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チクロ使用禁止に関する質問主意書

衆議院 第63回 第1号

提出者
衆議院
提出日
1970年2月13日
内閣転送 1970年2月14日
答弁書受領日
1970年2月20日
提出から7日
答弁の項目数
0
質問 1,874字/答弁 1,977字

質問本文

衆議院議長 ※(注)田 中 殿

チクロ使用禁止に関する質問主意書

昨年暮、政府は人工甘味料チクロ(サイクラミン酸ナトリウム、サイクラミン酸カルシウム)の食品添加物としての使用、販売等を禁止した。同時に現に存する食品、すなわちサイクラミン酸塩を含有している食品は一定の回収期間を受けながらも全面廃棄を指示した。

このことは、関連業界団体四十有余傘下業者、特に圧倒的に多い中小企業に大混乱と大損失をまねいた。この際、次の諸点について政府の対策を明らかにされたい。

一 食品行政について

今日まで人工甘味料チクロは食品衛生法及び同法施行規則に長年にわたり使用をみとめられてきており、このことは、政府が国民に対し無害保証の責任を負つていたと考えるべきであろう。

しかるに米国において十月その使用が禁止されるや突如として十一月十一日以降わずかの猶予期間をおいて全面禁止し更に米国が緩和措置をするとひよう変して突如一月十四日厚生省令を改正し一部食品のみ延期措置をとつた。

このために関連業界は大混乱におちいり、かつ、大損害をうけた。のみならずかかる政府の朝令暮改の陰に黒い陰があると疑惑が関係筋の中でひろがりつつある。

食品行政に対する信頼感は一挙に失墜したといわなければならない。今後かかることのないようにするために、

(イ) 食品添加物の国内試験機関を充実し自主的な体勢をととのえ、

(ロ) 禁止、制限措置をとるまでに関係団体を含め事前に充分な研究審査を行ない、

(ハ) 特別な場合を除き準備機関を設け、企業対策についても関係各省とも協議決定のうえ措置すべきではないか。

二 関連食品業界に対する金融について

出荷の激減、回収、大量在庫、今後の措置を含め業界が直面した事態は深刻である。当面の必要な運転資金の確保について政府のとつた措置はきわめて具体性を欠きなんらの実効をあげていない。

(イ) 政府関係金融機関(農林中央金庫、商工中央金庫、中小企業金融公庫、国民金融公庫等)は特別ワク、長期低利等の特別措置を定めて融資すべきではないか。

(ロ) この際設備の改新、業種の転換、廃業等をする企業についても、前項と同様特別措置をすべきではないか。

三 一連の措置に伴う税制上の問題について

次の諸点について、政府の具体的な対策を明らかにされたい。

(イ) 製品在庫及び返品などを含む包装材料等の廃棄による損失の損金扱い

(ロ) 回収費用、回収運賃などの損金扱い

(ハ) 設備更新する場合の特別償却

(ニ) その他、今回の措置による損失についての配慮

これらについて税務申告時期を控え、いかなる税制及び税務行政上の措置をとつたか。

四 損失に対する政府の補償について

今回関係業界のうけた損害はばく大なものであるといわれている。この損害について、チクロを法規上無害とみとめていた政府が突如として禁止したという政策上、行政上の責任は免がれることはできないと考える。

米作規制により行なわれた農家の損失について、充分ではないが行なわれる実質的な補償政策と比較するとき、

(イ) 政府は関係業界がうけた損失額をどの程度と推定しているか、業界ごとにききたい。

(ロ) 右について補償をする意思があるかどうか。

(ハ) 一部の業界が行政不服審査法によつて十二月二十六日厚生大臣宛不服申立をしたことについて今日にいたるも措置をしていないようであるが、その処置を明らかにされたい。

五 消費者に対する適切な啓もうについて

突如として行なわれた今回の措置は消費者に対し場合によつては不必要な警戒心を生ましめ科学的判断を阻害している。

(イ) 一部の食品延期措置について、米国では延期していないのに日本では、一たん禁止したものを突然再延期したその理由をみるに当初禁止措置をとつたときに当然わかつていたと思われる事柄である。それにもかかわらず再延期した理由は何か。

(ロ) 有害とされた商品の廃棄処分は量、場所によつては重大であることを指示しているのかを明らかにすべきではないか。

六 代替甘味材に伴う砂糖行政について

チクロの製造使用禁止は必然的に、砂糖使用になる。しかし国際的にみて高水準の砂糖使用はすでに食品価格の値上りや商品の品質形状の低下をもたらしている。

(イ) この際過去に一部に行なわれたように加工食品の原料砂糖には砂糖消費税の免税措置をすることはどうか。

(ロ) また、一般物価対策からも砂糖行政についての対策についてどう考えるか明らかにされたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一 食品添加物の安全性については科学的根拠に基づいて判断すべきであるので、従来から国立衛生試験所その他試験研究機関の充実強化に努めているところであり、また国連の定めた基準をはじめとして諸外国の科学的資料も広く参考としている。

食品添加物の使用禁止、制限等の措置を講ずるに当たつては、安全性に関する各種科学的資料をもとに関係行政機関、学識経験者、関係団体の代表者等からなる食品衛生調査会において調査審議することとしており、その意見を尊重し措置することとしている。この場合、これらの措置に伴う社会的経済的な影響について配慮しつつも、国民の健康の確保を図る見地からの判断を優先させるべきであると考えている。

二 政府は、今回の措置により影響を受ける関係企業に関しては、農林中央金庫、政府関係中小企業金融三機関、信用保証協会、一般市中銀行等がそれぞれ再生産に必要な資金の確保等に十分配慮するよう各関係先に依頼するとともに、各都道府県においてもこれら関係企業に対する金融の円滑化のためできるだけ善処するよう要請した。

これにより各関係金融機関等の融資面での協力態勢がとられ、また、いくつかの県では資金の預託等による金融の円滑化措置がとられている。

さらに金融の円滑化のために特別な措置を講ずる必要があるかどうかについては、今後の関係業界における事態の推移をみて考慮いたしたい。

三 製品在庫及び返品などを含む包装材料等の廃棄による損失、回収費用、回収運賃その他今回の措置による損失は、税制上特別の措置をとるまでもなく、廃棄をした時その他それらの費用が発生した時点で当然損金に計上することが認められる。

また、納税者がその事業につき著しい損失を受け、租税を一時に納付することができない場合等においては、二年以内の期間納税の猶予又は滞納処分に係る換価の猶予を受けることができる。

なお、現在中小企業者の営む事業の経営の合理化に資するために緊急に必要なものについては、その取得価額の三分の一の特別償却(中小企業用合理化機械の特別償却)が認められるが、チクロ禁止措置に伴つて更新される機械で上記要件を満たすものがあれば、特別償却が認められる場合もある。

四(イ) 関係業界が受けた損失額については、業界からのききとりによれば、チクロメーカー及び混合甘味剤メーカー関係では廃棄を要する商品及び設備が約十三億円、食品関係では本年二月末の時点で廃棄を要する商品、仕掛品等で約百億円と推定される。

(ロ) 今回のチクロについての措置は、チクロが人の健康を害うおそれのあることが明らかになつたためにとられた措置であることにかんがみ、政府としては、この措置に伴う損失を補償する必要はないものと考える。

(ハ) 異議申立てについては、目下審査中であるが、早急に結論を出すこととしたい。

五(イ) 昨年十一月にとられた措置は、アメリカの実験結果等に基づき緊急の措置として決定されたものである。

しかし、その後この禁止措置に伴う社会的経済的影響は少なからぬものがあること、また、アメリカにおいて一部食品の猶予期間延長の措置がとられたこと等を考慮し、国民の健康保持に支障のない範囲内で猶予期間を延長することを検討した結果、清涼飲料水を除くかん詰等の一部食品について、サイクラミン酸塩を含む旨を標示させ消費者が選択できるようにして、九月末まで猶予期間を延長することとしたものである。

(ロ) チクロ含有食品等の処分については、原則として業者の自主的な判断に委ねることとしているが、処分の場所、方法等により公衆衛生上問題が生ずることのないよう今後とも指導を行なうことといたしたい。

六(イ) 砂糖消費税は、砂糖の甘味料というし好品的性質に着目しつつ、国内甘味資源の保護育成の見地から、国内糖価政策との関連を考慮して課されているものである。したがつて、チクロの製造使用禁止に関連して、一般の加工食品の原料砂糖を免税にすることは、適当でない。

なお、現在、甘味料として消費される砂糖で砂糖消費税を免税にしているのは、輸出用の菓子等の加工食品と練粉乳及び育児食の原料砂糖というきわめて例外的なものに限られており、この点従来とも変りはない。

(ロ) 砂糖の価格安定については、砂糖消費量の大半を輸入に依存しているため、国内糖価が国際糖価の変動の影響を受けて変動する状況に対処し、砂糖の価格安定等に関する法律(昭和四十年法律第百九号)に基づき、価格帯を設定し、糖価安定事業団による売買を通じて輸入粗糖の国内供給価格をこの価格帯の幅の中に安定させることとしている。

これらの措置により、砂糖の価格は、近年安定的に推移しており、今後とも前記法律の適正な運用により砂糖価格の安定を図つてまいりたい。

右答弁する。

衆議院の原文

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