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石油パイプラインの安全対策に関する質問主意書
衆議院 第71回 第15号
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
石油パイプラインの安全対策に関する質問主意書
石油パイプライン事業法の施行以来、すでに八カ月が経過しているが、石油パイプラインの安全対策のかなめともいうべき技術基準が、関係省庁の告示という形にゆだねられたまま、いまだ告示されるに至つていない。この間にも、新東京国際空港公団による航空機燃料輸送パイプラインの建設が、幾多の問題を含みながら、現実に強行されている。一方では関東パイプライン及び国鉄パイプラインの計画が、地方工作を含めて進行している。
かかる展開の中で、パイプライン沿線住民や心ある学者、専門家の中から、パイプラインの安全性に対する数々の不安や疑義が表明され、加えて関係する法令等の不明、不備な点も指摘されるなど、続発するパイプライン反対運動に正当な根拠を与えるような状況になつている。
住民生活の安全を守る、基本的人権を守るということは為政者の憲法上の責務である。田中内閣も、その成立以来一貫して、福祉優先を主張してきていることでもある。そこで石油パイプラインの安全対策について、国民の生活と生命に直接関係する公害対策及び環境保全という立場から、次に若干の質問を提起する。
一 石油パイプラインの安全性を規制する法令に対する疑義
石油パイプライン事業法制定の目的は、災害の発生防止により、公共の安全を守ることである。田中通産相(当時)も法案審議の際に、石油パイプラインはこの法律の成立を経ずとも建設できるが、法制を整備して国民の生活を守るのは、政府の責任であると言明している。建設される石油パイプラインの沿線住民の生命と生活を、その事故から、災害から守るということなのであろう。
しかるに、石油パイプライン事業法の適用をうけるのは、一般の需要を満たす全長十五キロメートル以上の石油パイプラインに限られている。事業法の適用を受けない石油パイプラインの安全性は、消防法により規制される。消防法の危険物の規制に関する政令が、告示される技術基準に照らして改正されるといわれている。
(1) 消防法の規制で石油パイプラインの安全性は、完全に保持されると考えているか。その根拠は何か。
(2) なぜ、全石油パイプラインの安全性を消防法で規制しないのか。
(3) 一般需要を満たす石油パイプラインのうち、全長十五キロメートル以下のものを事業法の適用除外とした理由は何か。十五キロメートル以下のものについて保安面に対してなされた考慮の内容は何か。
(4) 消防法と事業法とでは安全保持において差があるか。
(5) 石油パイプライン事業法では、住民(地方自治体)の発言権を認めるなど、住民の法的権利を定めている。事業法の適用を受けないパイプライン沿線住民に差別をもたらしはしないか。差別なしとされるならその理由を明示されたい。
(6) 政省令のレベルではなく、消防法自体を改正しようとしなかつた根拠は何か。
二 技術基準が告示されない理由
既に、通産省や運輸省(国鉄)等には、独自の技術基準があるが、事業法による技術基準が今もつて告示されない理由は何か。もとより住民の生命と生活に重大な影響をもつ技術基準が、安全技術上の問題を不問にしたり、不完全な解明のまま拙速安易に決定されるべきでないことは言をまたない。
(1) 技術基準検討専門委員会が、技術基準決定に内包される技術上の問題の処理にとどまつているのであれば、いかなる点が問題であつたか明らかにされたい。
(2) 技術基準検討専門委員会の決定以降の事務手続き上の遅延によるのであれば、その処置経過と責任の所在を明らかにされたい。
以上について、告示が近々になされるにせよ、現在の段階で具体的に答えられたい。
三 事業法にいう保安距離について
以下の質問に対して、それぞれ理由を付して回答されたい。
(1) 技術上の基準を定める省令の第二条によれば、利水上の水源である湖沼、貯水池等には、石油パイプラインは設置できないことになつているが、その理由は何か。
(2) 地下水源の場合は、どのように扱われるのか、その理由をそえて答えられたい。
(3) 今年の三月二十三日に行われた千葉市でのパイプラインの漏油による火災実験の結果では、人家との保安距離を一・五メートルとすることには無理があるとの指摘がある。保安距離を一・五メートルと選んだ根拠を示されたい。
(4) パイプラインに付加的な処置をほどこして安全性が保たれるとし、あくまでも、この一・五メートルに固執するとすれば、その理由を述べられたい。
(5) 仮にかかる安全処置により、パイプライン自体の事故が発生しにくくなるにせよ、事故発生後の事態(住民生活への影響)は、保安距離を主たる因子の一つとして考えることは誤りか。
(6) 田中通産相(当時)も、パイプラインに絶対の安全性はないと述べたはずであり、パイプライン沿線住民にとつての安全性は、まさに保安距離が重要な決定要因となると考えるのは誤りか。
(7) 道路境界との保安距離は、省令の技術上の基準で一メートルとされているが、道路に接する土地の権利者は、パイプライン敷設後人家との保安距離との関係から、道路に面した家を建築できないことになる。土地利用権が不当に制限されることにならないか。道路の隣接地の土地の利用形態は、道路の使用状況とともに変化するとは考えないのか。その理由は何か。
四 耐震設計について
通常行われている耐震設計の内容は、地震時に発生する外力が、弾性的な変形をもたらすことに対し耐えせしめ、破壊をまぬがれることである。ところが地震時に、地盤に塑性変形、例えば地割れ、段差をもたらす外力により、パイプラインが破壊されることが多いとされている。
(1) 地盤に弾性変形をもたらす外力に対する耐震設計式を選定する実用的な根拠を示されたい。
(2) 地盤に塑性変形をもたらす外力に対する耐震設計式を具体的にした技術基準を定めるつもりはないのか。その理由は何か。
右質問する。
政府答弁書
一について
(1) 石油パイプライン事業法の適用を受けない自家用又は小規模事業用石油パイプラインは、消防法により危険物施設として規制されることとなつているので、石油パイプライン事業法の関連告示の制定後は、早急に同法の技術基準に準拠して消防法令の技術基準を整備することにより、石油パイプライン事業法の規制に基づいて設置される石油パイプライン施設と同様の安全性が確保できるものと考えている。
(2) 石油パイプライン事業の用に供する石油パイプラインについては、その事業の公共的性格に基づく事業規制とその事業の用に供する施設についての保安規制とを一体的に行うことにより、合理的かつ安全な輸送の実現を図るとともに、公共の安全を確保することが必要であるため、石油パイプライン事業法において規制している。
(3) 導管の延長が十五キロメートル以下の事業用石油パイプラインについては、規模が小さく、石油パイプライン事業法の予定している他の輸送手段に代替し得べき機能を有するものとは考えられず、従つて、これを事業許可等の規制に係らしめる必要性はないと考え適用除外としたものである。
この小規模事業用石油パイプラインの保安については、石油パイプライン事業法に基づいて行う保安規制と同様の規制を消防法に基づき実施することとしている。
(4) 石油パイプラインの保安に関する石油パイプライン事業法による規制及び消防法による規制は、それぞれ対象となるパイプラインの態様に即応していずれもその危険性の排除を目的としているものであり、安全保持のうえで差はないものと考えている。
(5) 石油パイプライン事業法の適用を受けない石油パイプラインは、消防法により危険物施設として規制されるものであり、当該パイプライン施設の許認可等は、市町村長又は都道府県知事とされているので、消防法においては、パイプライン沿線の地方自治体の意見は反映されているものと考えている。
(6) 消防法においては、危険物施設の技術基準は、政省令に委任されているので、消防法の改正を必要としない。
二について
(1)及び(2) 石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令は、昭和四十七年十二月二十五日に制定されたが、この省令の規定により告示で定めることとされている事項については、関係四省と学識経験者十七名による「技術基準検討専門委員会」によつて昭和四十八年一月から三十回以上の会議を重ね検討を進めてきた結果成案が得られたので、近く告示する予定である。
なお、石油パイプラインの安全性を確保するため、特に漏えい検知方式、漏えい拡散防止措置等について慎重な検討を行う必要があつたことから、成案を得るのに長期間を要したものである。
三について
(1) 利水上の水源である湖沼、貯水池等は、一般に国民生活に大きな役割を果たしているものであるので、石油パイプラインの設置をできるだけ避けるものとして原則として禁止したものである。
(2) 石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令第二条第一項第五号の「利水上の水源である湖沼、貯水池等」は、表流水に係るものを対象とし、地下水源はこれに該当しないが、同省令においては、石油パイプラインの安全性を確保するため、次の措置等を講ずべきこととしているので、これにより、石油パイプラインの設置により地下水の汚染は生じるおそれはないものと考える。
(イ) 石油パイプラインの設置に当たつては、一定規格以上の材料を用い、設計上十分な安全率をとるとともに外面腐しよくを防止するための防しよく被覆及び電気防しよく措置を講じること。
(ロ) 万一の漏えい事故の発生に備えて、漏えい検知装置、警報装置、緊急しや断弁等を設置するとともに、必要な箇所に漏えい拡散防止措置を講じること。
なお、透水性地盤中に導管を設置する場合においては、漏えい拡散防止措置を講じるべきであるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ている。
(ハ) 導管は、耐圧試験及び全溶接部の非破壊試験に合格したものでなければ使用してはならないこと。
(3)及び(4) 建築物との保安距離は、導管の埋設深さ、漏えい拡散防止措置及び漏えい検知装置等の機能を総合的に勘案して定められるものであるとの観点から、万一の漏えい事故による建築物への影響を未然に防止するためには一・五メートルを確保すれば足りるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ている。
(5)及び(6) 石油パイプラインの安全性は、導管等の材料・構造、敷設方法、保安設備等により担保されており、また、万一の漏えい事故の場合にも周辺地域に影響を与えないよう特別の配慮を払つており、このための措置として、保安距離は、漏えい拡散防止措置、漏えい検知装置等と共に重要な要素の一つとして考えている。
(7) 石油パイプラインの技術基準は、導管の敷設に当たつて当該事業者に対して遵守すべきことを定めたものであるから、設問に係る土地の権利者の土地利用権を制限するものではない。
四について
(1) 地震時には、地盤に変形が生じ、地下に埋設された石油パイプラインもこれとほぼ同じ変形を余儀なくされ、これに伴つて導管に応力が生じることになる。
従つて、導管は、地震による地盤の弾性変形に対して十分耐え得るよう設計しておく必要がある。
このため、導管の設計に当たつては、過去の地震の発生状況、土地利用の状況、地盤の性状等の条件を考慮して、導管に生じる応力度の計算を行うべきであるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ている。
(2) 地盤の塑性変形に対しては、導管として伸びが大きく、破断し難い材質のものを用い、接合部には導管と同等以上の強度が確保される溶接方法を用いるほか、一定規模以上の地震が発生した場合には、感震装置が運転制御装置と連動し自動的に圧送機の運転を停止させるとともに緊急しや断弁を閉鎖させることにより、石油パイプラインの安全性を十分に確保すべきであるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ている。
右答弁する。
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