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対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問

参議院 第112回 第11号

提出者
参議院
提出日
1988年4月15日
内閣転送 1988年4月20日
答弁書受領日
1988年5月13日
提出から28日
答弁の項目数
7
質問 1,468字/答弁 1,681字

質問本文

対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問主意書

最近、牛肉、オレンジの自由化をはじめ東芝制裁措置など日米関係に大きなキシミが感じられるが、日本政府はアメリカの真意や狙いを十分に理解した上で交渉に臨んでいるのかどうかという観点から、日本政府の対米交渉姿勢を質したい。

一 農産物十二品目や牛肉、オレンジの自由化交渉に対して、大方の日本人は、『アメリカは一切譲歩せず、最後は日本側が全面的譲歩を余儀なくされるだろう』と予測し、また結果はそのとおりになりつつあるが、疑問が二つ残る。

1 日本政府もその辺はよく承知していたが、農民に対するゼスチャーや選挙支持基盤に対する思惑から、対米交渉に際して勇ましく強腰のゼスチャーを見せていただけなのか、それともアメリカの狙いや要求レベルを全然承知せずに『強腰交渉の成功を少しは期待し、結果が譲歩になつたことに期待外れと失望を感じているのか』どうか伺いたい。

2 昨今の日米関係において、アメリカが日本に要求している基本的内容は『日本も世界の経済大国になつた以上、大国としての責任と行動をとるべきで、欧米先進国並はもちろんのこと、日本の経済力にかんがみ欧米先進国よりも進んだ輸入の自由化や市場の開放を行うべし』ということと解釈するが、政府の見解はどうか。

二 アメリカ政府の日本に対するいら立ちは『日本政府の約束したことを実行せず、また国内的思惑を優先させて、対外的な約束の実行や責務の遂行を遷延・回避しているずるさ』にあると考えられるが、政府の受止め方はどうか。

三 最近、東芝問題をはじめ包括貿易法案、あるいは北洋漁業の禁漁措置など多分にアメリカ議会・政府の理不尽さや感情的行動が目立ち、今後ますますこの傾向のエスカレートが憂慮されるが、政府はかかるアメリカの感情的行動にどう対処するつもりか。

四 政府は従来国内的思惑を優先し、ダメで元々という姿勢で対米交渉を不必要に行い、アメリカ側の感情を刺激する愚を重ねているように思われるが、農産物交渉のごとく、見込みのないものははつきり関係業界にその旨を宣言し納得させるべきであり、前広に農家に期待をもたせ、挙げ句の果てが見殺し的に突き放すのは、農家対策としても最悪であり、国内不信を招くだけでなく、対外的にも不信を招いて、国際関係をマズクするのではないかと思うが、政府の見解はどうか。

五 最近の日本の世論動向をみるとアメリカの諸施策に対する被害者意識が高じ、一方では経済力や技術力に対する過信から、『アメリカ何するものぞ』という意気軒昂さがあり、さながら第二次大戦開戦前のファッション的雰囲気を感じるが、国民世論がそういう方向に向かつているとすれば、重大な政府の責任ではないか。また日本は憲法第九条の戦争放棄の精神にのつとり、経済力、技術力等武力以外のバーゲニングパワーもできるだけ誇示すべきではないと考えるが、政府の見解はどうか。

六 日本はまず世界の大国として自由化すべきものは自由化し、市場開放すべきものは開放しなければならないが、日米半導体協定違反を理由に半導体とは全く関係のない電動工具に報復関税をかけたり、ココム違反事件に対し、事件当事者でない東芝本社にまで制裁を課そうとしているアメリカの行き過ぎた行動に対しては、堂々と正論を主張すべきと考えるがどうか。日本はやるべきことをやつていないので、言うべきことも言えないのではないかというアメリカ側の反論を封じるためにも政府の具体的対策が必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

御指摘の交渉については、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といつた観点を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、適切に対処してきたところである。

一の2について

日米間の大幅な対外不均衡の中にあつて、米国の我が国に対する市場開放要求には厳しいものがあるが、その背景には、我が国が国際経済社会に占める地位にふさわしい責任と役割を十分に果たしていないのではないかとの不満もあると思料される。

我が国は、我が国経済にふさわしい国際的責務を果たすべく、従来より、内需拡大、輸入拡大、国際社会への貢献、市場アクセスの改善等に積極的に取り組んできており、今後ともこうした努力を継続する所存である。

二について

我が国政府は、対外的に約束した内容は誠実に遵守してきている。

他方、米側の一部には、日米間で約束された手続等によつて直ちに具体的成果があらわれることを期待する傾向があるが、具体的成果は、商業活動とあいまつてあらわれるものであり、必ずしも直ちにあらわれるものではなく、米国に対しても、米国企業の競争力強化等米側努力が必要である旨繰り返し指摘しているところである。

三について

日米間の大幅な対外不均衡を背景に米国内では厳しい対日批判が行われ、また議会を中心に保護主義の高まりが見られる。

日米間の経済摩擦問題の背後には、日米間の対外不均衡を含む世界経済の不均衡が存在しており、かかる不均衡を縮小するためには、日米両国を含む主要国の経済政策協調努力が不可欠であり、我が国としては、今後ともかかる認識に基づき、我が国の政策努力を着実に実施していく考えである。

また、相互依存関係を深める日米両国間で当然生じてくる個別の経済問題については、両国の協力と共同作業の基本理念に基づき、縮小均衡ではなく拡大均衡を目指す方向で解決を図るとの考えに立つてこれらの問題の解決に努力していく考えである。

四について

我が国は、世界最大の農産物純輸入国である。一方、国内における農業の役割は、食料の安定供給、活力ある地域社会の維持、国土・自然環境の保全等、極めて重要であると考えている。

日米間の農産物貿易問題については、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といつた観点を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、多角的貿易交渉(ウルグァイ・ラウンド)との関連を十分考慮し、適切に対処していく考えである。

五について

日米間には、経済的相互依存の深まりに伴い当然生ずる問題があるが、全体として見れば両国間の友好協力関係は着実に深さと広がりを増しており、各種世論調査でも、我が国国民の米国への親近感は一貫して高い水準で推移している。

日米間の個別経済問題については、一月に竹下内閣総理大臣とレーガン大統領との間で確認したとおり、協力と共同作業の理念に基づき縮小均衡ではなく拡大均衡を目指す方向で解決を図るとの基本的姿勢の下で、日米関係の更なる発展に取り組んでいく所存である。

六について

我が国はこれまで内需拡大、輸入拡大、国際社会への貢献、市場アクセスの改善等の努力を払う一方、米側に対しては、財政赤字削減、競争力強化、保護主義防遏等の努力を求めてきている。

半導体問題については、我が国はこれまで日米半導体取極を誠実に履行してきており、米側措置には何ら正当な理由がなく、また現実に我が国における外国系半導体の売上げも増加を見ているところ、従来から米国政府に対し対日一方的措置の撤回を申し入れてきたところであるが、引き続きその早期全面撤回を強く求めていく考えである。

米国議会で採択された包括貿易法案中の東芝等外国企業制裁条項は、我が国のこれまでの努力を考慮しないものであり、またココム参加国の協力を阻害するものであると考える。我が国はかかる問題ある条項を含んだ包括貿易法案が成立することのないよう米側に対し働きかけを行つてきたところであるが、今後とも最終的にかかる条項が成立することのないよう米側に対し働きかけを行つていく考えである。

参議院の原文

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