ、必要な知見が蓄積され、新たな処理事業の実施体制をとることが可能かつ適切と判断したことから、平成二十年度から処理事業に関する各種の調達を行うに当たっては、一般競争入札により業者を選定し、直接的に事業実施の全般にわたる適正な執行を監督する体制を強化し、さらに、事業全般に関し有識者から幅広く意見と助言を求めることとしている。
四の(一)について
先の大戦に係る日中間の請求権の問題は、昭和四十七年の日中共同声明発出後、存在しておらず、政府として御指摘の「救済措置」を行うことは考えていない。
四の(二)について
お尋ねの「医療体制」とは、処理事業において万一事故が発生した場合に対応するための医療体制を指しており、その確立のために、日中間で調査及び協議を行ってきているところである。
五について
中国における遺棄化学兵器については、ハルバ嶺に埋設されていると推定される約三十万から四十万発のほか、ハルバ嶺以外の中国各地において、これまで約四万四千発を発掘回収した。他方、日中双方に遺棄化学兵器の所在に関する資料は十分なものがなく、すべての埋設地等を特定することは困難であり、今後も新たに発見される可能性も否定できない。また、昨年四月の日中首脳会談において表明した移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から処理事業全体の在り方について検討を行っているほか、近年も中国各地で遺棄化学兵器が発見されているところである。したがって、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにしても、政府としては、化学兵器禁止条約の廃棄期限を念頭に置き、これらの遺棄化学兵器の廃棄を一日も早く完了すべく最大限の努力を行っているところである。
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