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「SBS理論」に基づく「子ども虐待対応の手引き」の見直しを求めることに関する質問主意書

衆議院 第204回 第235号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×2承知していない ×1検討してまいりたい ×3個別の事案 ×1

提出者
立憲民主党・無所属
提出日
2021年6月11日
内閣転送 2021年6月16日
答弁書受領日
2021年6月25日
提出から14日
答弁の項目数
7
質問 2,152字/答弁 2,090字

質問本文

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)を研究する大学教授や弁護士でつくる「SBS検証プロジェクト」などによると二〇一四年以降、SBSが疑われる頭部傷害致死事件などで、一審や二審で無罪判決が出たのは全国で十四事件で、このうち十一件は無罪が確定している。

いわゆるSBS理論は、硬膜下血腫、網膜出血、脳浮腫の三症状があれば、激しく頭を揺さぶったと推定できるとされ、一九七一年に英国の小児神経外科医が提唱し、主に米国で広まったが、日本では近年、揺さぶり以外の原因でも三症状が起きる「中村一型」の可能性が改めて指摘され、脳神経外科医をはじめとする臨床家や研究者らが警鐘を鳴らしている。

このことについて、以下質問する。

一 SBSが疑われる傷害事件の相次ぐ無罪判決により、厚生労働省も実態把握を迫られ、令和二年度子ども・子育て支援推進調査研究事業、「児童相談所における虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)事案への対応に関する調査研究」(PwCコンサルティング合同会社)を実施、本年四月に報告書が公開された。

調査には全国の児童相談所(児相)の約七、八割に当たる百七十一カ所が回答した。虐待の疑いがあるとして二〇一九年に対応した件数は九十六児相、二百四十三件に上り、そのうち百二十五件で児相の判断に基づき子どもを保護者から引き離す「一時保護」が行われたことが明らかになったが、解決すべき今後の課題についての問いには、「けがが故意か、事故か判断が難しい」との回答が二十四件(二十四児相)と最も多く、虐待か事故か判断に迷う現場の混乱が伝わる結果であった。こうした課題についてどのように認識し、どのように対策するのか。

二 一時保護が行われた百二十五人中、さらに半数の六十五人には二カ月から半年にわたる長期親子分離が行われている。親との分離は、とりわけ乳児期において愛着関係が形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる「愛着障害」が指摘されている。愛着障害を最小限に抑えるための頻繁な親子面会や一時帰宅等、必要不可欠な配慮については、どのように指導され実施されてきたのか。政府の把握するところを答えられたい。

三 兵庫県明石市では、二〇一八年に起きた生後五十日の男児が右腕を骨折したことで児相に虐待を疑われた結果、一時保護が一年三カ月にも及び、その間親子の面会も月に一、二回しか認められなかった事例をきっかけに、第三者委員会を立ち上げ、一時保護の在り方を検証する仕組みを作った。こうした、行政をチェックする装置を行政の外に作ることが、情報公開と併せて最も求められていることではないか。地方の先駆的な取り組みを国としても学んでいただきたいがどうか。

四 横浜市立児相では、三月に一時保護に審査請求を行った乳児がいたが、家庭裁判所が「一時保護の再々延長」を認めず、約五カ月で一時保護は解除になった。一方、横浜市は、審査請求に対し、一時保護は解除されたのだから、法的利益はないだろうと、請求を却下した。この間の「親子分離」に、行政の責任はないのか。

五 報告書のその他の課題として「セカンドオピニオンの実施が難しい児童相談所がある」ことや「児童福祉司の児童虐待に係る医学的知識が不足する場合がある」ことなどが上げられている。セカンドオピニオンについては脳神経外科医に意見を求めた例は六・八%と極めて少ない一方、法医学分野に四十九・六%が求めていた。重軽傷にかかわらず、頭部外傷の臨床の専門は脳神経外科医であり診断・治療の実績もある。脳神経外科医を自治体がセカンドオピニオンとして登録し、児相に照会する仕組みを構築してはどうか。

六 六月四日、日本小児神経外科学会において発表された六病院共同研究の調査結果によれば、脳神経外科で硬膜下血腫と診断された乳幼児百六十例を分析したところ、約六割を低い場所からの転倒・転落が占め、虐待が疑われる例は約三割だったとのことである。

一方、厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」はSBSを「子どもの頭部が暴力的に揺さぶられることによって生じる頭部外傷」であり、「家庭内の低いところ(九十センチメートル以下の高さ)からの転落や転倒では起きない」として、硬膜下血腫等の三症状があった場合に虐待を疑うよう求めているが、それに従えば、この分析事例の多くが虐待と認定される可能性が生じる。このことについて見解を問う。

七 日本では「中村一型」として、つかまり立ちなど、低い位置からの転倒や落下の軽い衝撃で硬膜下血腫などの外傷を受けることは、すでに一九六五年より報告があり、近年は海外でも認識され、無罪判決が出ているという。

ノルウェーのAHT研究所によると、二〇〇四年から二〇一五年までにノルウェーで有罪を言い渡された十七件を検討した結果、うち十六件で揺さぶり以外の原因があった可能性があるとの報告が、脳神経外科医や法医学者の共著で示されたとのことである。

乳幼児の病気や事故についての医学的な判断が正確でないと、児相の介入に影響する。国内の臨床家や研究者からも「SBS理論」に基づく「子ども虐待対応の手引き」は、医学的妥当性のある内容に見直すべきとの指摘がされているが、改訂の予定はあるか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の「けがが故意か、事故か判断が難しい」という「課題」については、「子どもの虐待対応の手引きについて」(平成十一年三月二十九日付け児企第十一号厚生省児童家庭局企画課長通知。以下「手引き」という。)において、「支援にあたっては子どもの治療を最優先する。さらに、子どもの状態が安定し、受傷にいたる経過の解明の中でSBSの疑いが強ければ、子どもの安全確保のために職権による保護を行う。乳幼児の親子分離が親子関係の形成を阻害し、二次的な虐待の素地を作るというマイナス面を考慮にいれても、受傷の原因が特定できず虐待の可能性がある限りは、安全を第一に分離の判断をせざるを得ない」と示しているとおりである。

また、「どのように対策するのか」とのお尋ねについては、手引きにおいて、「乳幼児揺さぶられ症候群や代理によるミュンヒハウゼン症候群のような事例では、医学的判定がきわめて重要な根拠になる。そのため、法医学の専門家を確保して、セカンドオピニオンをとるなどの必要がある」ことや「MRI、CT、全身骨撮影、眼底所見、出血傾向の検査などの医学的精査がなされているか、保護者から説明した受傷機転の内容が記載されているかなどを医師に質問し、慣れていない医療機関の場合には、虐待に詳しい医師や医療機関と連携して、十分な医療情報を集める必要がある」ことを示すとともに、「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の施行について」(令和二年三月三十一日付け府共第二百四十五号・子発〇三三一第二号内閣府男女共同参画局長及び厚生労働省子ども家庭局長連名通知)及び「児童虐待対応における法医学との連携強化について」(令和二年六月十八日付け厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課事務連絡)により、都道府県等に対して、大学における法医学教室等との連携の強化に努めるよう依頼しているところであり、引き続き手引き等について周知してまいりたい。

二について

「必要不可欠な配慮については、どのように指導され実施されてきたのか」とのお尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、「一時保護ガイドライン」(平成三十年七月六日付け子発〇七〇六第四号厚生労働省子ども家庭局長通知別添)において、「一時保護の期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする」ことや、一時保護中の家族との面会等の制限について、「子どもの安全の確保が図られ、かつ一時保護の目的が達成できる範囲で必要最小限とする」ことを示すとともに、「家族との面会等に関しては、子どもの安全と安心を前提に、子どもの意思や気持ちも踏まえ総合的に判断する必要がある。また、子どもの意見を十分に聴取し、面会等を拒否してもよいことを伝え、拒否することによる保護者の反応を不安に思っている子どもには安心感をもたらすケアが必要である。その際には、現状や今後の見通しについて子どもに説明し、子どもの不安の軽減や疑問に答えるようにする」ことを示しており、都道府県等において、これらを踏まえた対応が行われているものと考えている。

三について

「地方の先駆的な取り組みを国としても学んでいただきたい」との御指摘の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和三年四月二十二日に公表された「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会とりまとめ」において、「児童相談所から独立した第三者機関が、保護者、子ども、児童相談所からの申立てに基づき、これらの者の意見も聴取した上で、一時保護の手続に関与する仕組みを設けることも検討すべきとの指摘もあった」とされているところであり、政府としては、こうした点を踏まえて、一時保護の手続等の在り方について引き続き検討してまいりたい。

四について

お尋ねについては、個別の事案に係るものであることから、お答えすることは差し控えたい。

五について

「脳神経外科医を自治体がセカンドオピニオンとして登録し、児相に照会する仕組みを構築してはどうか」とのお尋ねについては、令和二年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「児童相談所における虐待による乳幼児頭部外傷事案への対応に関する調査研究」において作成された報告書において、「セカンドオピニオンを求める先が少ない地域でもAHTの診断実績がある医師にアクセスできるよう、該当する全国の医師の情報を国がまとめ、全国の児童相談所に周知することが期待される」とされているところであり、政府としては、御指摘の脳神経外科医を含め、「AHTの診断実績がある医師」に係る情報の周知の在り方について、今後検討してまいりたい。

六について

御指摘の「日本小児神経外科学会において発表された六病院共同研究の調査結果」について、政府として詳細を把握していないため、お答えすることは困難である。

七について

お尋ねの手引きの改訂については、現時点で具体的な予定はないが、法制度の変更や知見の蓄積等児童虐待に関する動向を踏まえながら、その必要性について検討してまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×2承知していない ×1検討してまいりたい ×3個別の事案 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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