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ロシアによるサイバー空間での選挙介入に関する質問主意書

衆議院 第219回 第133号

提出者
立憲民主党・無所属
提出日
2025年12月10日
内閣転送 2025年12月15日
答弁書受領日
2025年12月19日
提出から9日
答弁の項目数
2
質問 2,412字/答弁 736字

質問本文

ロシア語で土地改良・開拓に従事する人を意味する「мелиоратор(Meliorator)」という語を名称に持つソフトウェアが、いまロシアによる対外情報工作の基盤として使われていると指摘されている。

この Meliorator は、AI やアルゴリズムを用いて、プロフィール写真・略歴・位置情報・政治的関心などを備えた「本物らしく見える架空の人物(ペルソナ)」を自動生成し、それらのアカウントに X(旧 Twitter)上で投稿や「いいね」「リポスト」などの行動を自動的に行わせる、AI を組み込んだボット農場生成・管理ソフトウェアとされる。

さらに、その運用にあたっては、いわば司令塔となる管理用パネルとしてのソフトウェア「Brigadir」と、ボットの行動シナリオを制御しコンテンツを実際に投入(シーディング)していくバックエンド・ツール「Taras」が用いられているとされる。Brigadir は、各ボットの「人格(souls)」や行動パターン(thoughts)を設定・管理するための管理画面であり、Taras は、それに基づいてボットに投稿・リポスト等を実行させる自動化エンジンの役割を果たしていると報告されている。

米FBI・米サイバー軍の一部である Cyber National Mission Force、オランダの情報・治安機関、カナダのサイバーセンターなどが共同で公表した「State-Sponsored Russian Media Leverages Meliorator Software for Foreign Malign Influence Activity」(二〇二四年七月九日)というサイバー・アドバイザリは、Meliorator を「AI を活用したボット農場の生成・管理ソフトウェア」と位置付け、米国、ポーランド、ドイツ、オランダ、スペイン、ウクライナ、イスラエルなど複数の国を対象としたプロ・クレムリン的な偽情報の拡散に用いられていたと指摘している。

またカナダのサイバーセンターも、Meliorator によって「本物らしく見える架空の人物(fictitious personas)が作成され、管理用パネル ��Brigadir�=A拡散用ツール��Taras�≠�通じて偽情報が投稿された」と明言している。

一 こうした生成 AI を組み込んだソフトウェアによって、ロシアは他国の選挙や政治プロセスに介入し、世論を誘導しているとの指摘が、各国政府や専門機関の公式文書や分析レポートで相次いでいるが、まず政府として、この Meliorator/Brigadir/Taras を中核とするロシアのインフルエンス・オペレーションについて、どの程度把握し、認知しているのか、事実関係を含めて説明されたい。

二 また、こうしたソフトウェアを用いて他国の選挙に介入する典型的な手法としては、先に述べたような架空の市民アカウントを AI で大量に生成し、選挙や政治争点に絡めた情報発信を行わせることが挙げられる。具体的には、移民・治安・経済不安など、選挙で争点化しやすいテーマに結び付けながら、「政府の腐敗」「政治家への不信」「対外支援への反発」といったメッセージを繰り返し拡散し、あたかも「普通の有権者」の声であるかのように見せかける。

さらに、偽アカウント同士でリプライやリポストを繰り返し合うことで相互に信頼性を補強し、他の本物のアカウントの投稿に執拗に絡んでいくことで、タイムライン全体をノイズで埋め、健全な議論空間を汚染することが常套手段とされている。

こうした攻撃に対し、各国もすでに様々な対策を取り始めているとされる。研究者の分析によれば、例えばエストニアは社会全体のレジリエンス、すなわち心理防衛やメディア・デジタルリテラシーの強化を重視したモデルを採り、ルーマニアはナラティブ構築や市民教育を重視するモデルをとり、ウクライナは国家レベルのサイバー防衛と、市民ボランティアやITコミュニティとの協働を組み合わせるなど、それぞれの文脈に応じた対応を進めているとされる。

これに対して、日本では、こうした外国によるボット農場型の情報操作・選挙介入に対して、政府としてどのような対策を講じているのか。専用の監視・分析機能や制度整備を含め、すでに何らかの体制を構築しているのか、それとも実質的にはほとんど対策がとられていないのか、現状と課題を具体的に示されたい。

三 さらに、EUでは DSA(Digital Services Act)や AI Act によって、プラットフォームに対するアルゴリズムや広告の透明性確保の義務付けや、高リスク AI システムに対する規制に加え、ディープフェイクなどの AI 生成・改変コンテンツについて、その旨を明示する表示義務が導入されようとしている。サイバー空間における偽情報やインフルエンス・オペレーションに国家としてどう向き合うのかが、いま世界的な課題となっている。

フランスでは、外国勢力によるデジタルな干渉を監視・分析する専門機関として VIGINUM が設置されており、これと並行して、児童・若年層に対するデジタルリテラシー教育を含む広範な教育政策も進められていると承知している。

日本では、デジタル庁をはじめ政府内に、VIGINUM のように外国勢力によるインフルエンス・オペレーションを専門的かつ継続的に監視・評価する明確な組織や機能が存在すると言えるのか。存在しない、または極めて不十分であるとすれば、今後、どの省庁の責任の下で、どのような体制・法制度・人材育成を進めていく考えなのか。EU の DSA・AI Act やフランスの VIGINUM 等の先行事例も踏まえつつ、日本としての戦略とロードマップを示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

お尋ねについてお答えすることは、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、差し控えたい。

二及び三について

お尋ねの「対策」、「現状と課題」及び「戦略」については、御指摘の「ボット農場型の情報操作・選挙介入」及び「インフルエンス・オペレーション」を含む外国による影響工作に係る対策等に関して、令和七年十一月二十日の参議院内閣委員会において、木原内閣官房長官が「偽情報の拡散を含むその外国による影響工作、これは様々な国で発生していると認識をしております。一般論として、これはもう我が国にとっても安全保障上の脅威であって、特に選挙の公正や自由な報道、そういった民主主義の根幹を脅かすもの、その対策は急務であるというふうに考えています。こうした認識で、政府においては、本年の九月に、内閣官房副長官の調整の下で、内閣情報調査室、国家安全保障局、内閣広報室、内閣官房副長官補室、総務省、国家サイバー統括室を始めとする関係省庁で構成される連携体制を構築したところです。この新しい体制の下で、外国による偽情報等に対しては、情報収集、分析力の充実、情報流通プラットフォーム対処法の運用の徹底、そして正確な情報発信の強化、さらに各種リテラシー施策の向上等の対策に政府一体で取り組んでいる」と答弁しているとおりであり、このような体制の下、引き続き、これらの対策を進めていくことが重要であると考えている。お尋ねの「ロードマップ」については、これを策定することは、現時点で特段検討していない。

お尋ねの「組織や機能が存在すると言えるのか」については、これを明らかにすることにより、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

衆議院の原文

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