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国連人権理事会の特別報告者に対する政府の定義に関する質問主意書
衆議院 第193回 第333号
質問本文
五月二十二日、菅官房長官は記者会見で、人権状況などを調査・監視する国連特別報告者が「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案はプライバシーや表現の自由を制約するおそれがあるとの書簡を安倍晋三首相に送ったことについて、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と述べた。
また、菅官房長官は「特別報告者という立場は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」と強調し、「プライバシーの権利や表現の自由などを不当に制約する恣意的運用がなされるということはまったく当たらない」との見方を示した上で、この書簡に対し「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した。法案は百八十七の国と地域が締結する条約の締結に必要な国内法整備だ」と反論したと承知している。
これを踏まえて、以下質問する。
一 政府の定義では、国連人権理事会の任命する特別報告者とは、「独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」ということか。政府の、国連人権理事会の任命する特別報告者に対する定義、あるいは特別報告者をどのような位置づけと考えているのか明らかにされたい。
二 外務省ホームページによると、平成二十八年十一月二十五日、岸信夫外務副大臣がトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告者の表敬を受けたことが公表されているが、これは事実か。
三 二に関連して、「冒頭、岸外務副大臣から、本年八月の特別報告者としての就任、また、同報告者としての初の訪日を歓迎するとともに、人権専門家として豊富な経験を有する同報告者の活動に日本として全面的に協力する旨述べました。また、日本は、同報告者とも緊密に連携しつつ、拉致問題の早期解決に向け、引き続き全力を尽くしていく旨述べました」ことが公表されているが、これは事実か。
四 政府は、安倍政権の政策を遂行するに有益な特別報告者には「同報告者とも緊密に連携しつつ、拉致問題の早期解決に向け、引き続き全力を尽くしていく」とするものの、ケナタッチ氏の書簡については、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と指摘しているが、当該特別報告者の示している見解により、政府の都合の良いようにその取扱いを変えているのではないか。見解を示されたい。
五 安倍政権の政策遂行に資するか否かに関わらず、国連人権理事会という権威ある機関の任命した特別報告者に対しては、政府は真摯に対応すべきではないか。見解を示されたい。
六 菅官房長官は、「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した」と批判しているものの、ケナタッチ書簡では、ケナタッチ氏の「各主張の正確性に関して、追加情報または見解をお聞かせください」、「「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい」、「国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください」、「法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください」等、むしろ「政府や外務省が直接説明する機会」を与え、情報提供、対話を求めている。菅官房長官のいう「公開書簡で一方的に発出した」との批判は事実誤認ではないか。政府の見解を示されたい。
七 ケナタッチ書簡で要請されるような、日本政府がケナタッチ氏に「直接説明する機会」や情報提供、対話は予定されているのか。政府の見解を示されたい。
八 国連人権理事会の特別報告者は、国際社会における「人権専門家として豊富な経験を有する」者として認められていると解すべきであり、「同報告者の活動に日本として全面的に協力する」ことが、どのような分野の特別報告者に対してもなされるべきであろう。かかる観点からも、まずは、ケナタッチ氏の「活動に日本として全面的に協力する」と表明すべきであり、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と表明することは誤りではないか。政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
国際連合人権理事会(以下「人権理事会」という。)がその決議に基づき設置した特別報告者(以下「特別報告者」という。)は、特定の国の状況又は特定の人権に関するテーマについて調査報告を行うために人権理事会から個人としての資格で任命された独立の専門家であるところ、特別報告者の見解は、当該個人としての資格で述べられるものであり、国際連合又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識している。
二及び三について
平成二十八年十一月二十五日、岸外務副大臣は、トマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権状況特別報告者の表敬を受けており、外務省ホームページで公開している同副大臣の発言は、御指摘のとおりである。
四から八までについて
現在国会で審議中の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「改正後組織的犯罪処罰法」という。)第六条の二第一項又は第二項の罪(以下「本罪」という。)は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第五条1が定める犯罪化の義務を履行するために、同条1(a)(�@)に規定する行為を犯罪とするものであり、本罪においては、過去の国会における御議論を踏まえて処罰の対象を限定するために、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織等の「その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」を「組織的犯罪集団」と定義し、かつ、本罪の対象犯罪につき死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪のうち、我が国における犯罪情勢等に照らして「組織的犯罪集団」が関与して遂行が計画されることが現実的に想定されるものに限定して改正後組織的犯罪処罰法別表第四に掲げつつ、同表に掲げる罪に当たる行為で、「組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は・・・組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」の遂行を「二人以上で計画」し、「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われた」場合に限り処罰の対象とするものとしており、「組織的犯罪集団」の活動と関わりのない私生活上の行為や表現行為等が処罰の対象となるものではないことを明確にしている。また、我が国における捜査及び公判は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の定める適正な手続に従って行われるものであり、故意によりこのような「二人以上で計画」する行為をした者であるとの具体的嫌疑が存する場合でなければ本罪について捜査の対象となることはなく、令状については、請求を受けた裁判官が、独立した立場から慎重に審査してその発付の可否を判断することとなる。
お尋ねのジョゼフ・カンナタチ特別報告者の書簡は、我が国政府からの事前の説明の機会を設けることなく公開書簡として一方的に発出されたものであり、本罪について、テロ及び組織犯罪と無関係と思われる広汎な罪が対象犯罪とされており、かつ、その成立要件があいまいで、恣意的な適用の危険性が懸念される旨を述べるなど、その内容には誤解に基づくと考えられる点も多く、我が国政府として受け入れ難い内容のものであったことから、同特別報告者に対し、このような内容の書簡を一方的に公開書簡として発出したことは不適切である旨を指摘して強く抗議したものであり、「政府の都合の良いようにその取扱いを変えている」あるいは「菅官房長官のいう「公開書簡で一方的に発出した」との批判は事実誤認ではないか」との御指摘は当たらない。
その上で、お尋ねの書簡については、国際連合又はその機関である人権理事会の見解を述べたものではなく、また、先に述べたとおりその内容には誤解に基づくと考えられる点が多い。政府としては、同書簡で示された指摘の内容を現在精査しているところであり、今後しかるべく対応する考えである。
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