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民法第七百七十二条に係るいわゆる無戸籍児に関する質問主意書

衆議院 第166回 第313号趣旨が明らかではない ×3

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2007年6月1日
内閣転送 2007年6月6日
答弁書受領日
2007年6月12日
提出から11日
答弁の項目数
8
質問 1,945字/答弁 1,992字

質問本文

近年、社会情勢の変化等により離婚が年々逓増している。多くの場合、夫婦は離婚するまでに悩み、苦しみ、時には憎しみさえ抱きながらそうした結論に到るであろうことが思慮される。その中には婚姻期間中であっても長い間夫婦としての実態は存在しない事実上の離婚状態にあり、その間に新たな伴侶が見つかり新たな生活に踏み出すこと、そして女性であればその伴侶の子を懐胎することは当然起こりうることである。

この場合、懐胎と法的離婚の成立の時期により、民法第七百七十二条第二項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」の嫡出推定が及び、生まれた子が新たな夫の子であることが明らかな場合でも、法的には「前夫の子」となってしまうこともありうる。

現行制度では事実上、婚姻関係が破綻している間に懐胎した子については、親子関係不存在確認の調停・裁判などを経て嫡出推定が及ばないこととする仕組みになっているが、離婚に至る経緯から「前夫の子」と扱われるのに傷つき、事実とは違う父親の名で出生届を出すことができず、また実際の父親の名前を届け出るが出生届を受け付けてもらえないため、いわゆる「無戸籍児」という状態が発生している。

そこで以下の通り質問する。

一 わが国では夫が婚姻を継続した上で、別の女性との間にできた子は認知制度により非嫡出子として戸籍に登録することを認めている。いわゆる無戸籍児の場合、その多くは結果として前夫と離婚し、事実上の父である後夫と再婚しているにも関わらず後夫の戸籍に登録することが認められないという状況におかれてしまう。この違いの合理的理由は何か。また嫡出推定が後夫の子であるという事実より優先する理由は何か。

二 今般、法務省民事局長通達により離婚後三百日以内に出生した場合であっても、医師の証明により離婚後に懐胎したことが明らかな事案については前夫の子と推定しないという取扱いをすることとなった。このこと自体は一歩前進と評価するが、この場合では救済される無戸籍児は全体の一割程度にすぎない。局長通達で離婚後に懐胎したケースに限定した理由は何か。

三 昭和四十四年の最高裁判例で民法第七百七十二条の調停や裁判についての「根拠」は「事実上の離婚の日」を基準としている。嫡出推定では法的離婚の日とする理由、妥当性は何か。また既に司法の場で基準とされている「事実上の離婚の日」との整合性をどう考えるか。関連して法務大臣の不貞に関する発言について、調停離婚などの場合、婚姻期間中であっても夫婦の実態が失われた後に(事実上の離婚)、他の異性と交際を始めてもそれは「不貞」とはされない。「不貞」「不貞の子」の範囲はどういうものとお考えか。

四 夫婦の離婚の合意により離婚が成立したと考えていたものが、前夫が提出を遅らせたために自分が思っていた日より法的離婚の日がずっと後であった場合がある。また調停離婚の場合、家庭裁判所が抱える案件数によって調停が速やかに行われない場合も実際に起こっている。こうした点を考慮しても「事実上の離婚の日」が適切だと考えるが如何か。

五 嫡出推定は、子の福祉のために親子関係を早期に確定し、家庭の平和を尊重するために制定されているのではないか。それであれば事実上の父が後夫であることが明白であっても、前夫の子とすることが子の福祉に適うと考えるのか。

六 スイスでは「嫡出推定が重複する場合は後婚を優先する」と法律が改正されている。わが国においてもそうした立場に立つべきと考えるが如何か。

七 現在の民法においては、子の出生を知って嫡出否認ができるのは出生後一年間と定められている。前夫は自分の子と信じて養育費を払ってきたが、DNA鑑定の結果、前夫の子ではないことが判明した場合、嫡出否認の期間が過ぎていたため法的には今後、相続権が発生するなどの事例もある。無戸籍児の問題を逆手に取り、前夫の子と悪用すれば前夫の財産相続権や扶養を選びとれる余地を残している現状をどう考えるか。

八 無戸籍児の住民票を作らないのは違法だとして、子と事実上の両親が世田谷区に住民票作成を求めていた訴訟で、五月三十一日、東京地裁は原告の訴えを認め、世田谷区に住民票の作成を命じた。この判決をどう評価するか。また、全国の自治体にそうした対応をとるよう指導するつもりはあるか。

九 長勢法務大臣はご自身のホームページで「社会通念上やむを得ないケースにおいては離婚前でも救済を考えねばならない。」旨の発言をされている。やむを得ないケースとはどういうケースなのか、具体的にお示しいただきたい。また救済はいつ頃を目途にお考えかをお示しいただきたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

婚姻継続中に夫と妻以外の女性との間に生まれた子は、嫡出でない子であるから、当該子は母の氏を称し母の戸籍に入籍するものとされており(民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百九十条第二項、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十八条第二項)、当該夫が当該子を認知すると、当該夫の戸籍の身分事項欄に当該子を認知した旨の記載がされることになるものの、当該子は当該夫の戸籍に入籍することになるわけではない。

他方、離婚後三百日以内に出生した子は、婚姻中に懐胎したものと推定され(民法第七百七十二条第二項)、夫の子と推定される(同条第一項)のが原則であるが、妻が当該子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存する場合には、この推定は及ばないものと解されているところ、戸籍事務においては、前記の事情が裁判上明確にされている場合には、当該裁判書の謄本の提出を得て、後婚の夫の戸籍に入籍することができるが、その提出がされない場合には、前婚の夫の子としてしか出生届を出すことはできず、後婚の夫の戸籍に入籍することはできないものとして取り扱っている。

離婚後三百日以内に出生した子についてこのような取扱いがされるのは、民法が、子の福祉のために親子関係を早期に確定し、家庭の平和を尊重するという趣旨から嫡出推定制度を採用しており、また、戸籍事務において、戸籍事務管掌者である市町村長は、形式的審査権限のみを有し、前記の事情の存否を判断することができないからである。

御指摘の「嫡出推定が後夫の子であるという事実より優先する」の趣旨は必ずしも明らかではないが、嫡出推定制度を採用している趣旨及び戸籍事務の取扱いの理由は、前記のとおりである。

二について

従来、戸籍事務においては、離婚後三百日以内に出生した子については、一についてで述べた裁判書の謄本の提出がない限り、前婚の夫の子としてしか出生届を出すことはできないという取扱いをしてきた。

しかし、離婚後三百日以内に出生した子であっても、懐胎の時期が離婚後である場合には、婚姻中に懐胎した子ではないので、民法第七百七十二条第一項の推定が及ばないものと解することができるため、現在の嫡出推定制度の枠組みを維持しつつ、前婚の夫の子と推定しないという取扱いは可能である。

そこで、医師の証明によって離婚後の懐胎であることを戸籍窓口において定型的に確認することができる事案については、当事者の負担を軽減するため、従来の運用を見直し、民法第七百七十二条の推定が及ばないものとして、出生届を受理する取扱いとしている。

三及び四について

御指摘の「嫡出推定では法的離婚の日とする」の趣旨は必ずしも明らかではないが、一定の事情がある場合には嫡出推定が及ばないこと及び戸籍事務の取扱いについては、一についてで述べたとおりである。

また、民法第七百七十条第一項第一号は、不貞な行為があったときは離婚の訴えを提起することができる旨定めているところ、ここにいう「不貞な行為」とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて当該配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを指すものである。

五について

御指摘の「事実上の父が後夫であることが明白」であるとの趣旨は必ずしも明らかではないが、法務省としては、嫡出推定制度については、一についてで述べたとおり、基本的には親子関係を定める合理的なものであり、子の福祉に反するものではないと考えている。

六について

我が国においては、嫡出推定が重複する場合は、父を定めることを目的とする訴え(民法第七百七十三条)により裁判所が父を定めることとされており、法務省としては、この制度は合理的なものであると考えている。

七について

嫡出推定を受ける子について嫡出子であることを否定するには、原則として、夫が、子の出生を知った後一年以内に嫡出否認の訴えを提起しなければならない(民法第七百七十四条以下)。

このように、嫡出否認の訴えの提訴権者及び提訴期間を制限している趣旨は、子の出生後一定期間経過後は、父子関係をだれからも争えなくすることで父子関係を早期に確定させ、また、家庭の平和を尊重するというものであり、法務省としては、合理的な制度であると考えている。

八について

お尋ねの判決については、いまだ確定していないものであり、現時点で評価をすることは差し控えたい。

九について

妻が離婚前に懐胎し、離婚後に出生した子については、与党において、社会通念上やむを得ない場合には裁判手続を経ることなく前夫以外の戸籍に記載する方法を検討することとしており、法務省としては、その検討について必要に応じて協力をしていくべきものと考えている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×3

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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