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電気事業法改正案の融資制度に関する質問主意書
衆議院 第221回 第18号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×9
質問本文
現在、国会に上程されている電気事業法改正案においては、事業者が送電網および大型電源に投資する際に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が融資を可能とすること、その資金の一部として国がOCCTOに対し補助を行うことが記載されている。本制度の内容を確認すべく、以下質問する。
一 改正案第二十八条の五十六の二は政府は、予算の範囲内において、推進機関に対し、広域系統整備交付金交付等業務並びに第二十八条の四十第一項第九号及び第十号に掲げる業務の財源に充てるために必要な金額の全部または一部を補助することができるものとするとある。また、第二十八条の四十第一項第九号は、基幹送変電設備整備等計画に基づく基幹送変電設備の整備・更新、第十号は、認定発電等用電気工作物整備等計画に基づく発電等用電気工作物の整備又は更新とある。この「補助」の財源について、第九号および第十号、それぞれについて説明されたい。
二 改正案第九十九条の八において、短期卸電力取引所は域間売買取引の決済に係る収入からその決済に要する費用を控除した金額、すなわち値差収益を、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に納付する、とある。
1 短期卸電力取引所において発生する値差収益の負担は電気料金に転嫁され、電力消費者が負担していると理解してよいか。
2 過去発生した値差収益はいくらだったか。年度別に示されたい。
3 従来、この値差収益は広域系統およびそれに付随する地域内連系の整備に用いられていたという理解に相違ないか。
4 本改正後、値差収益は電源開発促進勘定に納付されたうえで、原則、広域系統およびそれに付随する地域内連系の整備のみに使われるという理解に相違ないか。
5 値差収益は、法律上は電源整備にも充てられることとなっているが、それは当面は行わないということか。電源整備にも充てられることがあるとすれば、どのような場合か。
6 値差収益は地域間送電線における電力取引から生じるものであり、その性質上、広域系統整備の財源として用いることが本来の趣旨と考えられる。電源整備への転用を認めることについて、どのような政策的根拠があるか。また、電源整備への充当額に上限は設けるのか。
7 今回、値差収益を国庫納付することとした理由はなにか。
三 「法律案概要」資料で、OCCTOの行う大規模電源への貸付の原資として「財政投融資等」とある。一般に財政投融資は国からの貸付であって、貸付をうけた財投機関が一定の利率を上乗せしたうえで事業者に貸し付けを行う。また、電気事業法改正案を取りまとめた審議会の議論では、従来、金融機関では融資が困難であった回収期間十年以上の案件に対して融資を行うとしている。
1 今回の改正案における大規模電源への貸付スキームを説明されたい。
2 改正案第二十八条の五十の二および四において、経済産業大臣は貸付けの内容を決定するに当たってOCCTOが従うべき基準を策定するとある。経済産業省は融資案件の審査基準をどのように策定するのか。
3 従来、融資対象は総括原価方式により回収が確実であった連系線事業のみであったOCCTOに、金融機関が融資できない高リスク案件の審査能力はあるのか。
4 財投機関である国際協力銀行や日本貿易保険、国際協力機構等は環境社会配慮ガイドラインを制定し、環境・社会面に配慮した案件の実施に取り組んでいる。同様に環境に大きな影響を与えうる大規模電源などに融資を行うことになるOCCTOにも制定させるべきではないか。
5 財投機関となったOCCTOには、融資案件についての情報公開および国民への説明をこれまで以上に徹底するべきではないか。
四 電力自由化によって、発電事業者は競争環境に置かれている。今回の法改正では、値差収益、または財政投融資によって、一部の大規模投資を行うことができる大規模事業者、主に旧一般電気事業者を支援することになる。
1 大規模電源への公的融資制度の創設にあたり、大規模電源が小規模・分散型電源と比較してコスト面・需給安定面で優位であることを示す政府の分析・試算はあるか。ない場合、コスト優位性の実証なしになぜ大規模電源を支援対象として選定したのか、その根拠を示されたい。
*国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が、再エネ+蓄電システムのコスト優位性を示す報告を二〇二六年五月に出している。
2 コスト優位性の実証がない場合、安定供給上の必要性を根拠とするのであれば、同等の安定供給貢献が可能な小規模・分散型電源との比較評価を行ったか。その評価結果を示されたい。
3 融資対象を一定規模以上の電源に限定することの根拠は何か。資金調達困難という課題は規模にかかわらず存在しうる。出力規模による区切りは、実質的に大規模電源に投資可能な旧一般電気事業者等を優遇する結果となるが、これは電力自由化の趣旨である内外無差別・競争中立の原則と整合するか。
五 電気事業法改正案を取りまとめた審議会の議論では、融資案件が破綻した場合のラストリゾートとして、送配電事業者に拠出金を求めることとされている。
1 託送料金に当該拠出金を上乗せすることを想定しているのか。
2 償還確実性が担保されているなら民間融資が可能なはずであり、そもそも公的融資が不要となる。逆に、ラストリゾートが必要なほどリスクが高いなら、なぜ公的資金を投入するのか。
3 電力自由化においては、託送事業は公益性の観点から地域独占を継続させることとした一方、発電事業は競争環境とした。ラストリゾートとして送配電事業者の拠出金負担を想定するということは、発電事業が破綻した場合のリスクを電力消費者に負担を負わせることになる。すなわち、当該発電事業者の事業リスクを国民が肩代わりすることにほかならない。自由化された電力市場において、事業リスクを国民転嫁できる事業者とできない事業者が存在することになる。一方事業者を不当に優遇する措置となるのではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
今国会に提出している電気事業法の一部を改正する法律案(以下「本法律案」という。)による改正後の特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号。以下「新特会法」という。)において、お尋ねの「補助」は、エネルギー対策特別会計の電源利用対策に位置付けられており、電源開発促進勘定の歳出として経理されるため、新特会法第八十八条第二項第一号に規定する同勘定の歳入がその財源である。
二の1について
お尋ねの「値差収益の負担」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本法律案による改正後の電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号。以下「新電気事業法」という。)第九十七条第一項に規定する短期卸電力取引所の「値差収益」については、新電気事業法第九十八条第一項第一号に規定する翌日市場における地域間の電力の売買取引において構造的に発生するものである。
二の2について
強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(令和二年法律第四十九号)の施行後の卸電力取引所(電気事業法第九十七条第一項に規定する卸電力取引所をいう。以下同じ。)の令和三年度から令和七年度までの各年度における「値差収益」について、それぞれ次のとおりである。
令和三年度 約四百十七億円
令和四年度 約八百十三億円
令和五年度 約四百五十億円
令和六年度 約四百九十二億円
令和七年度 約五百五十一億円
二の3について
現行の電気事業法第九十九条の八において、卸電力取引所は、広域的運営推進機関(以下「推進機関」という。)が行う同法第二十八条の四十第一項第五号の四に規定する広域系統整備交付金交付等業務に要する費用に充てるため、推進機関に対し、「値差収益」を納付するものとしている。
二の4及び5について
卸電力取引所の「値差収益」は、新電気事業法第九十九条の八の規定に基づき、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に納付され、当該納付金は、同勘定の歳入として経理される。同勘定の歳出については、新特会法第八十八条第二項第二号に規定するとおりである。
二の6及び7について
お尋ねの「電源整備への転用」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本法律案において「値差収益を国庫納付することとした理由」については、電線路等の広域的な整備又は更新のみならず、電気事業の事業環境の変化に伴う様々な課題への対応策を講ずる必要があり、こうした対応策の優先度や重要性も変化することから、「値差収益」を、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に納付することとするものである。
また、お尋ねの「電源整備への充当額」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「値差収益」の国庫納付及び当該国庫納付金の使途については、二の4及び5についてで述べたとおりである。
三の1について
お尋ねの「大規模電源への貸付スキーム」の意味するところが必ずしも明らかではないが、推進機関は、新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる業務として、認定大規模発電事業者(新電気事業法第二十七条の二十九の八第一項に規定する認定大規模発電事業者をいう。以下同じ。)に対し、認定発電等用電気工作物整備等計画(同条第二項に規定する認定発電等用電気工作物整備等計画をいう。以下同じ。)に基づく発電等用電気工作物(電気事業法第二条第一項第五号ロに規定する発電等用電気工作物をいう。以下同じ。)の整備又は更新に必要な資金を貸し付ける業務を行うこととしている。なお、推進機関が新電気事業法第二十八条の四十第一項第五号の三、第九号及び第十号に掲げる業務に必要な資金に充てるため、令和八年度の財政投融資計画において推進機関に対する財政融資を措置している。
三の2について
お尋ねの「融資案件の審査基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、経済産業大臣は、新電気事業法第二十八条の五十の二第一項(新電気事業法第二十八条の五十の四において準用する場合を含む。)の規定に基づき、新電気事業法第二十八条の四十第一項第九号又は第十号の規定による貸付けの内容を決定するに当たって推進機関が従うべき基準を定めるものとしており、また、新電気事業法第二十八条の五十の二第二項(新電気事業法第二十八条の五十の四において準用する場合を含む。)の規定に基づき、当該基準を定めるときは、あらかじめ、財務大臣の意見を聴くものとするとともに、当該基準を変更するときも、同様としている。
三の3について
新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる業務として推進機関が行う貸付けについては、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループが令和八年三月二十三日に取りまとめた「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ とりまとめ」(以下「ワーキンググループとりまとめ」という。)において、「融資の実行に際しては、複数の民間金融機関からの融資があることを前提」とする方針をお示ししており、御指摘のような「金融機関が融資できない」案件については、貸付けを行わないことを想定している。その上で、「審査能力」の確保が適切に図られるよう推進機関を監督してまいりたい。
三の4及び5について
お尋ねの「環境に大きな影響を与えうる大規模電源」の意味するところが必ずしも明らかではないが、推進機関の業務については、推進機関の業務規程の認可等を通じて適切に監督していく。
四の1、2及び3について
お尋ねの「大規模電源」、「小規模・分散型電源」、「同等の安定供給貢献が可能な」及び「電力自由化の趣旨である内外無差別・競争中立の原則」の意味するところが必ずしも明らかではないが、ワーキンググループとりまとめにおいては、「今後増加が見込まれる電力需要に対応し、十分な供給力を必要なタイミングまでに確保していくためには、短期間に集中して、大規模な投資が行われる必要」がある中で、「新たな融資制度は、長期・大規模な電源、系統投資の資金調達時の課題に対応するためのものであり、融資の対象については、電源・系統の規模や投資期間の観点から、一定の条件を付すことが必要」、「電源については、安定供給の確保という観点からは・・・一定の出力規模以上の設備への投資を制度の対象にすることを基本とする」こととされている。こうした観点から、推進機関は、新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる業務として、認定大規模発電事業者に対し、認定発電等用電気工作物整備等計画に基づく発電等用電気工作物の整備又は更新に必要な資金を貸し付けることとしている。新電気事業法第二十七条の二十九の七第一項に規定する「発電等用電気工作物であつてその出力(二以上の発電等用電気工作物にあつては、その出力の合計)が経済産業省令で定める出力以上のもの」に該当する発電等用電気工作物と、それ以外の発電等用電気工作物のいずれが「コスト面・需給安定面で優位である」かについては、事例によって大きく異なってくることから、一概にお答えすることは困難である。また、「電力システムに関する改革方針」(平成二十五年四月二日閣議決定)においては、電力システムの改革は「安定供給を確保する」、「電気料金を最大限抑制する」及び「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する」の「3つの目的からなる」こととされており、推進機関が行う新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる業務は、電力システム改革の目的と整合しない措置であるとは考えていない。
五の1について
お尋ねの「託送料金に当該拠出金を上乗せする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、ワーキンググループとりまとめにおいては、「財政融資を活用した資金調達手段を検討する」に当たり、「調達した資金の償還を確実に進めていけるようにすることが必要」となることから、「融資の実行に際しては、複数の民間金融機関からの融資があることを前提とし」、「融資先からの返済を一定程度確実なものとするため、電源については・・・投資回収の予見性が担保されている案件を対象とする」ことに加え、基本的には「融資先から、一定のリスクプレミアムを徴収し、リスクへの備えとする」こととしており、新電気事業法第二十八条の五十の四において準用する新電気事業法第二十八条の五十の二第一項に規定する基準等においてこうした償還確実性を確保するよう、今後検討していく。
また、同じくワーキンググループとりまとめにおいては、「電力広域的運営推進機関が行う電源入札の仕組みを参考に、万一の場合に備え、安定供給のラストリゾートとしての役割を有する一般送配電事業者から拠出金等を回収する枠組を設ける、といった対応を行う」こととしており、当該枠組みの詳細についても、今後検討していく。
五の2について
新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる推進機関の貸付け業務は、ワーキンググループとりまとめにおいて、「融資の実行に際しては、複数の民間金融機関からの融資があることを前提とし」、「民間金融で賄いきれない、長期かつ大規模な投資資金を補完し、電気事業者が必要なタイミングまでに必要な投資を行えるようにする」、「投資回収の予見性が担保されている案件を対象とするよう要件を設定する」ものとされており、御指摘のように「ラストリゾートが必要なほどリスクが高い」案件に対し「公的資金を投入する」ものとは考えていない。
五の3について
お尋ねの「一方事業者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新電気事業法第二十八条の四十第一項第十号に掲げる業務として推進機関が行う貸付けについては、償還確実性を確保するための要件を今後検討していく方針であり、「当該発電事業者の事業リスクを国民が肩代わりすることにほかならない」との御指摘は当たらないと考えている。なお、ワーキンググループとりまとめにおいてお示ししているとおり、当該貸付けによって「民間金融を補完し、必要な長期・大規模な電力分野の投資を後押し」することで、必要な供給力を確保し、電気の使用者の利益の保護に資すると考えている。
また、新電気事業法第二十七条の二十九の七第一項に規定する大規模発電事業者であれば、同項に規定する発電等用電気工作物整備等計画を経済産業大臣に提出し、その発電等用電気工作物整備等計画が同条第三項各号のいずれにも適合するものである場合には、同条第一項の認定を受けることができることから、当該貸付けが特定の事業者を「不当に優遇する措置」であるとの御指摘は当たらない。