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政府の請願尊重に関する質問主意書

衆議院 第31回 第1号

提出者
衆議院
提出日
1958年12月16日
内閣転送 1958年12月20日
答弁書受領日
1958年12月26日
提出から10日
答弁の項目数
0
質問 1,438字/答弁 1,610字

質問本文

衆議院議長 加※(注)鐐五※(注) 殿

政府の請願尊重に関する質問主意書

検察庁は、告訴事件に対してはなはだ誠意に乏しく、ろくに取調べもせずに不起訴処分に付していることをしばしば耳にしている。岐阜県養老郡一之瀬村首※(注)雄平氏が、シグマ商事株式会社元社長深瀬一之、同社元取締役井上信、同社元仕入課長長井雄の三氏を業務上横領、特別背任罪として告訴した事件に対して、東京地方検察庁小松不二雄検事はなんの取調べもせず、首※(注)氏の同社への債権を被告訴人に弁償させるからという理由で告訴の取下げを懇請した。首※(注)氏は小松検事の懇請を受入れて取り下げたが、同検事は、少しも約束を守らず、それきりにしているとのことである。

首※(注)雄平氏は、この検察庁の背信と、でたらめとに憤慨し、第二十六回国会、衆議院議長宛に、前記の事件を例として「不起訴処分に関する請願」を提出した。しかるに、昭和三十二年五月十八日、衆議院法務委員会において法務省松※(注)勇雄政務次官は「被告訴人その他関係者を数回にわたつて取調べた結果、犯罪を構成するにたる証拠がないので不起訴処分にした。」と答弁し、また法務省の請願処理経過報告には「検察官が十分な捜査をとげ、それによつて収集した証拠に基き、適正に不起訴処分とした。」と説明し、本件を例として検察行政刷新要求の理由なきことを述べている。

しかし、本件の被告訴人の一人である深瀬一之氏の言によれば、法務省の答弁や説明は、事実とまつたく相反している。しかし元来、国民の請願権は基本的な民主的権利であり、さらに憲法や法律で強く保障されている。ことに国会における請願はこの基本的のものであるから、当局は誠実をもつて処理する義務があると確信する。もし深瀬一之氏の言のごとく法務省が事実を曲げて説明し、あるいは虚偽の報告をしたのであれば、これは裁判における偽証に該当するばかりでなく、国会を侮辱し、民主主義をじゆうりんするものである。また法務省の説明や報告が正しいものであれば、具体的事実に基き、深瀬氏の言に対する反証をあげ、国民の請願権を尊重していることの証拠だてをすべきものであると思う。以上の事実と理由に基き、次の点について政府の見解を伺いたい。

一 東京地方検察庁の小松不二雄検事が、被告訴人その他関係者を数回にわたつて取調べたうんぬんという法務政務次官松※(注)勇雄氏の答弁は、被告訴人の一人たる深瀬一之氏の「被告訴人に対する特別背任、業務上横領に関する告訴事件について検事の取調べはもちろん、呼出しについても一回も受けたことはない。」という言に照らすとき、深瀬氏を一回も呼び出さず、一回も取調べなかつたのが事実であるから、虚偽の内容の答弁をしたことになる。これは国会を軽視し、かつ侮辱したことになると思われるが、どうか。

二 国会における請願は尊重されなければならない。従つて請願に対する政府の答弁及び報告は、親切かつ正確でなければならないと思うが、本件に関する法務当局及び松※(注)勇雄法務政務次官の答弁及び報告は、本件の担当検事より報告を求め、それに基いてなされた答弁であつたかどうか。

三 松※(注)勇雄法務政務次官の答弁が事実に反し、虚偽であることが明らかとなつた場合、これに対する政府の処置はどうか。

四 もし被告訴人深瀬一之氏の言が事実と相反しているとすれば、その反証をあげて示されたい。

反証の挙示が不可能であればその理由。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

標記の件は、深瀬一之氏外二名に係る特別背任事件の不起訴処分についての首※(注)雄平氏の請願に関するものである。

右請願の要旨は、請願者は昭和三十年六月特別背任等で深瀬一之外二名を警視庁に告訴し、東京地検において取り調べたが、検事の懇請に応じて請願者は告訴を取り下げ、該告訴事件は不起訴処分になつた。右の処分は不当であり、今日の検事の自由裁量権限は余りにも大きいから、本件告訴事件等を参考資料として検察制度を改善されたいというにあつた。

これに対し昭和三十二年五月十八日第二十六国会衆議院法務委員会において法務政務次官松平勇雄氏は大要次のごとき答弁をなした。すなわち、「本件告訴事実の概要は、被告訴人深瀬一之は当時シグマ商事株式会社の代表取締役であり、同井上信は同社の取締役、同長井雄は同社の業務課長であつたが、共謀の上、同会社を害せんことを図り、任務にそむき、昭和二十五年一月末ごろより同年七月末ごろに至る間に同社所有商品である数百万円分の会社財産を大阪市所在の文房具卸商福井商店及び東京都中央区日本橋小伝馬町所在文房具商東京福井商店等の利益のために納入し、同会社に対して財産上の損害を加えたものであるというにあり、右告訴は、警視庁捜査二課において捜査の上昭和三十一年三月二十八日東京地検において受理したが、同地検において告訴人、被告訴人及びその他関係者を数回にわたり取り調べた結果、特別背任罪その他犯罪を構成することを認めるにたる証拠がないので昭和三十一年六月十八日犯罪の嫌疑なしとして不起訴処分に付した。なお、告訴人は同年六月八日本件告訴を取り消しており、右不起訴処分に対しては、検察審査の申立及び上級検察庁に対する不服申立のいずれをもなしていない。右のとおりであつて、請願者の告訴にかかる事件は検察官において十分な捜査を遂げ、それによつて収集された証拠に基いて適正に不起訴処分がなされたものである。また、検察官に公訴を維持するにたる証拠の有無の判断権の存することは、現行刑事訴訟の構造上当然の事理に属する。したがつて本件を資料としていまただちに検察制度を再検討する必要はないものと思料する。」というのであつた。

本件質問の趣意は、右松平政務次官の答弁の内容には、虚偽の点があるのではないかとして、次の諸点について政府の見解を求めているが、右の答弁の内容にはなんら虚偽の点は存しない。

しかして、本件質問主意書掲記の一から四までについては、次のとおりである。

一 被告訴人の一人である深瀬一之氏を検察庁において取り調べたことは、記録上は認められないが、その余の被告訴人両名、告訴人及びその他の参考人を検察官において取り調べたことは一件記録によつて明らかである。なお、深瀬氏については警視庁捜査二課において詳細な取調をしており、さらに同氏自身が事のてん末を具体的かつ詳細にしたためた上申書も記録に添附されているので、検察官が本件告訴事件の処理にあたつて同氏の供述内容をも十分に勘案して判断を下したことを推断するに十分である。したがつて、松平法務政務次官が虚偽の内容の答弁をしたことにはならない。

二 国会における請願が尊重されなければならないことは申すまでもなく、本件についての政府答弁については、法務事務当局において東京地検より一件記録を取り寄せ、その内容を精査検討しさらに本件の決裁官等からも事情を聴取したうえ、それに基いて答弁がなされたものである。もつとも本件告訴事件の主任検察官である小松不二雄氏は昭和三十一年十月三十一日附で退職したので、本件松平法務政務次官の答弁にあたつては報告を求めることができなかつた。

三 前述のとおり、松平法務政務次官は虚偽の答弁をした事実はないのであるから右答弁に対してなんら責任を問うべき筋合ではない。

四 被告訴人深瀬一之氏の言が事実と相反しているとは認め難い。

右答弁する。

衆議院の原文

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