ことばで探す › 衆議院 第195回
民法第七百七十四条の夫による子の嫡出否認の規定に関する質問主意書
衆議院 第195回 第81号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
民法第七百七十二条では「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」ものの、民法第七百七十四条で、「第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる」と示されている。
平成二十九年十一月二十九日、生まれた子と夫の間に父子関係がないとする嫡出否認の訴えを夫しか起こせない民法の同規定は男女平等などを定めた日本国憲法第十四条第一項に違反すると主張する訴えに対して、神戸地方裁判所は、「憲法十四条一項に違反しない」との判断(平成二十八年(ワ)第一六五三号 損害賠償請求事件)を示した。
もっとも神戸地方裁判所は、「妻がその子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ」ていたことなどが「明らかであるなどの事情が存在する場合には、当該子は実質的には嫡出推定を受けず、親子関係不存在確認訴訟を提起して、父子関係を争うことができる等、嫡出推定には例外がある」、「このような例外の存在に鑑みると、妻に一定の制約の下で、嫡出否認の訴えの提起を認めることは選択肢の一つとなり得ると考えられる」と示し、「生物学上の父による認知が得られることを要件として妻に嫡出否認の訴えを提起することを認める等、要件設定次第では、子の利益の保護に欠けることがない制度を構築することは不可能とはいえない」と示した。さらに、「このような補完的な制度の設置により」「無戸籍となる事態を防止する余地がある」と指摘している。
このような神戸地方裁判所の判断を踏まえて、政府の方針を確認したいので、以下質問する。
一 現在、「母において子が生物学上の父とは異なる夫の戸籍に入籍することを嫌忌して出生届の提出を控え、無戸籍となる事態」にある者はどの程度存在するのか。政府の把握するところを示されたい。
二 「生物学上の父による認知が得られることを要件として妻に嫡出否認の訴えを提起することを認める等、要件設定次第では、子の利益の保護に欠けることがない制度を構築することは不可能とはいえない」と示されたが、無戸籍状態の解消のために、政府は法改正に取り組むべきではないか。見解を示されたい。
三 二に関連して、法改正には時間を要するため、「生物学上の父による認知が得られることを要件として妻に嫡出否認の訴えを提起することを認める」ための省令などの措置を早急に行うべきではないか。見解を示されたい。
四 神戸地方裁判所の「生物学上の父による認知が得られることを要件として妻に嫡出否認の訴えを提起することを認める等、要件設定次第では、子の利益の保護に欠けることがない制度を構築することは不可能とはいえない」、「このような補完的な制度の設置により」「無戸籍となる事態を防止する余地がある」との見解について、政府はどのように受け止めるのか。今後、時間が経過するとともに、無戸籍の者の不利益は継続する。政府は、最高裁判所の判断が示されるまで当該事案への対応策を講じず、司法の判断をただ見守るのか。見解を示されたい。
五 神戸地方裁判所は、「妻が夫から暴力を受けるおそれがある場合には、配偶者の暴力からの保護を与える法整備が必要」とした上で、このような「配慮、支援、法制度の整備がなければ、仮に妻に嫡出否認の訴えの提訴権を認めても、実際上、行使困難なことがある」と指摘している。政府はこの判断をどのように受け止めるのか。「配偶者の暴力からの保護を与える」、「配慮、支援、法制度の整備」をさらに進めるべきではないか。政府の見解を示されたい。
六 神戸地方裁判所の「生物学上の父による認知が得られることを要件として妻に嫡出否認の訴えを提起することを認める等、要件設定次第では、子の利益の保護に欠けることがない制度を構築することは不可能とはいえない」との指摘については、既に平成十九年より最高裁判所がホームページで周知を図り、裁判官等への研修を行った「認知調停」で既に実効されているとも言える。平成二十七年十一月には、最高裁はさらに全国の家庭裁判所に文書を送り、戸籍を得るための調停を行う場合、前の夫の関与が必要ないものもあることを当事者に説明するよう求め、この実質の妻の「嫡出否認権」については前夫の関与がいらない旨まで示しているが、政府は承知しているのか。見解を示されたい。
七 六に関連して、現行の調停・裁判においては、「嫡出否認権」は、法に定めにない他の方法によって担保、実効化されているのであり、この齟齬を立法により一刻も早く解消すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
「戸籍に記載がない者に関する情報の把握及び支援について(依頼)」(平成二十六年七月三十一日付け法務省民一第八百十七号法務省民事局民事第一課長通知)に基づき実施した調査の結果によると、平成二十九年十一月十日時点において、出生の届出がされていないことにより無戸籍状態にある者のうち、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十二条の規定に基づき嫡出推定を受けることを理由とする者の数は、五百四十一人である。
二及び四について
無戸籍者問題の解消のために現行の嫡出推定制度を見直す必要があるとの見解については、これを見直す場合の制度設計の在り方等を含めて様々な意見があることから、国民的な議論の動向を踏まえながら、見直しの要否等を検討する必要があると考えている。
無戸籍者については、法務省において、その実態把握に努めているのみならず、法務局において、市区町村等と連携して把握した無戸籍者の一人一人に寄り添いながら戸籍に記載されるための手続案内を丁寧に行っているほか、法務省において、関係府省の担当官を構成員とする「無戸籍者ゼロタスクフォース」を開催してきた上、今般、市区町村等における情報集約及び地方における法務局と関係機関との連携を強化することとしたところであり、政府として、無戸籍者問題の解消のための取組を行っている。
三について
嫡出否認の訴えの提訴権者は、法律で定められるべき事項であると考えている。
五について
配偶者の暴力からの保護については、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)が制定されており、同法に基づき、各種の施策が実施されている。また、現行の裁判実務においても、運用上の工夫により、配偶者からの暴力を受けた当事者に対する各種の配慮や支援がされているものと承知している。更なる方策や法整備については、その必要性等を慎重に検討する必要があるものと考える。
六について
最高裁判所のホームページにおいて、「婚姻中又は離婚後三百日以内に生まれた子どもであっても・・・妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合には、夫の子であるとの推定を受けないことになるので、そのような場合には、・・・子から実父を相手とする認知請求の調停を申し立てる方法もあります」等の説明が掲載されていること及び最高裁判所事務総局家庭局第二課長が、平成二十七年十一月五日に、高等裁判所事務局長等に対し、「認知請求事件であっても前夫を手続に関与させることもあること・・・などについて、当事者に対して説明をしておく必要がある場合も考えられます」等の記載がされた事務連絡を発出したことは承知しているが、これらについて、政府として見解を述べる立場にない。
七について
御指摘の「この齟齬」の意味するところが必ずしも明らかではないが、認知請求は嫡出推定を受けない子についてすることができるものであり、嫡出否認は嫡出推定を受ける子についてすることができるものであるから、適用場面が異なる。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。