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国営中海干拓事業の助言者会議見解に対する農林水産省の意見書に関する質問

参議院 第107回 第3号個別の事案 ×1

提出者
参議院
提出日
1986年10月3日
内閣転送 1986年10月4日
答弁書受領日
1986年10月21日
提出から18日
答弁の項目数
9
質問 2,947字/答弁 1,321字

質問本文

国営中海干拓事業の助言者会議見解に対する農林水産省の意見書に関する質問主意書

国営中海干拓事業は、すでに六百二十二億円が投入され、事業着手から二十三年が経過している。この事業が当初目的とした水田・酪農の営農計画は、その後の社会、経済情勢の変化に伴い破綻している。干拓地の分譲価格は、10アール当たり百六十万円(昭和六十三年度完成見込みの試算)といわれてきたが、工期がさらに延びるところから三百万円になるという試算もおこなわれている。こうした状況により、干拓地での営農見通しがたてられず模索中であるにもかかわらず、中海干拓事業がおしすすめられている。

また、中海干拓事業による中海・宍道湖の淡水化がすすめられれば、水質が悪化するということを科学者が指摘している。さらに、淡水化すれば、全国のシジミ生産の六五%を占めるヤマトシジミの絶滅をはじめ、宍道湖七珍など汽水性魚介類が絶滅し、漁業者のみならず、食文化、飲食店や旅館、水産加工業者の営業、つり、観光、文化など、広範囲にわたつて重大な打撃を与えることが予測されている。そのため、中海・宍道湖周辺人口の六割以上の人びとが淡水化に反対している。

しかるに、農林水産省は、昭和五十九年八月に「淡水湖化は湖の現状程度の水質をほぼ維持しながら進めて行くことが可能であろう」との「中間報告」を発表し、あくまで淡水化をすすめようとしている。

島根、鳥取両県が、この「中間報告」の検討を委嘱した助言者会議は、本年二月に「見解」を答申した。その中で「中間報告」の問題点を十項目あげ、淡水化すれば水質が悪化する可能性と調査・研究の不十分さを指摘した。この助言者会議見解に対し、農林水産省は八月六日、「中間報告書の水質予測はおおむね妥当である」との「助言者会議見解に対する意見について」を発表した。

以上のような経過にもとづき、農林水産省の「助言者会議見解に対する意見について」および宍道湖・中海淡水湖化に伴う水管理及び生態変化に関する研究委員会の「助言者会議見解に対する意見」(以下、意見書という。)に関し質問する。

一 意見書の性格について

1 今回の意見書は、昭和六十一年三月五日衆院農水委員会で中林佳子委員の質疑に対して、佐竹農水省構造改善局長が答弁されている「統一した見解」にあたるのかどうか。

2 「統一した見解」にあたるとすれば、当時、佐竹局長は「報告をまとめられた先生方と助言者会議の先生方と直接御議論いただいて科学的に決着がつく問題かと思う」と述べていたが、助言者会議の委員との議論を経たうえでまとめられたものかどうか。

3 そうでないとすれば、改めて双方の議論を踏まえたうえで「統一した見解」を出すことが国会答弁の趣旨であると考えるがどうか。

二 意見書の内容について

1 助言者会議見解は「水質変化予測に対して生態系がどのように変わるかなどの検討が不十分である」と指摘している。これに対して意見書は「言葉どおりにおいてはまさにその通りである」と述べている。生態系変化とその水質におよぼす影響が未解明のままおこなわれている水質予測は、正確さを欠くのではないか。

2 意見書は、淡水化すれば「汽水状態の時より湖水の滞留時間は長くなる」こと、夏期には、CODが汽水状態より高くなることを認めたが、湖水の滞留時間の増大は水質悪化の要因になるのではないか。

3 渇水年の水質予測値について、助言者会議の指摘をうけて解析をやりなおし、水質予測値を改めているが、その予測は全層平均値しか公表されていない。より正確に判断するためには、時期別、水域別、水層別の最小値、最大値による解析結果を公表すべきではないか。

4 助言者会議見解は「淡水化後において下層に発生する微弱密度流による継続的な水質浄化効果を中間報告書で評価しているほど期待するのは無理がある」と指摘している。これに対し、意見書は「中浦水門の除塩施設の効果の把握を含め塩分濃度を一定程度まで低下させた状態で実証的に微弱密度流の調査・研究が必要である」と述べ、検証しなければ水質浄化効果は分からないとしている。したがつて、「中間報告」で、微弱密度流による水質浄化効果を断定的に記述しているが、これはまちがいではないか。

5 助言者会議見解は、「中間報告」では中海への逆流海水による栄養塩類の持ち出し効果は小さいとされているが、現状での海水による水質浄化効果はかなりあり、海水によるリンの持ち出し量は約四〇%で、水門操作後はこの作用がなくなると指摘した。これに対し意見書は、水量計算モデルによる計算では二八%、水質予測シミュレーションの収支計算によれば三九%であつたと助言者会議見解をほぼ認め、「中間報告」の海水によるリンの持ち出し量約一六%という数値を大幅に訂正した。

このことは「中間報告」で述べている潮汐による水質浄化効果は「比較的に小さい」という評価を訂正したとうけとめてよいか。

6 淡水化後のアオコ発生予測について、助言者会議見解は、「現時点でも淡水化後の宍道湖・中海におけるアオコ発生予測は可能である」と指摘している。これに対し意見書は、「局所的、局時的には可視的なアオコ発生がありうることは否定しない」としながらも「アオコ発生予測を的確に行うためには、塩分濃度を一定程度まで下げた状態で、必要なデータを収集する等の調査・研究を行うことが必要である」と述べ、淡水湖化の過程でなければ予測できないとしている。水質に影響を及ぼすアオコ発生予測をめぐつて、両者の見解はまつ向から対立している。

この点について、

(1) 淡水化すればアオコが発生する可能性があることは認めたとうけとつてよいか。

(2) アオコが発生すれば水質悪化の要因になると思うがどうか。

(3) アオコの発生が予測されても淡水化試行に入るのか。

(4) 助言者会議の委員であつた研究者からも直接意見を聴くべきだと思うがどうか。

7 生物関係について意見書は、助言者会議見解の指摘をほぼ全面的に認めているが、汽水性魚介類の絶滅について「所要の漁業補償を行つている」と漁業補償で片付けようとしている。

しかし、宍道湖七珍をはじめとする汽水性魚介類の絶滅は、漁業の全滅だけでなく、食文化、飲食店や旅館、つり、観光、文化、芸術など広範囲に重大な影響を与え、漁業補償でことたりるような問題ではない。この影響をどのように考えているのか。

8 助言者会議見解は、「鳥類にたいする影響を調査する必要がある」と指摘している。これに対し意見書は、「鳥類については、中間報告では触れられていないが、影響調査を今後行うことは一般的にいつて望ましいことである」と一般論にとどまつている。

中海・宍道湖は野鳥の宝庫であり、八束町以南の中海は野鳥の保護区に指定されている。宍道湖一帯で確認されている鳥類は三七科一六八種、中海は二〇〇種である。

コハクチョウ、天然記念物のマガン、ヒシクイの集団渡来の南限であり、キンクロハジロのわが国への渡来数の四分の一が宍道湖だとされている。こうした貴重な地域であり、鳥類への影響を調査すべきだと思うがどうか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の助言者会議見解については、従来から関係県を通じて聴いているところであり、今回関係県に対して回答した「助言者会議見解に対する意見について」(以下「意見書」という。)は、こうした助言者会議見解を踏まえ、農林水産省が調査研究を委託した「宍道湖・中海淡水湖化に伴う水管理及び生態系変化に関する研究委員会」とも十分協議し、農林水産省としての見解を述べたものである。

昭和六十一年三月五日の衆議院農林水産委員会における農林水産省構造改善局長の答弁の趣旨は、このような見解を示すことを述べたものである。

二の1について

「宍道湖中海淡水湖化に関連する水理水質及び生態の挙動について(中間報告)」(以下「中間報告」という。)において水質解析シミュレーションに用いた生態系モデルによる手法は、現時点における水質予測の一般的な手法であり、実用レベルで十分評価できると考えている。

二の2について

中間報告によれば、宍道湖・中海の淡水化に際しては、中浦水門を適切に操作することにより、宍道湖については大橋川からの逆流がなくなるため流入負荷量が減少し、また、中海については塩分躍層の消失によりリンの溶出が減少する等の好影響もあると予測されている。

したがつて、湖水の滞留時間の増大のみで水質悪化を結論付けるのは適切ではないと考える。

二の3について

渇水年の水質予測は、時期別、水域別に全層平均値で解析を行つており、その結果については、既に関係県を通じて公表しているところである。

二の4について

意見書は、中間報告において述べられている微弱密度流の水質浄化効果を前提として、その定量的分析を実証的に淡水化試行期間中に行うべきである旨を述べたものである。

二の5について

海水によるリンの持ち出し量の河川水によるリンの持ち出し量に対する比率については、中間報告取りまとめ後更に検討が加えられ、実測地点を変更したところ二十八パーセントとの数値が得られ、また、水質解析シミュレーションを用いての計算では三十九パーセントとの数値が得られたとされている。

これらについては、既に関係県を通じて公表しているところである。

二の6について

基本的には富栄養化の程度によるが、塩分濃度が低下すれば、その量、規模等は別にして、部分的にアオコが発生する可能性もあると考えている。

アオコの水質に及ぼす影響の程度は、湖沼の個別具体的な事情により異なるので、淡水化試行の過程で、アオコの発生の量的予測及び水質に与える影響について解析を行うこととしている。仮にその過程でアオコが発生し、水質に無視できないような悪影響を与えるような事態になれば、関係機関と直ちに協議の上、中浦水門の一時開放等必要と認められる措置を採ることとしている。

なお、助言者会議の委員の見解については、従来から関係県を通じて聴いているところである。

二の7について

国営中海干拓事業の円滑な推進を図るに当たつては、今後とも、関係県等と連携を取りつつ、関係者の理解を得るよう努力してまいりたい。

二の8について

鳥類への影響の調査については、その必要性を含め、今後関係県等とも十分協議してまいりたい。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

個別の事案 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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