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復帰一年後の沖縄問題に関する質問主意書
衆議院 第71回 第22号検討してまいりたい ×1
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
復帰一年後の沖繩問題に関する質問主意書
沖繩の施政権が返還されて一年四ヵ月が経過した。
しかし昨今の沖繩の実情は、復帰に対する県民の期待をあまりにも大きく裏切つている。県民の大多数は、「復帰」は一体誰のものだつたのかと問い返し、「復帰の実態」に失望さえ感じているというのが偽らざる心境である。
復帰によるこのように大きな不満と不安の根本を問い詰めるならば、一つには変らない軍事基地の実態と、それが生み出す米兵犯罪、殺人的爆音などの基地公害の増加、加えて県民意志を踏みにじつた自衛隊の大量強行配備等によつて、沖繩の軍事的な色彩が復帰後ますます強くなつている点を指摘しなければならない。二つには、復帰後の異常な物価の高騰、医療の供給態勢の不整備による混乱、那覇市を中心に全島をおおう交通渋滞、旧四種雇用員をはじめとする基地労働者の相次ぐ解雇、そして海洋博・その関連事業の推進による土地の買占めと乱開発、自然環境・文化財の破壊、建設資材の不足、農漁業を中心とする第一次産業の破壊、中小零細企業保護政策の欠如などなど、直接県民生活に結びついた施策が放置されるか、事後処理的にしかなされなかつた点に帰せられる。
県民生活にかかわるこれら諸問題の解決については、無論県、各市町村そして県民自らの努力に負う面のあることを否定はしないが、それらは沖繩の復帰政策と無関係でなく、復帰にかかわる問題としてその大半は政府の責任において改善・解決の図られなければならないものだと考える。
そのような立場から、「復帰」一年余を経過した沖繩の実情にふれつつ若干の項目について以下質問する。
一 基本的復帰施策に関して
1 政府は復帰にかかわる諸施策が、百万県民の期待と要求に応える万全のものであつたと考えているか。
2 国会論議などを通じて明らかにされた政府の復帰対策の三原則は、
イ 振興開発のため思いきつた施策を講じる。
ロ 生活に急激な変化や無用な混乱を生じることのないよう特別の経過措置を講じる。
ハ 施策の策定に当たつては県民の意志を十分に尊重する。
とするものであつた。
もし、この三原則が復帰前後の施策に十分に生かされていたならば、今日のような県民の「復帰ショック」は起こり得なかつたと思うが、政府の考えはどうか。
3 政府の施策が実情にそぐわないものがあつて今日の混乱を招いているとすれば、復帰後の沖繩の実情を直視し、沖繩への諸施策を全般的に洗い直し、軌道修正すべき点は率直に是正すべきであると考えるがどうか。
二 沖繩国際海洋博覧会について
1 政府が推進している沖繩海洋博覧会開催の目的は何か。また、現在その目的は十分達成できるとの見通しを持つているか。
2 海洋博関連工事が具体化するにつれて、海洋博に対する批判・反対の声が高まり、中止すべきだとする意見さえ強くなつているが、政府はこのような県民世論をどう受け止めているか。
3 国際海洋博覧会の沖繩開催が決定される際、国会で附帯決議がなされている。決議は、沖繩海洋博は、大阪での万国博覧会とは大きく条件が異なり、開催地である沖繩県が復帰・振興開発業務を抱え込んでいること、財政力に乏しいこと、更に準備期間が短いことなどを指摘し、特に地元に財政的な負担をかけない配慮が必要だと強調しながら次の三点をあげている。
イ 博覧会開催の準備運営に要する経費については、極力、地元負担の軽減を図ること。
ロ 会場施設を博覧会終了後も我が国の海洋開発並びに沖繩県の経済開発、県民福祉及び文化の振興のため長期に利用することを基本として、早期に会揚決定すること。
ハ 会揚跡地及び諸施設はあくまでも平和目的に利用すること。
政府は、海洋博開催までの経過の中に、この決議の主旨が十分生かされていると考えるか。今後についても十分生かされるか。また、特に地元負担に関してはどう考えているか。
4 海洋博開催のための強引な作業の進行は、本来優先されるべき福祉施策や、基本的な社会施設の開発などを押しつぶし、物価の上昇、インフレの助長、土地の買占め、乱開発と農業の破壊、労働力不足と労賃の異常な高騰、建設諸資材不足、金融ひつ迫と中小企業の倒産、自然環境と文化財の破壊、離島など地域格差の拡大など重大な危機を県民生活と沖繩経済にもたらしている。
これらの状況について、我が党は独自の調査団を派遣してその実情調査を進め政府に八項目にわたる申し入れをしたり、関係委員会の審議の中においてもその抜本的な対策を求めてきた。同様のことは、県、関係市町村及び各種団体からも、それぞれの立場からの強い要請が繰り返されている。しかし残念ながら、政府がこれらの問題提起や要求を積極的に取り入れて対策を講じてきたとは認めがたい。
政府は、海洋博主導の開発政策を抜本的に改め、振興開発計画に基づいた年次計画のもとに、沖繩の許容量に見合つた開発計画を、何よりも県民生活を優先する立場から推し進めていくべきだと考えるがどうか。もし、その必要を認めないとするならば、海洋博計画の推進が県民生活に及ぼしているいわゆる「デメリット」をどう解消していくのか。
三 農業問題について
近年、農業の他産業との所得格差が大きく開き衰微の一途をたどつていることは、沖繩も本土も同様である。そしてその最大の原因が政府自民党の朝令暮改の農政によることは、他にもしばしば指摘されるとおりである。
日本の農業は、昭和三十年代を通じて高度経済成長政策の踏み台にされ、昭和四十年代に入つてからもその傾向に一層の激しさを加えている。農村を安い労働力の供給源としか見なかつたことが、その疲弊・過疎化を急速に推し進める結果を招いているのである。
それでも本土の場合は、農基法制定を軸に農業に対する施策が次第に整備され生産者米価など価格政策もとられるなど、沖繩に比べるならば農業関係者の声がかなり農政に反映されてきている。
これにひきかえ、沖繩の場合は、戦後二十七年間アメリカの施政権下にあつて、肝心の農地は軍用地にとられ、基盤整備が極端に立ち後れた。その結果、農業所得は常に他産業を下回り、労働力の流失と質的低下、生産技術の停滞、生産の粗放化を来たしている。
一方、わずかに沖繩の基幹作物である甘庶作とパインアップル栽培が復帰前から政府の特別の配慮もあつてどうにか維持されてきていた。しかし、復帰後の急激な社会・経済上の変化は、こうした基盤の弱い沖繩農業をかつてない危機に追い込んでいる。
この現象は、「農業でも他産業なみの所得をあげる」とする農基法の精神にも逆行するものと言わざるを得ない。
1 政府は、沖繩農業の現状をどう掌握し、今後、農業振興・構造改善をどう進めていく考えか、その具体策を示せ。
2 海洋博関連事業の推進と農業の関係をどう位置づけ、農業に及ぼす悪影響をどう食い止めていく考えか。
3 沖繩農業の焦眉の課題は、さとうきび原料の買上げ価格についてである。きび作農家の実情は、国家的な行事としての海洋博の推進のために壊滅的な打撃を受けている。
これに対しては、当然国の責任において緊急な措置が講じられるべきだと考える。特に生産者、県当局など関係者は、諸種のデータからトン当たり一万三千円以上の価格が保証されなければ生産費を大幅に割り込むとしている。この声を尊重する意志があるか。
4 また、買入れ価格算出の方法を生産費及び所得保障方式に改めるべきだとする強い要求に対し、政府は糖価安定法や砂糖の国際価格との調和などをあげてこれを拒んでいるが、パリティー方式に固執する本当の理由は何か。また、それで生産者の納得を得ることができると考えるか。
5 最近、世界的な砂糖の供給不足によつて輸出国の糖価の大幅な値上げは必至であるといわれている。
砂糖の国内供給度を高めて行くためにも、国内のきび作に対し従来とは異なつた抜本的な保護策をとるべきだと考えるがどうか。
6 さとうきび同様パインアップルについても、より積極的な保護と価格政策が必要だと考えるが今後の方針いかん。また、自由化については従来の方針を今後も堅持するか。
四 地籍調査問題について
戦火による土地台帳の焼失、土地の原形を全く破壊した米軍の無謀な軍事利用などが重なつて、沖繩の土地はまさに無地籍の混乱の中に置かれている。特に軍用地として接収された土地には、戦後この方立入り調査も許されずに放置されている状態である。
このような状況下で軍用地が部分的に返還されても地主を確認することすらできず、跡地利用、開発計画の障害となり、振興計画を一層遅らせる結果を招いている。また、軍用地内の土地所有権喪失者が出たり、所有権を行使する場合に公簿公図の訂正を必要とするとか、財産権を不当に侵害する事例を頻発させ、紛争の原因となつている。
関係者はこれらを以前から指摘し、政府の対策を要求してきた。しかしその作業は、基本的な進展を見ないまま今日に至つている。
よしんば、今後基地の整理・縮小が進むとしても、この問題が未解決のままでは全く意味のないものになつてしまう虞もあり、その解決は緊急を要する課題となつている。
1 沖繩の地籍調査を所管する官庁はどこか。その根拠となる法律は何か。新規の立法を必要と考えているかどうか。
2 また、その実施に関する費用は政府が負担するのか。
3 返還される軍用地は、返還以前に調査を行い、所有権の確定を行つてから返されるのが本来であろう。もしそのことが不可能な場合は、地籍が最終的に確定するまでは従前の借地料が保障されるべきだと思うがどうか。
4 今後軍用地の返還に当たつては返還後の土地の利用効果を高め、所有権の確定をスムーズに行うためにも字単位、せめて小字を分断すべきでないと考えるがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
1から3まで 政府は、沖繩の復帰に際し、県民生活に急激な変化や、無用な混乱を生じることのないようにとの配慮のもとに、復帰の円滑な実現と豊かな沖繩県の建設を期して、関係諸機関の総力を結集して復帰対策に取り組み、同時に沖繩の各界各層の意見を取り入れ、琉球政府と調整を行い復帰対策要綱を決定し、各分野にわたり暫定特別措置を講ずるとともに沖繩の振興開発に関する基本的な方針を定め、昨年十二月には沖繩県が作成した原案に基づき沖繩振興開発計画を決定しており、新しい県づくりへの歩みを着実に進めている。
しかしながら、復帰直後の沖繩県においては、経済、社会等の各分野における諸種の変化のため県民生活にもさまざまな影響がみられたが、政府としては、諸分野における沖繩県の実情をふまえつつ、適時適切な対策を講ずるとともに、長期的観点から沖繩の振興開発を図るため引き続き努力を払つてまいりたい。
二ついて
1 海洋博は、国際海洋博覧会条約に基づく国際博覧会であり、世界で初めて「海洋」をテーマとして開催されることは、御承知のとおりであるが、この海洋博の目的は次のように要約できよう。
(1) 沖繩県の本土復帰を記念する事業の一環であること。
(2) 海洋博の関連公共投資による社会資本の充実を図り、もつて沖繩県の経済発展に多大の貢献をなすこと。
(3) 海洋博を契機に、沖繩県をはじめとする我が国民の余暇需要に応えるとともに、沖繩県の観光振興に資すること。
(4) 海洋国である我が国の今後の発展に必要な海洋開発技術の開発に資すること。
こうした目的に沿つて現在、沖繩県及び市町村との協力のもとに海洋博の準備を鋭意進めているところであり、関係者の努力によつてこれらの目的は十分に達成し得るものと確信している。
2 海洋博は、沖繩の本土復帰記念事業の一環であり、本博覧会に関連して公共施設の整備を図ること等により沖繩の経済、社会開発を促進し、沖繩国民の福祉向上に大きく寄与するものである。また、これは世界で初めて海洋をテーマとする国際博覧会であり、国の内外から大きな期待が寄せられている。従つて、政府としては海洋博の推進に全力を傾注する所存であり、これを延期若しくは中止する考えは全くない。
しかしながら、準備期間が比較的短いこともあり、沖繩の経済等に与える影響が強く、それに基づく混乱の懸念も理解できるので、海洋博推進対策本部の活動を更に強化し、対策の実を挙げていきたい。
3 海洋博は、沖繩県の本土復帰を記念するものであり、また、会期中、会期後も含めて地元沖繩県の振興開発、沖繩県民の福祉向上及び文化の振興に寄与することを第一義として開催されるものであり、国会における決議の御趣旨に則つて準備を進めている。
また、とくに地元の負担に関しては、会場建設について国庫の負担割合を九十パーセントにまでする等、実情に応じて地元の財政負担の軽減に努めているところである。
4 海洋博は何よりも沖繩県民の福祉向上に寄与することをその主たる目的としており、海洋博関連事業は、沖繩の振興開発を図るうえでも必要不可欠のものであり、政府としてもその推進に努めているところである。
しかしながら、2で述べたとおり、沖繩の経済や県民生活に与える影響についての懸念も理解できるので、海洋博推進対策本部の活動を更に強化するとともに、関係機関の協力により、迅速かつ的確な対策を講じ、振興開発計画の推進に最大の努力をする所存である。
三について
1 御指摘のように沖繩の農業は、土地基盤整備の遅れ、農業技術の低水準等種々の問題に当面しており、また最近他産業の急速な成長がみられるとはいえ、従来からも農業は、沖繩の基幹産業たる地位を占めており、地域の実情に即してその振興開発を図ることは、極めて重要であると考える。農業経営規模も、沖繩本島地域ではやや零細であるが都市近郊等立地上の有利性もあり、また宮古、八重山地域では、かなり大きい。
従つて、今後の沖繩農業の振興開発の方向としては、合理的、計画的な土地利用により優良農地を確保し、沖繩が我が国唯一の亜熱帯地域であるという特性を生かして、土地基盤の整備、機械化の促進、農業技術の開発普及など、まず農業生産の基礎条件の整備強化を図ることなどにより、基幹作目であるさとうきびやパインアップルの生産性の向上を図るとともに、畜産、野菜などを振興し、作目の多様化を進めてまいりたい。
2 海洋博関連建設工事の促進のために他県からもかなりの人が参加し、沖繩における農産物の需要が増大する結果、生産の刺戟にもなり、沖繩の今後の農業生産及び農産物の流通改善に良い影響を与えることも考えられる。しかし、労働力不足から農家労働力の流出が行われ、農業経営の粗放化等の問題も生じている。
このような事態に対処するため、海洋博関連事業の推進に当たつても農業等への影響に慎重に配慮するとともに、また併せて沖繩農業の基本的問題の解決に資するために、土地基盤の整備や機械化の推進による営農の省力化を進めてまいりたい。
3 さとうきびは、沖繩農業における基幹作物であり、甘味資源として重要であるので、その再生産が確保されるようさとうきびの最低生産者価格の決定に当たつては物価その他の経済事情を十分参酌してまいりたい。
なお、価格決定のための各種の資料は、現在収集中である。
4 さとうきびの最低生産者価格の算定については、砂糖の価格安定等に関する法律に基づき、パリティ価格方式をとつているが、このパリティ価格方式は、さとうきびのように今後、技術改善、単位収量の増大、経営の合理化等の合理化の余地があり、また、その可能性が大きい作物については、農家の創意工夫によるメリットを享受することが可能であることから、これを採用しているものである。
5 甘味資源の国内生産の振興は砂糖の自給度を確保するために重要であり、これと併せ地域農業振興のため、政府は北海道並びに鹿児島県南西諸島及び沖繩県をそれぞれてん菜生産振興地域及びさとうきび生産振興地域に指定し、生産振興に努めてきている。
復帰後社会情勢の変動が著しい沖繩においては農業労働力の流出、賃金の高騰等最近の情況はきびしいものがあるうえ、さとうきびは他作物に比し、多くの労働力を要することから、収穫作業の省力化を中心とした機械化の推進が急務となつている。
従つて、収穫機械の緊急導入、生産組織の育成、土地基盤の整備、種苗対策等総合的な生産対策を推進するとともに価格対策の適切な運用とあいまつて農家経営の改善を図つてまいりたい。
6 パインアップルについては、沖繩の復帰と同時に果樹農業振興特別措置法の対象果樹として政令で指定し、果樹農業振興基本方針に加え、これに基づき、栽培の省力化、土壤の改良、優良種苗の普及等に積極的に助成するとともに、その植栽、育成資金の融通等生産の振興及び生産性の向上を図るための各種施策を実施しているところであり、また、パインアップル缶詰を非自由化品目としつつ、関税制度の運用等により、沖繩産パインアップルの積極的な保護育成を図つているところである。
なお、パインアップル缶詰の輸入自由化については、パインアップルはさとうきびに次いで沖繩における重要な作目であり、合理化が十分行われていない現在においては、沖繩パインアップル産業に重大な影響を与えるので、これを行うことは考えていない。
四について
1 国土調査法に基づく地籍調査については、経済企画庁においてその事務を所管しているが、沖繩県には、土地の境界等が不明のため国土調査法に基づく地籍調査を実施することが極めて困難な地域が存在し、種々の問題を生じているので、当該地域については、さしあたり境界不明の実情を把握するとともに、境界明確化の具体的方策の検討に資するため、沖繩開発庁に予算を計上し、所要の調査を実施している。
なお、問題の性質上、この作業に引き続き関係地権者の話し合いの場を作るなど、地籍の明確化のための方策を検討してまいりたい。
2 国土調査法に基づく地籍調査については、国がその事業に要する経費の三分の二を負担している。また、境界不明土地の調査については、その事業に必要な経費を国費をもつて支出できるよう予算措置を講じている。
3 施設区域についても、できる限り早期に、地籍が明確化されるよう努めたい。
なお、地籍が不明確のまま返還された場合に採るべき措置については、今後検討いたしたい。
4 施設区域の一部返還に当たつては、御質問の線に沿つて努力いたしたい。
右答弁する。
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