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外国人技能実習生に対する妊娠禁止規定は民法違反とした判決があること等に関する質問主意書

衆議院 第198回 第10号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×7

提出者
立憲民主党・無所属フォーラム
提出日
2019年1月28日
内閣転送 2019年2月4日
答弁書受領日
2019年2月8日
提出から11日
答弁の項目数
12
質問 3,786字/答弁 3,577字

質問本文

政府は外国人技能実習制度で明らかになった人権侵害問題を放置したまま、新たな在留資格を設けて、外国人労働者を受け入れようとしている。労働者は人であり、労働は人の生活の一部でしかない。労働者を受け入れることは生活者を受け入れることであるにもかかわらず、そのことを忘れ、人権意識が欠けた実習実施者や監理団体による許しがたい事件も数々起きてきた。

中には不法行為として裁判の判決で認められた事件もある。二〇一三年七月十七日、富山地方裁判所は、妊娠禁止規定は民法第九十条違反であると認定し、その判決(以後、十三年判決)が確定した。この事件は、外国人技能実習生を受け入れた側が、妊娠が判明した技能実習生に帰国を迫り、その日のうちに本人の意思に反して飛行機に搭乗させようとして、その翌日に流産を引き起こしたことを、不法行為と認定し、損害賠償責任を一部認めたものだ。

以下、十三年判決に照らして、技能実習制度および今後の外国人材の受入れ・共生のあり方について質問する。人権にかかわることなので、十三年判決を入手、確認の上、答弁は複数の質問に対してまとめてではなく、一つひとつ別々かつ簡潔にされたい。

一 十三年判決には妊娠禁止条項についての裁判所の判断が述べられている。実習生の送出国にある送出機関と被害実習生の母が結んだ派遣契約書にある妊娠禁止条項は、女性の技能実習生が技能実習中に妊娠し、実習が中止された場合は、無条件に帰国し、送出機関と受入団体が受けた損害を技能実習生が賠償すべき義務を負うという趣旨である。十三年判決は「このような取り扱いは、技能実習生に対する人権侵害につながる」とし、さらには、法務省入国管理局作成の「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反するものであったと認定している。

1 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反する旨を、「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」に加える検討を行ったか。

2 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反する旨を、海外の送出機関、国内の技能実習実施者や監理団体に通知し、周知徹底する措置を取ったか。

二 十三年判決で裁判所は「妊娠禁止規定により技能実習を打ち切り、即時帰国を求めることは、労働関係法令の適用により技能実習生の法的保護を図るという技能実習制度の趣旨に反し、公序良俗(民法第九十条)に反するものであるから、原告がいったんそのような合意をしたとしても、かかる合意に拘束力はないと言わざるを得ない」と認定した。

1 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は公序良俗(民法第九十条)に反する旨を、省内で共有したか。

2 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、海外の送出機関、国内の技能実習実施者や監理団体に、妊娠禁止条項は公序良俗(民法第九十条)に反する旨を周知徹底したか。

三 妊娠禁止条項により技能実習を打ち切り、即時帰国を求めることは民法第九十条違反であるとの判決があるにもかかわらず、公序良俗に反する契約を結ばせられている事例は未だにある。現在、来日中のあるベトナム人技能実習生の技能実習生派遣事業に関する契約書には、技能実習が中止され強制送還される場合が例示され、犯罪などと並んで、「慢性病やAIDSにかかり、妊娠等の場合」と書かれている。

1 この事例については、困窮した技能実習生を支援する団体が、政府にも通知していると聞くが、政府はその事例を支援団体から聞く前に認識していたか。

2 この事例を認識した後、現在までに、政府はどのような措置を取ったか。また、今後どのような措置を取るのか。

四 妊娠禁止条項を記載した契約書が他にも結ばれていないか、送出機関、技能実習実施者、監理団体に対して、一斉に調査をかけるべきではないか。

五 男女雇用機会均等法第九条は「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等」を定めており、「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」、「事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」、「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」、「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」と定めている。

日本政府は、男女雇用機会均等法第九条が技能実習生にも適用されるという立場を取っているが、その学習機会を、海外の送出機関および国内の技能実習実施者や監理団体を対象に設け、遵守を求めたことがあるか。

六 二〇一八年十二月五日に開かれた参議院法務委員会で、移住者と連帯する全国ネットワーク理事の高谷幸大阪大学大学院人間科学研究科准教授は、「実習生は恋愛も妊娠も禁止され、妊娠が分かった時点で中絶か帰国を迫られるという報道がありました。こうした措置は認められるものではないというのが政府の見解のようですが、このような例は後を絶ちません」と述べ、このような人権問題が起きることについて、「教育や出産、子育てをコストとして見る発想に根差しています。私は、この発想は、外国人の問題に限らず、出産や子育て、教育に十分な公的支援がなされていないという日本社会全体の問題と地続きである」と指摘した。この指摘を受け、政府は新たに特定技能制度を導入するにあたり、日本社会全体にどのようなメッセージを送るべきだと考えるか。

七 わが国には、男女雇用機会均等法や労働基準法などを含めた母性保護規定や母性保護のための女性労働基準規則が定められているが、技能実習制度に関わる送出機関、技能実習実施者、監理団体に対して、母性保護の必要性について伝えてきたのか。

八 二〇一八年十二月二十五日に政府が発表した「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」には、母性保護に関する記述がまったくないが、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会」に関わる関係府省、とりわけ法務省および厚生労働省の職員が、検討会の設置を契機に、男女雇用機会均等法や労働基準法などを含めた母性保護規定や母性保護のための女性労働基準規則を学習する機会はあったのか。

九 二〇一八年十一月、厚生労働省人材開発統括官付技能実習業務指導室に、外国人技能実習機構における技能実習生からの母国語相談の内容の内訳を尋ねたところ、二〇一七年の八百五十四件および二〇一八年の千四百三十五件の相談のうち、「その他」が二〇一七年は三百五十七件、二〇一八年は六百六十件と最も多く、妊娠・出産に係る相談は「その他」に入っているらしいことが分かった。

そこで、妊娠・出産に関する相談内容について尋ねたところ、二〇一八年十二月二十七日に技能実習業務指導室を通した真摯な調べと文書回答により、二〇一七年から二〇一八年九月までに次のアからエのような相談が五件あったことが判明した。各件で、相談された側はどのような助言や対応を行ったのか、一般論を回答したのか、親身な対応を取れたのか、プライバシーが侵害されない範囲で確認して答弁されたい。

ア 友人の実習生が妊娠したが、どうしたらよいか(二件)。

イ 実習期間中に友人の実習生が妊娠したが、異常妊娠のため入院が必要となった。入院費用の保険は使えるのか。

ウ 実習先から失踪した実習生からの相談。妊娠のため、帰国したいが、旅券と在留カードを紛失したため、再発行したい。どうしたらよいか。

エ 妊娠したが、子供を堕したくて、薬を飲んだ。病院へ受診したいが、受診できるか。

十 法務省は「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を検討するにあたり、技能実習生からは、このような相談があったことを認識していたか。

十一 日本で妊娠、出産した技能実習生や、技能実習生から生まれた子どもが送還された事例を認識しているか。分かる範囲で明らかにされたい。

十二 日本でもいわゆる「できちゃった婚(授かり婚)」は全国平均で二十五%を超えている。技能実習生の妊娠・出産も想定内のものとし、日本人女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が保護、尊重されるのと同様に、技能実習生に対しても保護、尊重されるべきだと考えるがいかがか。

十三 法務省は二〇一八年十二月二十七日に、技能実習制度が創設されて以来初めて、虚偽の入国後講習実施記録を提出したことなどを理由に監理団体の許可の取消し処分を行った。母性保護規定や女性労働基準規則に違反した場合も、許可取消しの対象となりうるか。

十四 政府は、十三年判決が示す教訓が生かされるよう、新たな特定技能制度が実施される四月までにどのようなことを行うか明らかにされたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

法務省入国管理局が策定する「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」(以下「指針」という。)については、平成二十五年十二月に改訂を行っているところ、その際に、御指摘の「十三年判決」の内容を担当部局で共有の上、当該判決に係る事例の存在をも踏まえ、技能実習生がその意に反して強制的に帰国させられることのないよう、改訂後の指針において、「外国人の技能実習に係る不正行為」のうち「監理団体において、技能実習の継続が不可能となる事由が生じた場合の地方入国管理局への報告を怠る行為」(出入国管理及び難民認定法施行規則等の一部を改正する等の省令(平成二十九年法務省令第十九号)第三条の規定による改正前の出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年法務省令第十六号)の表の法別表第一の二の表の技能実習の項の下欄第一号ロに掲げる活動の項第十六号の表ルに掲げる行為をいう。以下「報告不履行」という。)の具体的内容として、「監理団体において、・・・技能実習生が実習期間を満了せずに途中帰国をするときに、地方入国管理局に対して報告しなかった場合等」と明記した上、監理団体が報告不履行を行った場合には、新たな外国人技能実習生の受入れができないこととなり得る旨を示したところである。また、厚生労働省においては、労働政策に関する情報収集は必要な範囲で行っており、指針の改訂に当たり、法務省と厚生労働省との間で協議を行ったところである。

その上で、改訂後の指針は、法務省のホームページにおいて公表し、御指摘の「海外の送出機関、国内の技能実習実施者や監理団体」に対する周知徹底を図ったところである。

三について

御指摘の「この事例」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、例えば、送出機関(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号。以下「法」という。)第二十三条第二項第六号に規定する外国の送出機関をいう。以下同じ。)であって、相手国(我が国が二国間の技能実習制度に関する協力覚書(以下「覚書」という。)を作成した国をいう。以下同じ。)政府が覚書に規定する送出機関の認定基準を満たすものとして認定したもの(以下「認定送出機関」という。)又はその役員が、過去五年以内に、技能実習生の人権を侵害する行為を行ったおそれのある事例を把握した場合には、相手国政府に対し、当該認定送出機関が送出機関の認定基準に適合しない行為を行った可能性がある旨を通報し、これを受けた相手国政府が、調査等を行った結果、当該認定送出機関を相手国の認定送出機関のリストから除外したときは、当該認定送出機関は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(平成二十八年法務省・厚生労働省令第三号。以下「省令」という。)第二十五条に規定する送出機関の要件を満たさなくなるため、外国人技能実習機構において、当該認定送出機関から技能実習の申込みの取次ぎを受けていた実習実施者(法第二条第六項に規定する実習実施者をいう。以下同じ。)及び監理団体(同条第十項に規定する監理団体をいう。以下同じ。)に対し、当該認定送出機関からの取次ぎを受けないよう、指導等を行うこととなる。

四について

現時点では、御指摘のような調査を行う予定はないが、相手国政府との定期的な情報交換の場及び相手国における送出機関への説明会を通じて、過去五年以内に、送出機関又はその役員が技能実習生の人権を侵害する行為を行った場合には、省令第二十五条第八号ハの規定及び覚書に基づく送出機関の要件を満たさないことについて、相手国政府及び送出機関への周知を図ってきているところであり、今後は、外国人技能実習機構に対して、技能実習生の私生活の自由を不当に制限することの禁止を規定している法第四十八条第二項の内容と併せて、婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等を規定している雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号。以下「均等法」という。)第九条の内容を、実習実施者及び監理団体に対して周知するよう求めてまいりたい。

また、政府として、引き続き、法第十四条第一項の規定により外国人技能実習機構に行わせる同項各号に掲げる事務、法第四十九条第一項の規定による技能実習生からの申告及び法第五十条第二項の規定による技能実習生からの相談により、不適切な事例の把握及びその適切な対応に努めてまいりたい。

五及び七について

お尋ねの「学習機会」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、実習実施者が技能実習を行わせる事業所ごとに選任することとされている技能実習の実施に関する責任者、監理団体が監理事業を行う事業所ごとに選任することとされている監理責任者等については、いずれも、省令第十三条、第五十三条第二項等の規定に基づき、少なくとも三年ごとに、法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める講習を修了しなければならないこととされており、当該講習において、均等法や労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)を含めた労働関係法令に関する科目を受講することとされている。

また、送出機関については、今後、相手国政府との定期的な情報交換の場において、相手国政府に対し、均等法第九条その他の必要な法令の内容について、送出機関への周知を図るよう求めてまいりたい。

六について

お尋ねの「この指摘を受け・・・日本社会全体にどのようなメッセージを送るべき」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

八について

お尋ねの「学習する機会」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、法務省においては、定期的に、入国管理局の職員を対象として均等法を含む女性の人権に関する研修を実施しており、厚生労働省においては、定期的に、担当部局の職員及び都道府県労働局の職員を対象とする研修において、均等法の規定等の重要性について周知啓発を行っている。

九について

御指摘の「次のアからエのような相談」については、外国人技能実習機構において、技能実習生の個別の事情や希望を聴取した上で、技能実習生に対して必要な助言を行ったものと承知している。

十について

法務省では、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(平成三十年十二月二十五日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議了承。以下「総合的対応策」という。)の策定に当たり、御指摘の「このような相談」があったことは認識していなかったものの、平成三十年九月十三日に同省に設置した「「国民の声」を聴く会議」において、技能実習生を含む外国人からヒアリングを行うなどし、技能実習生が抱える問題について理解を深めた上で、総合的対応策の検討を行ったところである。

十一について

お尋ねの「送還された」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十二について

御指摘の「同様に」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、均等法第九条の規定のほか、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置を規定している均等法第十二条の規定、産前及び産後休業を規定している労働基準法第六十五条の規定等については、技能実習生が妊娠、出産等をした場合も対象とするものである。

十三について

監理団体が、労働基準法第六十五条を含め、法第三十七条第一項第五号に規定する「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」に該当する場合には、同項の規定に基づき、法務大臣及び厚生労働大臣は、監理許可(法第二条第十項に規定する監理許可をいう。)を取り消すことができることとされている。

十四について

お尋ねの「十三年判決が示す教訓」の具体的に意味するところが明らかではないが、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成三十年法律第百二号。以下「改正法」という。)による改正後の出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条の五第三項においては、「特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関」は、「法務省令で定める基準に適合するものでなければならない」とされ、当該基準については、同条第四項において「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしていないことを含むものとする」とされているところであり、改正法の施行に当たっては、適切な運用がなされるよう、当該基準の遵守について、関係する公私の機関に周知してまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×7

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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