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東シナ海の領海防衛に対する政府の考え方に関する質問主意書

衆議院 第189回 第289号お答えすることは困難 ×2個別の事案 ×1

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2015年6月22日
内閣転送 2015年6月24日
答弁書受領日
2015年6月30日
提出から8日
答弁の項目数
8
質問 3,071字/答弁 1,475字

質問本文

第百八十九回通常国会に安倍内閣が提出し審議が進められている「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」(以下、「本法案」という)は、従来、行政実務、判例を勘案して積み重ねられてきた憲法学的知見とは明白に反するもので、違憲である。

わが国の憲法学の代表的論者である芦部信喜は、その著作の「憲法」の中で、国連決議に基づいて行われる国連平和維持活動に関してでさえ、「武力行使をともなわない停戦監視団についても、武力行使と無縁とは言い切れない」と述べた上で、「自衛隊の海外出動が合憲か否かは、武力行使の有無と深くかかわる」もので、「いかに国際貢献という目的であっても、憲法九条の改正なくして、現状のまま自衛隊が部隊として参加する出動を認めることは、法的にきわめて難しい」との見解を示している。これがわが国の憲法学的通説であり、海外での集団的自衛権の行使を可能とする本法案はこれを超えるもので、憲法上、明白に許されない。

このような憲法に反する本法案を準備する以前に、そもそもわが国の安全保障上最も憂慮すべきは尖閣諸島周辺などの東シナ海における領海の防衛であろう。尖閣諸島は、日米安全保障条約第五条でいう「日本国の施政の下にある領域」で、「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものである」ものとして、日米は「共通の危険に対処する」ことが両政府によって繰り返し確認されている。しかしながら、本法案で想定するホルムズ海峡や南シナ海で米軍支援等にわが国の防衛力を割くことで、尖閣諸島周辺の領海の防衛が疎かになり、領海侵犯を繰り返す者が突如として大規模に漁民などを尖閣諸島のある島に上陸させた上で、大量の艦船などをともなって実力を行使して、「日本国の施政の下にある」ことの実効性を失わせた場合、日米安全保障条約の第五条が適用されない実態が生み出される状態に陥りかねず、アメリカの支援を受ける根拠が失われたまま施政権が奪われるという結果を生み出しかねない。中国政府高官は、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国の領土主権に関する問題であり、当然、中国の核心的利益に属する」と明言している。

自国の領土領海の防衛は日本政府が自らの手で行い抜くべきであり、本法案が合憲違憲以前に、ホルムズ海峡や南シナ海に安易に自衛隊の活動範囲を広げるべきではない。尖閣諸島周辺の防衛にアメリカが必ず共同で対処してくれると考えることは妄想でしかない。

陸上自衛隊の北部総監を務めた元陸将の志方俊之氏は、平成十一年五月十三日、参議院の日米防衛協力のための指針に関する特別委員会の中で、「自分の国を自分の国の兵力が守らないという」ことは「問題がある」。「アメリカの兵隊が日本の国のために命をささげてくれるとでも思っておるのでしょうか。日本とアメリカの国益がこの地域でオーバーラップしているから、アメリカの兵隊はアメリカの国益のために命をかけ」るに過ぎないとして、日米安全保障条約の危うさの部分を指摘している。

政府が優先すべきはわが国の領土領海を確実に守り抜くことであり、遠方に自衛隊の部隊を長期間派遣し、領土領海の防衛力を減じさせることではない。

このような視点から、以下質問する。

一 日米安全保障条約第五条でいう「日本国の施政の下」とは、具体的にはどのような状態を指すのか、政府の見解を示されたい。

二 日米安全保障条約第五条でいう「日本国の施政の下にある領域」に、北方領土、竹島、尖閣諸島はそれぞれ該当するのか、政府の見解を示されたい。

三 現在、尖閣諸島周辺の政府の行っている警備体制について、人員、艦船、装備している武器等を具体的に示されたい。

四 中国外務省の華春瑩副報道局長は、平成二十五年四月二十六日の記者会見で、尖閣諸島について「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国の領土主権に関する問題であり、当然、中国の核心的利益に属する」と述べている。これは中国が尖閣諸島に関わる問題が妥協できない国益を意味する「核心的利益」と初めて公式に位置付けたものである。中国政府はこれまで台湾やチベットの問題について核心的利益との表現を用いてきているが、「尖閣諸島の問題を核心的利益であると主張している」という事実を政府は認識しているのか、見解を示されたい。

五 中国政府は、これまで核心的利益に属すると公式に表明した地域に関して、武力行使も辞さず、その権益を守り抜く姿勢を示している。例えば、古くは一九五〇年代末のチベット動乱がそうであり、昨今のチベットでの反政府派のデモへの実力行使も典型的な事例である。尖閣諸島はわが国の領土であるものの、中国政府が「核心的利益」と明言している以上、政府は特に重点的な防衛体制を取り、守り抜かなければならない。政府は中国政府が「核心的利益」と主張する尖閣諸島について、どのような防衛体制を構築すべきだと考えているのか、見解を示されたい。

六 尖閣諸島の一つの島が漁民等に偽装された兵士に占領され、海上保安庁の艦船等が接近すると火力で応戦しはじめ、近づくことができない場合、この島は「日本国の施政の下にある領域」であるといえるのか、政府の見解を示されたい。

七 尖閣諸島の一つの島が漁民等に偽装された兵士に占領され、短期間で構造物が構築され、火砲等が配備された場合、この島は「日本国の施政の下にある領域」であるといえるのか、政府の見解を示されたい。

八 日本から海上自衛隊の護衛艦がホルムズ海峡周辺の海域、あるいは南シナ海の海域に航行する場合、必要となる日数は片道で何日か、政府の見解を示されたい。

九 海上自衛隊の護衛艦をホルムズ海峡や南シナ海に派遣する場合、その分、わが国の領海防衛の能力は当然減じることになる。また海上自衛隊の護衛艦がホルムズ海峡や南シナ海に派遣される場合、日本本土の基地に配備されている航空自衛隊の戦闘機の行動範囲外である以上、自衛隊機の航空支援は受けられない。いわば護衛艦は「自国の戦闘機による航空支援のない丸裸の作戦行動」を取ることになる。このような様々なリスクを承知の上で、あえて日本の領海防衛の能力を減じさせ、かつ、日本の領海から遠い海域で航空支援もない作戦行動を行うメリットはどこにあるのか。このような航空支援を受けない艦船に対して、敵から攻撃が行われた場合に悲劇的な結果が生まれることは、先の大戦でわが国政府は十分学んだはずである。政府の見解を示されたい。

十 志方俊之氏が指摘するように、日米安全保障条約では、日本とアメリカの国益が日本とその周辺の地域でオーバーラップしているから、アメリカ軍はアメリカの国益のために命をかけるのであろうが、それ以前に日本政府が自ら守り抜かなければならない。従って、日本政府は自らの防衛力でその領土領海を守り抜く体制の確実な構築を優先すべきであり、日本の領土から十数日から数十日もかかる遠方に力を割く余裕はないはずである。本法案でいう重要影響事態では、従来の周辺事態法では規定していた自衛隊の行動範囲の地理的制約を撤廃しているが、政府が優先すべきはわが国の領土領海を自ら守り抜くことであり、遠方に自衛隊の部隊を長期間派遣し、領土領海の防衛力を減じさせることではないのではないか。政府の見解を示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号。以下「日米安保条約」という。)第五条にいう「日本国の施政の下にある領域」とは、我が国の領域のうち、現実に我が国が施政を行い得ない状態にある領域を除いた領域であると認識している。

二について

我が国及び米国は、日米安保条約第五条に基づき、我が国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することとなるが、現在の北方領土及び竹島は、現実に我が国が施政を行い得ない状態にある。尖閣諸島は同条にいう「日本国の施政の下にある領域」に含まれる。

三について

海上保安庁においては、尖閣諸島付近海域において、巡視船を常時配備し、情勢に応じて体制を強化するなど、適切に警備を行っている。

水産庁においては、同海域において、漁業取締船を常時配備し、適切に漁業取締りを行っている。

防衛省においては、尖閣諸島周辺を含む領海及び領空とその周辺の海空域において、常時継続的な情報収集及び警戒監視を行うとともに、事態の推移に応じ適切に対応できる態勢を維持している。

政府としては、今後とも、関係省庁が連携し、情勢に応じ、必要な警備等を引き続き厳正かつ適切に実施していく考えである。お尋ねの「人員、艦船、装備している武器」等の詳細については、これを明らかにすることにより、今後の警備等に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

四について

華春瑩中国外交部報道官が、平成二十五年四月二十六日の中国外交部定例記者会見において行った御指摘の発言については承知している。いずれにしても、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配している。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない。こうした立場は、中国側のいかなる発言によっても影響を受けるものではない。

五について

政府としては、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成二十五年十二月十七日閣議決定)及び「中期防衛力整備計画(平成二十六年度〜平成三十年度)」(平成二十五年十二月十七日閣議決定)に基づき、島嶼部に対する攻撃を含む各種事態の抑止及び対処のための体制を強化していく考えである。

六及び七について

我が国として、領土・領海・領空を確実に守り抜くことは当然であり、御指摘のような事態が生じることを前提としたお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。いずれにしても、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配している。

八について

お尋ねの「日本から海上自衛隊の護衛艦がホルムズ海峡周辺の海域、あるいは南シナ海の海域に航行する場合、必要となる日数」については、航行経路及び補給の有無等によって異なることから、一概にお答えすることは困難であるが、東京湾からホルムズ海峡及びバシー海峡までの航行距離は、それぞれ、約六千六百海里及び約千四百海里であり、十二ノットで航行すると仮定して日数に換算すると、それぞれ、約二十三日及び約五日となる。

九及び十について

我が国を防衛することを主たる任務とする自衛隊が、いかなる事態においていかなる対応をとるかは、その時点の個別具体的な状況を総合的に勘案して判断すべきものであり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2個別の事案 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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