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理学療法士・作業療法士の臨床実習に関する質問主意書
衆議院 第190回 第180号承知していない ×2検討してまいりたい ×4個別の事案 ×1
質問本文
医療や福祉職の養成課程において、座学にとどまらない一定の臨床・臨地研修は必要不可欠なものである。病院や診療所等の施設において実際の現場で学ぶことは、知識や手技の向上だけでなく、ヒューマンケアの観点からも非常に意義のあることだと考える。しかし、理学療法士及び作業療法士(以下、理学療法士等という)の実習において、養成校から臨床実習を受託する病院等施設では、学生に実際に患者を受け持たせ、その評価(検査・測定・治療プランの立案)、治療・訓練までを行わせている実態があり、「指導者」の指導下にあるとはいえ、無資格者である学生に一連の施療を行わせるのは不適切だという指摘がある。
医学生・看護学生の臨床・臨地実習に関しては国の指針により臨床・臨地実習体制が構築されたが、理学療法士等の臨床実習に関しては何ら整備が行われていない。理学療法医療及び作業療法医療の発展のためにも、理学療法士等の臨床実習体制の抜本的見直しについて、以下質問する。
一 無資格診療の疑いについて
一) 大学、専門学校等の養成校は、臨床実習委託先の病院及び診療所等施設へ学生を派遣し、学生はその施設の理学療法士等を臨床実習指導者として、その指導下に実際の患者を担当のうえ検査・評価・治療・再評価など一連の理学療法を実施している。しかし、理学療法士等は名称独占であるとともに、実質的には無資格者が行ってはならない固有の業務分野を占有しており、学生が資格取得前に理学療法行為及び作業療法行為を行うことは「無資格診療」に当たるのではないか。見解を示されたい。
二) 実習を受託している医療機関等施設は、無資格学生が担当した患者の施療にかかる診療報酬を得ていることになるが、このことについて見解を示されたい。
二 臨床実習の実態について
一) 理学療法士等の臨床実習は十八単位以上が義務付けられており、カリキュラム上非常に大きなウェイト(十九.四%)を占めている。しかし臨床実習の指導内容についてはほとんど整備されておらず、実習内容が標準化されていない。
医学生・看護学生の臨床・臨地実習に関しては千九百九十一年及び二千三年に指針が示され臨床・臨地実習体制が構築されているが、理学療法士等に関して厚生労働省で作成しているものがあれば示されたい。
二) 実習の受託先である医療機関等施設における臨床実習指導者の要件とは何か。また、指導者に対する研修体制はあるのか。
三) 近年の養成校の乱立により、実習生の数に対して実習を受け入れる施設の数が極端に少なく、養成校と実習先の対等な協議が困難になっている。こうした背景から一部の実習施設では、実習と称して見よう見まねの非科学的指導や現代に合わない徒弟制度的指導が横行し、指導者からのパワハラ・セクハラ、いじめ、暴力等による被害事例がかねてより報告され、その問題点が度々指摘される事態となっている。
実際に二千八年と二千十三年には、大阪の近畿リハビリテーション学院において学生が臨床実習期間中に自殺する痛ましい事件が相次いで起き、いずれも遺族による訴訟が起こされている。
政府はこうした実態を把握しているか。把握していなければ、臨床実習中における学生の傷害及び自殺事例について、件数と内容を調査すべきと考えるが、政府の見解を求める。
三 養成施設について
一) 理学療法士等養成校の急増によって、経営の観点から学生の確保が最重要課題とならざるを得ず、入学時の基礎学力も含め、国際的な理学療法士等の養成の過程と比較して、日本の理学療法士等養成教育の質の低下が指摘されている。
理学療法士等の養成施設の都道府県別施設数について過去二十年間の推移を明らかにしたうえで養成校の数、養成教育の質の関係性について政府の見解を示されたい。
二) 養成校専任教員の要件について「五年以上の理学療法及び作業療法に関する業務経験」のみで十分か、見解を示されたい。
三) 一部の養成校では、専任教員の人数や学生定員等について理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則に違反し、なおかつ厚生局からの指導に対しても改善されない実態があるが、そもそも教育機関としてコンプライアンスの軽視は許されない。こうした養成校については、立ち入り検査や罰則規定で臨むべきではないか。
四) 一部の養成校では、修業年限で卒業する学生数が入学時の学生数の半数程度であるにも関わらず、その事実を秘匿し新卒学生に対する国家試験合格率のみを公表し学生を勧誘している実態がある。学校教育法の趣旨から見ても、学習者の適切な選択に資する観点から、学校評価とそれに関わる情報公開等の仕組みが検討されるべきと考えるがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一の一)について
理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)第十一条第一号及び第二号の学校及び理学療法士養成施設並びに同法第十二条第一号及び第二号の学校及び作業療法士養成施設(以下「理学療法士等学校養成施設」と総称する。)の学生(以下「理学療法士等学生」という。)が臨床実習において行う理学療法又は作業療法(以下「理学療法等」という。)については、医師の指示及び相当の経験を有する理学療法士又は作業療法士による指導並びに患者の同意の下、その目的、手段及び方法が社会通念から見て相当であり、理学療法士及び作業療法士(以下「理学療法士等」という。)が行う理学療法等と同程度の安全性が確保される範囲内であれば、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学の医学部(以下単に「医学部」という。)の学生が臨床実習で行う医行為及び保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第二十一条第一号の大学、同条第二号の学校及び同条第三号の看護師養成所の学生又は生徒(以下「看護師学生」という。)が臨地実習で行う診療の補助と同様、違法性はないと解することができると考えている。
一の二)について
御指摘の「実習を受託している医療機関等施設」が「無資格学生が担当した患者の施療にかかる診療報酬を得ていること」の是非については、個別具体的なケースごとに判断されるため、一概にはお答えできない。なお、一の一)についてでお答えした範囲内で理学療法士等学生の臨床実習を実施している保険医療機関が、健康保険法(大正十一年法律第七十号)等に基づく療養の給付に要する費用について、健康保険法第七十六条第四項等の規定に基づく保険者等の審査を経て、保険者等から支払を受けることは、当該理学療法士等学生の指導等を行う保険医及び理学療法士等が適切に指導等を行い、診療を行っている場合には差し支えないものと考えている。
二の一)について
理学療法士等学生の臨床実習については、これが適切に行われるよう、理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(昭和四十一年文部省・厚生省令第三号。以下「指定規則」という。)第二条及び第三条において定める理学療法士等学校養成施設の指定基準の中で、教育の内容の要件を定めるとともに、「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン」(平成二十七年三月三十一日付け医政発〇三三一第二十八号厚生労働省医政局長通知。以下「ガイドライン」という。)により、その具体的な内容を明確にしているところであるが、医学部の学生が臨床実習を行う場合の指針である「臨床実習検討委員会最終報告」(平成三年五月十三日厚生省公表)や看護師学生が臨地実習を行う場合の指針である「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会報告書」(平成十五年三月十七日厚生労働省公表)に相当する指針はない。
二の二)について
ガイドラインにおいては、理学療法士等学校養成施設の臨床実習の実習指導者について、「実習指導者は、理学療法士養成施設においては、理学療法に関し相当の経験を有する理学療法士、作業療法士養成施設においては、作業療法に関し相当の経験を有する作業療法士とし、かつ、そのうち少なくとも一人は免許を受けた後三年以上業務に従事した者であること」と定めている。また、これらの実習指導者の指導の質を確保し、及び向上させるため、厚生労働省と公益財団法人医療研修推進財団との共催で、毎年、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会を開催しているところである。
二の三)について
御指摘の実態の詳細については承知していないが、理学療法士等学校養成施設において適切な臨床実習が行われていない場合があるということについて、公益社団法人日本理学療法士協会、一般社団法人日本作業療法士協会及び一般社団法人全国リハビリテーション学校協会(以下「関係団体」という。)から聞いているところである。今後、理学療法士等学校養成施設の養成カリキュラム全体の見直しを行う中で、臨床実習の実態の把握を含め、理学療法士等学生の臨床実習における適切な指導体制の確保のための対策について検討してまいりたい。
三の一)について
政府としては、平成十七年度以降の理学療法士等学校養成施設の数を把握しており、都道府県ごとの同年度から平成二十七年度までの各年度の初日における理学療法士等学校養成施設の数を順に示すと、次のとおりである。
北海道 十四、十五、十六、十八、十九、十九、十九、十九、二十一、二十二、二十四
青森県 六、六、六、六、五、六、六、六、六、六、六
岩手県 二、二、二、二、二、二、二、二、二、二、三
宮城県 八、八、十一、十一、十一、十一、十二、十三、十三、十三、十三
秋田県 二、二、二、二、二、二、二、二、二、二、三
山形県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
福島県 四、四、四、三、三、三、三、四、四、四、四
茨城県 五、五、六、七、七、七、七、七、七、七、七
栃木県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
群馬県 七、十、九、十一、十一、十二、十二、十二、十二、十、十
埼玉県 十一、十五、十六、十七、十七、十四、十五、十五、十五、十五、十五
千葉県 十四、十五、十五、十五、十五、十三、十三、十三、十三、十三、十四
東京都 二十六、二十六、二十七、二十五、二十七、二十九、三十、三十二、三十二、三十一、三十一
神奈川県 十一、十三、十三、十三、十三、十三、十三、十三、十三、十三、十五
新潟県 六、七、七、七、七、六、六、六、七、七、七
富山県 二、二、二、二、二、二、二、二、二、二、二
石川県 四、四、七、七、七、七、七、七、八、八、八
福井県 二、零、二、三、三、三、三、三、三、三、三
山梨県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
長野県 四、四、四、五、五、五、五、五、五、五、五
岐阜県 五、五、六、六、六、五、五、三、三、六、六
静岡県 十、十、十一、十一、十一、十一、十一、十一、十四、十一、十一
愛知県 二十四、二十六、二十七、三十、三十、三十一、三十、三十、二十九、二十九、二十九
三重県 三、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
滋賀県 二、零、零、零、二、二、二、二、二、二、二
京都府 二、四、五、五、五、五、五、六、六、七、七
大阪府 三十二、三十一、三十、三十一、三十、三十二、三十五、三十三、三十二、三十三、三十三
兵庫県 十一、十六、十九、二十一、二十一、二十二、二十三、二十三、二十三、二十三、二十三
奈良県 四、四、四、五、五、五、五、五、五、五、五
和歌山県 零、零、零、一、一、一、一、一、一、一、一
鳥取県 二、二、二、二、二、二、二、二、二、二、四
島根県 六、六、六、六、六、六、六、六、七、七、七
岡山県 十三、十三、十三、十三、十三、十三、十三、十二、十二、十二、十二
広島県 十、九、九、九、九、九、十、十、十二、十二、十二
山口県 六、六、六、六、六、五、五、五、五、五、五
徳島県 五、五、五、五、五、六、六、六、六、六、五
香川県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
愛媛県 二、二、六、六、六、六、六、六、七、七、七
高知県 六、六、六、六、六、六、五、五、五、五、五
福岡県 二十四、二十二、二十五、二十七、二十七、二十七、二十五、二十五、二十六、二十六、二十八
佐賀県 二、二、四、四、四、四、五、五、五、五、五
長崎県 五、六、七、七、七、七、七、七、七、七、七
熊本県 五、八、十、十二、十二、十二、十二、十二、十一、十一、十一
大分県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
宮崎県 三、三、四、七、五、五、五、五、五、五、五
鹿児島県 九、九、九、九、九、九、九、九、九、九、九
沖縄県 四、四、四、四、四、四、四、四、四、四、四
また、御指摘のように、理学療法士等学校養成施設の増加によって理学療法士等の養成の質が低下しているかどうかについては、政府として承知していないが、関係団体からは、理学療法士等学生の教育の内容の見直しについての要望を受けており、二の三)についてでお答えしたとおり、今後、理学療法士等学校養成施設の養成カリキュラム全体の見直しを行う中で検討してまいりたい。
三の二)について
理学療法士等学校養成施設の指定基準のうちの専任教員の基準については、指定規則第二条及び第三条において、理学療法士にあっては免許を受けた後五年以上理学療法に関する業務に従事した者であることと、作業療法士にあっては免許を受けた後五年以上作業療法に関する業務に従事した者であることと、それぞれ定めているが、関係団体からは、理学療法士等学校養成施設における専任教員の資質向上のため、当該専任教員の基準を見直すことについての要望を受けており、二の三)についてでお答えしたとおり、今後、理学療法士等学校養成施設の養成カリキュラム全体の見直しを行う中で検討してまいりたい。
三の三)について
理学療法士等学校養成施設の指定基準の中で、専任教員の人数、学生定員等の基準を定めているところであるが、この基準を満たしていない理学療法士等学校養成施設に対しては、理学療法士及び作業療法士法施行令(昭和四十年政令第三百二十七号)第十三条第一項の規定に基づき報告を求め、同条第二項の規定に基づき必要な指示をすることができ、その指示に従わない場合には、同令第十四条の規定に基づき、その指定を取り消すことができるとされているため、御指摘のような立入検査を可能とする規定や罰則規定を設ける必要があるとは考えていない。
三の四)について
理学療法士等の養成を行っている大学については学校教育法第百九条第一項及び第二項並びに第百十条第四項において評価とその結果の公表の仕組みが定められており、専修学校については同法第百三十三条第一項において準用する同法第四十二条及び第四十三条において評価と情報の提供の仕組みが定められており、各種学校については同法第百三十四条第二項において準用する同法第四十二条及び第四十三条において評価と情報の提供の仕組みが定められているところである。政府としては、これらの仕組みが適切に運用されるよう注視していくとともに、大学並びに専修学校及び各種学校以外の理学療法士等学校養成施設については、二の三)についてでお答えしたとおり、今後、理学療法士等学校養成施設の養成カリキュラム全体の見直しを行う中で対応を検討してまいりたい。
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