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下山事件捜査記録等の公表に関する質問主意書
衆議院 第61回 第13号検討してまいりたい ×1
質問本文
衆議院議長 松田竹千代 殿
下山事件捜査記録等の公表に関する質問主意書
下山事件は、昭和二十四年七月五日に発生して以来、既に二十年を経過したにもかかわらず、アメリカ占領軍による謀殺の疑いをもたれたまま、政府がその真相を明らかにすることなく今日にいたつている。しかも政府は、下山事件に関する検察警察当局の捜査記録が、自殺説を主張する者の手によつて恣意的に利用されているのを黙認している。
下山事件の真相を明らかにすることは、下山国鉄総裁(当時)を殺した真犯人を明らかにするうえでも、また、アメリカ占領軍の日本占領当時おこなつた検察警察にたいする支配と介入の実態を明らかにするうえでも、全国民の切望するところであるので、以下の質問をする。
一 元警視庁捜査第一課主任関口由三は、株式会社評論新社が発行している月刊雑誌「新評」一九六九年七月号に、「下山元国鉄総裁“自殺”の証拠」と題する手記を発表した。
この手記には、関口自身が「この事件の捜査の経過を、私の当時の日記をもとにして公開し、下山事件の真相を世に問おうという気持」(三一頁)で書くことにしたと述べているように、関口自身の捜査日記にもとづく捜査会議、検察警視庁両首脳会議その他捜査に必要な重要会議の内容の公開、関口自身が取り調べにあたつた十数名の参考人にたいする供述調書の引用など、捜査に関する記録の引用や要約が随所に記されている。また、この手記の中には同僚警察官の記録である「堀崎メモ」まで使用されている。
1 関口由三が警察官として在職中知りえた捜査に関する記録を公表することは、地方公務員法第三十四条の規定に抵触するのではないか。抵触しないとすれば、その理由はなにか。
二 関口由三は、同手記の中で「当時事件に関係した先輩、同僚の了解も得て」(三一頁)発表すると述べており、また同手記を紹介した「サンデー毎日」昭和四十四年六月十五日号では、関口由三の談話として同人が「警視庁の了解も得られた」(五〇頁)と述べたことが記されている。
1 これは事実か。
2 事実であるとすれば、誰が了解を与えたか。
3 このような了解ないし公表の許可を与えうる警察部内の責任者は誰か。
4 前項の許可を与える法的根拠を示せ。
三 関口由三は、前掲の手記の中で「また幸い記録や資料が手許にあつた」(一〇二頁)と記し、捜査記録をうず高く積んだ写真を掲載している。
1 このような捜査に関する記録や、警察官が在職中職権をもつて集収した物件が、個人の私物同様のあつかいで、退職した警察官の手もとに置くことは許されているか。
2 警察官が警察から供与ないし貸与されたもの、および警察手帳等警察官の職権によつて捜査した内容が記入してあるものについては、その警察官が退職するさいは警察当局に返納するなどの規定があると考えるが、その関係する規定を全文示されたい。
四 下山事件は日本の政治社会にきわめて大きな影響を及ぼした大事件であり、これに関するすべての資料は、内閣が責任をもつて保管すべきものと考えるが、政府は、下山事件に関するどのような資料を、どのような方法で保管しているか。また、将来どのように保管しようとしているか、明らかにされたい。
五 下山事件の時効が間近に迫つた昭和三十九年六月二十六日の衆議院法務委員会において下山事件の資料の公表と捜査記録の提出を求められたのにたいして、当時の法務省竹内寿平刑事局長は「(全捜査の結果及び鑑定書を何らかの形で発表する用意は)東京地検当局に検討させているが結論は得ていない」という趣旨の答弁をしている。
1 今日既に事件発生以来二十年を経過しているが、鑑定書の全文及び捜査に関する全記録を公表する考えはないか。
2 公表する考えがあるとすれば、どの程度どのような方法で公表する考えか。
3 公表しないとすれば、その理由はなにか。具体的に示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一 月刊雑誌「新評」一九六九年七月号に掲載された「下山国鉄総裁“自殺”の証拠」と題する関口由三氏の手記の内容のなかで、地方公務員法第三十四条第一項の「秘密」に該当するものがある場合には、同項違反となる。
前記手記の内容が同項にいう「秘密」に該当するか否かの認定は、警視庁当局において行なわれるべきものであるが、同当局の認定によれば、これらの内容中秘密に該当するものはないとのことであるので、右手記の公表が同項違反となることはありえないものと考える。
二 1および2について
関口由三氏とともに当時捜査に従事した先輩・同僚はすべて退職しており、関口氏が下山事件に関する手記を公表することについて、これらの先輩・同僚にどのような了解を得たかはつまびらかでないが、新評七月号にあのような手記を公表することについて警視庁当局が了解したことはないとのことである。
3および4について
当該事項が秘密である場合には、公表の許可を与える法的根拠はない。
三 1について
警察官が職権に基づいて作成した捜査書類や職権に基づいて収集した証拠物は退職後手もとにおくことは許されないが、備忘等のために記帳したメモ類は差しつかえないものと解する。
2について
警察官に対しては、被服が支給され、警察手帳等が貸与されている。これらの返納については、警察法施行令第十一条に、「警察庁の警察官及び皇宮護衛官が失職し、退職し、休職を命ぜられ、又は臨時待命を命ぜられ、若しくは承認された場合には、その者は、使用期間の満了しない支給品及び貸与品を国に返納しなければならない。警察庁の警察官及び皇宮護衛官が死亡した場合には、長官は、使用期間の満了しない支給品及び貸与品を国に返納するための措置を講ずるものとする。」という規定がある。都道府県の警察官についても、これに準ずる(警察法第六十八条第二項参照)。
四について
検察庁関係の分の主なものとしては、本件に関する鑑定書がある。この鑑定書は、現在、東京地方検察庁において保管中であるが、今後、刑事参考資料として保管することを検討中である。
警視庁においては、実況見分調書、警察官の捜査報告書、参考人供述調書等を警視庁捜査第一課の資料格納室に永久保存資料として厳重に保管している。
五 1および2について
鑑定書の全文および捜査に関する全記録を公表する考えはない。
なお、昭和三十九年六月二十三日衆議院法務委員会の資料要求に基づき、鑑定事項と鑑定結果を提出している。
3について
鑑定書の全文および捜査に関する全記録を公表することは、死者および遺族等関係人の名誉および感情を著しく毀損するおそれがあり、また、今後におけるこの種事件の捜査に支障をもたらすおそれがあるなど、検察運営上好ましくないので、この際、公表をさしひかえるものである。
右答弁する。
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