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ギャンブルの日常化の防止等に関する質問主意書
衆議院 第221回 第38号趣旨が明らかではない ×4
質問本文
近年、我が国を含む世界各国において、ギャンブルは、デジタル技術とモバイル技術を駆使し、また、プロファイリングに基づくマーケティングを通じて、従来とは比べものにならないほどアクセスしやすくなっており、これに伴い、ギャンブル依存症及びこれに伴う多額の借金、失業、犯罪、家庭内暴力、精神疾患、自殺等の問題が急速に拡大・深刻化している。
WHO等の国際機関は、ギャンブルを公衆衛生上の課題と位置付け、合法・違法の別を問わず、商業化・デジタル化の進展により、広告、スポンサーシップ、製品設計等を通じてギャンブルの日常化が進み、健康被害や社会的被害が拡大すると認識している。そのため、子ども・若者や社会的・経済的に脆弱な人々を含む人口全体を対象として、広告規制やアクセス制限、製品安全規制等により、日常生活におけるギャンブルへの曝露を減らす公衆衛生アプローチを推奨している。
具体的には、ギャンブル産業が人気スポーツを協賛したり、社会的な交流の場にギャンブルを持ち込んだりすることをギャンブルの日常化として問題視し、スポーツや文化活動におけるギャンブルの宣伝、プロモーション、協賛等をやめさせるべきとしている(二〇二四年十二月WHO提言、同年十一月ランセット公衆衛生委員会提言)。
ヨーロッパにおいては、二〇一八年のイタリアにおけるギャンブル広告の禁止(テレビ・ラジオ・ネット・SNS等幅広いメディアについて)を皮切りに、イギリス、ベルギー、オランダ、アイルランド等でもギャンブル広告規制が強化され、オーストラリアにおいても、現在、子どもたちをギャンブルから守るためとして政府が提出したギャンブル広告規制に関する法案(�@子どもの活動時間帯のテレビ広告等の制限�Aオンライン広告の制限�B広告でのスポーツ選手や著名人の起用禁止等)が国会で審議中である。
翻って、我が国の状況を見ると、人気俳優を起用した公営競技のCMが子ども達の活動時間帯のテレビや電車広告で流され、また、公営競技施設で子ども向けの遊具やイベントを設け、子ども連れの来場を促すなど、国際的な潮流に反すると思われるプロモーションが行われている。
このような状況を踏まえ、以下質問する。
一 日本中央競馬会の二〇二六事業年度事業計画書では、「競馬への参加促進及び販売促進」として、「テレビCM等の広告や、SNSを中心としたWEBプロモーションを通じて、これまで競馬に触れたことのない方にも競馬の楽しみ方やスポーツエンターテインメントとしての競馬の魅力をお伝えするプロモーションを展開します。」「ご家族連れのお客様にもお楽しみいただけるよう、お子様向け施策の充実など環境の整備に取り組みます。」とあるが、このような事業計画を国として認可することに問題はないのか。
前述のWHO等の提言その他のギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流に沿うよう、事業計画の変更を求めるとともに、広告やプロモーションの在り方について指導監督を行うべきではないか。
二 「競輪第3次中期基本方針」(令和八年度〜令和十二年度)についての経済産業省の産業構造審議会 製造産業分科会 車両競技小委員会における検討の中で、「顧客の増加・エンゲージメント強化」の取組事例として、防府競輪場の子ども向け遊具設置の例が取り上げられ、このような取組を推進することが示唆されている。また、高松競輪場では、多額の予算を投じて、競輪を模した遊具やオブジェを配置した子ども用の遊び場を設けており、子どもの頃から競輪に親しませることを企図した施設の在り方が市民によって問題視され、訴訟事件にも発展している。
ギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流に反するこのような施行者の取組は問題ではないか。また経済産業省は監督官庁としてこれらを是正するための指導監督を行うべきではないか。
三 競艇についても、一般社団法人全国モーターボート競走施行者協議会が策定する事業計画等において「本場活性化事業」として新規顧客の獲得のためのプロモーションを行うことが定められ、その一環であるファミリー向け企画として、全国各地のボートレース場内にレースを想起させる遊具などが設置された親子の遊び場(BOAT KIDS PARK Mooovi)が設けられている。
このような施行者の取組はギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流に反すると考えるが、問題はないのか。国土交通省においては監督官庁として指導監督を行うべきではないか。
四 政府は、前述のWHO等の提言その他のギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流を踏まえ、公営競技を中心に、広告、プロモーション等を通じたギャンブルの日常化の状況を把握するための調査を行うべきではないか。
五 政府は、我が国におけるギャンブル依存症の被害の拡大及び深刻化並びにギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流、特に各国の動向を踏まえ、速やかに、ギャンブル広告の規制について検討し、実行に移すべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
前段のお尋ねについては、日本中央競馬会は、日本中央競馬会法(昭和二十九年法律第二百五号)第一条において、「競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与する」とされていることを踏まえ、御指摘の「二〇二六事業年度事業計画」において「馬文化を育んでいきます」としていることから、御指摘の「ご家族連れのお客様」等への「競馬への参加促進及び販売促進」を行っているところであり、また、「競馬法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和四年十一月二日衆議院農林水産委員会)の五において「家族連れで入場しやすい親しみのある競馬場づくり、ファンサービスの向上、競馬場周辺の観光との連携等来場促進の取組がなされるよう指導すること」とされていること及び「競馬法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和四年十一月十日参議院農林水産委員会)の五において「家族連れで入場しやすい親しみのある競馬場づくり、ファンサービスの向上、競馬場周辺の観光との連携等来場促進の取組がなされるよう指導すること」とされていることを踏まえ、同事業計画の認可は問題ないと考えている。
中段のお尋ねについては、御指摘の「WHO等の提言その他のギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、同事業計画では、ギャンブル等依存症対策として、「お客様への注意喚起・知識の普及啓発」、「お客様からの相談対応体制の整備」、「競馬場・ウインズ等への入場制限」、「電話・インターネット投票の利用停止や購入上限額の設定」等を実施することとしており、同事業計画の変更は不要であると考えている。
後段のお尋ねについては、ギャンブル等依存症対策基本法(平成三十年法律第七十四号。以下「基本法」という。)第十五条において、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとされているところ、政府としては、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」(令和七年三月二十一日閣議決定。以下「基本計画」という。)を策定し、これに基づき、日本中央競馬会に対し、「児童向けのテレビ番組・ラジオ番組・雑誌等における広告・宣伝を行わない」こと、「屋外広告」について「空間を過度に占拠しないこと」、「交通広告」について「車内、駅構内等の空間を過度に占拠しないこと」等の配慮を行うことを定めた「公営競技広告・宣伝指針」(令和四年三月全国公営競技施行者連絡協議会策定、令和八年一月改訂。以下「連絡協議会指針」という。)を踏まえて日本中央競馬会が策定した「日本中央競馬会広告・宣伝指針」(令和四年七月日本中央競馬会策定、令和八年二月改訂)を適切に運用することを促しており、引き続き同指針を適切に運用することを日本中央競馬会に促してまいりたい。
二について
御指摘の「ギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「子ども向け遊具」や「競輪を模した遊具やオブジェを配置した子ども用の遊び場」は、地域の交流の場として設けられていると承知しており、「このような施行者の取組」が問題であるとは考えていない。なお、御指摘の「訴訟事件」については、令和七年十二月十日高松高等裁判所判決において棄却されたという趣旨の報道があることは承知している。
いずれにせよ、基本法第十五条において、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとされているところ、政府としては、基本計画を策定し、これに基づき、競輪関係団体等の公営競技の主催者等に対し、「児童向けのテレビ番組・ラジオ番組・雑誌等における広告・宣伝を行わない」こと、「屋外広告」について「空間を過度に占拠しないこと」、「交通広告」について「車内、駅構内等の空間を過度に占拠しないこと」等の配慮を行うことを定めた連絡協議会指針を踏まえて競輪ギャンブル依存症対策推進会議が策定した「競輪広告・宣伝指針」(令和四年十二月競輪ギャンブル依存症対策推進会議策定、令和八年一月改訂)を適切に運用することを促しており、引き続き同指針を適切に運用することを当該主催者等に促してまいりたい。
三について
御指摘の「ギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「親子の遊び場(BOAT KIDS PARK Mooovi)」は、地域の交流の場として「設けられている」と承知しており、「このような施行者の取組」が問題であるとは考えていない。
いずれにせよ、基本法第十五条において、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとされているところ、政府としては、基本計画を策定し、これに基づき、モーターボート競走関係団体等の公営競技の主催者等に対し、「児童向けのテレビ番組・ラジオ番組・雑誌等における広告・宣伝を行わない」こと、「屋外広告」について「空間を過度に占拠しないこと」、「交通広告」について「車内、駅構内等の空間を過度に占拠しないこと」等の配慮を行うことを定めた連絡協議会指針を踏まえてボートレース会議が策定した「ボートレース広告・宣伝指針」(令和四年三月ボートレース会議策定、令和八年一月改訂)を適切に運用することを促しており、引き続き同指針を適切に運用することを当該主催者等に促してまいりたい。
四について
お尋ねの「広告、プロモーション等を通じたギャンブルの日常化の状況を把握するための調査」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和八年度に、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターにおいて、厚生労働省の補助事業である「依存症に関する調査研究事業」により、「ギャンブル」に関する広告に暴露された量と「ギャンブル」に関する行動との関連に関する調査を実施する予定である。
五について
政府としては、有識者等から過度なギャンブル等の広告及び宣伝がギャンブル等依存症を誘発しかねないとの指摘があることは承知しているところ、基本法第十五条において、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとすると規定されていることを踏まえ、これまでも、基本計画に基づき、監督官庁の指導の下、一義的には各公営競技の主催者等が、連絡協議会指針を踏まえて各事業者等が自主的に策定した広告及び宣伝に係る指針に基づき、利用者がギャンブルへより多額の金銭を消費しないよう運用を行ってきたところである。御懸念の「ギャンブル依存症及びこれに伴う多額の借金、失業、犯罪、家庭内暴力、精神疾患、自殺等の問題が急速に拡大・深刻化」といった事態が生ずることがないよう、四についてで述べた調査の結果も踏まえ、引き続き、基本計画に基づき、関係省庁が連携して、これらの広告及び宣伝に関する取組を着実に実行してまいりたい。