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高等学校における交通安全教育に関する質問
参議院 第102回 第40号承知していない ×3
質問本文
高等学校における交通安全教育に関する質問主意書
わが国の運転免許保有者数は、この数年、毎年二百万人の割合で増え続け、昭和五十九年末には五千六十万人を数えた。免許適齢人口に占める運転免許保有者の割合は五十五%で、わが国は確実に国民皆免許時代に突入したといえる。
また、車両保有台数の点でも、毎年三百万台以上のペースで増え続け、五十九年九月末には六千四百万台の車両が登録されるにいたつている。そして、交通事故もこの数年増加の一途をたどつていることは、新聞ほかマスコミ等でも度々取り上げられているとおりで、その対策を抜本的に構築する必要性が痛感されるところである。
そうした情勢のもと、昭和五十六年度より交通安全対策基本法にもとづく第三次交通安全基本計画がスタートした。この計画においては、その柱の一つとして、交通安全教育の振興がうたわれ、ことに小・中・高校における交通安全教育の徹底をはかることが強く望まれたのである。
具体的には、当該計画の中で「交通安全教育は生涯教育」との位置づけがなされ、「交通社会の一員としての責任を自覚し、相手の立場を尊重する良き社会人を育成するため、自他の生命尊重の理念を基本に、各年齢段階に応じ、生涯にわたつて交通安全教育の機会を確保し、交通安全意識の高揚をはかる」とされた。
そして、特に「学校における交通安全教育の徹底」という一項も加えられ、小・中学校とならんで高等学校において行うべき教育内容として「特別活動のホーム・ルーム、学校行事及び生徒会活動を中心として、良き社会人として必要な交通のマナーを身に付けさせる。更に、生徒や地域の実情に応じて二輪車の安全に関する内容についても適宜取り上げ安全に関する意識の高揚と実践力の向上を図るための指導を行う」と、かなり具体的な交通安全教育の方向が示されたのである。
このことはつまり、昭和四十六年よりスタートした交通安全基本計画にもとづく関係者の努力によつて減少してきた交通事故をさらに減少させ、安全で豊かな交通社会を実現していくためには、自動車教習所等における運転者教育と同時に、国民の必須の素養として交通安全意識を身に付けさせることが不可欠であると認識されたからにほかならない。
こうした認識のもと、昭和五十六年六月二十二日には各都道府県知事、同教育委員会教育長らに宛てて「交通安全の確保と交通安全教育の徹底について」と題する文部省体育局長通知が発せられた。その中では、前記第三次基本計画の内容をさらに具体化し、幼稚園から高校まで各学校段階における重点的な指導内容が示された。
その中で高等学校においては「自転車の安全な利用、二輪車・自動車の特性、交通法規、交通事故と防止対策」について指導すべきであると示されると同時に、「高等学校においては、二輪車の使用規制等の管理的な指導を行つている場合においても、上記の内容について、交通安全教育の徹底を図ること」というただし書も付されたのである。
このことはつまり、高等学校の入学者が、運転免許適齢の十六歳に達する年代であり、交通社会人としての教育として、自転車ばかりでなく、二輪車、自動車等についても正しい知識をもたせることが、現在及び将来を通じた事故防止策の一つのポイントであるということが、深く認識されたからにほかならないといえる。
さて、こうしたねらいのもと、前述のように昭和五十六年に第三次交通安全基本計画がスタートしたのであるが、それから四年を経過した現在まで道路交通事故は増加し続けているのが現状である。
昭和五十九年末においては、対前年比で確かに減少しているものの、その減少はその年前半におけるものであり、後半においてはかえつて事故は増加していて決して楽観できるものではない点が特筆できるところである。
そして、さらに言えることは、この数年において新聞紙上等をにぎわすほどの社会問題化しているのが、二輪車による事故の増加という点であろう。
特に昭和五十二年以降、二輪車乗車中の死者が、数、構成率ともに増加しており、早急に対策を講じることが望まれる。その意味で警察庁において「昭和六十年中における交通警察の運営」の柱の一つとして「二輪車対策の推進」を打ち出していることは特筆して、評価すべきことと言えよう。
さて、こうした状況のもと、私としては、かねてより道路交通における事故の増加を憂慮し、その対策について交通安全教育の徹底が重要であるという観点から、議会内においても、政府の姿勢をただしてきたところであるが、本年四月一日に参議院予算委員会において行つた、警察庁ならびに文部省当局に対する質疑も、同様な趣旨から発したものであつた。
しかし、そこで当局より出された回答は私の意図したところとは異なり、はなはだ不十分なものであつたので、このたび、以下のような項目につき改めて質問するので、お答えいただきたい。
一 現在、高等学校現場で行われているいわゆる「三ない運動」(オートバイを買わない、乗らない、免許を取らない)が見直しの気運にあり、現に大阪府教育委員会では、前記の運動の限界から、高校教師を対象とした二輪車実技講習会を開催し、生徒に対する指導につなげていくべく施策を講じているところである。
本年四月一日の予算委員会において私はこの点を指摘し、こうした動きに対して、文部省当局としては、これを全国に広げていく意思があるかどうか問いただしたのである。
それに対し、古村体育局長は、「現在、教育用の指導資料も作成するなど努力している」旨の答弁であつた。
現在私の知る限りでは、高等学校における交通安全指導資料としては「高等学校交通安全指導の手引」(昭和五十九年五月二十日(財)日本交通安全教育普及協会発行、文部省体育局監修)があるが、これをはじめとする指導資料が現在、高等学校現場においてどの程度活用され、効果をあげているのか、具体的にお答えいただきたい。
二 昭和五十六年六月二十二日付文部省体育局長通知により、高等学校における交通安全教育の方向が示されたことは前述したが、その後、これまでに高等学校の現場において、交通安全教育がどのように実現されてきたか、文部省当局としては調査したことがあるかどうか。
もし、あるとすれば、その内容と、その調査結果に対する文部省当局の評価をお答えいただきたい。
もし、特に調査したことがないとすれば、高等学校現場で交通安全教育がどのように行われているか、文部省としては具体的に把握しているのかどうか。把握しているとすれば、その具体的な内容とそれに対する評価をお答えいただきたい。
三 現在、かなりの高等学校において、生徒の免許取得ならびに二輪車、自動車への乗車を禁止する校則をつくり、その違反者には、退学、停学、自宅謹慎等の処分、指導を行つていると聞くが、その実態を文部省として具体的に把握しているかどうか。
把握しているとすれば、その内容をお答えいただきたい。
四 右記の質問に関連して、満十六歳以降の運転免許の取得は道路交通法に規定された国民の権利であり、その適法な行為を理由として、学校内ではあてつも処分をすることは、生徒にいたずらな罪悪感をいだかせ、ひいては生徒の遵法精神を養う観点から重大な障害があるものと思われるが、その点について文部省としての見解をお答えいただきたい。
五 高校生による二輪車事故の多発を背景として、現在ほとんどの都道府県の高等学校で、生徒の原付を含む二輪車運転及び免許取得が規制され、地域によつては「三ない運動」と称する運動にまで発展していることは前述したが、警察庁による統計資料において確認した限りでは、十六~十八歳の免許保有者数にしても、二輪車及び十六~十九歳の交通事故死者数にしても、ほとんどこうした規制措置の効果が認められない。
文部省としては、こうした高等学校における二輪車の規制措置により生徒の交通事故が減少しているのかどうか、具体的な数字を把握しているかどうか答えていただきたい。
六 また、右記の質問に関連して、事故の減少として具体的な効果が認められない場合、高等学校におけるかかる規制措置を放置しておくつもりかどうか、具体的な方策を答えていただきたい。
七 現在、高校生の二輪車問題に関して、学校側と生徒側との間で、二件の訴訟が起こされていることは、去る四月一日の参議院予算委員会において指摘したところであるが、生徒が学校を訴えるなどということはよほどのことであり、信頼感の欠如を表す以外の何ものでもない。これについて、文部省としてどう対処するつもりなのか。
八 生徒の交通安全を将来的な観点から考えれば、二輪車その他の交通安全に関して具体的な教育を施す以外に道はないと思われる。単に規制するのでは、かえつて生徒側の反発を招き、かくれ乗りや、無免許運転を誘発する結果を生みかねない。現に昭和五十二年以降、未成年者の無免許運転は増加する一方で、これが「三ない運動」の影響であるとすれば、ゆゆしき問題であるといわねばならない。
そこで、文部省当局として、今後、ことに高等学校の現場における交通安全教育の実施を具体的にどのように指導し、実現していくつもりであるのか、お答えいただきたい。
九 去る四月一日の、参議院予算委員会において、太田警察庁交通局長は、警察が学校、教育委員会に対し免許取得者名簿(以下「名簿」という。)を閲覧させていることにつき「教育上の見地から、公益に属することがらであり、法律違反ではない」旨の答弁を行つた。
それに関連して、かかる名簿を閲覧する行為はいつごろから、どの地域において行われているのか、具体的に示してほしい。
十 警察において名簿を学校、教育委員会に閲覧させたことにより、交通事故防止につき、どのような効果があつたか具体的に示してほしい。
十一 交通事故防止あるいは教育上の見地から使用するという名目があるならば、その相手が誰であつても名簿を閲覧させているのか。
もし、そうでないとするならば、誰に対してならば閲覧させるのか。
もし、閲覧させる相手が限定される場合、学校及び教育委員会に対して、閲覧させる具体的な根拠は何か。
十二 名簿により、生徒の免許取得者を確認した結果、学校側では当該生徒に対し、校内規則により停学、謹慎等の処分を行つているが、まつたく適法に免許を取得したにもかかわらず、その生徒の将来を左右するような、かかることがらに警察が深く関与する結果になつたことについて、当局としての見解を示してほしい。
また、かかる処分を行う学校または教育委員会に対し、今後も名簿の閲覧を許可していくつもりであるのか。
十三 現在、高等学校の現場においては、いわゆる「三ない運動」など生徒の二輪車乗車に対する規制が行われているが、そのために交通事故件数の減少等の効果を確認しているか。確認しているならば、具体的に示してほしい。
十四 この数年、未成年者の無免許運転摘発件数が増加しているが、この中に高校生がどのくらい含まれているか、具体的に示してほしい。
また、無免許運転による死亡事故のうち高校生の占める数値はどうか。
また、それらの数値と前記「三ない運動」等との関連について、当局としては、どのような見解ないし評価をしているのか。
十五 前記「三ない運動」等により、高校卒業後の年代に交通事故の集中する恐れがあると思うが、その点での統計数値と、それに対する当局の見解はどうか。
十六 この数年における交通事故の増加に対しては、警察当局としても種々の施策を講じているところであると思うが、ことに二輪車の事故防止については「昭和六十年中における交通警察の運営」においても重点的な柱の一つとして取り上げられているところである。
二輪車の事故防止に関しては、若年者への対策が重要であると思うが、この点で特に高校生の年代である十六~十八歳の二輪車使用者に対して、今後どのような施策を講じていくつもりであるのか、具体的に示してほしい。
十七 大阪府等においては、前記「三ない運動」等に対する反省も生まれ、高校において、交通安全教育を実施する体制をととのえつつあるが、このような場合、警察に対して学校ならびに生徒等から実技も含めた講習の希望があつた場合、警察としてはどのように対応していくつもりであるのか。
右質問する。
政府答弁書
一について
文部省の委嘱により教員用の指導資料として財団法人日本交通安全教育普及協会が作成した「高等学校交通安全指導の手引」は、各都道府県教育委員会、各高等学校等に既に一万部が配布され、現在、更に増刷中である。また、このほかにも、交通安全教育に関する各種の指導資料が、各都道府県においてその実情に応じて作成されているところである。これらの指導資料は、教員の指導上の参考資料として相当活用されており、高等学校における交通安全指導のために効果を挙げていると考えている。
二について
昭和五十六年六月二十二日付けの文部省体育局長名による通知後の高等学校における交通安全教育の実態については、調査していないが、昭和六十年度に調査を行う予定である。
なお、文部省において承知している限りでは、特別活動のホームルームや学校行事等において年数回指導が行われているところが多いという状況であり、その指導の状況については必ずしも十分でないと考えている。
三について
生徒の免許取得及び二輪車又は自動車の運転を禁止し、違反した生徒に対して懲戒を行つている高等学校があることは承知しているが、その全国的な実態については、把握していない。
四について
運転免許を取得するかどうかは、本来、生徒自身が保護者等とも相談しながら決めることではあるが、生徒が人身事故を起こす等悲惨な交通事故の経験を踏まえ、高等学校が、こうしたことを未然に防ぐために、生徒やその保護者の理解を求めながら、運転免許の取得を制限し、又は、それに違反した生徒に懲戒を加えることは、地域における現実的な対応の一つとして考えられるところである。
五について
文部省が昭和六十年三月に調査したところによれば、都道府県の教育委員会、PTA、高等学校長協会等の申合せ等により、全部又はほとんどの高等学校が二輪車の規制を実施しているのは、二十八府県である。これらの府県における高等学校の生徒の二輪車による交通事故について規制を実施する前年における死傷者数と昭和五十九年における死傷者数とを比較すると、死者数及び負傷者数が共に減少しているのは、十八県となつている。また、当該二十八府県を、昭和四十九年以前に規制を実施したもの、昭和五十年から昭和五十四年までの間に規制を実施したもの及び昭和五十五年以後に規制を実施したものに区分し、その区分ごとに、生徒の二輪車による交通事故の死傷者の合計数について、規制を実施する前年と昭和五十九年とを比較すると、それぞれ二十二パーセント、六十五パーセント及び三十パーセント減少している。
六について
二輪車の運転に関する「三ない運動」のような規制措置は、高等学校、教育委員会、PTA等が生徒の悲惨な交通事故を未然に防ぐために運転免許の取得、二輪車の運転等を制限するものであり、地域における現実的な対応の一つとして考えられるところである。今後とも、このような規制措置の在り方をも含め、交通安全教育の充実、交通環境の整備等交通事故の減少のための総合的な方策について、各都道府県の実情に応じた検討が行われることを期待しており、文部省においても、必要に応じ、交通安全の充実が図られるよう指導してまいりたい。
七について
懲戒を行う場合には、平素から、懲戒事由等につき本人を含む関係者の十分な理解を得るよう努めるとともに、処分は、問題行動の程度のほか、当該生徒の性格、行動、心身の発達状況等に十分配慮して行うよう各都道府県教育委員会を通じて指導しているところである。しかし、御指摘の二つの事件については、本人や保護者の十分な理解が得られず訴訟に至つたことは遺憾である。今後とも、懲戒は十分な教育的配慮の下に行われるよう指導してまいりたい。
八について
高等学校における交通安全教育の推進を図るためには、教職員全員が交通安全教育の重要性について共通理解を深めるとともに、交通安全教育を年間の指導計画に明確に位置付け、適切な指導資料や教材を活用して指導を充実することが重要であると考えている。このため、交通安全教育に関する各種の研修会等を開催し、指導に当たる教員の資質の向上を図るとともに、交通安全教育に関する指導資料等の充実を図り、高等学校における交通安全教育の推進を図つてまいりたい。
九について
御指摘の名簿の閲覧等は、昭和五十一年から高知県で始められ、現在、千葉県、和歌山県、広島県、高知県、福岡県、熊本県及び大分県の七県で行われていると承知している。
十について
名簿の閲覧による効果を確認することのできる資料は、得られていない。
十一及び十二について
名簿は、御指摘の名目があるからといつて、だれにでも閲覧させるというものではない。
現在高等学校又は教育委員会の要請により名簿を閲覧させている七県警察については、その要請の趣旨が交通安全教育等の学校教育上の目的に資するものであり、公益性が高いと認められることから、その必要性等を各県警察において具体的に判断の上、これに応じているものと承知している。高等学校又は教育委員会においても、その要請の趣旨に従い、必要な範囲内で、名簿を閲覧し、利用しているものと承知しており、今後とも、各県警察においては、このような方針で対処していくものと考えている。
十三について
「三ない運動」等による効果を確認することのできる資料は、得られていない。
なお、福岡県警察が同県内の高等学校について運転免許取得を全面的に禁止しているもの及びそれ以外のものに区分してそれぞれの昭和五十九年中の交通事故発生状況を調査したところ、別表一のとおりであつた。
十四について
高等学校の生徒に係る無免許運転取締り件数については、把握していないが、昭和五十七年から昭和五十九年までの間における無免許運転に係る死亡事故のうち生徒が第一当事者となつているものは、別表二のとおりであつた。
なお、無免許運転取締り件数又は無免許運転による死亡事故件数と「三ない運動」等との関連については、確認することができない。
十五について
「三ない運動」等実施校の卒業者による交通事故発生件数については、把握していない。
十六について
若年の二輪車運転者に対しては、交通事故防止等のため、特に次の施策を重点施策として実施しているが、今後ともその推進を図ることとしている。
(一) 自動二輪車免許の新規取得者に対しては、白バイ隊員その他自動二輪車運転の知識及び技能に精通する者を講師として講習を実施する。
(二) 原動機付自転車免許取得者のための技能講習については、良好な講習環境及び十分な講習時間を確保する等その充実に努める。
(三) 更新時講習及び処分者講習においては、二輪特別学級及び若年者特別学級の編成を促進し、きめ細かい指導により、安全運転態度の形成に努める。
十七について
警察においては、これまでも高等学校等と連携をとり、法令講習や安全運転実技指導等を実施してきたところであるが、今後も、要望があれば、可能な限り、実技指導員の派遣、資料提供等により協力してまいりたい。
別表一
別表二
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