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岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問主意書
衆議院 第212回 第24号お答えすることは困難 ×4趣旨が明らかではない ×3
質問本文
一 内閣府が経済財政諮問会議に提出した資料によれば、令和元年度末には二・四兆円に過ぎなかった国の基金残高が、令和五年度末時点では十二・七兆円になるとのことである。
我が国は財政赤字であるから、これらの基金への拠出は国債を財源としていると考えられる。金利上昇が懸念される中で、基金への巨額の拠出は利払いを通じて国民負担を増加させることにつながる懸念はないのか、政府の見解を伺いたい。
二 一の内閣府資料によれば、令和五年度における基金からの支出はGDP比の一%強に相当する七・五兆円が見込まれるとのことである。この支出がデフレギャップ解消に寄与するとしても、急激に積み増した基金から非効率な支出がなされては意味がないと考える。
以上を踏まえ、残高が積み上がっている基金からの支出の効率化について政府の見解を伺いたい。
三 令和四年度予算においては、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費及びウクライナ情勢経済緊急対応予備費として合計十兆八千六百億円が計上されたが、三兆七千七百八十五億円の残額が生じた。
令和五年度予算においては、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費とウクライナ情勢経済緊急対応予備費の合計で五兆円が計上されているが、令和五年十月二十六日時点で使用実績はない。また、令和六年度予算概算要求においても、これらの予備費が事項要求されている。
「令和六年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(令和五年七月二十五日、閣議了解)では、これらの予備費について、「今後の状況を踏まえ、予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。」とされているところであり、どのような検討がなされているのかお示し願いたい。
四 岸田総理は、令和五年九月二十六日の閣議において「成長の成果である税収増を国民に適切に「還元」すべき」との考えを表明した。その後、同年十月二十四日の衆議院本会議において「過去二年のコロナ禍における税収の増収分の一部を分かりやすく国民に「還元」できれば」と答弁している。
これらに関連して、以下質問する。
1 岸田総理が発言した、これらのいわゆる「還元」とは、具体的に何をすることを指すのか。政府の見解を示されたい。
2 鈴木俊一財務大臣は、令和五年五月十九日の衆議院財務金融委員会において、特例公債の発行を最大限抑制した後に、見込み以上に税収が伸びて、結果として決算剰余金に反映された場合には、防衛力強化の財源として活用されることになる旨を述べている。また、政府は、決算剰余金の使途について、その二分の一を財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第六条に基づき公債の償還に充て、残りの二分の一を防衛力強化の財源に充てる方針としている。
他方で、令和五年十月二十四日の岸田総理の発言からは、税収の増収分の一部を国民に「還元」するものと受け取れる。
税収や特例公債の増減、歳出の不用の結果により決算剰余金の金額が確定されるが、その際には特例公債は可能な限り発行の抑制に努めることとされており、また、決算剰余金の使途の方針がある中で、「税収の増収分の一部を国民に「還元」する」ための財源をどのように確保することが適当と考えているのか、政府の見解を示されたい。
五 令和五年二月十日の衆議院内閣委員会において、金子俊平財務大臣政務官は消費税について「預り金的な性格でありまして、預かり税ではありません。」と答弁している。この答弁で言う「預り金的な性格」と「預かり税」はどのように違うのか。政府の見解を示されたい。
六 課税事業者が日本国内で仕入れた商品を全て輸出した場合、売上げに係る消費税が免除される一方、仕入れの際に支払った消費税が控除されるため、輸出免税還付金として全額還付される仕組みとなっている。
この還付金は、国税収納金整理資金から支払われるところ、政府は、輸出免税還付金の金額について、輸出を原因とした還付金を区分していないため金額を把握し公表することはできない旨の説明をしているが、還付金がいくら支払われているのか明らかにしないことは、納税者である国民に対する説明責任を果たしているとはいえない。
輸出免税還付金の金額及び還付金全体に占める割合について、区分する仕組みを導入し、数字を公表すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
七 現在の税法上、消費税の納付税額を計算する際、正社員をはじめとする直接雇用されている社員への給与支払いは仕入税額控除できないが、派遣労働者等の非正規雇用労働者の労働契約に基づく支払いは仕入税額控除できる仕組みとなっている。この仕組みにより、非正規労働者を雇えば雇うほど、その事業者が支払う消費税額が少なくて済むことになる。このような消費税の仕組みは、非正規労働者を増やすことに繋がり、雇用の不安定化を招くこととなる。
そのような弱い立場の人を余計に追い込む仕組みと言える消費税をもって、社会保障費を賄うことは不適切であると考えるが、政府の見解を示されたい。
八 藤井聡京都大学教授は、平成二十六年の消費税率八%への引上げから、令和元年の同税率十%への引上げまでの五年間で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」を基にしたサラリーマンの実質賃金は六%下落しており、消費増税と実質賃金の下落に因果関係が認められると指摘する。
消費税率の引上げは、実質賃金に負の影響を及ぼしていると考えられるが、この点について、政府の見解を伺いたい。
九 インボイス制度の導入による増収額について、政府は令和五年三月十日の衆議院財務金融委員会において「二千四百五十億円」との試算額を示している。これは免税事業者がインボイス発行事業者へと転換した場合の、課税事業者が増えることによる増収額を指すのか。指すとすれば、インボイス制度の導入は課税転換を強いられる免税事業者にとっては実質増税であると考えるが、政府の認識を示されたい。
十 令和五年五月十五日の衆議院決算行政監視委員会において、里見隆治経済産業大臣政務官は「消費税に限らず、コストが上昇する際に、交渉力の強い事業者と弱い事業者の間では、構造的にその上昇分を転嫁することが難しいという問題があるという認識に変わりはございません。」と答弁している。政府は過去の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成二十五年法律第四十一号。以下「価格転嫁特措法」という。)で私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)の規定を適用しないとする措置を施したが、現在、価格転嫁特措法は失効している状態である。
一方、政府は、新規課税事業者が団結して消費税の転嫁についてのカルテルを形成した場合について、「一般論として、事業者が共同して取引価格を引き上げるというようなことは、独占禁止法上の不当な取引制限として問題となる可能性がある」と答弁している。
アニメーター、フリーライター等の様々な業種の個人事業主は、個別に取引先と価格交渉しづらいため、団体、組合等を構築して連携せざるを得ず、これは価格転嫁特措法がないとカルテルに該当し独占禁止法違反になるおそれが生じると考えられる。独占禁止法の規定を適用しないとする措置を講じないままでのインボイス制度導入は、立場の弱い側に強い側への対抗措置を与えないこととなるため、政府は適切な措置を講じるべきと考えるが、政府の認識及び対応方針を伺いたい。
十一 令和四年度国際収支統計によれば、第一次所得収支は三十五兆六千二百七十六億円の黒字となっている。また、令和四年度末時点の我が国の対外純資産残高は四百十八兆六千二百八十五億円であり、主要国で最大の債権国である(財務省「令和四年末現在本邦対外資産負債残高の概要」)。そして、世界の外貨準備に占める米ドルの割合は低下傾向にあるが、我が国は引き続き米ドルを買い支えている状況である。
債権国であるということは、価格下落リスクや相手方の破綻リスクも負っていることになり、仮に米ドル価格が下落すれば、本邦が米ドル建てで保有する資産も大きく棄損することになる。つまり、我が国が米国の財政リスクをも負っているかのような状況にある。
このようなリスクを踏まえて財政運営を行う必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の「金利上昇が懸念される中で、基金への巨額の拠出は利払いを通じて国民負担を増加させることにつながる懸念」の意味するところが明らかではなく、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、基金については、それぞれの事業を基金方式により実施することの必要性について、個々の事業の性質に応じて適切に判断した上で、必要な予算を措置しているものであり、また、二についてで述べる取組により、その効果的かつ効率的な活用を図ることが重要であると考えている。
二について
御指摘の「急激に積み増した基金から非効率な支出がなされては意味がない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基金事業については、今後とも、行政事業レビューの枠組みの下で、基金シートの作成・公表等を通じ、各府省庁が執行状況等を継続的に把握し、厳格な点検に取り組むとともに、こうした各府省庁の取組について、行政改革推進会議において検証を行い、検証結果が予算編成過程で活用されるよう意見を提出するなどして、その効果的かつ効率的な執行の徹底や執行管理の一層の適正化に不断に取り組んでまいりたい。
三について
新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費及びウクライナ情勢経済緊急対応予備費については、令和六年度予算における計上の有無及びその額について、令和五年度における当該予備費の使用状況や経済社会情勢の変化を踏まえた検討を行っている。
四の1について
お尋ねの「還元」については、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和五年十一月二日閣議決定)における「令和六年分所得税及び令和六年度分個人住民税の減税を実施する」ことを指している。
四の2について
お尋ねの「「税収の増収分の一部を国民に「還元」する」ための財源」の在り方については、令和六年度予算の編成過程において検討していくこととしており、現時点でお答えすることは困難である。
五について
令和五年二月十日の衆議院内閣委員会におけるたがや亮委員の質問における「預かり税」については、納税義務者以外の者が国等に納付する仕組みを念頭に置いたものと考えられるが、消費税については、納税義務者である事業者が国等に納付する仕組みを採っており、価格への転嫁を通じて最終的には消費者が負担することを予定しているものであり、このような税の性格から、政府税制調査会が平成十二年七月に取りまとめた「わが国税制の現状と課題−二十一世紀に向けた国民の参加と選択−」において「消費税が預り金的な性格を持つ税である」とされている。
金子財務大臣政務官(当時)は、こうした点を踏まえ、同日の同委員会において「消費税は、消費税分が売上時に対価に含まれて、納税されるまでは事業者の下にとどまることから、預り金的性格を有するものである」と答弁するとともに、消費税は「預かり税」ではないという認識で問題ない旨を答弁したものである。
六について
お尋ねの「輸出免税還付金」の意味するところが必ずしも明らかではないが、消費税の還付税額のうち輸出を原因としたものを区分して、その金額及び還付税額全体に占める割合を示すことは、消費税の申告手続において、還付税額のうち輸出を原因としたものを内訳として記載する必要がある等、事業者に多大な事務負担を課すこととなるため、困難であると考えている。
七について
非正規労働者のうちパートタイム労働者のように直接雇用される者に対して支払う給与については、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)上、正社員に対して支払う給与と同様の取扱いとなり、また、非正規労働者のうち派遣労働者のように直接雇用されない者に関して支払う派遣料についても、平成二十五年三月六日の参議院本会議において、安倍内閣総理大臣(当時)が「派遣労働者の受入れ企業は、派遣料に係る消費税額を控除できることになりますが、一方で、人材派遣会社に対しては派遣料に上乗せして消費税を支払うことになるため、直接雇用の場合と比べて損得は生じないことになります。したがって、消費税が非正規雇用を拡大してきたということにはならないと考えております。」と答弁したとおりであって、消費税について、「非正規労働者を増やすことに繋がり、雇用の不安定化を招く」及び「弱い立場の人を余計に追い込む仕組みと言える」との御指摘は当たらないと考えている。
八について
厚生労働省が公表する毎月勤労統計調査における実質賃金は、名目賃金の額から物価の変動分を取り除いた値であり、名目賃金はパートタイム比率や景気動向など様々な経済社会状況の影響を受けること及び物価は消費税率の引上げだけではなく価格設定に係る企業行動や輸入物価の動向など様々な経済社会状況の影響を受けることから、消費税率の引上げが「実質賃金に負の影響を及ぼしている」かとのお尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
九について
御指摘の「二千四百五十億円」については、令和五年三月十日の衆議院財務金融委員会において、住澤財務省主税局長(当時)が「そのままインボイス制度導入に伴う増収額を示すものではなく、この試算については、あくまで、BトゥーB取引を行う全ての免税事業者が課税転換をするという仮定に基づく数字でございます。」と答弁したとおりである。
また、「インボイス制度の導入は課税転換を強いられる免税事業者にとっては実質増税である」との御指摘については、同年六月十二日の衆議院決算行政監視委員会において、岸田内閣総理大臣が「インボイス制度は、あくまでも複数税率の下で適正な課税を確保するために導入するものであります。これは税率の引上げのような増税には当たらないと考えております。」と答弁したとおりである。
十について
お尋ねについては、政府としては、これまでも、例えば、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和四年一月十九日財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省公表)を作成するとともに、その「Q七 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。」において示された行為等、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)、下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)等に違反する事案が認められた場合には、これらの法律等に基づき厳正に対処することとしているところであり、引き続き、事業者の方々が不当な取扱いを受けないよう、取引環境の整備に万全の対応を図ってまいりたい。
十一について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「リスク」については、金融・為替市場に不測の影響を与えるおそれがあるため、政府としてお答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、政府としては、米国を含む世界経済の動向も注視しながら、適切な財政運営を行うことが重要と考えている。
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